謎とメッセージ

   みちこ&敬 守口門真歴史ミステリー探訪F

              

      「敬ちゃん、歴史の謎ってメッセージ・・・?」
      「謎がメッセージの場合はもちろんあるよ。おきく物語の場合は記述の不可解なことが謎として手がかりになったよね」
      「なるほど」
      「寓話は、メッセージを直接ではなく、謎めいた方法で伝えるパターンだよね。たとえば、イソップの"アリとキリギリスの
       話"ではアリとキリギリスの生活を描いて勤勉に働くことの大切さを伝えようとしている」
      「ふうん」
      「桃太郎のお話を退治された鬼の側から見たら、どんな物語になるのだろうか。みっちゃん、考えたことがあるかい」
      「ぜんぜんなし」
      「そうだろうね。でもすごく重大なことなのさ」
      「ふうん、どうして・・・」
      「桃太郎のお話はキジや猿を家来にして鬼退治をして宝物を手に入れめでたしめでたしというものだから、無条件でぼ
       くたちは桃太郎の側のお話と思ってしまうよね。発想を変えて、征服された鬼の側がつくったものだと仮定すると、違
       う世界が見えてくるよ。うわべは同じ物語になるけどね。そうでないと桃太郎にまた退治されてしまうからね。うわべ
       は桃太郎に逆らわずに、何かメッセージを伝えているかもしれない。たとえば、桃太郎の家来がなぜキジや猿、犬な
       のか、謎めいているんだけど、鬼たちにとっては忘れられない宿敵だよね。キジ、猿、犬に注意せよ、あるいはキジた
       ちの行動を忘れるな、という教訓をメッセージしていても不思議じゃない。キジ・猿・犬は鬼の側の裏切りものではない
       か、と考える人もいるよ」
      「なるほどね」
      「ものがたり(もの騙り)の形をとって、巧妙にメッセージを語り伝えているケースなのかもしれない」
      「歴史は勝者によってつくられる、という考え方があるけど、敗者の言い分は伝わりにくいよね。まして、一方の言い分
       どころか存在が徹底して封殺されるというケースも普通にあることだからね。歴史には謎が溢れていて普通だよね」
      「ふうん、謎に隠された真実、明らかにして欲しいという歴史のメッセージよね」
      「そうなんだ」      


    
白井邸  大塩平八郎ゆかりの書院の案内

「ところで、みっちゃん。そこが大塩平八郎ゆかりの書院のある白井邸だよ。大塩平八郎の乱の中心になったひとり、白井孝右衛門さんの家だよ」
「ふうん・・・」
「歴史的な選択をした人たちだよね」
「この場合もメッセージを考えて良いのではないかなあ・・・」
「どういうことなの」
「賢い人はふつう損なことはしないよ。損得の次元をこえることができないからね」
「ふうん」
「損
得の次元をこえて生きた人たちにぼくは感動するけどさ、どのような思いで行動に踏み切ったのか。動揺して裏切る人間が出てくるように、葛藤があって不思議ではない状況だよね。でも踏み切った。この決断はミステリーでもあるよ」
「そうかなあ・・・。意気に感じて、後で後悔ということが私多いのよ」
「ははっ、みっちゃんの良いところだよ、でも意気に感じるというところが興味深いね。それがもし命がけのものだとしたら」
「われ、ことにおいて、後悔せずか。もっと先が見えた上での決断と考えて良いようね」
「ハハッ、そうだよね。それに、幕府の弾圧がすさまじくて、多くの情報が圧殺されたと考えてよさそうだからね。多くの謎が生まれている」
    
「少し歩いてみようか。見て欲しいものがあるんだ」
「うん」


    
(元野江刑場) 義天寺前街道

「そこに大きな"碑"があるだろう」
「"南無妙法蓮華経"と書いてあるわね」
「あれはね。刑場にあったものなんだ。どうしてここにあるのか、といういきさつはともかく、この碑は擬人化していえば、たくさんの人たちの死を見てきた碑なんだ」
「・・・・」
「多くの人たちの最後の思いが注がれているかもしれない碑だよね」
「ふうん」」
「もちろん、この碑は何も語らないけど、たくさんの思い≪メッセージ≫をイメージしてみたいよね」
「ふむ、歴史が作り出した謎とメッセージか、もっといろいろ応用できそうね」
「そうだよね」
「明智先生にきっちりレポートを送るんだ」
「ハハッ、楽しみだよ」