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2004/11/24 update

ライカチャット2004


ライカ・デジタルモジュールR(以下DMRと略す)の開発の特徴は当初から情報を一般に開示すると言うオープン方針にあった。
開発発表と同時に昨年の6月にライカ社スタッフを交えたインターネット上のライカチャットが行われ、ユーザーとライカ社が直接会話をした。その後はDMR専用のメーリングリスト(ライカの一般案内とは別)に登録した人には数カ月おきにPDF文書が送られてくるようになった。
ここでまず昨年のチャットからここまでを簡単に振り返ってみる。

昨年(2003)10月31日にはLFI(Leica Fotografie International)からの抜粋としてコダックのCCDの報告、KAF-1010CEというセンサーの紹介とライカとイマコンとのジョイントに対するコダックの技術者Brian Benamati氏のインタビューがあった。センサーはわりと早期に出来ていたことがわかる。

次に今年(2004)の2月11日に一枚パンフレットでイマコンでの開発者のミーティングの様子とプロトタイプらしき回路とバックの写真が紹介された。このことからオンタイムに開発が進んでいることを伺わせた。

5月7日にはまたLFIの抜粋としてイマコンへの訪問記がのり、開発中のバックを使用したチャートテスト撮影の様子や、かなりできあがったバックの内部写真が公開された。

7月8日にはデジタルに対応するR9やライカレンズの製作精度の高さを強調し、現行でもデジタル対応ができていることを示した。またバックに使われる(ダスト)プロテクトフィルターでどのくらい光学性能が減少するかの興味深いグラフが掲載されほとんど画質に影響ないことも強調された。
またCCDへの入射角度の問題がマイクロレンズの進歩によって解決されるとともに、おもしろいことにRマウントが古いためミラーボックスがやや大きくフランジバックが必然的に長いため、それが逆に有利になるという興味深い考察が載っていた。

そしてその後はご存知のようにフォトキナでのプロトタイプ展示、国内外での記者会見とつながる。
(フォトキナの後にはLeica world newsにMike Scharfscheerのフィールドレポートが載っている)

年末にそろそろアナウンスが待たれたところにDMRのデリバリーが来年の4月以降になるという発売時期の延期の知らせが届いた。そして再びライカチャットを行うという案内が添えられていた。

今回のライカチャットは11/23日の現地時間(CET)5:00PM(日本時間の24日深夜1:00)から2時間に渡って行われた。ライカ側からは5人の参加があった。
チャットは前回同様にライカのサイトからログインして行い、ライカ社スタッフが直接回答をする。今回も英語ルームとドイツ語ルームに分かれた。

またこれと同時に新しいサンプルが公開された。サンプルのページ
たしかにサンプルを見ると色味とかシャープさは現代ライカレンズで撮ったと言う感じはある。現行レンズを使用して1.37というクロップを考慮するとデジタルモジュールと現行レンズの組み合わせは問題ないようだ。
また問題とされているソフトウエア・モアレフィルターは効果があるようで、シャープさとモアレの少なさは両立している画像である。ハイライトも悪くない。ただしISO100でも暗部ノイズがあって全体にかなりノイジーな印象を受ける。
あたらしいサンプルは新しいR28-90とR19/2.8(教会)で撮ったもので開放及びISO100で撮影された。以前の女性のサンプルはAME(Apo Macro Elmarit 100)で撮ったものである。

チャットではDMR以外の質問は基本的に受けないが、なぜかDigilux 2に関する質問も多く舞い込んだりした。ライカファンも多様化したのだろう。
また所属するエージェンシーで60人中一人ライカRユーザーと言うオランダの写真家が絶対遅れるな、と激を飛ばす一幕もあった。
ライカ社スタッフからはなるべくフィルムも残したい、フィルムで撮るのもいいじゃないか、それゆえデジタルとフィルムの共存できるDMRは良いと言うメッセージが伝わってきた。

簡単に内容をまとめると日本市場には延期によるインパクトはドイツ本国と同程度で、延期を踏まえてバックオーダーまで勘案すると2005年の夏の終わりまでにはオーダーされているもののデリバリーをしたい。価格とスペックには変更はない。
またTTL問題を含めてR8とR9には違いがあり、やはり既存のカメラにバックをつけるというアプローチにも問題があることが浮かび上がった形だ。

以下に今回のライカチャットから抜粋した抄訳を記す。2004年のチャット原文はこちら
同じような内容はまとめている、英語ルームのみの内容である。またライカ本社の発言であり、代理店の見解は異なる可能性があることを注記しておく。



