火星の撮影記録 〜火星・準大接近2005〜

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2003.07.24

00h39m-00h48m
BORG76ED+LV12+QV2900,露出1/20秒,シャープネス高,彩度標準,コントラスト高,WB蛍光灯,32枚コンポジット
元画像を200%拡大してトリミングしてあります。

 火星は地球に近い惑星だから観測しやすいかと思うと,これがなかなか手強い。
火星の公転軌道は地球の軌道よりも楕円で,太陽との距離が,±9.3%も変動します(地球の軌道は±1.67%)。そのため,火星が太陽に近づいた位置で,「衝」が起こると「大接近」となり,地球と火星の距離は6000万kmを切りますが,火星が太陽から遠ざかった位置で「衝」になった場合は,1億km以上離れてしまいます。2003年の「衝」のときは,非常に条件の良い「大接近」でした。その2年2ヵ月後,ふたたび「衝」となるのですが,2003年の大接近ほどの距離までは近づきません。それでも,かなり近くまで来るので,「準・大接近」と呼ばれたりします。
 2005年は,「準・大接近」の年なのです。

 とは言うものの,やはり火星の観測は難しい。
 火星の直径は地球の半分ぐらいしかありません。大接近のときでも,木星が最も接近したときの見かけの直径(視直径)の半分にしかなりません。とにかく,見た目のサイズが小さいのです。
 口径76mmの望遠鏡の分解能は,1.5"ほど。せめて視直径が10"ぐらいないと,大まかな模様すら確認できません。さらに,全体が真っ赤でコントラストが弱いので,観測に慣れていないと,真っ赤な丸い物体にしか見えません。

 そんなわけで,視直径が10"を越えたあたりから,観測態勢を整えていたのですが……

 とりあえず,こんな感じです。
 中央部にもやもやと模様が見えていますが,一応,シミュレーションソフトで照合が可能な地形です。

 衝の3ヶ月前なので,まだ,左のほうが欠けています(注:倒立像です)。


2005.10.25

22h22m-22h34m
BORG76ED+LV12+QV2900,露出1/30秒,シャープネス高,彩度標準,コントラスト高,WB蛍光灯,46枚コンポジット
元画像を200%拡大してトリミングしてあります。

 衝の数日前。今回の接近では,このぐらいが最大サイズ,と言うことになります。2003年の大接近のときより2割ほど視直径が小さくなっていますが,それでも20"を超えています。この次に視直径20"を越える火星が見られるのは,10年以上先のこと。貴重な観測条件です。

 ここ2,3年,惑星の撮影は,Webカメラなどでデジタル動画を撮影し,得られたフレームを数百枚,自動処理ソフトでコンポジットする方法が流行していますが,相変わらずデジカメで撮影しています。出来るだけ,普通に入手できる,ありきたりの機材を使って,気軽に撮りたい……と言う方針なのですが,機材はお気軽でも,手間はかかります。
 コンポジットは手作業でやっています。ありきたりのフォトレタッチソフトでも,レイヤ機能がありますが,それを利用して,手作業で位置合わせをして,濃度調整をして,重ねてゆきます。枚数が多いときは,まず,6〜10枚ずつ重ね,数枚にまとめた画像を,さらに重ね合わせると言う,2段階に分けた作業にします。コンポジット作業が終わったら,一旦,RGBに分けて,大気の浮き上がりによる色ズレを修正します。そして,色やコントラストの調整,アンシャープマスクなどの処理を経て,完成です。
 30枚もコンポジットすると,1枚の画像を仕上げるのに1時間以上の作業となります。これは46枚重ねましたので,2時間近くかかりました。

 眼視で見たイメージに近い雰囲気に仕上げていますので,ややコントラストが低いのですが,主要な地形は見えています。
 今シーズンはあまり撮影しなかったので,ちょっと要領が悪くなっていますね……。


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