サクラの花に来る鳥
関東地方は,サクラの花で新年度が始まります。
サクラが咲くと,あぁ,春が来たなぁ,と思います。
日本人にとって,やっぱりサクラの花は,特別な思いのある花です。
サクラの花を見てていると,ときどき野鳥がやってきます。
どんな鳥が来るのか,ちょっと観察してみました。
カンヒザクラに来たメジロ。
花に顔を突っ込んで,蜜をなめています。
メジロのくちばしは細いので,花の中に入れやすいようです。
しかも,メジロの舌の先はブラシ状になっていて,蜜をなめるのに便利です。
メジロがツバキやサザンカなどの蜜を吸って花粉を運ぶのは有名ですが,サクラの花粉も運んでいるようですね。
こちらはヒヨドリ。写真で見てもわかるとおり,ヒヨドリのくちばしは,意外と細長いですね。ヒヨドリもツバキの蜜を吸いますが,サクラの蜜も吸っているのが観察されました。ときどき,花びらも食べているやつもいますが…。
ムクドリも,花を食べていることがあります。彼らは樹の新芽や野菜なども食べますからね。
シジュウカラ。高カロリー食の好きな鳥ですが,サクラの樹に出入りしていました。蜜を吸っているのでしょうか?もしかすると,サクラの花に来ている虫をねらっていたのかもしれません。
先日,つくば市内で,サクラの花にエナガが来ていましたが,彼らも蜜を吸うのでしょうか?それとも…?
スズメ。メジロやヒヨドリにくらべると,くちばしが太いですね。このくちばして,蜜が吸えるのでしょうか?
サクラの樹の下を歩いていると,花が丸ごと落っこちていることがあります。ふつう,花びらがバラバラに散ってゆくのに……。
よく見ると,花を裏側からちぎったような痕。
実はこれが,スズメのしわざなのです。
スズメはくちばしが太いので,はなの表側からくちばしを入れても,蜜に届きません。
そこで,裏から,蜜のある場所をかじってしまうのです。
では,サクラの花はどこに蜜があるのか,調べてみましょう。
こうやって見てみると,サクラの花は,意外と奥行きがあることがわかります。
サクラの花にモンシロチョウが来ないのは,モンシロチョウの口が蜜に届かないからだと言う話もあります。
言われてみると,確かにサクラに蝶が来るのを,あんまり見かけませんね。
花を半分に切ってみました。花のいちばん底の部分に子房(種になる部分)があり,そこから長いめしべが出ています。子房の近くにキラキラ光るものが見えるでしょう。これが蜜です。蜜はおしべにしっかりとガードされていて,蜜を吸おうとした鳥の顔などに花粉がくっつきやすくなっています。
……とすると,スズメの食べ方は,子房をつぶしてしまうので,種ができなくなりますから,サクラにとっては迷惑な話ですね。
一般に,赤系統の色は,鳥に食物を示すサインになるそうです。鳥が好む木の実にも,赤っぽい実が多いですね。ツバキの花が紅いのも,鳥に見つけてもらうための戦略と言えます。しかも,ツバキの花は,鳥の食欲を満たすように(?),たくさんの蜜を用意しています。
サクラの花も,ピンク色の花びらで,花の根元はもう少し赤みの強い色ですから,色で鳥にアピールする力があるのかもしれませんね。
一方,ハナアブなどは黄色い色を好みます。春に咲く野草に黄色い花が多いのも,それなりの理由がありそうです。
そう考えると,サクラの花は,完成度はそれほど高くありませんが,鳥に受粉作業を頼んでいるようにも見えます。スズメのような知恵者には,なかなか適応できていないみたいですが……。
さて,こんな落ちかたをしている花もありました。
これはいったい,誰が,何のために,どうやって落としたのでしょうね。
少なくともこれは,人間のしわざではありません……。
(2000年4月11日記)