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秋山郷の結東には美しい棚田がある。全国農村景観百選に
選ばれ「結東の石垣田」と呼ばれている。長い年月をかけて築かれた石垣の美しさは見るものを
圧倒する。
この棚田へは車では乗り付けられない。下の駐車場から入り口まで歩いて5分くらい
、農作業の邪魔にならないよう注意してください。
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開墾が始まったのは明治25年頃、この辺はどこを掘っても
石だらけの場所だけに、その苦労は想像を絶する。水は前倉から引いているそうだが、それだけでも
大変な作業だ、稲作への強い憧れと、村人の血と汗の結晶に感動した。
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石垣には気の遠くなるような歳月と労力がつぎ込まれている。
少し高いものになると3メートル位あり、城の石垣を連想する。
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農道を奥まで行くと棚田は整然と扇形状に並ぶ、ここで
秋の刈入後に音楽会や演劇を開催するのも良いと思った。どこからでもステージを一望出来、裏山は
絶壁になっていて、秋の紅葉時は屏風絵のように美しい。
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道が狭く大型機械が入れないため、農作業はたいへんだと
思う。どこでも後継者問題や減反で苦しんではいるが、それでもこの棚田が美しいのは地元関係者の
熱意のたまものだと思う。
近くで作業していたおじいちゃんに「県や町から何か補助金でも出るんですか?」
と聞いたところ、「そんなものは無いよ、もうちょっとしたらまたこらっしゃい、石垣の草まで
一斉に刈り取るから」とおっしゃっていました。こんな人たちに支えられて美しい景観が保たれて
いるわけですが、ポツポツと荒れた田んぼが増えているようです。
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中には崩れた石垣をブロックで直した跡がある。
先ほどのおじいちゃんに聞いたところ、腕の良い職人が少なくなってきたことと、石垣より
ブロックの方が安上がりだとのことでした。
役場の地域振興課に聞いたところ、災害復旧事業では一番安い工費で施工できることが条件で補助金
をもらっているのでブロックで復旧するしかない!と言っていますが本当でしょうか?
全国農業景観百選ともなれば、指定した省庁の指導や補助があってもいいはず、地元の努力だけでは
後何十年この景観が保たれるでしょうか。
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棚田が出来た頃と違って、田植え機やコンバインが入れる田んぼにしなければ
耕作放棄田は増えるばかりです。
特に上段の田はススキが生い茂り木が生えて状態です。機械が入れたら耕作が出来るのに・・・村人の気持ちも理解できます。
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役場地域振興課から観光協会へ突然の工事予告があり図面を見せていただきましたが、
棚田の上部に新たな農道が建設され、旧道との連絡道として2.5m拡幅された縦道が5本も出来るというものでした。
観光協会としても景観を壊すとして反対しましたが、すでに図面も出来ており入札業務も終わっているとか・・・
地域振興と言いながら大事な観光資源を自ら台無しにしています。
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旧道と新道を結ぶ枝道が広げられました。この状態ですとそれほど見た目は
悪くありませんが・・・
来年の春にはコンクリート舗装になります。役場では表面を洗い出して砂利を表せば目立たないと考えているようです。
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複数の道を切り開いたことによって今まで行けなかった田んぼにも機械
が入れるようになりました。
長年放置した田んぼでは直ぐには稲作は出来ないので、まずは畑で復活するそうです。今まで鍬一本で耕してきただけに
機械化による石垣の崩壊が心配されます。
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その後地元説明会に観光協会も同席し、棚田の景観保全を訴えたが、
農業の機械化で農道の拡幅は止められず、やむなくカラーコンクリート舗装を要望した。
2010年、現場に行ってみるとコンクリートの舗装面は思ったよりも目立たず安堵した。また右側の法面にはコンクリートブロックが積まれていたが、
石積に改良されていた。
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言いたいことだけ言って、自分たちが何もしないのでは石垣田は復活しません。
石垣田保存会「けっと」は微力ながら、棚田の上段から草を取り除き、作物を植え始めました。
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棚田を縦につなぐ農道のコンクリート舗装も、目立たない仕上げになっていた。
その切り開かれた農道脇ではトラクターによって開墾され、蕎麦が蒔かれました。
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鎌で草を取り除くと徐々に石垣が姿を現してくる。まるで密林の中から遺跡の一部を発掘しているような
作業です。
明治期から田んぼを持ちたい一心で開墾続けた、その血の出るような苦労が少しは解ったような気がしました。
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まだ始まったばかりの保存活動ですので、一度に復元範囲を広げることが出来ません。
出来るところからのんびりと行きたいところですが、次から次へと草が覆ってきます。
石垣田保存会「けっと」ではファイトある仲間を求めております。ちょっと覗いてみたいという方はこちら