infection 私の愚かな病は
だんだんひどくなっていくばかり
「はあっ・・・はあっ・・・・っく・・・!」
勢いよく蛇口から水が流れてゆく
今にも水は洗面台から溢れていきそうだった
ふと鏡を見ればそこには弱りきった目
蒼白になった顔
醜い自分が映っていた
ゆっくり鏡に手を伸ばす
指先にこびりついた血のシミが鏡にうっすら残る
「・・・・っくそ・・・・!」
鏡を叩き割ろうとしても拳に力は入らない
そのままズルズルと床に落ちてゆく
床に跪いてゆっくり目を閉じる
勢いよく流れる水の音がなぜか心地よく聞こえてくる
うっすらと消えていく意識のなかに映るのは
この世で一番愛しい人
いつの間に私は
こんなに弱くなったのだろう―――――
「ロックハート先生!」
自分の名を呼ぶ声を耳にすると、ロックハートはゆっくり後ろを振り返る
ぼんやりとした意識のなかで、ロックハートはスネイプの姿を見る
自分のもとに駆け寄ってくるスネイプをぼーっと見つめながら
ロックハートは体の向きを変えた 少し息を切らせながらスネイプはロックハートの前で止まる
「これ!マクゴナガル先生から預かった書類です」
スネイプはロックハートにぶ厚い書類を手渡す
「あ・・・・そう・・・ですか・・・」
力のない声でロックハートは書類を受け取る
いつもより力のない声で応答するロックハートにスネイプはムッと顔をしかめる
「・・・・?どうかしたんですか?顔色少し悪いですけど・・・」
スネイプは覗き込むようにロックハートの顔を見る
整った綺麗なロックハートの顔は少し青白く、熱っぽかった
「あ・・・いえ。何でもありませんから」
ロックハートはにこりと微笑む
「・・・そうですか」
スネイプは少し顔を赤らめながら、安堵の表情を浮かべる
丁度その時、授業開始のベルがホグワーツ中に鳴り響いた
「・・・・・・じゃあ私はこれで」
そう言うとスネイプはロックハートの横をすっと横切っていった
スネイプの姿が見えなくなるとロックハートは小さく微笑を漏らす
だがその時
「くっ・・・・!」
バサバサバサと書類が床にぶちまかれた
ロックハートは跪き、両手を床にバンッと押し付ける
全身がガタガタ震え、顔からみるみる血の気がなくなっていく
「ぐっ・・・・ごほっごほっ・・・・・!」
ロックハートが重く咳き込むとパタタと床に鮮血が滴り落ちる
ゆっくり手を口元から離していくと、手のひらは血だらけだった
その量は昨日吐いた血とは比べ物にならないくらい多かった
「はあっ・・・・・・はあっ・・・・・・はっ・・・・」
近くの壁にズルズルと近寄り、よっかかると、ロックハートは浅く呼吸を
繰り返した
「・・・・・っ畜生・・・・!」
ロックハートは未だに震える膝を押さえつけると、ゆっくり立ち上がる
「くそっ・・・・!」
壁を強く叩きつけると、ロックハートはよろよろと歩き出す
床には点々と
真っ赤なシミの痕があった
・・・NEXT
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