「だからぁ!嫌だって言ってるだろう!好い加減話を聞け!」

「何で嫌な訳?セブルスは僕がこれに乗じて襲うとでも?」

「……なっ!…なんて事を言うんだ!絶対貴様とは出かけない!」

それは…夏休みの前日の事だった。

ジェームスのこんな提案があったのだ。

「冬休みに家に帰らないし、夏休みに家に帰っても家族が嫌で部屋に篭ってるらしーじゃない?
だったら、僕と一緒に旅行行こうよ!夏なんだし、海行こう海!勿論ホグワーツ付近の魔法使っても良い地域でさ!」

セブルスは必死の抵抗を続けて居るのだが、ジェームスは強かった。

「貴様一人で行って来い!もしくはリリーと行って来い!」

「やだぁ〜セブルスと行くんだ〜!」

「…リリー!もうこいつヤダぁ!早く何処か回収してよこんの馬鹿!!」

最終的にはセブルスの悲鳴に聞こえてきたが…リリーはそんなセブルスをにこやかに見ながらこう言った。

「魔法使ってって言う事は…箒に乗っても良い地域って事よね…良い所があるわよ。教えて上げる。」

セブルスはそんなリリーの台詞に、空いた口が塞がらんと言う表情。

まさに、鶴の一声…。

 

夏休み

 

 「…なんで…僕が貴様とよりにもよって海なんかに…」

セブルスは未だブツブツ言っている。

「第一、海に行ってもやる事なんて無いじゃないか…」

ジェームスは隣でカラカラ笑いながら「ニホン」と言う国で夏に食べると言われている
「氷を摩り下ろしてシロップをかけて食べる食べ物」を、ノンビリと食べている。

「セブルス〜もう好い加減諦めなよ。折角来たんだし、遊ぼう!」

「馬鹿か!学生の何処に遊ぶ時間が有る!」

「全部。」

「……」

絶句するセブルスに、畳み掛けるように話すジェームスは何時にもまして生き生きしている…

「だって知ってる?「ニホン」って国じゃ夏休みに「宿題」が…まぁこりゃあ沢山出るんだよ?
僕達はそれと比べて多少で済んでるじゃない?
だから僕達は少なくとも「日本」の「学生」よりかは遊んで良いって事じゃないか。…解る?」

「……」

「ね?」

「……ボソボソ」

「はい?どうしましたセブルスちゃん〜?」

「誰がニホンと比べて良いと言ったのだ馬鹿者〜たわけ〜痴れ者が〜!」

セブルスの怒りは表現するとなると…「怒髪天をつく」

さて、この二人は一体どの様な状況になっているか。

ジェームスの「一緒に旅行行こう説得すぺしゃる」を、リリーの一言で承諾した(強制)セブルスは、終了式後、ジェームスに

半ば「連れ攫われる」ような状況で電車に乗り込み、9と3/4のプラットホームに着いたと思ったら違う電車に引き摺られて行ったのだった…。

そして、二人で結局電車に乗っている…

セブルスは結局「何処へ向かっているのか」「何をしに行くのか」を聞かされていない。

知っているのはジェームスのみ。

そら、不安で文句も言いたくなるわ。

で、等のジェームスは。

「ニホン」の「コオリ」をガツガツ食べてたと思ったら、ノヘーンと眠り扱けている。

「……」

疑問に思い、セブルスは適当にジェームスの顔をつついたり叩いたり脛を蹴ってみたりしたが…。

起きない。

「……逃げようかな。」

そう思ってセブルスが立とうとすると…立てない。……ふと見るとセブルスは自分の服の裾を捕まれている事に気付く。

「あぁ〜…とことん迷惑な男だ…」

諦めてセブルスはジェームスの隣に座る、そしてジェームスの方を眺めてみる。

別に特別美形と言う訳でもないが、結構整った顔をしているし…成績も良いが別に気取っている傾向も無い。

性格は簡単に表現すると「良くも悪くも悪戯小僧」といった感じで、悪い奴ではない……といわれている。

性格も顔も良い方なので、結構女子生徒には人気が有る。

寧ろどんな人でも「ジェームス・ポッター」と言う人の事を悪く言う奴は居ないだろう。

…自分以外は。

それなのに、何故自分にちょっかいを出してくるのだろう。

セブルスには解らない事だらけだ。

平和そうな顔をして、眠っているジェームス。

その横っ面を引っ叩いてやろうかと手を伸ばしたが、その手は自然にジェームスの頭を撫でていた。

「……解らないなぁ…どうして何時も何時も「嫌いだ」って言ってるのに…諦めないんだろう?」

ジェームスの黒髪は、撫でていると初夏の光に反射する。

「でも、仮にこいつが諦めたとしたら…僕はどうなるんだろう。」

何時も何時もジェームスがセブルスにちょっかいを出してくる為、セブルスは自分のクラスメートと会話をしている暇が無い。

それに、セブルス自体が会話を余りしない為、クラスから少々浮いているのは事実だ。

「…寂しく…なるかな。」

そこまで言うと自分の台詞が恥ずかしいのか嫌だったのか、セブルスはジェームスの頭を撫でるのを止め、とりあえず頬を伸ばしてみる。

しかし、ジェームスは「ほえ〜」とか何とか言った後、結局眠っている。

「あぁ〜もう!こいつのせいで僕の夏休みが潰れてしまう…もう僕も寝てやる…」

そして、平和そうに寝ているジェームスの肩に寄りかかって「ま、こんな奴でも枕にはなるな…」といってセブルスも寝てしまう。

セブルスが眠り始めた直後、ジェームスは目を開ける。

そしてジェームスに寄りかかりながら眠るセブルスを眺め、ちょっと抱き寄せて又目をつぶる。

「素直じゃないねぇ。」

と一言残して。

 

End