大きく分けて「粒餌」を与える方法と「ペレット」を与える方法があります。「粒餌」はヒエ、アワ、キビ、カナリーシードなどを主体にした穀物食です。それに対して「ペレット」は、トウモロコシ粉などを主体にして不足する栄養素を補って固めたものです。それぞれに長所も短所もあります。それぞれの長所と短所を簡単に書いておきます。
[粒餌]
(長所1)鳥自身が選択できる
(長所2)自然に近い食餌を追求できる
(長所3)手に入りやすい
(長所4)飼育者が餌の質を検査可能である(発芽試験をすれば良い)
(短所1)粒餌以外に補助食品を与える必要がある
(短所2)バランスをとるのが難しい
(短所3)鳥に嗜好の悪さがある場合、バランスがくずれる可能性がある
[ペレット]
(長所1)それ自身で完全食品と考えられる
(長所2)したがってバランスが既にとれている
(長所3)したがって鳥の嗜好の悪さを無視できる
(長所4)飼育の手間が省ける
(短所1)手に入りにくい
(短所2)飼育者が餌の質を検査するのが難しい(商品の表示、流通や保管などを信頼するほかない)
(短所3)食餌が単調である(少なくとも飼い主からはそう見える)
私はずっと鳥には粒餌でやってきましたが、いろいろと食餌の工夫をするのが楽しかったからです。したがって、粒餌の短所である、補助食品を与える煩わしさも、ある意味では長所たりえたわけです。また、ペレットを選択しても、食餌の工夫は可能です。副食として色々なものを与えれば良いのです。ただし、その場合、ペレットの長所である完全食・バランス食というのが多少は崩れます。そう言う意味で、上に整理した長所と短所というのは、あまり一律には扱えません。粒餌の副食としてペレットを与え、好むようなら、ペレットに移行していっても良いです。あまり硬直的に考えないで良いように思います。粒餌かペレットかという選択よりも、幾つか大事な点があるように思えてなりません。飼い主と飼鳥が楽しく毎日を過ごせる食餌を与えれば良いと考えます。鳥と遊ぶのは好きだけど世話がどうにも負担に感じるなら、ペレット一本で育てて、その分遊んであげたら良いし、私のように色々工夫するのが好きならば、粒餌と補助食品のバランスを楽しんで下さい。
粒餌食の具体例
まず、粒餌には「ムキ餌」と「皮付き餌」がありますが、普通は「皮付き餌」を使って下さい。「ムキ餌」は、皮を取ってあるので、糠の部分もある程度落ちてしまっているのです。糠の部分にはビタミン類が豊富ですから、「皮付き餌」の方が良いとされています。ただし、ビタミンとタンパク質を表面にコーティングして、穀食の弱点を補う場合、皮付きでは皮にコーティングしてしまうので意味がありません。そういう餌を選択したい場合は、「ムキ餌」になります。クチバシが欠けていて「皮付き餌」が食べにくい鳥や、ヒナから一人餌への移行時期などは、こうした「ムキ餌」の方が適しているかも知れません。
うちで現在与えている「ムキ餌」は、西種商店の「小鳥屋さんの餌」とペッズ石橋の「オカメインコ」というものです。どちらも数種類の粒餌を配合したものです。私自身は前者を好んでいますが、オカメたちは後者の方を好んでいるようです。
見たところ、前者に含まれている餌は「ヒエ、アワ、キビ、カナリーシード、ニガーシード、エゴマ、オート麦」で、後者に含まれているのは「ヒエ、アワ、キビ、カナリーシード、オート麦、ヒマワリ、サフラワー、ペレット」です。
うちで与えたことのある粒餌の成分表を書いておきます。
蛋白質 | 脂質 | 糖質 | カルシウム | リン | ビタミンA | ビタミンB1 | ビタミンB2 | |
100g中 | g | g | g | mg | mg | IU | mg | mg |
ヒエ | 9.3 | 4.8 | 61.3 | 33 | 330 | 0 | 0.40 | 0.10 |
アワ | 9.9 | 3.7 | 63.5 | 21 | 240 | 0 | 0.40 | 0.10 |
キビ | 12.7 | 3.8 | 57.1 | 20 | 270 | 0 | 0.40 | 0.10 |
カナリーシード | (13.6) | (4.9) | (51.6) | ? | ? | ? | ? | ? |
