冬は澄み切った夜空に星ぼしが美しい季節ですね。
The night has a thousand eyes という曲を、ご存じですか。
夜は千の目を持つ、という、スタンダードなんですが、
こんな小説があるんですよ。三文スペースオペラなんですがね。
…細かい所は忘れてしまったのですが、そう、
舞台は火星の辺境の酒場、熱線銃(ブラスター)一丁だけが相棒の拳銃無頼、
そんな荒くれ男が、別れた女をふと思い出したとき、
彼女の歌っていた歌の歌詞の続きが、どうしても思い出せなかったんです。
夜は千の目を持つ、そして、…
思い出せないまま、つまらないことで命を賭けた決闘に破れ、
今わの際に、やっとその歌詞の続きを思い出す。
…夜は千の目を持つ、
そうして昼は、ただ一つ。
男がこと切れたあとには、冴え冴えと、地球光が荒涼たる砂漠を照らすばかり…
…読み終えた後の、なんとも寂しい荒涼としたその雰囲気に、
しばらくは本当に窓の外は辺境の砂漠じゃないかと思ったほどでした。
絶対零度の宇宙空間を見上げると、そこは降るような星空。
その億千もの星の冷ややかなまなざしの下、どこからか酒場女の歌う声がする。
夜は千の目を持つ、そうして昼は、ただ一つ
…The night has a thousand eyes.
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