ああ、おまへは

 なにをして来たのだと・・・

 吹き来る風が私に云ふ  (中原中也)


 

季節の変わり目には、そんな具合に風を感じることが多い。

一歩前進 二歩後退のような気分になり、無性に、情けない思いがするのだ。


雪の多い冬だった。

雪を求めて、あちこちカメラと共にほっつき歩いたりもした。新作のロケだ。

何本かの作品を平行して撮影しているケースが多いので、どれが新作なのかは言いにくい。

どの作品が先に完成するかは、自分でもよくワカラナイのだ。

ひとつひとつ、カタをつけてから、次に取りかかればよいのでしょうが、

撮りたい、と思うと、その欲望を抑えきれないんだ。

困ったもんだ。


ほとんど無計画にドキュメンタリー映画を創り続けて来た私と仲間たち、

いせフィルムの活動が「シネマ夢倶楽部賞」という賞を、この度受賞した。

世界をマーケットに作品を創っているアニメーションの「スタジオジブリ」との同時受賞だ。

何かの間違いではないか?と何度も思ったけどね・・・。

 

地味なヒューマンドキュメンタリー映画を凝りずに創り続け、

めげずに自主上映を主体に上映し続けたことへの評価ということらしい。

ある意味、作品賞よりも嬉しかった。

 

授賞式のスピーチで、

「いせフィルムは、私を含めて二人きりの会社です。

 映画を創る時にも観てもらう時にも、いせフィルムを支えるまわりのスタッフがいてこそ、

 これまでやってこれました。

 仲間たちとやって来た映画創りを誉めてもらった今回の賞は、とても嬉しい・・・」

というようなことを喋った。

 

綺麗ごとで言っているわけではなく、

私の映画創り、いせフィルムの活動は、まわりの仲間がいてこそなのだから。

「映画の神様」がきっと見ていてくれたんだねと、

もうひとりのいせフィルム社員、制作・上映を切り盛りしてくれている四代目デスク遠藤くんと、うなずき合った。

「だって、君はひとりで勝手に何かをやってゆくことなんて出来ないだろう?」という言葉は、

映画「えんとこ」の主人公、寝たきりの障碍を持つ学生時代の友人・遠藤滋の名言だけど、

そのままそっくり私の映画創りのキーワーズでもある。

 

これからも、今まで通りマイペースでやって行くつもりだ。行けるとこまで行くんだ・・・。


4月には、授賞を記念して、東京・新宿K’s cinema(03-3352-2471)で、

昨秋完成した映画「シバ –縄文犬のゆめ-」を中心に、

「大丈夫。」「風のかたち」「奈緒ちゃん」「ルーペ」「えんとこ」「傍(かたわら)」「小屋番」の自作を、

伊勢真一監督特集として上映する(4/12土〜5/2金 連日 午前10時半から一回上映)。


いせフィルムの活動のベースである自主上映も、これを期に全国各地でやりたいと思っている。


いせフィルムの応援、これからも、よろしくお願いします。



(上映問合せ:03-3406-9455 いせフィルム)

 

シネマ夢倶楽部賞 受賞

伊勢 真一