めか馬(めかうま)

六代目春風亭柳橋




 女うじなくしてたま輿こしへ乗るとか申しまして、女の出世というものは、一足飛びで、当今ただいまの世の中にも随分芸者などが華族や大官たいかんの奥さんになっているという例もございます。とりわけ昔はお大名がおめかけ沢山たくさんに置きましたもので、それは何かというと、先祖の勲功くんこうによって、何万石をりょうすという血統が絶えますると、そのいえが断絶する。それがため子供が大切ゆえお妾をお置きになったという訳、しかしこれも長者でなければ出来ない事でございます。丸の内の赤井あかい御門守ごもんのかみというお大名、あるお屋敷へお出でのお帰り道、わずかのお供を従え、御通行の折柄おりから、今裏店うらだなから出て参ったのは豆腐でも買いに行きますのか、右の手へ味噌漉みそこしを持ち、怪しげな染め返したような着物に、細い帯をグルグルと巻き、前垂まえだれというほどの物でもなく、ただ前へ襤褸ぼろさがってるというような塩梅あんばい、髪も乱れ、年の頃は十七八、左の手でたもとを持って、何のためか後ろへ廻してこれをお尻の所へ当て、出掛けようとすると、丁度お大名のお通り、路次口ろじぐちへ立ってこれを見ておりますと、お駕籠かごの中から殿様がかの娘を御覧になりました。大名は女の鑑定めききがなかなか上手な者と見えまして、化粧もせず、髪を乱しておってあれだけの美人、これを一磨き磨き上げたら大したものだろうとお目に留りました。ぐお駕籠脇の侍を召され、何か内所話ないしょばなしをして、そのまゝお駕籠はスーッと行ってしまました。かの侍が裏へ入ってみると、大長屋おおながや、井戸があって少し離れて、めの総雪隠そうせっちんというのが昔の裏屋の紋切形もんきりがた素裸体すっぱだかになった奴が井戸の中に首を突込んでいるのは、如何様いかさま釣瓶つるべを落としてそれを取ろうとしているものか、
侍「コレ/\町人、コレ」
○「ヘエ、ヘエこれはどうも相済みません。裸体はだかでおりまして、どうも誠に……、只今釣瓶つるべを落としまして、私が月番つきばんだもんですから、糊屋のりやばばあがグズ/\言いまして、片ッ方ではどうも釣りにくくっていかねえの、ヤレどうのというんで、忙しい中で、急いで取ろうと思うとこけが付いてるんで、すべって落っこッちまうんでいがりがありゃァきに取れるんですが、家主おおや吝嗇しみったれだもんだから錨がねえんで、仕方がねえから種々いろいろ工夫をして中へ首を突っ込んでいたんで、誠にどうも裸体はだかで済みません。何か御用でございますか」
侍「イヤこの長屋を守る家守やもりはおるか」
○「ヘエ、井戸さらいをチョイ/\いたしますから、イモリはおりません、守宮やもりは壁から湧くもんで、晩方ばんがたになって下見したみを見ると大抵たいてい二三びきっております」
侍「イヤ虫の守宮やもりではない。この長屋の支配しはいをする者をいうのだ、貴様きさまか」
○「イエ私じゃァございません」
侍「長屋の支配をする者はどこだ」
○「ヘエそれは家主おおやさんでございます」
侍「なんだ」
○「ヘエ家主おおやさんなら、旦那御苦労様でも、モウ一遍外へお出なすって、右ッ角に米屋がございます。その隣りが瀬戸物屋で、その隣りで無断を少しばかり売っておりますけれども、自身番へ出て、まち役人とかなんとか言われておりまして、大した役に立つじじいでもありませんけれども、でもマア高慢なつらをしております。商いといったところが店子たなこの者とか、町内の者が義理に買いますが、何を買っても高い家で……」
侍「余計な事をいうな、それが支配を致す者か」
○「左様でございます。角から三軒目、二間半間口にけんはんまぐち草箒くさぼうきが外に突っ立ってゝ、たわしだの蝋燭ろうそくだの、線香だの、そんな物を売っております。二階の窓の外に三尺ばかりの物干ものほし見たような物が出来ています。このじいさん植木が好きで、好きッたってろくな物はございません。縁日へ行って負かして買て来るんで、つまらねえ植木ばかりで、ケチな松の木が擂鉢あたりばち鉢巻はちまきをした奴にうわってます」
侍「何だ、鉢巻とは」
○「ナニ擂鉢はち微瑾ひびってるんで、たがが掛かっていますんで、植木棚が腐ってるから危のうございます。この間もそういったんで、買物に来た人の頭にでも落ちると大怪我をするといったんですが、やっぱりそのままになってます。これを出て右へ曲るとぐに知れます」
