初めて競馬の馬を見た時のこと。 輝く毛並み、澄んだ瞳、均整のとれた美しい体..思わずため息が出ました。 「栗毛」はたてがみも体も褐色、「鹿毛」はたてがみが黒く体は褐色、「芦毛」は灰色で年齢と共にだんだん白くなる..毛の色を覚えるのが面白くなりました。 何度か見るうち、レースはただ早く走る競争ではなく、それぞれの馬のペースの取り方に違いがあることがわかりました。とにかく先頭に立ち、最後まで走り通すタイプ。後ろの方でじっと耐え、ゴール手前でダッシュをかけるタイプ。それぞれに醍醐味があり、うまくいった時には大喝采、よくやったと、馬にも騎手にも惜しみない拍手が送られます。 良いレースは舞台を見ているようです。ストーリーをはらはらと追い、役者の見事な演技に見とれ、そしてクライマックス、大団円を迎えるのか大いなるどんでん返しに度胆を抜かれるのか..。 一流の役者が芸に磨きをかけるように、馬たちは大勢の人々の手塩にかけられて育ち、この日のひのき舞台のためにトレーニングを重ねてきたのです。 馬場の状態、天気、どの馬がペースを作るのか、騎手の作戦は.. 幸運とそして背中合わせの不運と。 ..脚本を手がけるのは、運命という名の神です。 |