惑星写真にチャレンジ!


 いまや惑星探査機が飛ぶ時代ですが,継続的な惑星の観測は,やっぱり地上からの望遠鏡での観測も必要で,決して時代遅れになっているわけではありません。シューメーカー・レビー第9彗星が木星に激突したときには,天文台はもちろん,多くのアマチュアの観測者が自分達の望遠鏡で,衝突の跡を観測し,写真撮影しました。
 惑星の拡大撮影をするのはちょっと大変ですが,気ままに惑星のある星空を撮影する楽しみもあります。星空の中を移動してゆく惑星は,月や明るい星に近づくこともあり,いつもの星座の風景とちょっと違った雰囲気を作り出してくれます。
 「お気楽天体写真工房」では,「お気楽,お手軽」に惑星の撮影を楽しむ方法を考えてみました。


惑星撮影・2つの方法

・「惑星のある風景」を撮る
 惑星……特に,水星,金星,火星,木星,土星は,明るさも十分にありますから,広角系のレンズをつけたカメラでも,「明るい星」として写ります。……と言うことは,星座を撮影するのと同じ要領でシャッターを切れば,とりあえず写ってくれます。惑星は黄道付近を動いていますから,黄道12星座にアクセントを添えるように輝いていたりします。木星は12年,土星は30年かけて黄道上をひと回りしますから,今,見えている位置に再び木星が帰ってくるのに12年,土星だと30年もかかります。ですから,星座と一緒に,惑星の位置を写しておくと,結構いい想い出になるのです。
 撮影方法については,「かんたん!星座写真」と同じ方法でOKです。

 こんな感じの「記念写真」が撮れます。


 2000年9月15日撮影。
 中央やや下寄りの,横倒しのV字形が,おうし座のヒアデス星団。ヒアデス星団でいちばん明るい星はアルデバラン。左側にひときわ明るく写っているのが木星,上のほうの明るい星が土星です。
 木星と土星がおうし座で出会うのは,60年ぶりのことです。……そう考えると,なんか,記録に残しておきたくなりませんか?

・やっぱり,アップで写したい
 惑星をアップで写すのは,実はとっても大変。たとえば,木星の見かけの直径は,満月の1/40程度しかありません。1000mmの望遠レンズを使っても,フィルムに写る木星の大きさは,直径約0.2mmしかありません。
 惑星をアップで撮影するためには,望遠鏡を使い,さらに,接眼レンズなどを使って焦点距離を引き伸ばして,超超望遠撮影をする必要があります。焦点距離が伸びれば,F値が暗くなるので速いシャッターが切れなくなるので,望遠鏡を赤道儀に載せてモーターで日周運動を追いかけてやる必要も出てきます。F値を稼ぐためには,少し焦点距離を我慢して短めにするか,口径の大きい望遠鏡を使うしかありません。

 そこで,「お気楽天体写真工房」では,大掛かりな赤道儀や大口径の望遠鏡を使わずに,なるべく気楽かつ簡単に,惑星の姿をとらえる撮影システムを使うことにします。
 いちばんのポイントはデジカメの使用です。デジカメの場合,銀塩写真のフィルムに相当するCCDの面積が小さいので,同じ焦点距離でも,相対的に銀塩写真より大きく写ります。カシオQV-8000SXの場合,レンズの焦点距離6mmが35mm判カメラの40mmレンズに相当します。焦点距離1000mmのレンズで撮影しても,銀塩写真の6000mm以上に相当するフレームが得られます。この状態でもF値は銀塩の1000mmで撮影したときと同じですから,シャッター速度も稼げます。

 当工房では,さらにもうひとつ,こだわった点があります。
 それは,正立像。
 天体望遠鏡では上下左右がひっくり返った倒立像になりますが,像がひっくり返るのに慣れていない「天文初心者」には,混乱の原因になります。そこで,あえてバードウォッチング用の,正立像の得られる望遠鏡を使って撮影しています。バードウォッチング用の望遠鏡は,正立プリズムが入っている分だけ,光学性能的には不利ですが,これが意外とよく写るんです。感覚的にわかりやすい正立像で天体を紹介するのは,このサイトの目的にピッタリです。

 「お気楽天体写真工房」でおもに用いている惑星撮影システムを紹介しましょう。

・カメラ:カシオQV-8000SX 8倍望遠の望遠端で使用。35mm判カメラの320mm望遠に相当。
・望遠鏡:ビクセン フィールドスコープ ジオマ65ED。口径65mmのEDレンズを使用した望遠鏡。25倍アイピース使用。
・デジカメアダプター:ビクセン純正品
・三脚:フィールドスコープ用の重量1.2kgのもの。
・微動雲台:三脚とスコープの間に入れます。

 デジカメをアダプターを介してスコープに取り付けると,合成焦点距離は1200mm。35mm判カメラの8000mmに相当します。
 あとは画像処理で勝負!

……で,撮影結果は?

・木星
 
 画像処理の段階で,1.5倍に拡大しています。
 フィールドスコープでも,縞模様がしっかり確認できるレベルまで撮影できるんですねー。
 惑星写真には,いくつかの画像処理テクニックが必要です。詳しくは別ページで解説しますが,この木星の画像も,20コマぐらい撮影し,状態の良いものを10枚ほど選び,それを1枚に合成することで,画像のザラつきを抑えこんでいます(このテクニックを「コンポジット」といいます)。


・土星
 
 撮影条件は木星と同じ。(ちょっと露出時間は長くなります)
 土星の本体は小さいのですが,環の直径が大きいので,見栄えがします。
 気流が悪くて,切れ味が今ひとつです。環の外側に近い部分がやや淡いのがわかりますか?もう少し解像度が高ければ,環の三重構造もはっきり見えると思います。土星本体も,ちょっとだけツートンカラーになっているように見えます。

・金星

 最大光輝のころの金星。トリミングのみで,拡大していません。
 金星は地球に近づいている時期には,見かけの大きさが木星よりも大きくなり,明るいので,高速シャッターが切れますが,低空なのが泣き所。この写真でも,大気の屈折による色収差が強く出ています。
 「お気楽天体写真工房」の撮影システムでは,金星の表面模様は写せません。満ち欠けする姿を楽しみましょう。

・火星

 2001年の地球接近(2001年6月)の2ヶ月前の撮影。見かけの直径は10"。木星の1/4もありません。
 画像処理の段階で300%拡大しています。
 白っぽい「雲」らしき部分と,黒い表面模様がわかります。
 火星を斜め横から見ているので,右側の端っこは太陽の光の当たっていない部分で,欠けて見えます。

☆最新の画像は,「気ままな天体撮影日記」のほうを御覧ください。


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