オート麦 | 13.5 | 5.6 | 66.5 | 30 | 360 | 0 | 0.20 | 0.08 |
ニガーシード | ? | ? | ? | ? | ? | ? | ? | ? |
ヒマワリ | 19.9 | 56.4 | 14.4 | 95 | 540 | 0 | 2.10 | 0.24 |
エゴマ | 17.7 | 43.4 | 15.2 | 390 | 550 | 0 | 0.54 | 0.29 |
麻の実 | 29.5 | 27.9 | 9.2 | 130 | 1100 | 11 | 0.35 | 0.19 |
サフラワー | ? | ? | ? | ? | ? | ? | ? | ? |
カボチャの種 | 27.0 | 51.8 | 10.1 | 44 | 1100 | 24 | 0.21 | 0.19 |
大豆 | 35.3 | 19.0 | 23.7 | 240 | 580 | 0 | 0.83 | 0.30 |
表を見ていただくと分かりますが、オート麦までとそれ以下では、脂質の値が大きく違います。オカメインコの場合、前者のように脂質の少ない餌が基本食になります。ただし、セキセイなどよりは、脂肪を欲しがるので、後者の脂肪の高い餌(これを『高脂餌』と呼んでいます)も少しは与えてやります。特に冬場は、熱を消費しますので、少し多めに与えてやります。どれぐらいというのは難しいですけど、基本食に影響しない程度、10%かせいぜい20%程度まででしょう。
全般に言えることは、
1) 粒餌だけでは、ビタミンAが全く不足する。したがって、青菜で補う必要があります。
2) カルシウム:リン比が悪すぎる。カルシウム:リン比は、1:1から2.5:1程度、望ましくは、1.5:1から2:1が良いと言われています。どの粒餌も大きくリンに傾いており、ボレー粉やカットルボンでカルシウムを大幅に補う必要があることが分かります。エゴマは、卵詰まり防止になると言われていますが、このカルシウム:リン比が未だましなせいではないかと思います。
3) 表には載せていませんが、蛋白質の内、リジンというアミノ酸の成分比が大豆以外では悪すぎます。成鳥ではあまり大きな影響は出ないと思いますが、若鳥ではちょっと心配です。炒った大豆をうちではオヤツとしてあげていますが、リジン不足対策として何か策を講じたいところです。
4) 高脂餌はそれぞれ極端に脂肪分が高いので、要注意です。できれば、高脂餌は普段の食事とは別に一定量与え、採りすぎないように注意したいところです。特にエアコンの効いた部屋では、熱として消費することが少ないので、冬だからといって高脂餌を増量する必要はないと思います。
ポイントをまとめておきます。
ペレット
ペレットを主体にして鳥を飼育した経験がないので詳しくは書けません(^^;ゞ
是非MIYAさんのホームページのペレットの解説を読んでみて下さい。このホームページは大型鳥を対象にした物ですが、オカメ飼いにも非常に参考になります。
青菜
粒餌を用いる場合、上で見たように、青菜は必須となります。また、ペレットを用いた場合も、できるだけ与えた方がいいのです。青菜には次のような主な役割があります。
1)ビタミンAの補給。
しかも、ベータカロチンという形で摂取できるので、過剰摂取の害がありません。安心して与えられます。もちろん、ビタミンA以外の栄養素を補う役割もあります。
2)ストレス解消。
飼鳥の最大の遊び道具と思って下さい。見慣れない野菜の場合、驚くかも知れませんが、すぐに慣れてつつくはずです。このストレス解消の効果としては、果物もいいですね(もし食べれば)。
3)脂肪を排除。
すでに身についてしまった脂肪を排除する効果はありませんが、直前に食べた食物の脂肪分を摂取しにくくする働きがあります。オカメは高脂餌を欲しがるので、高脂餌をある程度与えながら、青菜も十分に食べさせるのが理想だと私は思います。
青菜として私が今まで利用したことがあるものは、次のようなものです。
カルシウム | リン | ビタミンA | ビタミンB1 | ビタミンB2 | |
