残された手がかり

 みちこ&敬 守口門真歴史ミステリー探訪C   
                                           
歴史の闇にチャレンジ
「ところで、みっちゃん"晴明さま"は見つかった」
・・・・・・・
「発想を変えてみる必要があるんじゃない」
「どういうこと
・・・・
「陰陽道というか、あのような考え方というか、安倍晴明に象徴されているけど、安倍晴明があれほど目立つということは、陰陽道の考え方が社会に広く浸透していて、大きな影響力を持っていたからだろう。安倍晴明はそういう社会の中でのプロということじゃない」
「ふうん
・・・
「安倍晴明というプロの存在は限られた所でしか見つからなくても、社会に広がっていた陰陽道を示すようなものは見つかるんじゃないかな」
「・・・・・難しいわね・・・・ヒントを言って」
「ヒントね」
「そうだ、"鬼"がいい。それに前に民俗的風習の中に陰陽道が見つかるじゃないか、ということを言ったけど、ふたつを結びつけると案外簡単に見つかるかもしれないよ」
「敬ちゃんはもう見つけたの」
「うん、すぐわかったよ」
「よし、もう一度歩いてみるか」

「あっ、あれかな・・・敬ちゃん、あれあれ」
「ピンポーン」

 

「みっちゃん、あれ"鐘(しょう)き"さんだよ」
「鬼とどう関係があるの」
「鬼は空からやってきて、家の中をうかがうと考えられていたんだ。それを防ぐのが"鐘き"さんなんだ。にたようなものに"鬼がわら"があるんだけど、鬼がわらの場合は、鬼が"鬼がわら"を見て先客がいるとカン違いして避けてくれるだろう、なんていう仕掛けなんだ」
「ふうん・・・いろいろあるんだね・・・・」
「災害や危難を防ぎたいという人間の営みだよ。"鐘き"さんは貴重な民俗資料だよね」
「よく残っていたよね」
「それとね、このあたりは大阪から見ると東北(うしとら)の方角にあたり"鬼門"といわれているんだけど、これも陰陽道から生まれている考え方だよ」
「ふうん、陰陽道って結構いろんなことに関係しているんだ」
「人知をこえた存在に対する畏怖ということになるのかな、ぼくたちだって"大安吉日"などに左右されてるものね」

「ところで、手がかりにした鬼だけど、今回は魔よけの対象という程度の意味で使っているんだけど、鬼についてはさまざまな考え方があって、歴史の闇を探る手がかりになるという見方もあるくらいだよ。桃太郎の鬼退治の話があるけど、あれは実際の史実が投影されているという見方もあるぐらいで、征服された側の人々が鬼にされたというのも結構説得力があるんだ。結局、人間ってなんなのか、ということになるよね」
「陰陽道って、人間を探る手がかりとしても面白いかもね」
「ほんと、そうだよね、最大のミステリー"人間"ということかしら・・・」