侍「ウムわかった……。コレ/\この先の米屋の裏長屋を支配するのは其方そのほうか」
家「ヘエ、米屋の裏はズッと私が支配しております。何ぞ長屋の者が粗相でも致しましたら、私が成り代わってお詫びを致します。どうも無作法の奴ばかり沢山におります裏長屋の事でどういう粗相を致しましたか、お詫びを……」
侍「イヤあやまるには及ばん。アノ長屋に年は十七八、扮装なりも粗末なら、髪も乱しておるが、誠に容貌みめ女子おなごがいるが、あれは何者の娘である」
家「ヘエ、長屋に十七八、ヘエ/\、あれは少し不具者かたわでございまして、十七八には見えますが、まだ年は十三と少しばかりで、誠にどうも相済みませんが、子供の事ゆえ何分なにぶん御勘弁を願います。親孝行者でございまして、親父おやじは三年あとになくなりまして、兄貴あにきがありますが、これが破落戸やくざもので仕様がございません。親子三人貧乏暮らしを致しております」
侍「ウーム、ハテ困ったな、十三ではどうもいかんな」
家「ヘエどういう粗相でございますか、誠に親孝行者ゆえ……」
侍「イヤ粗相を致して、それをとがめに参った訳ではない。身共みどもは丸の内赤井あかい御門守ごもんのかみの家来赤熊あかぐま軍十郎ぐんじゅうろうと申す者である」
家「ヘエ」
軍「実はあの娘がかみのお目に留まって、めかけに欲しいという仰せであるが、十二三ではどう致し方がない」
家「アヽ左様でございますか、それは有り難う存じます。何か粗相を致した事と存じまして、十三と申しましたが、全くギリ/\のところは十八で……」
軍「なんだ十八歳、髪は島田に束ねておるが、町家ちょうかの者はおっとある者でも島田まげに致しておる。亭主など定まりおるのか」
家「どう致しまして、まだなかなか亭主などは持ちません。兄はあってもなきが如く、阿母おふくろ対手あいてにあァやって襤褸ぼろを着て、髪を乱して一生懸命内職をして働いておりますが、実に感心な娘でございます。まだ色気とても丸ッきりございません。もし御縁がございまして、そういう事にでもなれば、阿母おふくろの喜びは一通りではありません。どうも有り難う存じます」
侍「イヤ、お前は有り難いといったところが本人が不承知ではいかず、また破落戸やくざものにもせよ、兄いう者があってみれば、それに相談をしなければなるまい」
家「ナニあなた、兄哥あにきだって、アンナ野郎は長屋の厄介者で否応いやおういわせる気遣いございません」
軍「しかし万一不服があってはならん、早速赤井御門守屋敷へ尋ねるよう、其方そのほうから申し付けて貰いたい。支度金は望み通り取らせる。また一つ申しておくが、至ってお堅い殿様で、これまで幾らお勧め申しても妾という者をお持ち遊ばさない。ところが、奥様に未だお子様がないによって御家おいえのため、お召し抱えになろうというのだが、あの娘はちょっと身体の様子を見ても誠に丈夫そうであるから、幸いにお世取りでも挙げるようになれば、大層な出世であるから、母や兄にもよく申し付けて、とくと相談の上早速いなやを申し出るよう、只今申す通り、支度金は望み通り取らせる」
家「ヘエ、早速明朝伺うように致します」
 いい置いて侍は帰ってしまった。
家「ばあさんや、婆さんや、大変な事になっちまった。お前も聞いてたろう。裏へ行っておつるの阿母おふくろを呼んで来な。アノばあさんも聞いたらさぞ喜ぶだろう。正直は者は神様が助けるんだな。支度金は望み通り出すというんだ……。どうした、エー風邪をいたッて寝ている。そうか、アンな丈夫の婆さんでも風邪をくか、鬼の霍乱かくらんという奴だ。眠り病じゃァあるめえな。病人を呼ぶという訳にもいかねえ。俺が行って話をしてやったら、風邪くらいなおってしまうだろう……。オイ婆さんや閉めて寝ているのか。よっぽど悪いと見えるな、婆さんや」
婆「何をいってるんだい。また酒屋の御用だよ、きまってるよ。人の事を婆さん/\って、用のある時にはヤレお婆さんだの、阿母おっかさんだのッて、何を叩くんだ。人の家を遠慮もなく……たたこわしちまうよ。店賃たなちん碌々ろくろく納めねえで、戸でもこわしたら家主おおやさんに対して済まねえ。御用め、きまってやがる」
家「何をいってるんだ。酒屋の御用じゃァねえ、俺だよ。明かねえのか、締りはねえッて明かねえぢゃァねえか、ナニちからを入れてウンと押せ……、アーなるほどいた、オヽ寝ているな」
