衛星MIRの光度等級の修正


● (FUROKU.46) 衛星MIRの光度等級の修正 (1997年 12月18日)
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 MIRの光度等級の概算(修正)            JE9PEL/1 脇田
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> Mr.Takeyasu wrote in [jamsat-bb:3073]  ===========================
> 「人工衛星がどの位の明るさに見えるかを推定する図」が掲載されていま
> す。出典は、昭和35年7月発行の科学朝日 別冊「図表 人工天体の軌道 - 
> 竹内端夫著」とのことです。 図表は、「反射率0.6の良く磨かれた金属の
> 表面を持つ球形の人工衛星が天頂を飛翔している時の明るさ」を示したも
> ので、衛星の直径をパラメータとして、観測者から人工衛星までの距離に
> 対する光度等級がプロットされています。プロットを一つ紹介しますと、
> 「直径50cm、距離1000kmでは約8.2等級」と読み取れます。
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 まず、このデータを検証してみます。前回の記事の中で導いた次の関係式

    M=(5/2)*logL (Mは等級差、Lは明るさの比)

 において、L=(40000^2)/(1000^2)=1600 を代入すると、logL=3.2 
 なので、M=2.5*3.2=8.0等級となります。 つまり、計算上この金属球
 を距離40000kmに置くと、約 +16.2等級(8.2+8)で見えることになります。
 同じ距離にあるスピン安定型静止衛星の見え方が13〜15等級であることと
 ほぼ似た結果になります。

 そこで、『直径50cm、反射率60%の金属球は、1000kmの距離で約8.2等級
 で見える』ことを新たな基準として、計算をし直してみたいと思います。
 この金属球とMIRとでは材質、構造がだいぶ異なるので、同一視は無意味
 かもしれませんが、一応、MIRの反射面を10m*1m、反射率を60%、TCA時の
 距離を400kmと仮定して、『MIRの光度等級の概算』をしてみます。

 球体の衛星からの反射は点となりますが、計算の都合上、円板であるとす
 ると、その反射面積はπ*((1/4)^2)=0.2m^2となります。またMIRの反射
 面積は、傾斜角度を無視すると10m*1m=10m^2となり、面積比は約50倍と
 なります。よって、面積比による等級差は、方程式 (2.51)^y=50 の対数
 から、y=(log50)/(log2.51)=1.6990/0.3997=約4.3等級差となります。

 次に、距離に対する等級差を考えてみます。明るさは距離の2乗に反比例
 するので、上記の式から次のように計算できます。

    M=(5/2)*logL=(5/2)*log((1000^2)/(400^2))
     =5*log(1000/400)=5*log2.5=5*0.3979=約2.0等級差

 つまり、衛星MIRは距離400kmの時に、概算で +1.9等級(8.2−4.3−2.0)
 で見えることになります。一般に、MIRが距離rkmにある時の光度等級Mr
 の「概算」を表す公式が、次のようにして得られます。

    Mr=8.2−4.3−(5/2)*log((1000^2)/(r^2))
      =8.2−4.3−5*log(1000/r)
      =3.9−5*(3−logr)=約(5*logr−11.1)等級


   『MIRの光度等級』
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    Mr=5*logr−11.1 [Mr:Magnitude, r:SlantRange]
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 平成9年12月5日に、衛星MIRを肉眼で目視した時のデータは、下のとおり
 でした。今、AOSからTCAの衛星までの距離が2200km〜400kmまで変化する
 時の100km間隔のMIRの光度等級を、この公式を用いて概算してみます。


                       AOS     TCA     LOS
               JST   17:07   17:12   17:17  (日没時 16:30)
               Az.     220     150      50  (南西〜北東)
               El.       0      67       0  (Max 67)
               Hi.     380     382     384  (km)
               Ra.    2220     410    2150  (km)


        [ km]  400  500  600  700  800  900 1000 1100 1200 1300
        [Mag]  1.9  2.4  2.8  3.1  3.4  3.7  3.9  4.1  4.3  4.5

        [ km] 1400 1500 1600 1700 1800 1900 2000 2100 2200 2300
        [Mag]  4.6  4.8  4.9  5.1  5.2  5.3  5.4  5.5  5.6  5.7



  [Mag]
   5.4 :                                                     *
       :                                               *
   5.0 :                                          *
       :
   4.6 :                                   *
       :                               *
   4.2 :
       :                         *
   3.8 :
       :
   3.4 :                 *
       :
   3.0 :
       :           *
   2.6 :
       :
   2.2 :
       :     *
   1.8 :                                                 [単位100km]
       +-----+-----+-----+-----+-----+-----+-----+-----+-----+-----+
             4     6     8    10    12    14    16    18    20    22


    PS. もしコメントがありましたら、お願いいたします。

        ○○さん、望遠鏡・双眼鏡の考察が大変参考になり
      ました。 FO-29は肉眼で目視できるとしても、等級
      の観点から仰角が60度以上の時に限られるようです
      ので、双眼鏡を準備しなければならないですね。
      (土星などの天体の観測には望遠鏡の方が良い?)


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