*デリバリーについて

アナウンスしたように来年の4月に発売延期となる。バックオーダーも含めて2005年の夏の終わりまでには注文分を供給したい。

今回の延期はいくつかの部分の開発の遅れによるもの。それらはオートホワイトバランス、ソフトウエア・モアレフィルター、それと速度向上(speed enhancement)である。

海外でもドイツと同時期に供給開始される、また延期に関して値段とスペックに変更はない。

R9とDMRのセット売りで割り引くと言うことは考えていないがエントリーのためのR9のレンズセットなどはありうる。

*レンズとデジタル対応と画質について

デジタル対応レンズの新たな開発は考えていない。すべての(現行)ライカレンズはDMRで十分な性能がある。

最高性能のレンズのみ選ぶかというと、同じプリントサイズで比較した場合にフィルムと同じようなレンズの差が出るということだ。

今後について言及できないが、(当面は)1000万画素で十分であり、フルサイズCCDのカメラは技術的に難がある(現行のバック方式ではということ)。

LEICAFLEXのレンズなど古いライカレンズでも制限は特に認識していない。ただし性能はもちろん最新のものが性能が良い。
(#ミラーアップするスーパーアンギュロンはどうだろう?)

ROMレンズは必須ではないが、ビグネッティング(周辺減光・けられ)や絞り値、また装着レンズ情報をDMRに送っている。ある状況ではそれが生かされることがある。

総合的に解像度は中判に劣るがシャープ感は同等と考える。

*CCDについて

CCDのマイクロレンズはライカ用に設計されている。

CCDの冷却は考えていない。

ローパスはついていない。ソフトでモアレをあるパターンでサーチして取り除くことで得られる。

チップのQE(quantum efficiency)ファクターは室温・iso100で70近くのSNRが得られる。

*問題点について

1.長時間露出問題(R8とR9の違いにもからむ)

DMRでは基本的にバルブ開放は使用出来ず、16秒が最高の露出時間となる。ただし今後の改良の余地がないわけではない。

長時間露光でノイズを減らすモードはない。

2.TTL調光問題(R8とR9の違いにもからむ)

フラッシュの調光についてCCDはフィルムと違って反射が多いので従来TTL方式では問題となる。
現在のR8やR9では対応できないのでフラッシュを使うときはTTLは使えずに、SF20(あるいはSF24D)でAモードを使わねばならない、TTLが必要であればFかHSSを使えとのこと
メッツとSCA経由のときにTTLを使いたければHSSモードを使ってほしい。

*R8とR9の違い

(内部変更が多々あるであろう)R8のすべてにつけられるか、ということについてはYES。ただしR8とR9では下記のような違いがある。
こうした違いはまだ確認途中のものもある。

R9 - カメラのB位置を使って16秒露出ができない、カメラのシャットオフでDMRも電源が切れる(連動している)、つけたフラッシュがTTLモードになっているとシャッターが切れない
R8 - カメラのB位置を使って16秒露出ができる、カメラとDMRは別にスイッチのオンオフが必要、つけたフラッシュがTTLモードになっていてもシャッターが切れる

HSSはR9のみで使える。

*操作・運用について

何回バックを取り外しても損耗に関して問題はない、プロユースに耐える。

バンドルされるFlex Colorを使うとリモートでDMRを使うことができる。

2G以上のSDカードでもファームアップで使用可能になるだろう。

確認画面での拡大表示は可能である。

1Gカードに状況によって150-500枚入る。

ユーザープロファイルで3人分のパラメーターを別に管理できる。

バッテリーは一日持つ程度は十分と考える。充電は2時間程度。

(イマコン独自の)オーディオヒストグラム(音程の上下によるヒストグラム)も付いている。

多重露出はできない、フォトショップでやってほしい。

RAW/Jpeg同時記録が実現できるかどうかはまだ不明。

*ソフトに関して

バンドルされるFlex ColorでRAW現像すると16bitの画像が得られる。

ファームウエアのアップデートはSDカードにネットから落としてDMRに認識させることで行う。

バンドルソフトはACDSee, Photo Shop Elements Flex Color(RAW現像などを行うイマコンのソフト)となる。
英語対応のみとなるだろう。(日本の代理店がどうするかは不明)

*今後とデジタルMなど、その他のトピック

DMRは特別なケースであり、デジタルMを含むほかの開発内容については答えられない。

デジタルMについてはDMRのように開発を公開していく考えはない、リリースの直前まで公開しない(おそらく2006のフォトキナ)DMRとは別なCCDでM(RF)ライカに適合するマイクロレンズを使った最低1000万画素のCCDとなるだろう。
PMA2005にもプロトタイプを出す予定はない。

