参議院 環境委員会議事録(2000.3.14)より転載  ○緒方靖夫君 私が質問したのは昨年の十一月、その後、調整池、これは建設省に調べても  らっても全国で幾つあるかわからない。今カウントしています、一生懸命。全国で万単位あ  るんですね。大変な数です。ですから、本当に今大臣が言われたように大問題ですね、これ  は。それが勝手に埋められるという、そういうことが行われるということは。それで、これ  はちょうどその問題の地域の町田市における埋められた調整池の現況、十一カ所、昨年の十  二月から三月までの間にどういうふうに変貌したかということについて写真で示したもの  で、大変恐縮ですけれどもこれを大臣にお渡ししたいと思いますので、済みませんけれども  これをぜひ見ていただきたいと思います。それで、この問題で私がつくづく思うのは、どん  どん事態が進行するんですね。ですから、六月ということを期待しておりますけれども、そ  れを待たずに、やはり今の現状がいかに深刻か。だって、大臣、考えてみてください。そば  に調整池があって、そこがある日突然埋められて、そこに住宅が建つ。河川改修は何も進ん  でいないのにそれが行われる。こんなことがやたらに行われたら、本当に周辺の方々は非常  に不安になるわけですね。これは当然だと思います。そういうことが次から次へと起こって  いる。ならば、私は思うわけですけれども、先ほど大臣は、現場の方々とフランクに話し合  うんだ、それからまた現場を視察されるということを言われました。私も大臣のそういう姿  勢についてはさすがだと、行動派だということは感じることが多くあります。そこで、私は  大臣に、忙しい大臣ではありますけれども、ここからそう遠くありません、ぜひ現場を見て  いただきたい。そのことを要望したいんです。  ○国務大臣(中山正暉君) 確かに、安い土地をどうつくり出してどうもうけるかという人  た ちが安易に調整池みたいなものを埋め立てて住宅に提供するということで、本当にこれ  はそういう軟弱な土地を住宅地にする。それからまた、湿気が多い日本でますます湿気が多  いでしょうし、そこは水がたまるような宿命の地でもあるかもわかりませんので、その意味  ではこれは健康上の問題、そこに後に住む人の問題とか、それから周辺はそれがなくなった  ためにとんでもないところへ水があふれるとか、いろんなことが起こってくると思います。  そういう自然の条件に先人の知恵でつくった調整池みたいなものに対することは、先ほど先  生がおっしゃったようにこれはたくさんの数があるものですから、六月でも早いくらいかな  と思いますが、できるだけ鞭撻をいたしまして御趣旨に沿うようなことにいたしたい。ま  た、役所の皆さんと相談をして、また先生とも御連絡をしながら、今おっしゃったような問  題の箇所というのは、私も現地へ行くことを心がけて、足を満たすと書いて満足と書くと私  はいつも言っておりますが、そういうふうに現場に入る、百聞は一見にしかずでございます  ので、そういうことに取り組みたいと思っております。  ○緒方靖夫君 お忙しい大臣がそういうお言葉を述べられたということを重く受けとめまし  て、次の問題に移ります。次に、旧有明貯木場の埋立問題、これが今大きな問題になってお  ります。今月の七日に、やかた船の組合や大勢の方々が海上デモをしたということでテレビ  等々でも報道されました。この事業そのものは東京都の事業なんですけれども、そして都知  事が二月二十四日に運輸大臣に認可申請を提出しているものですけれども、何しろ有明の貯  木場というと、現地の人たちは十六万坪と呼ぶ、三十五ヘクタールあるわけですけれども、  東京湾に残された最後の自然の楽園、そう言われているところなんです。そこを埋め立てて  何をするのかというと、これは国の事業じゃありませんからここで問題を提起することがど  うか私も迷いましたけれども、あえて問題提起させていただきたいんです。そこに高層住宅  を建てる、周りに住宅がたくさんあるし、その候補地があるのに埋め立てて建てる、それか  らショッピングセンターをつくる、そういう件なんですね。ですから、当然自然破壊だとい  うことで、ここに私は持ってまいりましたけれども、「つり人」という私も愛読している雑  誌、これが毎号数十ページを割いてこの特集をしているんです。ですから、こういうプロ  ジェクトに対してどう考えるのかということについてきょうは議論させていただけたらなと  思っております。この問題について、東京湾というのは工業化とかあるいは高度成長の埋め  立てでずっと水質が悪くなった。昭和四十年代、五十年代、悪かった。それがその後ずっと  よくなってきたんです。やかた船の方が一番よく知っているんだけれども、昨年は一番よ  かった、ハゼ、フッコ、ボラが戻り、クルマエビもとれるようになった。そういうさなかに  これが起こるという問題なんです。私は、そういうことが結局は自然破壊を導くのではない  かということを非常に恐れるわけです。この間も、私は環境庁それから運輸省に何度かお尋  ねいたしました。