自然観察で我孫子を歩く
〜その3:冬の手賀沼遊歩道で,鳥と遊ぶ
「鳥と人が共存する町」を目指す我孫子市。その中核とも言えるのが,手賀沼のほとりに立つ「鳥の博物館」と,手賀沼親水広場周辺のエリアであり,手賀沼沿いの自然環境です。宅地にはなりえなかった斜面に残る林と沼沿いの低湿地が,新たな街づくりの拠点となったわけです。野鳥の数も種類も,昔に較べれば随分と少なくなっていますが,それでも手賀沼は野鳥の宝庫。特に冬になると,手賀沼やその周辺で越冬する鳥たちが増え,賑やかになります。今回は,手賀沼親水広場から手賀沼遊歩道をさらに東へと歩き,冬ならではの,手賀沼沿いの野鳥観察を楽しんでみます。
ここをクリックすると地図が出ます。
今回は手賀沼親水広場からスタートです。
(その2)の続きですが,ここから歩き始めるなら,我孫子駅から市役所までバスに乗るといいでしょう。バスを降りれば手賀大橋のたもと,親水広場の入口です。
親水広場では,水辺に行くと,いきなりカモの歓迎を受けます。このエリアでは餌をまく人が多く,カモ類,特にオナガガモが餌付けされています。餌をくれそうな人が来ると,こうやって陸に上がって催促します。……う〜ん……人なつっこいのは確かに,来訪者から喜ばれるけど,こうして餌付けされるのって,オナガガモとかユリカモメがほとんど。実は,他の鳥たちは追い出されてしまったんです。これを見て「鳥が増えた」と喜ぶのは早計です。「人と鳥のふれあい」と言う意味では成功なんでしょうけど,自然保護的には,あまり良くない状態でもあるわけで,どちらのメリット,デメリットも考えると,ちょっとばかり悩ましき餌付けなのです。
ここでは我孫子市の鳥,オオバンも餌付けされているんですが,人から餌を貰うオオバンって,他所ではあまり聞きません。
親水広場の端のほうから手賀大橋を望む。水が汚くなったとは言うものの,手賀沼では漁業が行われています。
1kmほど東へ進み,親水広場のほうを振り向いてみました。
湖岸の手賀沼遊歩道には桜並木が整備され,サイクリングやジョギングにも人気です。右側には市民農園があり,奥に藤棚が見えています。藤棚の向こうに「水生植物園」があり,「あやめ祭り」のときには賑わいます。「あやめ祭り」なのに,水生植物園に植えられているのは全てハナショウブです(苦笑)。……ま,細かいことにはこだわらないで,先へ進みましょう。
水辺のアシ原の向こうに,コサギが。
こういう場所には,色々な水鳥が隠れていたりします。
コガモもいました。
コガモはオナガガモと違って,餌付けされにくいカモです。人が餌をまくようになった場所では,オナガガモに追い出され,姿を消してしまいます。来訪者の多い親水広場エリアを避けるように,そっと水辺を泳いでいました。
おや?これはカナダガン。
実はこのカナダガンは,河口湖のとある観光施設で放し飼いにされていたものが逃げ出して,各地を転々と移動していたのですが,いつの間にやら手賀沼に住み着いてしまったんです。ですから,野生のものではないのですが,大きくて目立つので,遊歩道を歩いている人には人気があります。
暮れかかる手賀沼にたたずむのはカワウ。その奥にはカモの群れがいます。
さて,さらに東へ進むと,「手賀沼ビオトープ」があります。
手賀沼沿いに,水の浄化実験プラントとか,環境教育のために色々な水辺環境を作った場所とかが作られていて,市や市民の手賀沼浄化に対する情熱がうかがわれます。
……でも,この写真の隅っこに写っている人,ビオトープの池で釣りをしています。ビオトープですから,当然,水環境改善のための実験として,いろいろ魚が試験放流されているわけなんですが,そこで釣りをするのはまずいんじゃないかなぁ……。
ビオトープの池にも,オオバンやらコガモやら。
水辺の草が豊富なので,居心地がいいかも。
こういう生き物は,良い環境があれば,すぐ利用してくれますね。
夏にはトンボもたくさん飛んでいます。
だいぶ都会から離れた雰囲気になってきました。
でも,ここは東我孫子駅から歩いて20〜30分ぐらいの場所です。
アシの枯れている季節,アシ原に向かって耳を澄ましてみると……カサカサ,プチプチと音がしたり,ときどき鳥の声も聞こえます。アシの中は水鳥や小鳥の隠れ場所でもあり,餌場でもあるのです。プチプチと音がしたのは,アシの茎をつついて越冬中の虫などを食べている,アオジやホオジロ,オオジュリンなど。よく見ると,スズメ,ツグミ,ときにはウグイスも,アシ原で食事をしています。ときには立ち止まり,静かにして,こうした自然の音に耳を傾けてみましょう。ただ歩いているだけでは,見つからないものもあるのです。
遊歩道の向こうに,手賀沼に向かって半島のように突き出た丘と森。
あの丘が五本松公園です。
この遊歩道も,五本松公園を少し過ぎたあたりで終点となります。
五本松公園は,手賀沼に突き出た小高い丘を利用した,森の公園。
小高い……と言っても,標高20m程度なんですけどね。
公園の森は雑木林と植林地が混ざっています。公園内の施設として,フィールドアスレチック風の施設があったり,キャンプ場もあります。自然観察的には,冬には雑木林で鳥を探したり,夏には虫遊びも楽しい場所です。
さて,遊歩道を東の果てまで歩いたところで,今回のお散歩はおしまい。
手賀沼遊歩道の,手賀沼公園からここまでの道のりは約5km。せかせか歩けば1時間足らずの道のりですが,自然観察的にもみどころの多い場所ですから,ゆっくり,自然を眺めながら歩けば,きっと新しい発見があることでしょう。それから,お近くの方でしたら,季節を変えて,何回も訪れてみることをおすすめします。季節が変われば,また新しい表情を見せてくれるのが,自然観察的お散歩の魅力です。
…でも,ここからの帰り道って,意外と交通手段が無いんですよね。
30分ぐらい歩いて東我孫子駅に出るか,もう少し東へ進んで,湖北台団地を走るバスに乗るか,どちらかの手段で帰りましょう。
実はこの近くに,とっておきの自然観察スポットがあるんです。
それは次回に紹介しましょう。
(2002年2月12日記)