婆「オヤこれは家主おおやさんでございますか。マアとんだ失礼を致しました。イエいつもこの横丁の酒屋の御用が来ましては、私の事をヤレしわくちゃ婆ァだの、百なり婆ァだのと言いますんで、ちょっとお声が似ていたもんでございますから、大きに失礼を致しました。家主おおやさん毎度どうも有り難う存じます」
家「どうした、鬼の霍乱かくらんという事があるが、平常ふだん丈夫のお前が風邪をくなんて……」
婆「イエナニ仮病なんでございます。明日は晦日みそかでございましょう。ソロ/\書き付けや何か持って来ますんで、モウ気になってなりません。マア風邪でもいているといえば、同じ言訳をするにも仕宜しようございますから、時々仮病をつかいますが、実は丈夫なんでございます」
家「それは何より幸せだ。身体の丈夫ぐらい結構な事はない。今お前の所へ来たのは、ほかじゃァないが、マア上がって話そう」
婆「どうぞこちらへ……、モウ御承知の通り、ヤクザ野郎があの通りで、度々たびたび小言もいって下さるが、ぬかに釘でうちにったらちっとも寄ッ付きません。今日で五日も帰りません。何にもしないで、ノソノソしておりますので真実ほんとうに困り切ります。それでもマアおつるぼうが、孝行をしてれまして、一生懸命内職をしましたり、お使いをしてお小遣いを頂いたりして、どうやらこうやら、母子おやこ二人ふたりは足らないながらもしのいでおります。只今もちょっとそこまで使いに参りましてございますが、家主おおや様にも種々いろいろ御厄介になりまして、この間も、お隣りのおかっさんと噂をしたんでございます。ここの家主おおやさんくらい結構な方は無い。お察しがよくって、長屋の者を可愛かわいがって、店賃たなちんの催促もなさらず、五六日前にも、おかっさんがお目に掛かったら体裁きまりが悪くって、ツイ良人やどが仕事を休んでおりましてといい掛けると、家主おおやさんがほかの話をしてお帰りになった。アンナ御苦労人はないと言いますから、私があなたの事を知ってますから言って聞かしてやりました。苦労人たって、アンナ苦労をした方があるもんじゃァない。立派な身代しんだいうちに生まれた訳ではない、上総かずさ鹿野山かのうさん下の根本村という所からおいでになって、番太ばんたの所へ奉公していらしった事を私が知っておりますから話をしてやりました。話をしなければ苦労人という事が分からないと存じましてね、その時分には何とか言いました。くずの良いのは……、アヽ久助きゅうすけさんといって町内の使いやなにかしておいでなすった。私どもは表店おもてだなにいて、立派というほどじゃありませんけれども、これでもどうにかこうにかして町内の祭りなどというと、どうだろう、こういう風にしようじゃァないか、貧乏町内ではあるけれども、あんまりッともない事も出来まい。これはこうしたらよかろうと、死んだ親父に一々相談するような身分でございましたのが、今ではこんな汚ないといっては家主おおやさんに済みませんけれども、マア裏へ引っ込んで、その時分番太郎ばんたろうに奉公をしていた方が、今では立派な家主おおやさんになって、まち役人をしておいでなさる。人間という者の浮き沈みは分からないもので。しかしそれだけに苦労をなすったから、何もかもお察しがよくっていらっしゃると、散々おかっさんに話をして聞かしたんでございますよ」
家「マア/\そうノベツに喋舌しゃべんなさんな。俺が一言いううちにお前が十言とこと喋舌しゃべるから始末にいかねえ。余計な事をいって俺の讒訴ざんそをしちゃァいかねえ」
婆「イエ讒訴ざんそという訳ではございません。自慢話で、人間というものはどうでも貧乏から仕上げたんでなければいけません」
家「マアいいよ、められるんだが悪くいわれるんだか分からねえ。実はマアあのの事について、お前を喜ばせようと思って来たんだ」
婆「オヤ恐れ入りましたね、モウ私は全然まるで歯が役に立ちませんで、固いものは少しも食べられません。お酒は戴きませんし、アンコは結構で……」
家「何をいってるんだ、意地のきたねえ婆さんだ。おつるぼうの事なんだが、八公はちこうはどこへ行ってるんだ」
婆「アノ野郎の居所いどころが分かったためしはありません」
家「分からねえッツてともかくも名前人なまえにんだ、八公に相談しなくっちゃァいかねえ」
婆「デハおつるがどうか致しましたか。真実ほんとうに子供という者は油断がならないと、よく申しますが、女の餓鬼がきがそれがが一番いやなんで、マア対手あいては誰でございます」
家「何をいってるんだ。対手あいても何もありゃァしない」
婆「なんだかわたくしにはちっとも訳が分かりません」
