Monologue2002-09 (2002.2.26〜2002.2.28)
「2002.2.28(木)」曇・堀ノ内のコンビニ

 昔慣れ親しんだものが知らぬ間に姿を消しているというのは大変切ないもんである。
 僕の郷里では、僕が通っていた保育園・小学校・中学校までが、既に姿を消している。
 小中学校は新校舎に建て変わってしまい、保育園は既に存在すら無い。
 まあ、学校と言うのは老朽化すれば改築新築するのは避けられぬのであろう。

 学校などの大きな建物に限らず、日常的であるが意外なものが消滅しただけでも大変切なくなってきてしまう。

   *   *   *

 1986年の3月から1年程埼玉県の大宮に住んでいた時があった。
 アパートは木造の古い建物で家賃1万8千、風呂トイレ共同、大宮駅から徒歩30分という仕様であった。
 最寄りのコンビニは氷川神社近くにあり、ちょうど駅から半分程の距離に在った。従って歩いて15分かかった。
 当時車は勿論、自転車だって持っていなかったから、コンビニはアンコンビニエンスであった。
 回りは住宅地と公園で環境は良かったが、一人暮らしには随分不自由な場所ではあった。

 しかし、その後なんとアパートから歩いて2〜3分のところにセブンイレブンが出来たのである。
 良く覚えていないのであるが、秋口くらいだっただろうか。兎に角大宮時代の後半に出来た記憶があり、回りにこれといった店も無い環境だった為、この新店舗の進出には随分と助かったもんであった。この頃から僕のセブンイレブン贔屓が始まっていたかもしれない。
 コンビニで売り始めた頃のおでんや、イカフライの入った弁当を買ったのを今でも鮮明に覚えている。
 この奇麗で新しかった店は、大げさに言うと、当時留年という社会的に不安定だった自分が、何とか就職なども決まり、新しい生活に一歩一歩踏み始めていっている、言わば僕自身の「再生」の象徴であったようにも、今になると思えてくる。

   *   *   *

 先日この近辺を久しぶりに歩いてみた。
 アパートは既に無くなって畑になってしまっているのは前回来た時に知り、少なからずショックであった。

 今回更にショックだったのは、あのセブンイレブンがスッカリ無くなってしまったことなのであった。
 16年経っているということを考えると長いようでもあるが、僕の中では非常に短かかった。
 あのセブンイレブンとは、いつか又付き合いが始まるんじゃ無いかくらいの夢想すら抱いていたくらいであった。

 今現在はスッカリ更地になってしまっている。もしかしたら単に改築して又セブンイレブンができるのかもしれない。しかし僕が通っていた、あの頃の店舗がもう無いことは明白な事実であった。
 全く違う店舗ができるとしたら、更に切ない。

 きっとこの跡地には、又何かが出来、別の誰かの(もしかしたら当時の僕のような学生かもしれない)の、ささやかな歴史が、その建物か何かと共に生まれて行くのかもしれない。
 それが今の僕とでは明らかに無いことは無性に寂しい。
 そしてあの頃の情景が一つ一つ、時間の経過と共に確実に封印されていくのを感じ、それも又僕を感傷的にさせていく。
 只、こうして何かが失われて行く毎に、又一つあの街が、あの土地が、想い出のあの場所が好きになって行くのを禁じ得ないのであった。

「2002.2.27(水)」曇・轢かれてたよっ!

 今日会社の帰り道でのことである。
 駅近くの横断歩道を渡ろうとした時に、前方から乗用車がこちら側に右折してこようとするのが見えた。
 多少距離がありまだ余裕がありそうだったので、僕も大丈夫だろうと思いトロトロ歩いていたら、その車がいきなり加速して来た。
 明らかに殺気を感じ、スレスレのところで僕は慌てて横断歩道を走り抜けた。
 煽られたか、と思った。その車には僕が仕事疲れで相当ボケッとしているように見えたのだろうか。

 ちょっと僕の方もイライラしていて、思わず渡った後に、その車を睨んでしまった。
 するとなんとその車が右折した直後、速度を落とし停車したではないか。
 しまった・・・、もしかして恐い方の車だったかナ。ヤベエ。
 間髪を容れず車の主は窓を開け、こちらに何か言って来た。

 ところが車の主はと見たら、随分人の良さそうな中年婦人であった。
 どうやらこっちに向かってゴメンナサイ、と言っていたようであった。

 僕は怒ったり脅えたりホッとしたりで些か混乱し、挨拶もソコソコにその場を辞してしまった。
 なんだオバチャンか・・・。とりあえず安心したことはした。しかし、アンタも笑いながら人斬るタイプやな・・・。
 たぶんブレーキとアクセルを踏み間違えたのであろう。

 最近の不調を象徴するような出来事であった。きっと悪魔が悪戯して僕を混乱させ弄んでいるのだろう。僕は動じませんからね。
 でももしあのオバチャンがカワイイ女の子だったら、ここで一つのロマンスが芽生えていたかもしれないかもな・・・。
 ・・・などと兎に角オイシイ方向に物事を考えよう、と気を取り直し、又ヨタヨタと歩き続けていくのでした、とさ。

「2002.2.26(火)」曇・見られてなんぼ

 昔パソコンにつけていたHPには公表していない、いわゆる本当の日記を読み返して見た。
 勿論自分史的な話題性はあり個人的には面白いが、文章としてどうか、ということになると、ハッキリ言ってつまらない。多分第三者が読んだらもっとつまらないだろう。
 やはり人に見られる、ということは結構大事かもしれませんな。
 ちなみに女性が奇麗になるのは、やはり人に見られている、ということを意識しだすところから始まるんでしょうな。僕は良く知りませんが。

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