お星様コラム(第1集)


第1集もくじ

2000年のおうし座と「星の王子さま」
星はどんな色?


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2000年のおうし座と「星の王子さま」


 サンテグジュベリの「星の王子さま」。児童文学の定番でもあり,大人のファンも多い,このお話。2001年は刊行60周年となります。
 「星の王子さま」の挿絵は,サンテグジュベリ本人の手によるものです。
 あの表紙絵に,実在の星空が描かれているのではないかと言う説が,2000年になって,報告されています。
 著作権の問題もあり,ここにはその表紙絵を表示できませんが,「星の王子さま」の表紙には,いくつかの星が描かれています。☆型をした星がいくつか。その中に,ちょっと大きく描かれた星が1つあります。絵の左のほうには丸い大きめの星,右上には土星のような星が描かれています。
 ……この3つの星が,1940年晩秋〜冬の,おうし座の風景と,ほぼ一致するのだそうです。大きな☆型の星はおうし座のα星,アルデバラン,大きな丸い星は木星,土星方の星はもちろん,土星です。木星の公転周期は12年,土星の公転周期は30年ですから,2000年の晩秋から冬にかけて,60年前とほぼ同じ位置関係になりました。

 2000年11月のおうし座付近。中央下寄りにアルデバラン,左の明るい星が木星,右上に土星が写っています。

 サンテグジュベリ自身,星に造詣の深い人であったことが知られています。「星の王子さま」が執筆されたのが1940年,刊行が1941年ですから,表紙絵に,明るい惑星が2つも並んで賑やかになったおうし座の光景を使ったことは,十分に考えられることです。


 それにしても,1940〜41年と言えば,第二次世界大戦の只中で,国土も人の心も荒廃していた時代。そんな時代背景を想いながら「星の王子さま」の表紙絵を見ていると,新たな感慨に耽ってしまうのでした。

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星はどんな色?

 星の色に違いがあることは,知っていますか?
 実際に肉眼で星空を眺めたとき,どんな色の星が見えましたか?

 たとえば,赤っぽい星。冬ならオリオン座のベテルギウス。春ならうしかい座のアークトゥルス,夏ならさそり座のアンタレス。青っぽい星としては,冬はオリオン座のリゲル,春はおとめ座のスピカ,夏はこと座のベガ。このほか,黄色っぽい星,白い星などがあります。
 いま,リストアップした星は,すべて1等星。これらの明るい星は,色がよく分かりますが,暗い星の色は,だいたい,白〜水色っぽく見えると思います。本当は暗い星でも,さまざまな色があるはずなのですが……。

 このカラクリは,人の目の機能にあります。
 人の目には,光を感じる細胞……視細胞が2種類あります。ひとつは錐体細胞。この細胞は,感色性や分解能に優れ,人の視覚の主役となっています。そしてもう1種類の細胞が,桿細胞。これは細長い細胞で,感色性は劣りますが,高感度な細胞です。夜行性の動物の目には桿細胞が多く,暗いところでも見えやすくなっています。
 さて,このような機能を持った目で星を眺めると,明るい星は錐体細胞が機能するので,色が見えますが,暗い星になると,桿細胞しか反応せず,色を識別できなくなります。また,桿細胞は,錐体細胞よりも青色寄りに感度のピークがあります。それを脳内で「画像処理」して認識すると,暗い星はすべて青白っぽく見えるように認識してしまいます。
 双眼鏡や望遠鏡で星の光を集めて見ると,肉眼で見たときと違う印象の色だったりすることも,少なくありません。

 では,本当の星の色は?……客観的な基準で見てみましょう。
 いちばんポピュラーな色表示は,スペクトル型。
 O,B,A,F,G,K,M(それぞれ,紫,青,白,クリーム色,黄色,オレンジ,赤に相当)と言う7色(この他にR,N,Sもあるけど,省略)。星の表面温度は,Oのほうが高く,Mの側へ行くにつれ,下がってゆきます。高温の炎が青い色をしているのと似ていますね。
 このほかに,写真で写したときの明るさと肉眼で見たときの明るさの差(写真のほうが青色に感度が高いので,青っぽい星は写真に写すと,肉眼で見たときよりも明るくなる)で色調の指標にしたり,「色温度」で示す場合もあります。


 ちょっとした裏技。
 人の目の視野の中心には錐体細胞が集中していて,その周辺に桿細胞の密度の高いエリアがあります。つまり,視野の中心より少しだけオフセットした位置に,人の目の感度のピークがあるわけです。もし,暗い星が見えにくいときには,目標を視野の中心から少し外し,「やぶにらみ」で見てください。けっこう感度がアップしますよ。

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