マンガが描いた戦争の時代 3−2

                      少年たちの見た戦争A

                   少年の戦争


八月の友人
石坂啓 「正しい戦争」所載
 



焼け跡のイチ
いたば吉広
少年たちのいた夏 Melody of Jenny
北条司短編集所載
少年時代 
藤子不二雄A



       描かれた少年たちにくっきり影を落とした長い戦争の時代

 長い戦争の時代の物語は、平和の時代を知らない少年たちの物語でもある。確かに1945年のポツダム宣言受諾、無条件降伏によって、戦闘行為にピリオドが打たれた。
 しかし、少年たちにとって、このピリオドは「終わらない戦争」の始まりでもあった。
 石坂啓「八月の友人」は、空襲で孤児となり田舎の親戚に引き取られた少年の物語だが、転校した国民学校で出会った朝鮮出身の友人との出会いと哀しい別れを描いたものである。八月になると訪れる「友人に対してなすべきことをなしえなかった悔恨の思い」。生涯続くことになる戦争である。
 いたば吉広「焼け跡のイチ」、説明するまでもないだろうが、戦災孤児イチの物語である。B29に象徴される都市無差別爆撃によってたくさんの孤児が生まれた。学童疎開から戻ると家族が全滅していたというケースも少なくないという。終わることがない戦争である。
 北条司「少年たちのいた夏」、集団疎開から脱走した少年たち、収容所から脱走した連合国人ディブとの出会いで脱出行は波乱に満ちたものになり、少年たちの運命を変える。主人公の少年とディブ(途中兵士に殺害される)の約束。ディブとともに戦後を生きる主人公にとって、いつも隣にある戦争である。
 藤子不二雄A「少年時代」、親戚をたよって疎開した都会の少年が遭遇する出会いとわかれ。