家「俺だって訳が分からなくなった」
婆「おつるが情夫いろおとこでもこしらえたんじゃァないんですか」
家「そんな訳じゃァねえ、マア落ち着いて聞なよ」
婆「わたくしは落ち着いています」
家「落ち着いちゃァいないよ。先刻さっきこの前をお大名がお通りになったんだ」
婆「アヽあいつがお転婆てんばでございますから、お供先ともさきでも切って、それで自身番じしんばんへ……」
家「そうじゃァねえ、お前のようにそう先がけにいっちゃァ話が出来ねえ。その時におつるぼうがお目に留ったんだ」
婆「お目に留ったというのは、どういう事で……」
家「どういうッて、大変にお気に入って、奥様はあっても子供しゅうが出来ず、おめかけを勧めても今まで一人もお妾をお置きなさらなかったところが、おつるぼう是非ぜひお妾にしたいというのだ。幸せの事じゃァねえか、支度金は望み次第下さるが、それともお前不承知か」
婆「不承知どころじゃァございません。この通り三度のしょくにも差し支えるくらいの所、マア私は起きてるでしょうか」
家「起きて口をいてるじゃァねえか」
婆「真実ほんとうに夢のような心持ちが致します。有り難う存じます。これと申すも三年あとに亡なりました親父の引き合わせでございましょう。俗名は治兵衛じへえ、戒名は安蒙養空信士あんもうようくうしんじ、また二つには日頃信ずる高祖こうそ日蓮大菩薩様、中山の鬼子母神きしもじん様、熊本の清正公せいしょうこう様……」
家「オイ/\串戯じょうだんじゃァねえ。本当にあきれ返った婆さんだ。しっかりしなくちゃァいかねえ」
婆「有り難う存じます、しっかりしております……」
家「泣いちゃァいかねえ。困ったなァ、それについて八公に是非ぜひ会わなくちゃァならねえ」
婆「イエあんな野郎に、こんな話をすれば何をするか知れません」
家「馬鹿な事を言いなさんな。ともかくも名前人なまえにんだ。早速居所をさがして俺の所へ八公をよこしな。町内の内にいるだろう」
婆「左様でございますね、アノ野郎町内中あらかた借りがありますから……」
家「借りなんか心配する事はねえ。この話さえまとまればみんな返せるんだ」
婆「ハイ、そうなりませば、心当たりもありますから、呼びに参りまして、グズ/\していれば首ッ玉へ縄を付けて引っ張って参ります」
家「そんなにしねえでもいいが、何しろ明日あしたの朝までにお屋敷の方へ御返事をしなけりゃならない。こっちさえよければ先様では御意ぎょいかなってるんだから、いいかい、いたらぐに八公をうちよこしておくれ」
婆「かしこまりました。どうか少々お待ち下さいまし」
 と婆さん飛び出したが、なかなか破漢戸やくざものの八公、どこを歩いてるか分らない。
婆「銀さん/\」
銀「オヽ阿母おっかァ、何だい」
婆「八の野郎どこにいるか知らないかね」
銀「アヽ新道しんみち建具屋たてぐやの二階に素裸すっぱだかで、こもっていたっけ」
婆「また始めやがって、何でも飲むと打つと、買うんだから仕様しょうがない」
銀「隠れてるから、お前が行ってもいねえというだろう。お前用があるなら呼び出してやってもいいが、ともかくもお前門口かどぐちへ行って聞いて見ねえ。いけなかったら、俺が呼んでやるから」
婆「どうか、おたのう申しますよ。真実ほんとう仕様しょうのねえ野郎だ。……内儀おかみさん毎度どうも野郎が御厄介になって済みません。アノ野郎こちらにおりましょうか」
女「そうですねえ。うちは出入りが多いからよく分かりませんが……八さんは来ているかい」
○「いませんよ」
女「来ていないそうですよ」
婆「オヤそうで……ちょっと銀さん/\」
銀「エー、いねえって、仕様しょうがねえな。きまってやがる。オヽ八や、俺だい」
八「アヽ、銀衆ぎんしゅうか、マアあがんねえ」
銀「あがんねえぢゃァねえや。阿母おふくろが心配してさがしてるんだ」
婆「アラこン畜生、真実ほんとうにいるのにいねえなんつて、あきれ返った野郎だ」
八「アヽ阿母おっかさんか、阿母おっかさん仕様しょうがねえ」
婆「馬鹿にするな。何が阿母おっかさんだ」
八「来ちゃァいかねえよ。何しに来たんだ」
婆「何しにじゃァねえ、少し話があるんだ」
八「きまってらァ。マアいいよ。わかってるよ」
婆「わかってる奴があるかい。仕様しょうのねえ奴だ。ここまでちょっと降りて来ねえ」
八「なんだかそこで呶鳴どなんねえな」
婆「大きな声じゃァ話せねえ事だよ」
八「どこから催促が来たんだ」
婆「催促じゃァない。モッとこっちへ耳を持ってきねえ」