100g中 | mg | mg | IU | mg | mg |
ダイコン(葉) | 210 | 42 | 1400 | 0.07 | 0.13 |
コマツナ | 290 | 55 | 1800 | 0.09 | 0.22 |
シュンギク | 90 | 47 | 1900 | 0.09 | 0.21 |
サラダナ | 50 | 44 | 780 | 0.05 | 0.12 |
チンゲンサイ | 130 | 33 | 830 | 0.04 | 0.09 |
シロナ | 140 | 49 | 1000 | 0.06 | 0.17 |
ニンジン(根) | 39 | 36 | 4100 | 0.07 | 0.05 |
レタス | 21 | 24 | 70 | 0.06 | 0.04 |
ハクサイ | 35 | 36 | 0 | 0.04 | 0.04 |
中毒例のある野菜や果物としては、パセリ、アボカドがあります。パセリは与えている人もいるようなので、実際には与えても良いかも知れませんが、中毒例のリストに載っているので止めておいた方が無難でしょうね。アボカドの果実それ自体は問題ないようですが、皮に中毒成分が含まれているようです。実験するのはやめておきましょう。アボカドに限りませんが、未熟な果実は控えておくべきです。植物の方としては未熟な物を食べられては意味がないので、未熟な物には大抵中毒成分が入っているからです。熟していさえすれば、問題ありませんので、そう神経質になる必要はありませんけど。また、かびた物は絶対にやらないように(あたりまえですね)。
ホウレンソウやフダンソウは、シュウ酸値が高いので、やらない方が良いとされていますが、非常にビタミンAが豊富なので、やる価値はあると私は思います。シュウ酸はカルシウムとくっつくので、カルシウムの摂取を妨害しますが、くっつくシュウ酸とカルシウムの比は1:2.25です。例えば、サラダ用ホウレンソウ(高原野菜のホウレンソウ)は、シュウ酸値が恐らく500mg/100gぐらい、カルシウムは55mg/100gぐらいですから、不足するカルシウムは、約167mg/100gです。この程度なら、普通にボレー粉やカットルボンを食べている鳥なら問題ないと思われます。また、常温で48時間放置しておくと、ホウレンソウのシュウ酸値は半分ぐらいに減ります(「高品質ホウレンソウの栽培生理」香川彰著、株式会社いしずえ、1997発行を参照)。ホウレンソウもやり方次第で利用可能だと思われます(実際に外国の飼育本には大抵、ホウレンソウとフダンソウが載っている)。まして、フダンソウはホウレンソウよりもシュウ酸値がずっと低いですし、実際にフダンソウを継続的にやっておられるブリーダーもおられます(「アニファ」96年12月号を参照)。ただし、シュウ酸カルシウムは結石の原因物質とされていますから、健康上の問題のある鳥には奨められないかも知れません。まあ、わざわざこれらの野菜をやることはないかも知れませんが、何もやらないよりは、ずっと良いということは知っておきべきです。
また、上の表を見れば分かりますが、レタスやハクサイはビタミンAを殆ど含んでいません。これらだけに頼るのはよくありません。
しかし、もっと大切なことは、いろんな種類の青菜をローテーションで与えていくということです。滋養分として未知な物も含めてそれぞれに独特の物があるかも知れませんし、逆に毒素として未知な物も含めてそれぞれ固有の物を持っているかもしれないからです。1種類だけに頼らないことが大事です。
強いてどれを一番推薦するかと言えば、私は『ニンジン』をあげます。ニンジンを輪切りにしてカゴの棒材に挟んでおくのです。他の葉物野菜と違ってニンジンは日持ちがしますし、非常に与えやすい野菜だからです。また、上の表で分かるように、ビタミンAも豊富です。また、他の葉物野菜が一貫してビタミン類が年々低下する傾向にあるのに対して(30年ほどの間に軒並みビタミンAは1/3から1/4に低下しています)、ニンジンはそれほど低下していません。この傾向はこれからも続くと思われます(葉物野菜は、アクを減らすために、栄養価はますます悪化することが予想されます)。