とびだす立体影絵

対象年齢:小学校中学年以上。
       おとなの人が手伝えば,小学生未満からOK。


 1980年代に出版された「遊びの博物誌」「新・遊びの博物誌」(坂根厳夫著)で,「立体影絵」と言うテクニックが紹介されていました。原理も作り方も,そんなに難しくないので,小学校の光と影の実験の応用学習として使えるように,アレンジしてみました。

【用意するもの】
・光源……なるべく点光源に近いものを用意します。光量の多い豆電球や白色LEDなどで良いでしょう。レンズを用いた光源はこの実験に向きません。同じ光源を2つ用意します。
・フィルター……光源に取り付けるフィルターと,立体メガネ用のフィルターが必要です。色は赤とシアン(明るい青緑色)の2種類。シアンが手に入らない場合は,青または緑でも代用できます。立体メガネは赤と青のセロファンで自作することもできますが,1つ100円ぐらいでネット販売していますので,検索してみてください。
・影絵の素材……みんなで作りましょう!



【作ってみよう】

・光源

 同じ光源セットを2つ,左右数cmの距離を置いてセットします。右側にはシアン,左に赤のフィルターをつけます。

・スクリーン

 白いものなら何でもOK。液晶プロジェクター映写用のスクリーンでも,紙でも……。

・影絵の材料

 紙を切り抜いたものでも良いのですが,この場合は2つ以上用意して,前後関係があるように置きます。
 おすすめは,針金や竹ひごなどで,立体的なフレームを作る方法。面倒なら,手近にあるものを適当に置いてしまいましょう。

・立体メガネ

 右目に青,左目に赤のフィルターがついたメガネを使います。

・どんな影絵ができるかな?

 この方法で映した影絵は,赤と青の,すこしだけ位置のずれた影が,重なって映し出されます。
 光源に近いものほど,赤と青の位置のずれが大きく,スクリーンに近いものほど,スレが小さく見えます。
 この影を立体メガネをかけて見ると,立体的に見えてきます。


 泡立て器の影です。赤青の立体メガネで,立体的に見えるかどうか,確かめてみましょう。


 これが,左目で見ている赤の画像。


 こちらは右目が見ているシアンの画像。


 赤青の立体メガネを持っていない人のために,左目用の画像と右目用の画像を,フィルターをつけない状態で別々に撮影し,裸眼立体視(平行法)で見えるように,画像を加工してみました。



 平行法で立体視すると,影が立体的に見えて,泡立て器のワイヤーのどの部分が手前にあって,どの部分が奥のほうにあるのか,わかるようになります。


【でも,どうして?】(ちょっとくわしい説明)

 どうして影が立体的に見えたのか?

 私たちが,ものが立体的に見えるのは,目が2つあるから。左右の目で,微妙に違う角度から見た2つの像を,脳の中で立体像として認識しているのです。この,左右の目の,見る角度の微妙な違いによる見え方の違いを「視差」といいます。
 この「立体影絵」では,2つの光源が,私たちの2つの目と同じようなはたらきをします。赤い光の影と,青い光の影には,わずかかに視差が発生します。それを,赤青のメガネで,左右別々の目に,それぞれの像を振り分けて見せることで,影に含まれている視差の情報(=立体視のための情報)を脳に届けているのです。
 赤青の立体メガネで左右の目に入る情報を1枚の画像から取り出す方法は「アナグリフ」と呼ばれるもので,本などの平面に,かんたんに立体画像を印刷する方法として,昔から使われてきた手法です。アナグリフでもカラー画像の表現が可能ですが,最近のカラーの立体映画では,偏光フィルターを使って左右の情報を振り分ける方法を使っている例が多いと思います。

 この立体影絵は,アナグリフの立体表現の,一番シンプルな方法として,作りやすく,遊んで楽しいテクニックですから,ぜひ,理科の授業や科学教室などで,応用してみてください。


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