これ以上のライカチャットをDMRのためにはやる予定はないが、Newsletterは続ける。

アーウィン・プッツ氏のRレンズコラムはストップしているが数週間以内に再会される。

ハッセルとイマコンの合併についてのインパクトはという質問に、なんらかの影響がないとはいわないが開発は順調に続いている。

CCDのモジュール構造みたいなのは考えていないが、最新のハードにアップするための便宜のようなものは考えている。

メインターゲットはネイチャーやファインアートであり、ネイチャーのように温度条件が厳しい世界ではデジタルよりフィルムの優位性があると思う。そこがDMRの利点だ。

DMRは"Made in Germany"となる。

モノクロデジタル(コダックのDCS760Mのようにベイヤー無しのモノクロ専用という意味)はライカらしいので人員に余裕があったら作りたい。

デジタルMとRができてもフィルムカメラは作り続ける。



(ライカチャット2004はここまで)




(以下はライカチャット2003のときのもの)


2003/6/25

これは2003年6月25日のライカ・デジタルモジュールR(以下DMRと略)のインターネット発表に続いてCET18:00から行われたライカチャットのログを抄訳してテーマごとに再構成したものです。(内容の開示は許可されてますが転載しないでください)
ライカチャットは英語ルームとドイツ語ルームに分かれて、それぞれ4人ほどのライカ社スタッフが一問一答でゲストの質問に答えます。
かなりな盛況だったらしく、500人の入室制限を越すほどだったらしい。それで当初予定されていたCET18:00(日本時間深夜のAM1:00)から一時間半の予定が結局CET20:00まで行われました。
またこの機に及んでの便乗質問も多数ありました。

原文はこちら(ライカ社ページより) ドイツ語ルームのログはこちら

ちなみにライカデジタルモジュールR自体についてはこちらのライカのページ参照
*発表時のカタログからの情報は下記の通り
デンマークのイマコン社がバックを開発してCCDはコダックがこれのための新開発のFT方式1000万画素、画素ピッチは6.9μm
フルサイズではなく1.37倍の換算となる(26.4mm x 17.6mm)、2004年のフォトキナで実機公開予定
値段は4500ユーロ程度、ISOは100-800、メディアはSDとなる、電源は新規開発のリチウムイオン
市場に出ているR8/9にまったくの無改造で装着可能でレンズはすべてのレンズが可能とのこと
変わったところでは音によるヒストグラムシグナルを可能にしています


*全般・開発に関して

プロダクトの現状はコダックとイマコンと契約を結んでスペックの詳細を詰めてフィージビリティスタディをはじめたというところ。
つまりプロトタイプのようなものも現状では存在しない、センサーも開発中である、予想図もサンプルのようなもの。

発売に関しては2004年フォトキナの6ヶ月以内にはじめたいとしている

PMA2004には間に合わない、あくまでフォトキナ2004にプロトタイプが登場してサンプルもそのときになる

一年前にアナウンスするのは早過ぎないと思う、なぜなら現在技術は飽和していて近い将来にはもっと開発サイクルは遅くなると考えられる(つまりデジタル市場も成熟(matured)されればライフサイクルも長くなってライカ風の良いものを長く提供するという考え方も適合するということらしい)
ライカがだすのは一番初めではないかもしれないが、出すときは絶対的なクオリティでだす

なぜ新型のデジタルSLRでなくバックにしたかというと、長年の互換性を図るためとユーザーが慣れ親しんだものを使えるようにしている

直接の競合相手は想定していない

これはフィルムとの決別か、との問いに対して ライカは将来的にもデジタルとフィルムのバランスをとっていくとのこと
テレセントリックの設計は必須ではないと考えている
今後も特にデジタルに特化したレンズは設計しない

なぜいま開示したかというと、多くのユーザーはRシステムを使いたいだろうしRもデジタルに対応していると伝えるためだ
ここ数週間でうわさが広まったところをみると意識は高いといえる(反応を見るため意図的に情報をリークしていたとも考えられる?)

これからもDMRの進展についてはインターネットで公開していく


*互換性に関して

R6.2とかR7以前とか昔のタイプについては考えていない
R8/9に限っているのは接点を通じてなんらかの情報をやりとりしているから
R8/9ならばいつのでも取り付けられる

ソフトはPCとMacの両方使える

フルサイズやRマウントの変更は現在考えられていない
AFボディも互換性のため考えられていない
ライカはMFこそがRレンズの高性能を生かす道と考えている
バックはあくまでRの現行ユーザーのためのもので新しいカメラシステムは研究中である(この辺は回答者によって答え方がまちまち)