八「仕様しょうがねえなァ……。ナニウム、おつるがフヽヽ。ウンなるほど、支度金は望み次第、めたな。そうか……」
婆「それについて家主おおやさんが心配しているんだ。なにしろお前が名前人なまえにんだから、お前の承知のない事は出来ないと、アヽいう堅い人だからそういうんだ。お前、ぐに家主おおやさんところへ行かなくっちゃァいけないよ」
八「借りがあるからなァ」
婆「借りがあっても話さえきまれば返せるんだ。家主おおやさんの方がお前より喜んでるから、なにしろ行かなくっちゃァいけねえ」
八「行くったって裸体はだかだ。家主おおやさんにこういってくんねえ。誠に済みませんけれども、朋友ともだちに頼まれて、義理で建具屋たてぐやの二階に裸体はだかでおりますから、どうかよろしきようにおたのう申しますって……」
婆「朋友ともだちの義理で裸体はだかている奴があるか。仕様しょうがねえ奴だなァ」
 婆さん仕方がないから、家主おおやさんへ行って話をして、単物ひとえものを一枚借りて来て、これを引っ掛けさせて連れて来ました。
八「今日こんちは、どうも家主おおやさん済みません」
家「マア今日きょうは小言は言わねえ。こっちへあがんな/\」
八「ヘエ、どうも誠に済みません。阿母おふくろから概略あらまし話は聞きましたが、なんだか知らねえけれども、おつるの阿魔あまが、大名の鼻の先へブラ下がったって……」
家「鼻の先へブラ下がる奴があるか。お目にとまったんだ」
八「アヽお目に留ったのか、なんでもその見当だと思った。デ、マア支度金とかなんとかを、くんなさるって、どうも有り難う存じます」
家「何をいってるんだ。それについてお前に不承知があるかねえか、それを聞きてえから、阿母おふくろに探しにやったんだ」
八「どう致して、不承知なんかありゃァしません。アンナ者でも売れくちがありゃァ結構だ」
家「仕様しょうのねえ奴だな。支度金のところは望み次第取らせるというから、ともかくも着物をこしらえたり何かして、この位るだろうという所を言い出しなさい。幾らでもいい」
八「そうですねえ。そういう事は大概たいがい相場がありましょうから、どうかよろしく……」
家「それはいけねえや。俺はこんな人間で中へ入って一銭一文でも儲けようという考えはねえ」
八「なるほど、桂庵賃けいあんちん先方むこうから出るんで」
家「変な事をいうな。お前のためを思うから心配しているようなものゝ、俺の事じゃァねえ。お前は主人あるじじゃァねえか」
八「主人あるじ裸体はだかだ」
家「裸体はだかでも何でも生きてるから、望みがあるだろう。この位支度にかかって、婆さんの手当も少しは取って、借金を返すぐらいの勘定を立てゝよ」
八「うまくいってやがる、店賃たなちんを取ろうと思って……」
家「何をいやがる。店賃を取ろうという訳じゃァねえ。明日あしたの朝までに返事をするんだからどうだ」
八「どうも弱ったなァ、こんな事に初めてくわしたんだから……。あいつを女郎じょろうねん一ぱいち込んだところで大した事はねえ」
家「女郎に売るのたァ違うよ。女郎と一緒にする奴があるか」
八「そりゃァそうだけれども弱ったなァ。……どういうもんでごぜえましょう。エー片手ぐらいのところじゃァ」
家「そうさなァ。片手というと、っと大仰おおぎょうじゃァねえかと思うが……」
八「じゃァ三両ぐらい」
家「エー」
八「三両ぐらい」
家「馬鹿野郎、対手あいてはお大名様だ。なんだ三両ばかり、五百両だと思うから少し多いといったんだ。少なくも三百両ぐらいの所は大丈夫だ」
八「三百両、うがす。手を打ちましょう」
家「手を打つ奴があるか、古着屋じゃァあるめえし」
八「どうも有り難え。三百両と来た日にゃァ、スッカリ扮装なりも出来て、近所の借金を返すけれども、家主おおやさん、店賃たなちんは払わねえよ」
家「馬鹿ァいえ、貰う物は貰う」
八「そうかねえ」
 なにしろ三百両と聞いたから、二つ返事、どうぞおたのう申しますというので、家主おおやからお屋敷の方へお挨拶をすると、三百両のお支度金が差し支えなく下がり、支度万端ばんたん整っておつるはおめかけに上がました。元々見初みそめたくらいの者ゆえ殿様の御寵愛ごちょうあい深く、たちまち御妊娠。オギャアと産み落としたのが玉のようなる男の子、お世襲よつぎをお産み申したから、ぐに、おつるかたという方号かたごうを頂いて、おかみ通りの取扱い。ソコで妹から兄に遭いたいと願ったものか、八五郎を呼べという仰せ。早速、家主いえぬし付き添い、お屋敷へ出るようにというお沙汰さたが来ましたから、家主いえぬしは喜んで八五郎を呼びにやる。