一つお伺いしたいんですけれども、環境庁は、水質保全局編の臨海部にお  ける新たな空間の確保のために未利用地を有効利用する、そのために海面の埋め立ては抑止  する、東京湾の埋め立ては抑止するという方針を出されていると思うんですけれども、私は  いろんな問題があると思います。まずその角度から、こうしたことが果たして環境破壊にな  らないのかどうか、その点について端的にお伺いしたいと思います。  ○政務次官(柳本卓治君) 実は、緒方先生、私も有明の江東区の問題については興味を  持っております。と申しますのも、昭和三十八年に大学に入りましたときに私の友人が江東  区に住んでおりまして、当時は公害の町、水害の町、夢の島といって騒がれたところであっ  たわけですけれども、その後、埋立事業でそれもなくなりまして、公園面積も昭和四十年代  の〇・七六平米が現在では十平米を超して、十数倍の公園面積を持って、町もよくなったわ  けです。それが、埋め立てたからよかったかというような議論は別にして、しかし私自身と  しても実は大阪の市内の選出でございまして、いわば埋め立ての中で都市生活をしている住  民でございますから、願わくば自然環境を残せるものは残していきたい、そういう意味で環  境行政に携わっている一員でもございます。御指摘のように、有明の貯木場の埋立事業につ  きましては、東京都が公有水面埋立法に基づく認可申請を行っているところでありますし、  東京都の計画によれば、その埋立面積は三十五・二ヘクタールでございまして、環境庁長官  意見の聴取が必要とされる五十ヘクタール以下の規模であることから、環境影響評価に関し  て環境庁が関与する規模のものではございません。しかし、地元である東京都においてこの  問題が検討されていると聞いておりますので、環境配慮においては十分に地域の意向等も踏  まえて善処してほしいと願っているところでございます。  ○緒方靖夫君 確かに五十ヘクタール未満の事案でありますけれども、しかし同時に、公有  水面埋立法施行規則によると、これは第三十二条ノ二に当たりますけれども、「面積五十ヘ  クタールヲ超ユル埋立及環境保全上特別ノ配慮ヲ要スル埋立」については環境庁の長官が意  見を述べることができる、また述べるという規定があるわけです。ですから、私は率直に  言って、この規定に基づいて、また先ほど述べたような東京湾の埋め立てを抑止するという  そういう条項があるわけですから、私は環境庁として物を言う、それは当然ではないかと思  います。  ○政務次官(柳本卓治君) ただいまの御指摘の点につきましては、干潟とかという次元の  問題でないのではっきりとお答えはできないわけでございますけれども、環境庁としても非  常に状況において把握をして善処したいと願っているところでございます。  ○緒方靖夫君 これは埋め立てのケースなんで、まさにこの事案にぴったりのケースです。  しかも、環境庁がよって立つところのこの法律の施行規則に述べられているわけで、私はこ  の規則に基づいて環境庁として意見を述べるというのは当然ではないかと思う次第です。も  う一つ、この事業が進むと道路問題が発生するわけです。関連事業として高速晴海線、環状  二号線、大型幹線道路ができるわけです。道路ができない現在でも、これは環境庁の資料で  すけれども、一般環境大気測定局の資料によると、日本全国の大気の二酸化窒素の一番悪い  のが江東区の有明になっているわけです。これは平成九年、平成十年ともにトップなんで  す。ワーストワンなんです。ただでさえもそういう状況のところに幹線道路が二本通る、こ  うした事態がどうなるのかということは非常にはっきりしております。ですから、私は、  今、政務次官が述べられたように、この問題について現時点でどういう大気汚染があるの  か。各種あります、NO2だけじゃない。それについてはやっぱりお調べいただくというの  は当然だと思いますけれども。  ○政務次官(柳本卓治君)ただいま緒方委員御指摘のように、東京都が例年二酸化窒素につ  いて江東区の有明、中央区の晴海、江東区の辰巳の計三地点で、浮遊粒子状物質につきまし  ては、これらの三地点と品川区の八潮の計四地点でそれぞれ測定を行っているところでござ  います。平成十年度の測定結果によりますと、そのすべての地点において二酸化窒素と浮遊  粒子状物質について環境基準が達成されていないほか、沿道における測定地点を除いた全国  すべての測定地点の中で、二酸化窒素では有明が一番目に、晴海が二番目に汚染水準が高う  ございまして、浮遊粒子状物質では晴海が全国で一番高くなっておりまして、東京都臨海部  の大気汚染状況は厳しい状況にあると認識をしているところでございます。  ○緒方靖夫君 そのとおりなんですよ。そのとおりで、それで新しく二本の幹線道路が関連  事業として通ったときに一体どうなるのか、非常にはっきりしていると思うんです。東京都  が行った環境アセスがありますけれども、いずれの地点でも、これは二酸化窒素の場合です  けれども、環境庁の基準の一日平均〇・〇六を下回る、そういう数値が並ぶんです。