マンガが描いた戦争の時代 3
少年たちの見た戦争 @

  
少年兵の戦争
     

少年兵は例外的な存在ではなく、軍備システムに構造的に組み込まれた存在である。たとえば、パイロット、戦車兵など特別の熟練を要する兵士養成は長期訓練が必要であり、少年の志願を前提とした職業軍人養成システムが存在した。最も著名なものに、「予科練」の呼称で知られる「飛行予科練習生」がある。海軍のパイロット養成システムの根幹をなすものであり、パイロットの多くが少年兵出身という時代なのである。事情は陸軍においても同様である。少し変わったところでは、「満蒙開拓青少年義勇軍」など少年をかなり広範に戦力視する流れが存在した。このような流れは、戦局の悪化とともに強まり、戦争末期になると、なりふりかまわぬ状況となり、「進め、少年兵、産業小戦士」などの標語が叫ばれ、マンガの場合も、少年に空や海に行こう(兵士として)と呼びかけるプロパガンダ目的の単行本や紙芝居がたくさんつくられている。要するに、少年兵という存在は、軍備システムに構造的に組み込まれることで、普通の存在になり、建前とされた志願制も戦局の悪化につれてなしくずしになり、やがてなりふりかまわないものになっていくことになる。この段階は神風特別攻撃隊など特攻作戦が常態化した段階と重なり、少年兵の戦争をいっそう悲惨なものにすることになる。

「シティーハンター」で知られる北条司氏の蒼空(あおぞら)の果て・・・少年たちの戦場」、「人間交差点の弘兼憲史氏の「雲に抱かれて」は、少年兵の特攻作戦をテーマとした秀作である。里中満智子氏の「積乱雲」との併読をお勧めする。

おがわあきら氏の「海軍少年飛行兵(立風書房 劇画太平洋戦争)は、少年飛行兵のシステム・沿革・戦闘状況など幅広く描写している作品である。

少年兵はパイロットばかりでなく、戦車その他、さまざまな兵科に存在した。しかし、マンガで描かれた少年兵の戦争となると、限られたものになる。

 さて、少年兵の兵士としての状況はどうだったのだろうか。ヨーロッパの戦場、ノルマンディー戦線におけるヒットラーユーゲント師団少年兵の全滅にいたる悲惨な戦いは良く知られているが、一般的に少年兵の戦いには悲壮感が漂う。