八「今日こんちは、どうも有り難う存じます。今聞きましたらなんだか妹が餓鬼がきり出したそうで……」
家「馬鹿ッ、餓鬼がきり出すってえがあるか。それについてお屋敷からお沙汰さたがあったから、お喜びにお前出なくっちゃァいかねえ」
八「ヘエー、わっしが行くんですかい。弱ったなァどうも。金は大概たいがいつかくしてしまったし、ちったァい衣類も着て行かなけりゃァならず、交際つきあいに追い倒されてやり切れねえ。これは断っておくんなさいな。大名交際づきあいと来た日にゃァ骨が折れるからね」
家「馬鹿野郎、交際つきあう気になってやがる」
八「だってただも行かれねえ。どんなに吝嗇しみったれにしたって、あめでも買ってって、チビ/\おしゃぶんなさいぐらいの事言わなくっちゃならねえ」
家「馬鹿野郎、高貴方うえつがたへ対して、何か持ってくなどという事は大変な失礼だ。ただ行きさえすりゃァいい。お前こそ行きゃァただという事はねえや」
八「ヘエー、何かくれますか」
家「お目録もくろく頂戴ぐらいある」
八「ヘエー、おもく/\」
家「おもく/\という奴があるか。お目録といってかねを下さる」
八「ヘエー、大名てえ者はなかなかくれたがるもんだねえ。シテみると交際つきあって損はねえ」
家「どうもお前はガサツ者だからいけねえ。口のきよう、振る舞い丁寧にしねえと、妹が恥をくぜ」
八「ヘエようございます」
家「袴羽織はかまはおりはどうしてもけてかなけりゃァならねえが、その用意があるか」
八「エーあります」
家「年中尻切しりきり半纏ばんてん一枚でいる奴が、よく持ってるな」
八「その古い方の箪笥たんすの上から二番目の抽斗ひきだしへえってる」
家「こりゃァ俺のとこ箪笥たんすだ」
八「その抽斗ひきだしへえってる」
家「気味の悪い奴だな此奴こいつ、なるほど上から二番目に袴羽織はかまはおりが入ってるが、どうして知ってる」
八「此間こないだ来た時に、台所の方に誰もいねえから上がり込んだのを、店番をしていた少女こどもが知らねえから、ちょっと開けてみたんで」
家「物騒の奴だな」
八「平常ふだん高慢なことを言ってるけれども、箪笥たんす抽斗ひきだしに、どんな物がへえってるかと思って開けてみたんで……」
家「ひどい奴があったもんだ」
 家主いえぬしあきれましたが、しかし破漢戸やくざものでも根が正直な男だから、腹も立てずに袴羽織はかまはおりから衣類スッカリ貸してやって、先方むこうでこう言ったらこう言え、成丈なるたけ口数をかねえで、殿様の前へ出たら、すべて丁寧にしろよと、スッカリ教えて家主いえぬし同道どうどうでお屋敷へ出ましたが、家主おおやさんは御殿へ出られない。控所ひかえじょに控えております。身分の高下こうげは争われない。貴い方の前へ出ますと、御威光に恐れて奴さんガタ/\震え出して、段々あとの方へ下がって来る。
殿「妹つる、世襲よつぎを挙げ、満足である。これにおるも窮屈らしい。つぎしゅを取らせろ」
 というお声が掛かる。
侍「サアどうぞこちらへ……」
 という案内につぎへ来て見ると酒肴さけさかなならんでおります。
八「ヘエ、どうも皆さん種々いろいろ御厄介様でございます。有り難う存じます。婆さんも心配してどうだろうどうだろうと、うちで苦労ばかりしています。悪い物でもって身体からだを悪くしやァしねえか、軽挙かるはずみの真似をして転びでもすると大変だって、そんな事ばかりいって毎日心配しているんで、大丈夫だよ。余計な心配しねえがいいと言っても老人としよりだもんだから、苦労ばかりしているんで……」
侍「モシ/\余り大声たいせいはっしないように……」
八「大声たいせいって……アヽ大きな声をしちゃァいけねえッてんですかい。どうも済みません。ツイでけえ声をしつけてるもんだから……ネーモシ旦那、酒てえ奴は一人で飲んでちゃァ旨くねえ。一つどうです。エーそうですか……、なんだか少ししびれが切れて来て仕様しょうがねえが、ここらでトグロを巻いちゃァどうでしょう」
侍「ハア、トグロを巻くといいますと、どういう事で……」
八「胡坐あぐらくんだ」
侍「ハア胡坐あぐらの事で、どうぞ御遠慮なくトグロをお巻き下さるよう」
八「それにゃァどうも窮屈袋きゅうくつぶくろ穿いてちゃァ、うまかねえ、サアこうなりゃァ何でも、持って来い。手酌てしゃくでグン/\やるから、ズン/\酒をつけておくんなせえ」
