風薫る五月、と言うけど、六月の枕コトバは何だっけ・・・?

思いを巡らせながら半袖で街を歩く。

4月から5月にかけては、北アルプス・穂高の山小屋の友人、宮田八郎に頼まれた山の映画

『小屋番 涸沢ヒュッテの四季』を編集していた。


私はどっちかと言えば、シティーボーイ(?)だから、

山や海を舞台にしたドキュメンタリーからは、今まで距離を置いて来た。

山の名前知らないし、花の名前知らないし、虫や鳥の名前も知らない・・・「自然音痴」なんだ。

でも、宮田八郎ことハッちゃんから

「伊勢さん、くたばるまでに一度くらい、山の映画創ってみたら?」

と声をかけられたら、二つ返事で「あいヨ!」と応えてしまっていた。


ここのところ口にしている

「もしかしたら、私は永い永い一本の映画を創り続けているのかもしれない・・・」

という言い方で言えば、「小屋番」は永い永い一本の映画の、

私自身が撮りたかった次のシーンにちがいない、と今は思う。

「風のかたち」「大丈夫。」と、小児がんの子どもたちの命を巡って試行錯誤を繰り返し、

「傍(かたわら)」で、あの3月11日の出来事が問いかける重すぎる課題に右往左往し、

本来、ノー天気が持ち味の「なんちゃってドキュメンタリスト」には、

このところ、何とも耐え難い緊張が続いた。その反動もあったのか、

いい空気を吸って、美しい山や花々にたっぷり触れてみたい・・・と思ったのも、たしかだ。

タイトルにもした「小屋番」が主人公の映画。

山や山小屋を守り、登山客を陰で支える、いわば「縁の下の力持ち」のような

男衆・女衆のヒューマンドキュメンタリー・・・

それは、大自然と向き合う人々の、ピュアーな心に触れる物語でもあった。


小児がんと闘う子どもたちと、細谷亮太医師など医療関係者の心、

大災害で犠牲になったひとりひとりと、「忘れまい」とする人々の心、

その心の在り様は、圧倒的な厳しい自然に平伏すように生きる「小屋番」たちに、

どこか繋っているようにも思えるのだ。


春が来て、夏が来て、秋が来て、冬が来て、

そして再び春は来る。いのちは生きる方へ向かうのだから・・・と。


今回も又、同じような思いにたどり着き、

終わりようのない一本の永い永い映画の、「小屋番」というワンシーンが誕生した。

「小屋番 涸沢ヒュッテの四季」

ぜひ観て欲しい。


***************************************

6/7(金)日比谷図書文化館『ヒューマンドキュメンタリー映画館 日比谷』にて

映画『小屋番 涸沢ヒュッテの四季』完成初上映!!14時~/19時~の2回上映!!

【トークゲスト】

山口孝(涸沢ヒュッテ代表)×宮田八郎(穂高岳山荘 小屋番)×伊勢真一(映像作家)


6/8(土)・6/9(日)『第13回 はなまき映像祭2013』岩手県花巻市にて開催!!

6/9(日)15:15~映画『小屋番 涸沢ヒュッテの四季』上映。

【トークゲスト】

宮田八郎(穂高岳山荘 小屋番)×澄川嘉彦(映像作家)×伊勢真一(映像作家)

 

永い永い一本の映画

伊勢 真一