***ただいま愛の診療中
「まったく何やってんですか!?」
保健室に威勢よくスネイプの声が響く
だがスネイプの声は保健室にだけ響いているわけじゃない
「そーでかい声出さないでくださいよぉ、スネイプ先生・・・」
スネイプの声はロックハートの頭の中にもガンガン響いていた
事の始まりは3時間目のスネイプとの合同授業であった
スネイプは朝からロックハートが気になっていた
少し赤く熱っぽい顔
額にじんわりと滲んだ汗
フラフラとした歩調
ロックハートは生徒達や教師達にはいつもどおりの態度をとっていた
しかしスネイプにはすぐにわかった
ロックハートの調子が悪いとゆうことを
そしてロックハートはとうとう倒れた
3時間目の授業中に
スネイプはとりあえず近くの教室で授業をしていたマクゴナガルに生徒達を任せ、
ロックハートを保健室に運び込んだ 運び込む途中、ロックハートの体温が異様に上がっていくのをスネイプはすぐに感じ取れた
そして何とか保健室に辿り着き、ロックハートをベットに寝かせたのだ
ロックハートが目を覚ましたのは倒れて30分ほど経ってからだった
そしてロックハートが目を開け、意識を取り戻したと同時にスネイプはロ
ックハートに勢いよく怒鳴りつけた
で、今に至る
「まったく・・・。自分の体調のこと気にしないんですか、貴方は」
「しょーがないでしょ・・・。一応私も教師なんですから。そう簡単には休め
ませんよ」
スネイプは小さく溜息をついた
スネイプの思ったとおり、ロックハートは風邪をこじらせていた
しかも熱は38℃
こんな体になってまでどうしてこの人は―――――。
「・・・・・・とにかくもう無茶はしないで下さい」
その言葉を聞いたロックハートはすっと腕を伸ばし、スネイプの頭をポン
ぽんと優しく叩いた
「・・・・・・ハイ」
ロックハートの一瞬だけ浮かべた微笑みにスネイプは胸を高鳴らせた
そしてはっと我に返ったスネイプはロックハートの腕を退ける
「あ。そう言えばロックハート先生、お昼食べてないでしょ?さっきマクゴ
ガナル先生がいろいろ差し入れくれたんですよ」
そう言いながらスネイプはガサガサと床に置いていた袋から何かを取り出していた
ロックハートはぼんやりした意識の中、ゆっくり体を起こした
「ゼリーですよ。ほら。いっつもロックハート先生が食べてるやつです」
そう言うとスネイプは袋の中に入っていたスプーンを取り出し、ゼリーの
蓋をぺりっと剥がす
ロックハートの鼻に一瞬だけ、甘い果物の匂いがついた
「ほら。食べてください」
スネイプはずいっとロックハートの口元にゼリーを突きつける
「あ、いいですよ。私まだ食欲ないですし・・・」
だがスネイプは一向に怯む気配を見せない
「だめです!さあ、食べてください!」
しかしロックハートはまだ体がだるく熱いため、食欲がない状態だ
「いいですって。後で食べますから。ね?」
ロックハートはスネイプの顔をちらっと覗き込みながら子供をなだめるように言った
だがスネイプはうつむいたまま何の反応も示さない
しばしその場に、沈黙が流れた
そして最初に口を開いたのはスネイプだった
「・・・・・よくわかりました」
やけに重い口調で呟くスネイプにロックハートはぱちくりと目を見開く
「こうなったら力ずくでも食べさせます」
そう言うとスネイプは勢いよくゼリーを口に含んだ
ロックハートが声をあげようとしたその時
スネイプはロックハートに深く口付けていた
ロックハートが微かに口を開くとスネイプが口に含んだゼリーが流れ込
むように侵入してきた
ロックハートはそのまま噛まずにゼリーを飲み込んだ
口の中にはほんの少しではあるが林檎の味がした
ロックハートがいつも食べているゼリーの味だった
「・・・・・・・スネイプ・・・・・・先生・・・?」
ロックハートは真っ赤になってスネイプを呼ぶ
「・・・・・何ですか」
スネイプもロックハート同様顔を真っ赤にしながら呼びかけに答える
「えっと・・・・今のは・・・・」
スネイプは顔を下にうつむいたままロックハートの結んである髪をぎゅっと握り締めた
普段滅多にしない行動にロックハートはびっくりする
「・・・・スネイプ先生?」
ロックハートの声が元に戻る
その声は、スネイプがいつも聞いているあの優しい声だった
スネイプはロックハートの首に手を回し、肩にぽすっと顔を埋める
そしてぼそりと呟いた
「・・・・・・・・・・・・・・・ここにいてください」
スネイプの言葉はそれだけだった
だがロックハートはすぐにその言葉の意味がわかった
恋人だからこそわかりあえる言葉
ロックハートもスネイプと同じように呟くように答えた
「・・・・ハイ」
セブルス・スネイプ
ギルデロイ・ロックハート
ただいま愛の診療中――――――。
FIN
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