GLAD TO MEET YOU! -風の中の声-

石川 正己


 はじめまして。僕の名前は石川正己。埼玉県上尾市在住。30才。職業、地方公務員。ライフワーク、ギター片手に唄を歌うこと。

“ROOK’N ROLL”IS STILL ALIVE!!

 今年1月の終わり、僕は江古田のライブハウス“マーキー”に行った。終演後、出演していた友人の倉田君から打ち上げに誘われた。幾人かの人々との薪たな出会い。“けんま”のことを知ったのもそのときだ。ラッキーな出来事だった。
 高校生の時、クラスメイト数人と同人誌のようなものを作っていたことがある。あの頃のことを思い出したよ。みんなそれぞれ言いたいことを勝手気儘に発表しては、意見や感想を交換していた。僕は流されたくないって思っていた。そして、もがいていた。甲斐バンドとRCとガールフレンドが教えてくれたジョン・レノンのナンバーが、いつだって心の中で鳴っていたよ。当時の僕を支えてくれていたんだよね。今でもそんな歌達が、何気なくっけたラジオなんかから流れてきたりしたら(例えば、ジョンのスタンドバイミー)、もう空気みたいなものが蘇ってきてしまって、胸の辺りがキューンとなってしまう。ギターを手に人れたのもその頃だ。夜中だろうが弾きまくり、両親とも激しくぶっかっていたな。部屋のブレーカーを落とされてしまったり…。もう1O年以上も前のこと。

 それからいろいろなことがあったけれども、その時その時感じたこと、思ったことを日記を付けるように、また詩の断片などをノートに綴ってきた。そんなノートが何冊か蓄まっている。あまり昔のものを読み返すと恥ずかしくなるけど、10代の頃盛じていたものも、心のヒットチャートもあまり変わっていない。ただあの頃は、これからどうなるのだろう?これから何処に行こう?という行くあてのない不安や焦燥感が、渦巻いていたのだけれど、今は少し遠う。今いるところが、自分のいるべき場所だ、ここからはじめなければって気がしているんだ。ここには全てがあるし、日常のありふれた、当たり前で誰も気にも止めないようなことの中に、美しい奇跡はあるってことを知っているから。
 それでは、前置きはこのへんでやめにして、昨年の暮れに書いた詩“メロディ”(作曲は友人のピアニスト・松崎英理子さん)をどうぞ。季節は真冬。今は花咲き誇る春だから、ちょっとずれてるけど、ま、いっか。


     ♪ MELODY

あなたとどこかで 出会っただろうか? なんだかとても 懐かしい

いつか失くした 大切な切符 やっと見つけた そんな気分

破れたポケット かじかんだ両手 白い息を吹き付けて 暖めながら

 ずっと待っていた あなたのことを

 ずっと待っていた あなただけを

あなたと目と目があったとき なんだかとても ほっとして

「ただいま」なんて 素直に言える 家に帰った そんな気分

あなたの指先 触れたとき 凍えた心も 癒された

 ずっと待っていた あなたのことを

 ずっと待っていた あなただけを

今夜 辿り着いたこの街に 天使たちが奏でている

光のメロディ やさしく舞う 雪のように降りてくる

破れたポケット かじかんだ両手 白い息を吹き付けて 暖めながら

 ずっと待っていた あなたのことを

 ずっと待っていた あなただけを


 これは出会いの詩。誰かに出会ったとき、初対面なのに、「ああ、この人のこと知ってる。どこかで会ったような気がする。」という感覚になったこと誰にだってあると思うんだ。“ソウル・メイト”。君だったんだねって感じかな。

 出会いといえば、別れもある。1月11日、敬愛している母方の祖母が、千葉県習志野市の病院で癌のため他界した。僕は彼女の最期に立ち合った。最後まで、しっかりしており、僕のことを心配してくれていた(僕は足に少しのハンディキャップがある)。呼吸が止まり、脈が途切れ、だんだん冷たくなっていく彼女。病室には、その日聴かせてあげようと思って持っていったラジカセから、讃美歌312番が静かに流れていた。
 葬儀は、深い悲しみとともに、参列した人々のたくさんの“ありがとう”が溢れるものだった。
 祖母からは、本当に大切なことを教えてもらった。それは、ありふれているかもしれないけど、家族を愛し、人生を前向きに生きること。そして、すべてを感謝する気持ち。それが、彼女の人生哲学だったと思う。『誰かにいじめられても、決してやり返しては駄目だよ。悪い心を起こしては駄目だよ。』と僕によく言っていたものだ。
 先日は、49日の法要で静岡に行ってきた。幼い頃、、毎年夏休みになると遊びに行った静岡だ。納骨を済ませた後、“おばあちゃんち”があった場所にも足を伸ぱしてみた。そこは、空き地になっていて、車が2台止まっていた。
 過ぎ去っていくものは幻なのか、朽ちていくものは偽りなのか、目に見えるものだけが真実なのか?僕にはそうは思えない。永遠に変わらないものがあるはずだ。理屈ではうまく書えないけれど、気休めではなく、彼女とはまた会える気がしてならない。天国って遠い雲の上にあるところではなくて、きっと今いる、ここなんだと思う。だから、さあ、心の耳を研ぎ澄まそう。きっと聞こえてくるぞ、どこか懐かしいあの光のメロディが。
 あぁ、彼女がいなければ、僕はいなかった。そう考えるならば、あらゆる人が、ものごとが、無関係でなくなってくる。なんか繋がっているような気がするんだよな。僕が今まで出会ったどんな人も、お互いに必要な、かけがえのない人たちだったのだ。世界は、そんなふうに出来ているんじゃないかな。だから、これからの出会いも、別れも、大切にしたい。

 僕は家に帰ってきて、一遍の詩を書き上げ、彼女に捧げた。


     *君といた夏

遥か彼方から 風はやってきた 草原を光らせ 波の音響かせて

あぁなんていい匂い・・・立ち昇る大地の 君の髪のような やわらかな香り

 どこまでも歩いたね あの夏の夕暮れを

 どこまでも歩いたね 手をつなぎ夕暮れを

 川のほとりに建っていた 輝ける君の家

遥か彼方から 風はやってきた 子供たちの笑う 声が聞こえる

甘酸っぱい葡萄 口いっぱい頬張り みんな大好き ピアノのある部屋

 いつまでもこのままで いられたらって 思っていた

 いつか 僕らはバスに乗って 帰らなくちゃね

 川のほとりに建っていた 輝ける君の家

遥か彼方から 風はやってきて 愛する君をさらっていくよ

どこまでも僕ら 一緒に行けると 教えてくれる 君との別れさ

 どこまでも歩いたね あの夏の夕暮れを

 どこまでも歩いたね 手をつなぎ夕暮れを

 川のほとりに建っていた 輝ける君の家 いつまでも変わらず


追記。 祖母が亡くなった日、夜遅く電話が掛かってきたんだ。兄夫婦にはじめての赤ちゃんが授かったという報せだった。電話越しに僕は、涙した。その時になって、堰を切ったように涙があふれてきた。神様はなんて粋な計らいをしてくれるんだろう。

最後まで読んでくれて、どうもありがとう。またいつか。


INFORMATION

 僕が今活動しているユニット「ASIAN FLOWERS」のファーストアルバムを年内目標に自主制作予定!(本文中に収録した“メロディ”も収録予定。きっと実現するさ。その時は、また御案内します。乞う御期待!)

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