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朝日新聞朝刊 1997年10月2日付 家庭面 (毎週木曜連載)
「育休父さんの成長日誌」脇田能宏担当分第1回

【主夫になった日】

 一九九六年十一月二十六日、二人目の子が産まれた。育児休業を取る僕はこの日、会社員から専業主夫になった。自宅出産は緊張したが、一人目もお世話になった助産婦の先生が、当然のように取り上げて下さった。僕はあたふたしつつも、出産体験をどっぷり妻と共有できた。
 陣痛が始まったのは朝四時半。ふろをわかして朝ご飯を作っていたら、三歳になった上の子、広基が起きてしまった。この忙しいのに。妻はぬるめのふろにつかり陣痛をやりすごしていたが、だいぶ進んできたのでマッサージをすることにして湯から上がった。あちこち押して気持ちいいところを探していると、広基までのっかってきてしまう。広基に出産を見せてやりたかったが、妻の気が散っているのでやはり保育園に預けることにした。
 広基のしたくの間、妻はいすの背もたれに抱きついてボーッとしている。この表情だと出産はだいぶ近そうだ。園に送る余裕がない。近くの同級生のお母さんが、家まで迎えに来てくれた。こういうときの親切は身にしみる。案の定、広基が園に着くころ産声が上がった。あ、おちんちんだ。二人目も男の子かぁ。
 出産の瞬間からはそれまでの慌ただしさがうそのように静かなひとときが訪れた。シワシワの赤ん坊は、ママのおっぱいを一生懸命くわえている。僕は先生とお茶をすすりながらのんきに母子を眺める余裕もでてきた。昼ご飯は妻のリクエストでニラ玉がゆ。ちょっとベチャッとした出来上がりだったのに、おいしいおいしいとニコニコ食べてくれるのがうれしい。保育園に広基を迎えにいき、初めてのご対面。おっかなびっくり赤ちゃんに触るしぐさが何ともかわいい(親バカ)。まだ家族が増えたなんて実感はないんだろうなぁ。
 果報者の赤ちゃんは、その日のうちに来てくれた両方のジジババに見守られ、すやすや寝息を立てている。初めての四人家族の夜を、みんなそろっていつもの居間で迎えられた。なかなかの滑り出しだが、はてさてこれからどうなることか。

(電機メーカーエンジニア)

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