落語ブラリ散歩

都税事務所となめくじ長屋

ブログ掲載 2017/08/12


 先日、地下鉄半蔵門線の錦糸町駅を利用していて、駅構内で下記写真のポスターが掲示されているのが目に入りました。 「墨田都税事務所移転のおしらせ」と題するこのポスター。墨田区業平一丁目の都税事務所が建て替えのため両国の仮庁舎で業務を行っていたのですが、この度建て替え工事が完了し、8月14日、元の業平一丁目の地に新庁舎となって再移転します。

墨田都税事務所移転
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 でですが、なぜ「落語」の情報を扱うこのページで「税事務所」なんという世にも無粋な施設を取り上げるかというと、この地がまさに昭和の名人、五代目古今亭志ん生が貧乏のどん底時代、1928(昭和3)年4月から1936(昭和11)年2月まで約8年間にわたって住んだ、伝説の「なめくじ長屋」の所在地なのです。
 最近、私は都内の史跡巡りをチョコチョコとしているのですが、その中のガイドブックでなんと、この「なめくじ長屋」についての解説と地図とが記されていました。以下はその本からです。(『江戸・東京歴史の散歩道(1)中央区・台東区・墨田区・江東区』街と暮らし社刊より)

>なめくじ長屋跡

>税務事務所の裏手には、落語家の古今亭志ん生が
>住んでいた。「なめくじ長屋」と呼ばれた6畳と
>2畳の長屋で、浅草の楽屋にやってきた変な人か
>ら「家賃のいらねえ家があるんだがね…」と勧
>められて、引っ越したところ。その長屋は関東大
>震災後すぐ建てた家で、「池みたいなところを埋
>め立てたもので、土地が低いから、ちょっと雨で
>も降ろうものなら、あたり一面海みたいになって、
>家の中に入ってくる…、夜になって電気をつける
>と、蚊がそれっとばかりに押し寄せる…。10セン
>チ以上もある茶褐色した大ナメクジがあっちから
>もこっちからも押し寄せ、家の中の壁がナメクジ
>のはったあとがぴかぴかと銀色に光っている」と
>いった状態だった。
>志ん生一家はここに昭和11年2月26日の2・26事件
>の日まで住んでいた。「となり近所の人々とよく
>気が合って、人情が細やかなので、なんだか離れ
>がたい心持ちになっちゃた」と『なめくじ艦隊』
>に書き残している。

志ん生・なめくじ長屋地図
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 この都税事務所の裏手が、なめくじ長屋のあった場所だそうです。「五代目古今亭志ん生・自宅跡(なめくじ長屋跡)」なんて史跡の解説版でも欲しいところですが、地元の方が嫌がるでしょうか。あるいは落語ファン有志で金を出し合って、この地に記念の「なめくじ」をかたどった石碑なんかを建立したら楽しいだろうな、なんて考えてしまいました。税金関連のお役所なぞに行くのは気が進まないでしょうけれど、機会があったら足をはこんでみたらいかがでしょうか。

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