 くだらない事を言いガブ/\飲み、ことに妹が出世をしたので、嬉しくってたまりませんから、十二分じゅうにぶんに酔っ払って、
八「ねえ旦那、なにしろ大名なんてえ者は、旦那の前だが、随分骨が折れるね」
侍「どうもそう大声たいせいを発しては……」
八「大声たいせいたってそうじゃァねえか。驚いたねえ。どうぞこちらへというんで、幾ら歩いても畳の上ばかり、ここで追っ放されたら私ゃァ出口が分からねえ。迷子になるくれえだ。うちが立派で、道具はし、食物くいものうめえし、酒はいし、安くねえね、一合いちごう幾らだか知らねえが……」
侍「左様さような事は言わんで、サアズン/\飲みなさい」
八「ズン/\たってそうのべつに飲める訳のものじゃァねえ。婆さんが喜んでたせ。乃公おれがこれで屋敷へ行く事になったといったら、それはなにしろ結構だ。けれども婆さんがたった一言……」
侍「そんな大きな声を……」
八「大きな声たってそうじゃァねえか、身分の違うというものは情ない、おつるの阿魔あまが……」
侍「阿魔あまとはしからん」
八「ヘエおつる様というんでごぜえますか」
侍「おつる様といわんまでも、阿魔あまはいかん」
八「マアおつるが生みゃァ初孫ういまごだ。こっちが貧乏人で先方むこうが大名の殿的とのてきだ」
侍「殿的とのてき……」
八「アヽ御免ごめんなさい。マアお大名だから、孫のかおを見たいって見る事は出来ねえ。抱きてえって抱く事も出来ねえ。何も楽しみがねえから、おめえが行ったらその餓鬼がき……じゃァねえ、その子供を、二人前ふたりめえだけ見て来てくれと婆さんが言やァがるんだ。なぐられたって泣いた事のねえ俺だが、その時にゃァ涙がこぼれたねえ。もし抱けるようなら二人前ふたりめえ抱いて来てくれと言ゃァがって、ホロ/\婆さんが泣きゃァがるんだ。二人前ふたりめえ見るの、三人前さんにんめえ見るのッておかしいけれども、身分が違うためにそばに寄る事が出来ねえと思うと、婆さんだって可哀想かわいそうじゃァねえか、ネーオイ大将……」
侍「コレそんな大きな声をしては困る」
 手に取るようにこれが殿様のお耳へ入りまして、思わず御落涙ごらくるい。アヽ可哀想かわいそうに、身分が違うために初孫ういまごが見たいというは道理もっともじゃ。斯様かような物を知らん奴でも男は男、くすのきは泣き男を抱えたという例もある。またなんぞの役に立つであろうから、小身しょうしんたりとも侍に取り立ってつかわしたら、母も共に屋敷へ引き取り、孫のかおも見られるであろうと、ソコで改めてお沙汰さたになって八五郎、五十こく小身しょうしんではあるが侍にお取り立ての上、お小屋こやを下さる事になり、親子とも大喜びで、それに引き移りましたが、名前がなくってはいけない。妹と違ってこれはひど醜男ぶおとこ、おそば役人も面白半分、まるでかにに似ているから可笑おかしな名を付けてやろうと、石垣いしがき杢蔵もくぞうみなもと蟹成かになりという名を付けました。サア御家来方の玩弄物おもちゃ
○「石垣うじ
八「エー何だ」
 その頓珍漢とんちんかんというものは実に可笑おかしい。ある日の事
八「阿母おっかあ、俺が此間こないだちょっと話に聞いたけれども、マアこうやってこっちへ引き取られるようになってから、朋友ともだち奴等やつら種々いろいろな事をいってるそうだ。妹の縁でこの頃はてえした事になったという話をする人もあるそうだが、中にはやり切れなくなって到頭とうとう夜逃げをしてしまったといってる奴もあるそうだ。ツイ急いだもんだから、ろく暇乞いとまごいもして来なかった。それについて俺は此間こないだからそう思ってるが、今日きょうは一つうしろのほころびたような羽織を着て、朋友ともだちの所をズーッと廻って来ようと思う」
婆「けれどもお前が二本差して出たところが、まだまげが小さいからね」
八「そんな事を待っちゃァいられねえ。姿を見たらみんなも安心するだろうし、家主おおやさんの所へも行って来てえ」
婆「じゃァ行って来るがいい」
大小を差し、ぶつさき羽織を着て、一人ともを連れて、屋敷を出て町内へ来ると、職人が多いから、余り昼間はおりません。あっちへマゴ/\こっちへマゴ/\していると向こうから来た職人、
○「オヽ向こうへ来たさむれえは、八の野郎にどうも似ているぜ」
△「似ているけれどもさむれえだ。あいつ夜逃げをしたってえじゃァねえか」
○「ウム、やり切れなくって逃げちまった」
△「夜逃げをした奴がさむれえになる訳がねえ」
○「だけれども何だか、妹を女郎じょろうに売ったとか、めかけにしたとかいうぜ」
