マンガが描いた戦争の時代 4

                         男の戦場ロマン

                   空の騎士道

紫電改のタカ
ちばてつや
ゼロの白鷹
本宮ひろ志


 描かれた戦場のロマンと戦場の実相とは相当に距離がある。
 戦記マンガの中で、戦闘機パイロットをヒーローとする空の戦いの物語が数多く描かれてきたのは、戦場をロマン豊かに描くのに最も適していたからだろう。
 しかし、ある程度は戦争の現実の反映でもある。
 撃墜数5機以上のパイロットを「エース」と呼称したが、狙撃兵が100人敵を倒してもエースとは呼ばない。ドイツのエース「ハンス・ヨアヒム・マルセイユ」は「アフリカの星」(アフリカ戦線で活躍・戦死)と呼称されもした。空の戦いにロマンを見るこの現実が戦記マンガに投影したということだろう。
 空の戦いのヒーローは、勇気、空戦技術、戦闘マナーを十分に備えた存在であり、空の騎士として描かれる。これが戦場ロマンの核心になっている。
 紹介したニ作品のヒーローはもちろんエースというべき存在だが、エピローグは特攻攻撃による戦死である。特攻作戦の理不尽を甘受するヒーローのマナーに誇り高い戦士の姿が描かれる。
 結局、男の戦場ロマンとは、騎士道物語になるわけで、戦場に人間性を持ち込もうと試みると「戦い方」の物語に結びつくことになる。戦場が非人間的であることはいうまでもなかろう。