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EF50/1.0Lと超大口径レンズ

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EF50F1.0LはEFマウントの特徴的な仕様であるマウント径が広くてフランジバックが短いと言う点がこのレンズのために決定されたという話もあるほど、サンニッパと並んでまさにEFレンズのフラッグシップ的存在といえます。
1989年のEOS-1発売時に同時にリリースされましたが現在は生産されていません。
 7群11枚, 60cm(0.11倍), USM, 985g



キヤノンはコストを勘案しながら90%の力で必要十分な性能のものをだすという優等生的な印象もあります。しかし、このレンズに関してはコスト度外視で当時のもてる力のすべてをだしているといえるでしょう。それほどオートフォーカス一眼レフにおける50mmで"F1.0"というのはハードルが高いものであり、もちろん現在にいたっても50mmF1.0の一眼レフ用レンズは存在していません。

とにかく重いレンズで常用レンズとはいえませんが、やや小型のD60でもレンズ側をホールドすればそれほど持ちにくくはないと思います。1Dと組み合わせるとEF28-70/2.8Lほどの重さがあるので長時間スナップに使うのはややつらいといえます。
デジタルに使うとボケはフィルムほど大きくはなくて、ボケ量に関してはD60だとF1.0がF1.48程度になり1DではF1.25相当になります。(露出に使われる明るさはもちろんF1.0です)

また初めは電子リングフォーカスはトルク感がなく軽く回りすぎると感じるかもしれません。ただはじめからマニュアルですべて合わせると違和感があるけれども、実際の使用はまずAFであたりをつけてフルタイムマニュアルで微調整をするという形なのでこのさいに少し指でまわすのにはこの方がむいていると思います。この辺はAF主でMF従という新しい形に適応させたものといえるでしょう。

AFスピードについてはかなり遅いのですがリミッターをかけるとやや改善されます。ただそれでもEF50/1.4などには比べられないほどゆったりと動作します。フォーカスリミッターはついていて0.6m-と1.0m-の二段階にAF速度が変えられる。
意外とD60でも使えるのは大口径の明るさゆえかもしれませんが、フードをつけるとD60ではAF補助光をブロックしてしまいます。


D60,最至近
 F1.0開放

このレンズは標準レンズでありながら7群11枚ものレンズを用いており、そのうち非球面が2枚、高屈折率ガラスも4枚使用しています。非球面は2枚とも研削非球面です。
全群繰り出しだが前玉非回転でフレアカッターが固定で内蔵されているようです。
画質については開放・至近という大口径にはきつい条件においてシャープネスとコントラスについてやや低めですが、距離をおけば開放F1.0でもシャープさを感じるので大口径レンズが至近距離で球面収差が増大するという現象を実感できます。ちなみにフローティング機構がついていて距離によっての収差変動は極力抑えられています。
F1.1とかF1.2のようにわずか絞るとかなりシャープネスが向上するように感じます。
ただし最短距離自体がやや不満な点でもあります。

ボケも大きくはくずれませんがボケ量の大きさとあいまってかなり好みの分かれるところでしょう。また点光源のボケには食の影響のせいかかまぼこ状になりますが、D60においてはトリミングされていることもあり悪くはなく1Dでも悪くはありません。
またファインダーとかなり異なって見えるのでプレビューで確認するのが良いでしょう。

発色はやや暖色傾向にあるけれども鮮やかさと豊かさを感じます。
もともと高屈折ガラスを使用したレンズはその色吸収率のせいでカラーバランスが崩れるようです。それをこのレンズは4枚も使用しているので、このために専用のコーティングを用意したとキヤノンの「Lレンズカタログ」には記載されていました。

描写性能に関してF1.0を別にすれば50/1.4と同じかといえばそうでもなく、トーンの抽出など全体的により質感表現には優れていると思います。ただコンタックスのプラナー50/1.4と55/1.2のような大きな違いはありません。もっともP50/1.4とP55/1.2の間には単に性能の違いという前にほぼ25年隔てた時間の問題があり、もともと描写傾向が異なっているといえます。
他方でEFの方は逆に50/1.4の方が50/1.0より新しいこともあって差は小さいといえるでしょう。


他に大口径レンズとしてはキヤノンではレンジファインダーキヤノン7用の50mmF0.95(1966)などがありました。これも後玉が大きくて、そのために連動ピンがはまらずに後玉の一部が切りかいてありました。EF50/1.0Lでも電子接点のところが切りかいてあるのと通じるところがあるのはおもしろいことでしょう。
レンジファインダーレンズではもうひとつのF1.0レンズであるライカMのノクチルックスがありますし、こちらもとてもよいレンズです。
F1.0より明るいレンズとなるとNASA向けに作られて後にキューブリックが映画用に転用したプラナーF0.7レンズもあります。またわたしが知っている限りで写真を一応撮ることのできるカメラで最大の口径比を持つものはツァイスが過去のフォトキナで発表したコンタレックスのスーパーQ Gigantor F0.3/40mmです。この当時は日本でレンズの明るさ競争がされていた時代で、(描写を別にして)明るいだけならいくらでもできるよ、というツァイスのメッセージがこめられたものでした。ちなみにスーパーQとはクレージーなというような意味のようです。このレンズはコンタレックスに特別マウントを介してつけられて、絞りもピントリングもあり一応は写真が撮れたようです。

(2003.9.21)