「 ねっ 安倍晴明さまのこともわかるかな?」
「 陰陽道ね・・・そりゃあると思うよ。歴史のある町だからね。民俗的な風習に関連することが残っていると思うよ 」
「 わあ− 」
「 どこがいいのかなぁ、安倍晴明なんて・・・」
「 ロマンがあるじゃない。かっこいいし! 今、すごいブームなのよ 」
「 ふーん、ま、自分で探しなよ 」
「 言われなくたって、探しますよーだ 」
「 ねえ、敬ちゃん、この路、なんか堤防の上みたいね 」
「 なんかじゃなくて、まさに堤防の上だよ、昔淀川の堤防が道として整備されたんだ。ここは由緒ある堤防なんだぜ、文禄堤という名前がついているんだけど、豊臣秀吉が大坂と京都を結ぶ街道として文禄年間に整備したからついた名前なんだ 」
「 へぇ 」
「 江戸時代になってからは、東海道の一部として、江戸時代の幹線道路だったんだ。ついでに言っておくと、大昔から川と道というのは深く関係しているんだよ、常識だぜ。理由は自分で調べてみなよ、その方が勉強になるだろ?」
「 まったくもう! えらそうなんだから 」
ふたりはやりあいながらも、文禄堤を楽しく散策しています。古い街並みの雰囲気は、ふたりとも大好きだからです。
「 面白いな・・・」
「 何が?」
「 守口宿の形がさ 」
「 気がついたと思うけど・・道が二ヶ所、鋭くかぎ形に曲がっていたところあるだろ、あれ、どう見た?」
「 どう見たって、別に・・・」
「 江戸時代の街道に新しい道がプラスされて、わかり難い点もあるけどさ、道がかぎ形に急角度に曲がっているところが二ヶ所あるんだ、明智先生もミステリーの第一に上げていたんだぜ 」
「 なんだ、明智先生から聞いていたんじゃない。なのに、どう見た?・・だなんて、君!人が悪いぞ!」
「 ハハッ 実はそうなんだ 」
「 それで全然わからないんだけど、どこがミステリーなの? 」
「 その前に、ここ、守口宿・文禄堤はミュージアムそのものだ、という考え方があるんだけど、ここに立った時、たとえば、江戸時代がわかる、ということなんだ。江戸時代といったっていろいろあるわけだから、本質的なところで江戸時代がわかる、という何かがあるんだ。明智先生は、たとえば、街道のかぎ形に江戸時代が隠されている、という見方をしておられるんだ 」
「 ふむ、では“かぎ形のミステリー”と呼ぼうか 」
「ハハッ 探偵さん、頼りにしてるよ」

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