お気楽天体写真に適した機材とは?


 天体写真を撮影するためには,とりあえずカメラを用意しましょう。でも,フルオートのカメラでは,星空に向けても「露出不足!」と警告が出て,場合によってはシャッターすら切れません。天体撮影は,ほとんどマニュアル撮影の世界です。ですから,マニュアル撮影機能の充実したカメラを選ぶ必要があります。これは,銀塩,デジタルのどちらにも当てはまります。このほかに,カメラを固定する三脚や,手ブレを抑える小道具が必要となります。月などをアップで狙いたい場合,カメラレンズ以外に,何らかの光学系(望遠鏡など)を用意する必要が出てきます。
 「お気楽天体写真」のための,使いやすい道具について,検討してみましょう。


カメラを選ぶ

・デジカメはマニュアル機能の充実したもの,銀塩は一眼レフで決まり。
 天体撮影には,どうしても長時間の露出が必要になります。そこで,長時間シャッターを開けておく機能があることが,「お気楽天体写真」での絶対条件になります。デジカメの場合,長時間露出になると,受光部であるCCDにノイズが発生し,現状では60秒ぐらいの露出が限界です。しかし,星座のスナップ撮影を楽しむには,少なくとも15秒ぐらいの露出ができる機材はほしいところです。また,オートフォーカスを解除できたり,絞りもマニュアルで変更出来ることも重要です。また,レンズの前にフィルター取り付けネジが切ってあるものは,アダプタやアクセサリ類が取り付けやすく,重宝です。マニュアル機能の充実したデジタルカメラは,上級機種になってしまいますが,これは初期投資と思ってあきらめてください。しかし,デジカメはモデルチェンジが早いので,1世代モデルが落ちた機種などを狙えば,かなり安く入手できます。
 銀塩カメラの場合,撮影する画像が直接確認出来る,一眼レフがベストです。もちろん,長時間露出が可能なこと,マニュアルで露出,絞り,フォーカスが操作できることが必要です。出来ればバルブ(B)露出が,バッテリーを食わない「機械式」のカメラのほうが,トラブルが少ないと思います。かつて,10分露出で3枚撮影しただけでバッテリーが上がってしまうカメラもありましたが,これは電磁石でシャッターを開ける機構のため,バルブ露出中は通電しっぱなしになっていたのです。バルブだけ機械式制御にしているカメラもありますので,もし,これからカメラを買う人は,カタログをよーく見て検討してください。

・ズームレンズに注意
 デジカメの場合,一眼レフのボディを用いた機種でもない限り,レンズ交換は不可能です。星座を撮影する場合,明るい(F値の小さい)レンズのついているものが有利です。デジタルズームはあまり意味がありません。
 ズームレンズは,ズーム比が大きいものは便利ですが,超望遠撮影の場合,星が日周運動で動くのも拡大され,星がどんどん動いてゆきます。これを追いかけて星を点像に写すには,赤道儀が必要になります。また,ズームレンズの多くは,無限大よりも先まで,ピントリングが回ります。星は基本的に無限遠で撮影すればピントが合うのですが,ズームレンズのついたカメラは,無限大のピント位置が出しにくいことがあります。デジカメの場合はすぐに撮影結果が出るので,試写しながらピントの位置を詰めてゆくと確実です。銀塩の場合,ズームは使わないのがベスト。単焦点のレンズなら,無限大はフォーカルリングのどん詰まりでOKなので(しかもズームよりも明るくて解像力のあるレンズが多い),ズームよりもはるかに使いやすいと思います。

手ブレを防ぐための小道具を選ぶ

・まずは三脚
 星の写真は,超スローシャッターになることが多いので,しっかりした三脚を用意して,カメラを固定しましょう。三脚の種類については特に問いませんが,持ち運びやすい重さと剛性の妥協点を,自分なりに見つけてください。

・シャッターを切るときの工夫
 せっかく三脚にカメラを載せても,シャッターボタンを押すときのショックでブレてしまっては台無しです。一眼レフカメラなら,ケーブルレリーズかリモコンを買います。デジカメの場合も,リモコンが付属していたり,オプションで選べる機種があります。リモコン無しのデジカメの場合,セルフタイマーを使う手があります。シャッターボタンを押してからシャッターを開けるまでに10秒ぐらいの時間があれば,振動が吸収されますからね。私もデジカメで月や惑星を撮影するときは,セルフタイマーを使っています。

・望遠鏡など…
 月や惑星などをアップで撮影したい,となると,カメラのレンズだけでは力が足りません。望遠鏡などのお世話になるしかありませんが,実は双眼鏡程度でも,カメラと組み合わせて月のクレーターを撮影することが出来ます。本格的,とまでは行きませんが,野鳥観察用のスポッティングスコープなども,天体撮影に利用できます(ホームセンターなどで売っている,激安天体望遠鏡よりも,ずっと良く写りますよ)。
 要は工夫次第。本格的な望遠鏡を使うようになったら,「お気楽」の領域を越えてしまいますから,本気で天体撮影をする気が起こったら,より上級者向けのWebサイトや資料を当たってみてください。
 この工房では,あり合わせの機材を使い,ちょっとしたアイデアと工夫で,「お,意外と良く写るじゃん!」と言って遊ぶのが目標ですからね。

・フィルムとか…

 デジカメの人には,とりあえず関係無いですね(笑)。
 銀塩写真の楽しみの1つとして,いろんな特性をもったフィルムを使い分けて楽しむことがあります。もちろん,星は撮影対象としては暗いモノですから,高感度フィルムを中心に,いろいろと試してみるわけです。フィルムによって,色の調子もだいぶ違います。また,プリント用のネガカラーフィルムとスライド用のリバーサルフィルムでも,かなり特性に差があります。
 「お気楽天体写真」のために,とりあえず1本選ぶとしたら,ISO400のネガカラーがいいでしょう。空のきれいな場所で撮影するときは,ISO800〜1600あたりも使えますが,400ぐらいなら,スナップや風景などの一般撮影と混在させて撮影しても,何とかなりますから,「旅のついで」の撮影などにも便利です。

 一方,デジタル派の人の楽しみは,撮影後の画像処理。多少のフォトレタッチ機能のあるソフトを持っていれば,けっこう楽しめます。明るさ,コントラスト,カラーバランス,RGB分解,レイヤ機能,アンシャープマスク等の機能があれば,かなり高度な画像処理が出来ます。最近ではフリーソフトでも,このぐらいの機能を持っていたりします。


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