本当に  不思議だと思います。ところが、現時点で、これは自治労連都職労の港湾支部がずっと測定  しておりますけれども、そこでは例えば豊洲公園付近では〇・一二二ppm、これは環境基  準の二倍以上のそういう数値が出るわけです。そういうことを見ていったときに、今、政務  次官が言われたように、ここの大気汚染というのは現状でも大変ひどい、それがもっとひど  くなるかもしれないというそういう事案なわけです。水質においてもそうだ。大気汚染にお  いてもそうだ。それから、もちろん景観においてもそうです。そうすると、これは環境庁の  存在意義が問われると私は思うんです、率直に言って。ですから、ここで物を言わなけれ  ば、環境庁というのは一体どういう役所なのかということになってしまうのではないかと思  います。その点で、環境庁として先ほどの施行規則があるわけですから、やっぱりこうした  ことに基づいて五十ヘクタールに満たないといえども、やはりきっちりと意見を述べる、こ  れが当然だと思うんですけれども、改めて政務次官、環境を守るという、その行政を預かっ  ている立場からの御所見を伺いたいと思います。  ○政務次官(柳本卓治君) まさに私は、そういう政治信条で環境行政というものを遂行し  ていかなければならないと思っております。短期間の任期中でございますけれども、既に大  気汚染の問題におきましては環状七号線の板橋の大和町の交差点を視察いたしまして患者の  方々と懇談もさせていただきましたし、西淀川ではあおぞら財団の森脇さんなんかと一緒に  話もしていろいろと積み重ねもさせていただきました。これは、少なくとも地域の皆さん方  から訴えられることのないように努力することが政治の責任であるとも考えております。  今、先生御指摘されました大気汚染の今後の取り組み方法でございますけれども、私は当  然、自動車からの排出ガスによる大気汚染の問題は緊急な問題で強力に取り組んでいかなけ  ればならないものだと思っております。このため、自動車単体対策として、中央環境審議会  において、ディーゼル自動車に関しましては平成十四年度から十六年にかけまして現行から  排出ガスを約三割削減し、平成十九年ごろをめどにさらに半減することが提言されておりま  すし、環境庁といたしましても先月の二十二日、石油連盟会長においては硫黄の対策及び自  動車工業会の会長に対しては技術革新の問題において技術開発の促進を要請したところであ  ります。平成十九年度をめどに、規制強化時期の前倒しを含めまして、今後とも一層強力に  取り組んでまいる所存でございます。また、自動車単体から排出される粒子状物質対策とし  て、ディーゼル廃棄物、排気微粒子除去フィルターにつきまして早急に技術評価を行うこと  としておりまして、そのための検討会を今月の三日に開催したところでございます。これら  の取り組みに加えまして、現在自動車NOx総量削減計画の点検、評価を行っておりまし  て、車種規制によるディーゼル自動車のガソリン自動車への代替義務づけ、ディーゼル乗用  車のより実効ある抑制方策、低公害車の一層の普及を図るための制度的な普及方策、交通流  の実効ある抑制方策等の自動車NOx対策の充実強化について検討しているところでござい  ます。  ○緒方靖夫君 いずれにしても、環境庁はしっかりこの問題について対処していただきた  い、このことを要望しておきます。さて、運輸大臣、この問題で東京都から認可の申請が出  されているわけですけれども、これは受理されているわけですか。  ○国務大臣(二階俊博君) 埋立事業者であります東京都から、免許権者である港湾管理  者、東京都に対し出願がなされたのは昨年の八月十一日でございます。東京都はその後、公  有水面埋立法に基づき審査を行い、免許をし得ると判断したことから、去る三月十日に運輸  大臣への認可申請がなされたところであります。運輸省としましては、この認可申請を受  け、今後認可庁として公有水面埋立法に基づき慎重かつ適切に判断をしてまいりたいと思い  ます。委員御指摘のことは、十分念頭に入れて対処したいと思います。  ○緒方靖夫君 東京都は、開発スケジュールがおくれるということで、大臣のところに届い  ている申請に書かれた内容を後で変更するということさえも言っているわけです。私は、そ  れは非常にずさんな話だと思うんです。国に対してそういうものを出しながら後で変更を予  定しているということ、そのくらいいい加減だということを私は述べておきたいと思うんで  す。そして、恐らく大臣にはいろんな方々の声が届いていると思います。したがって、今言  われたように、さまざまな環境問題等々勘案していただいて、この問題に対しては慎重に国  土また環境をきちっと守るということを含めて住民本位で対処していただきたい、このこと  をお願いしておきたいと思います。 ○国務大臣(二階俊博君) 私は、規模の大小にかかわらず環境問題に配慮することは当然  のことだと思っておりますので、仰せのように慎重になお適切に対処したいと思っておりま  す。  ○緒方靖夫君終わります。