Rレンズをキヤノンボディにつけるようなアダプターは考えていない。Rレンズの要求に合うのはRボディだけだ

ROMレンズだけでなく過去のレンズが全て使える

なぜイマコンを選んだかというとハイエンドのデジタルバックとスキャナーに経験豊富だから
(フォビオンは選択に無かったかということに対して)われわれから見るとフォビオンよりコダックの方が適切である
パナソニックとはこの件では関係が無い


*CCD/画像処理関係 

なぜフルサイズではないか?
1.R8/9用のバックタイプとした時点でゲートに入れるためにフルサイズは無理
2.周辺光量問題

CCDの詳細は後日コダックから発表になる

CCDはフレームトランスファータイプ
カラーフィルターはGRGBベイヤー配列

B/Wモードはあるが補完なしというわけではない(カラーフィルターははずせないということ)

ゴミ対策についてはバックとしてはずせるのでクリーニングがしやすい(ので特別な対策は無い)
CCDユニットのカバーについては考慮されている

CCDのモジュール化は考えていない、CCDに付随する電子機器も全て交換になるから
ただしcommercial trade-ins could be feasible in the futureとのこと

赤外撮影には対応していない

モアレフィルターのスイッチはファブリックなどの素材感を出すものであって、Apo/Non-Apoレンズなどの解像力の差とは関係が無い

14ビットADで主要な色空間はすべて取り扱い可能となる

コダックによると6.8μmピッチでRレンズに適合したフィルム並みの画像ができるとしている

ISO800以上では画質が容認できなくなると考える

*以下ドイツ語ルームより

ローパスフィルターは搭載せずに調整可能(?)な"ソフトウエアローパスフィルター"をバック側に載せる模様。
ソフトウエアフィルターはPC上でなく、バックの回路に入っていて制御できる
どの程度調整が可能かなどの詳細はまだ決まっていない

ソフトウエアで歪曲収差や周辺減光を調整するようなものは考えているか?について現時点ではなんともいえないが、研究はしている

チップの熱問題(と付随するノイズ問題)についてはIMACONの高い技術力で克服できる


*入出力に関して

SDカードスロットはひとつ

なぜSDカードか、という質問も多かった
SDの選定理由は「小型であることと転送速度」
(まあこれに関しては松下との絡みもあると思いますが)

IEEE1394はAppleの提唱するFirewire800規格に適合させたい


*操作性について

装着に関しては、
1.視野がマスクされたスクリーンを取り付ける
2.このスクリーンはフィルムのときも使えるようになっているのでフィルムとデジタルバックを交互に使うときもいちいちはずす必要は無い
スクリーンは1.37xでマスクの線が入っていて(これはSD9のようで外が見えるようになっている)Mライカのフレームのようなもの
3.バックは工具不要で1-2分ですえつけられる(はじめから装着して販売することも考えられている)

(RXのような)フォーカスの電子確認方法については計画していない
ただMのビューファインダーマグニファイアーのようなものがつくかも?

プレビュー画像はフォーカスチェックのため拡大できる

日本語メニューも考慮されている



*モジュール関連

シャッターラグについての詳細は現時点では言えない

フレームレートは1.5FPS以上(おそらく1.8FPS)、連続10枚程度
フレームレートより画質優先で考えている


オーディオヒストグラム機能について、オーバーになると低い音から高い音になる、アンダーでは高い音から低い音になる、適正では同じ音程で鳴る


DMRはバッテリーのほか、スタジオ用に家庭電源からも取れるようになる
PCからリモートキャプチャーできるようにする

デジタルバックの大きさはカメラマンの鼻がぶつからないように考慮されている
重量はモータードライブ相当とのこと


*その他 

Mデジタルバックの可能性については、
現在では考えられない、Mライカの場合はレンズ後端から16mm程度しかないのでセンサーになす角度が急すぎてデジタル対応にそぐわないとのこと。
この質問が一番多くて回答者もコピペして答えていた
あまりに質問が多いので現状では無理だか、あとでは考えると最後の方に付け加えている

デジタルPRADOVITのようなものは計画していない

中版については考えていない、またローライのような中版メーカーは一般に協業するには小さすぎる

R21-35レンズはDMRに有効だが、新しい超広角レンズは考えていない(この辺も回答者によって答え方がまちまち)
あたらしいMレンズが2004フォトキナ前に考えられているが公表できない(この辺も回答者によって答え方がまちまち)

ライカの価格は高くなっているけど安くなるのか?には将来的にはUSドルベースで下がるだろうとのこと。

(DMRとは関係ないけれど便乗質問で)0.85のブラックペイントMPは出すのか?には、それは要求によって可能になるのでローカルディーラーに聞いてくれとのこと

手ぶれ補正は考えているか、については市場要求を調査中だがコメントできない