△「妹が妾になって、彼奴あいつさむれえになる訳がねえ」
○「しかしあんまりよく似ているなァ。ニコ/\笑って来やがる。声を掛けて見ようじゃァねえか」
△「八公なんて、もし違って、突然いきなり引っこ抜いて無礼打ちなんてやられると大変じゃァねえか」
○「だけれども似ているぜ、段々こっちへ来る。なァオイ、一つ何とか言ってみよう」
△「じゃァ、俺はしり端折はしょって逃げる支度をしているから、おめえ声を掛けてみねえ。八公ッつたら俺はパッと逃げ出さァ」
○「なるほど、そいつァ面白い。ナニ追い掛けたって先方むこうはあれだけの物を差してるんだ。こっちゃァ空身からみだから、かけっこなら大丈夫だ。いいか、呼ぶぜ、オヽどうした八公、恐しく立派になったじゃァねえか」
八「イヤ、これは/\一別いちべつ以来……」
○「オーイ逃げねえでもいい、真物ほんものだ。一別以来と来やがった。恐しく立派な刀を差してるじゃァねえか」
八「これは殿より拝領はいりょうして、貰って、頂いたんだ」
○「馬鹿に丁寧だな。何にしてもうまくやりやァがった」
八「マア喜んでくれ、今じゃァこういう身分になった」
 と朋友ともだちの所を触れて歩く。その中に御親戚へそれが知れて、赤井あかい御門守ごもんのかみおいては、面白い御家来をお抱えになった。どうぞ非番の折などは、徒然つれづれを慰めるため、おつかし下さいと毎日のように八公玩弄物おもちゃにお屋敷へ呼ばれ、あるいはイケゾンザイな口をいたり、変な事をするのが可笑おかしく、明日あすはお客があるから来てくれというような具合。ある日の事御親戚のお大名から、どうぞ是非ぜひというお頼みがあった。当人も諸所ほうぼうへ行っちゃァ恥をくので、流石さすが体裁きまりが悪く、モウ御免ごめんこうむるというので、わざとお使者ししゃの役を言い付けた。委細いさいの事はこの文箱ふばこの中の書状にしたためてあるから、これを持って参れという申し付けで、文箱ふばこを持って出ようとすると馬の用意がしてある。
八「オイこの馬をどうするんだ」
槍持「ヘエ、あなたがお召しになるので」
八「いけねえ、まだ三日しきゃァ馬の稽古をしねえから、しりがフハ/\してくらに付かねえ」
槍「それでも馬乗ばじょうのお使いだから、お召しなさらなくっちゃァいけません」
八「いけねえったって俺にゃァ乗れねえから、おめえ乗ってくれ、俺がやりを担いで行く」
槍「それはいけません。御主人槍を担いで槍持が馬に乗るという事はありません」
八「弱ったなァ、稽古を三日しきゃァしねえんだからな。……じゃァ乗るよ」
 どうかこうか手綱たづなを持つぐらいの事は覚えたから仕方がなしに乗り出したが、馬は乗り手を知るといって、悧巧りこうなもので、馬の方で馬鹿にしてノソ/\と歩き出して、どうものろい事。丁度ちょうど夕方今の小川町おがわまちといったような賑やかな所へ来ると、ピタリ立ちどまってどうしても動きません。
八「オイいけねえや、馬をどうかしてくれ。オイどうかしてくれ。馬も疲労くたびれたと見えて、動かなくなっちまった。弱ったなァ、どうも仕様しょうがねえ……」
 その中に人がたかって見る。槍持は槍を持って往来に突っ立ってもいられない。こっちの番太郎ばんたろううちへ槍を立て掛けて、縁台がありますから、それへ腰を掛けて、日あたりがいんで居眠りをしている。
甲「オイ/\、アノさむれえはどうしたんだ」
乙「寝ているんだろう、邪魔じゃまの野郎だ。ぱたけ」
 片っ方が職人で、気が短かい。ボンと一つむちを入れた途端に、馬はヒーンと棹立さおだちに立ったから、奴さん肝を潰して首っ玉へかじり付いて、
八「助けてくれえー、助けてくれー」
 呶鳴どなったが馬はそのまま走り出して品川の方をして飛んで行く。この時丁度ちょうど品川の方からお出でになったのが同家中どうかちゅうで、岩田馬之丞うまのじょうという馬の先生、飛んで来る馬の前へ立って、ドウといって口を取ると、馬は先生という事を知っているから、たちまちピタリッと四足しそくとどめた。
馬「石垣うじ血相けっそう変えていづれへお越しになる。何かおいえ椿事ちんじ出来しゅったい、お国表くにおもてへの早打ちか、いづれへおでになる」
八「馬が知っておりましょう……」





底本:名作落語全集・第一巻/開運長者篇
   騒人社書局・1929年発行

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