秋です。
収穫の秋。
この10月は私も二本の短編作品を仕上げた。
『柴犬−天然記念物 柴犬保存会 本部展の記録−』と
『海外引越し−帰国編−』という
PRモノだ。
両作品とも「なりわい」として映像を手がける、監督・伊勢真一の職人としてのウデを見込んで(?)頼まれた仕事だ。
私の父・伊勢長之助は、映画人生のほとんどをPR映画をベースに生き続けた映像職人だった。その父に比べるべくもないが、私も企業PR、文化映画からカラオケに至るまで多種多様な頼まれ仕事を手がけながら、ドキュメンタリー映画を創り続けて来た。
頼まれたら断るのが苦手な性格、ということもあるけど、頼まれ仕事も嫌いではない。やるとなったらけっこう夢中になって一生懸命やる…面白いしね。
撮影でも編集でも、ともかく映像の現場に居れば、何であれシアワセなのだ。
それでお金がもらえたらありがたい。それだけのことだ。
中には頼まれ仕事をバカにする奴もいるけど、私はずいぶんこの仕事に育てられたと思う。「用の美」というほどかっこいいものではないかも知れないが、必要とされているものの「美」や「実」がそこには必ずあるし、その世界を深めることのやりがいというのかな…
自主製作でドキュメンタリー映画を創ることと、創り手としての基本は同じだと私は思う。
もうひとつの収穫。
この秋から、「ヒューマンドキュメンタリー映画館 日比谷−いせフィルム作品セレクション−」という定期的な上映会を、日比谷図書館のホールを使って仲間たちと始めた。
東京のど真ん中の日比谷公園で、毎月ヒューマンドキュメンタリー映画を観てもらおう、という企画だ。
映画は観客と出会いはじめて映画になる…というセオリーのもとに、
人々の営みに焦点をあて、時間をかけて、かけがえのない「いのち」に向き合った我等が自主製作映画を日比谷周辺のビジネスパーソンにも観てもらおう、というねらいだ。
「ヒューマンドキュメンタリー映画を観ることは自分自身と出逢う体験です。スクリーンにはあなた自身が写りこんでいるはずです」
という呼びかけのメッセージを発信した。
10月3日に行われた第1回目の集まりでは、映画『傍(かたわら)〜3月11日からの旅〜』を上映し、私と細谷亮太医師(小児科医)との迷トークコンビが一時間程語り合った。
集客に苦戦し、誰も来ないんじゃないかと怯えてたけど、百人を超える方々が足を運んでくれ、とても好評だった。
当日のアンケートからいくつか紹介しよう。
「会社休んで来てしまいました。そして母も連れて、やっぱり来てよかっ
た。また来よう!ほんとにうれしい時間です。私にとって」
「何か考えた事を作るのではなく、大きな場面の中から、そこに在る事柄
を映し出してゆかれる伊勢さんのお仕事に強い印象を受けました」
「静かな映像の中でたくさんの方たちの思いと悲しみが心にしみてきまし
た。そんな悲しみを心に秘めながらも明日に向って生きて行く被災地の
皆さんの姿にいのちの持つ力を感じました」
毎月一回、一年間は続けてみようと思う。
東京・日比谷へ行けば、毎月ヒューマンドキュメンタリー映画が観れる、ということを定着させたい。
自分のペースで映画を創り続け、自分のペースで上映し続けること…
もちろん、イヤなことやシンドイこともたんとあるけど、ジワジワしぶとくやり続けたいと思う。
行けるとこまで、行くのだ。
何より、自分自身のために。
※ 次回の「ドキュメンタリー映画館 日比谷」は、11月21日(水)
14時30分〜『大丈夫。−小児科医・細谷亮太のコトバ−』(伊勢真一作品)
16時〜(トークショー) 戸井十月(作家)×伊勢真一(かんとく)
18時30分〜『ツヒノスミカ』(山本起也作品)
予約・問合せはいせフィルム(03-3406-9455)まで。