虫の個性


 晩春から初夏にかけて,アゲハの仲間の幼虫が育つ時期になります。
 我が家でも,近所のミカンの木やサンショウの木から,幼虫を連れてきて,子供たちのペットにしています。

 さて,我が家のアゲハの幼虫も,次々と蛹になっています。
 間もなく蛹になろうかと言う,大きな5齢幼虫を,アップで撮影。


 アゲハの幼虫は(クロアゲハやカラスアゲハ,オナがアゲハなどもそうですが),4齢幼虫までは鳥の糞みたいな色でカモフラージュし,5齢になると,一転,緑色に目玉模様の姿になります。

 ……あれ?この目玉模様,左右非対称……
 生きものに「個体変異」はつきもの。人間だって,全く同じ顔の人がいないんですから,虫にも,個体変異による個性があってもおかしくないかも知れないな。

 ……ってことで,いろんな個体の目玉模様を較べるため,ナミアゲハ5齢幼虫を求め,ミカンの木やサンショウの木のあるところを探してきました。

その結果が,下の写真。
一番上の個体は,最初に紹介した個体と同じです。




 ……ま,とにかく,よーく較べてみてください。
 一番上のは明らかに,丸い環っかの模様が1つ,飛んでいます。
 他の個体も,基本パターンは一緒ですが,模様の形や線のつながり方,バックの白い色の状態など,微妙に違っているのが,おわかり頂けるでしょうか?

 同じ地域にすむ同じ種でも,遺伝的バックグラウンドにバリエーションがあったり,育った環境の違いなどの要因で,よく見るといろいろな個性を持っているんですね。

 こうした個性(=個体差)は,虫よりも鳥や四つ足のほうが,より,ハッキリと確認しやすいと思います。野良猫の模様など,最もわかりやすいバリエーションですね(最近では洋種の飼い猫の血が混じっている個体も多く,猫の色彩は複雑に変化しています)。たとえば,鳥の好きな方だったら,ムクドリの顔のパターンとか,ツグミの色調や胸の模様などの個体差を調べてみると,面白いと思います。

 一見,真っ黒で無個性なカラスでさえ,個体識別をして餌付けしている人がいるのだからオドロキです。
 こうやって,しげしげと幼虫を眺めれば,幼虫の個体識別も可能になってくるのではないでしょうか?
 ……でも,すぐに蛹になってしまうから,識別できても,あんまり意味は無いか……


(2001年6月01日記)

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