足元から春の樹木を観察してみる
新緑の樹の下を歩くのは気持ちいいですね。
まぶしく輝く若葉を見ると,ちょっと気分もリフレッシュします。
気持ちが良くなったところで,今度は足元から,樹の観察をしてみましょう。
イチョウの樹の下で,花(雄花)が落ちているのを見つけました。
この日は風が強かったので,若葉もかなり落ちていました。
花の近くにたくさん落ちている,丸いウロコのようなものは,鱗芽と言って,
芽を包んでいたものです。
冬芽と見比べてみましょう。
…こうしてみると,なかなかガードの固そうな芽ですね。
次は,コナラの雄花。
雌花はドングリになるので,春,花が終わったあとに落ちるのは,ほとんど雄花。
これが樹についているときは,こうなっています。
春,まっさきに花をつける,このタイプの花は,多くは風媒花。風に花粉を運んでもらうため,雄花は大量の花粉を作り,風にたなびく花穂を出します。花の季節が終わると,それが大量に地面に落ちるのです。
風媒花は虫を呼ぶ必要がないので,たいていは匂いがありません。地面に花が落ちているのを見つけて,やっと花が咲いていたことに気づいたりします。風媒花の季節が終わると,虫がたくさん出てくる季節になり,今度は虫媒花が多くなってきます。クリやスダジイなどの花は,コナラよりも遅れて咲き始める虫媒花で,強力な匂いがするので,匂いで花の存在に気づくことがあります。
さて,コナラと同じ時期に花が落ちているものを探してみましょう。
ケヤキ。茶色いのが,花の残骸。
花が咲きはじめる頃は,こんな状態です。
ケヤキはコナラよりも一足早く芽が出て,花をつけます。
さて,ここまで紹介した樹は,落葉樹でした。
この時期,常緑樹の足元も,おもしろい観察ができます。
クスノキ。花といっしょに,鱗芽や紅葉した葉が落ちています。
常緑樹は,この時期に古い葉を落とすものが多く,クスノキも,南関東では4〜5月が,紅葉,落葉の最盛期です。
見上げれば,新緑真っ盛り。
では,常緑樹をもうひとつ。
アラカシです。花(これも雄花)のほかに,落ち葉や鱗芽も見えます。去年落ちたドングリもありました。
樹の花って,地味で,なかなか手の届く場所に咲いてくれないので,気づきにくいものです。でも,花が咲いたら,いつかは落ちる。で,視点を変えて,足元から花を探して観察してしまおうと言うわけです。
ちょっとした発想の転換や,視点を変えることで,いつも見慣れた場所にも,新しい発見があるかもしれません。
(2000年4月29日記)