マンガが描いた戦争の時代2−1

           戦争と少女マンガという舞台@ 
                   
少女マンガの先駆的役割

 
消え行く少女
  白土三平 貸本少女マンガ
 行く雲さびし なるみあきら 貸本少女マンガ
          終戦から始まる戦争の物語
      広島で被爆した少女の薄幸の生涯を描いたふたつのマンガ物語

 サンフランシスコ講和条約締結後、アジア・太平洋戦争を回顧するたくさんの出版がなされます。戦記ものブームの到来です。マンガへの波及は昭和30年代初め、貸本マンガを舞台に始まり、やがて雑誌に広がります。
 戦記ものと称されたものの多くは戦場体験談であり、局地的戦場における戦闘行為描写の性格が強いものでしたが、マンガの場合も同様です。主人公たちの戦闘行為が専ら描写され、戦場における勇気友愛が彩りを添えるものでした。男の戦場ロマンを描いたものということができるでしょう。しかし、現実の戦争は空間的にも時間的にも都合よく限定された舞台で描ききれるようなものではありません。そもそも戦争とロマンの関係は、そう簡単に整理できるものではありません。その矛盾がテーマの偏在、たとえば、「空の戦い」、とりわけ「戦闘機パイロットの戦い」に傾斜する傾向をうみ出すことになります。
 
 「消え行く少女」と「行く雲さびし」はともに広島の悲劇を描き、戦場から遠く離れた所も戦闘免除の聖域ではありえないという現実、終戦から始まる戦争の存在を明らかにするなど、戦争描写に幅と深みを与える役割を果たしています。