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11·物語の 感想を まとめよう◄┘ 11·物語の 感想を まとめよう◄┘
2場面の うつりかわりを とらえましょう。◄┘ 2場面の うつりかわりを とらえましょう。◄┘
3心を 打たれた 場面を 中心に,読む感想を まとめましょう。◄┘ 3心を 打たれた 場面を 中心に,読む 感想を まとめましょう。◄┘
4読む◄┘ 4読む◄┘
5◄┘ 5◄┘
6ちいちゃんの かげおくり◄┘ 6ちいちゃんの かげおくり◄┘
7◄┘ 7◄┘
8あまん きみこ 作◄┘ 8あまん きみこ作◄┘
9上野 紀子 絵◄┘ 9上野紀子絵◄┘
10◄┘ 10◄┘
11「かげおくり」って 遊びを ちいちゃんに 教えて くれたのは、お父さんでした。◄┘ 11「かげおくり」って 遊びを ちいちゃんに 教えて くれたのは、お父さんでした。◄┘
12出征する 前の 日、お父さんは、ちいちゃん、お兄ちゃん、お母さんを つれて、先祖の はかまいりに 行きました。その 帰り道、青い 空を 見上げた お父さんが、つぶやきました。◄┘ 12出征する 前の 日、お父さんは、ちいちゃん、お兄ちゃん、お母さんを つれて、先祖の はか まいりに 行きました。その 帰り道、青い 空を 見上げた お父さんが、つぶやきました。◄┘
13「かげおくりの よく できそうな 空だなあ。」◄┘ 13「かげ おくりの よく できそうな 空だなあ。」◄┘
14「えっ、かげおくり。」と、お兄ちゃんが きき返しました。◄┘ 14「えっ、かげおくり。」と、お兄ちゃんが きき返しました。◄┘
15「かげおくりって、なあに。」と、ちいちゃんも たずねました。◄┘ 15「かげおくりって、なあに。」と、ちいちゃんも たずねました。◄┘
16「十、数える 間、かげぼうしを じっと 見つめるのさ。十、と 言ったら、空を 見上げる。すると、かげぼうしが そっくり 空に うつって 見える。と、お父さんが せつめいしました。◄┘ 16「十、数える 間、かげ ぼうしを じっと 見つめるのさ。十、と 言ったら、空を 見上げる。すると、かげ ぼうしが そっくり 空に うつって 見える。と、お父さんが せつ めいしました。◄┘
17「父さんや 母さんが 子どもの ときに、よく 遊んだ ものさ。」◄┘ 17「父さんや 母さんが 子どもの ときに、よく 遊んだ ものさ。」◄┘
18「ね。今、みんなで やって と、お母さんが 横から 言いました。◄┘ 18「ね。今、みんなで やってと、お母さんが 横から 言いました。◄┘
19ちいちゃんと お兄ちゃんを 中に 手を つなぎました。そして、みんなで、かげうしに目を 落としました。◄┘ 19ちいちゃんと お兄ちゃんを 中に 手を つなぎました。そして、みんなで、かげ ぼうしに 目を 落としました。◄┘
20「まばたきしちゃ、だめよ。」と、お母さんが 注意しました。◄┘ 20「まばたきしちゃ、だめよ。」と、お母さんが 注意しました。◄┘
21「まばたきしないよ。」ちいちゃんと お兄ちゃんが、やくそくしました。◄┘ 21「まばたきしないよ。」 ちいちゃんと お兄ちゃんが、やくそくしました。◄┘
22「ひとうつ、ふたあつ、みいっつ。」と、お父さんが 数えだしました。◄┘ 22「ひとうつ、ふた あつ、みいっつ。」と、お父さんが 数えだしました。◄┘
23「ようっつ、いつうつ、むうっつ。」と、お母さんの 声も 重なりました。◄┘ 23「よ うっつ、いつうつ、むうっつ。」と、お母さんの 声も 重なりました。◄┘
24「ななあつ、やあっつ、ここのうつ。」ちいちゃんと お兄ちゃんも、いっしょに 数えだしました。◄┘ 24「ななあつ、や あっつ、ここの うつ。」 ちいちゃんと お兄ちゃんも、いっしょに 数えだしました。◄┘
25「とお。」◄┘ 25「とお。」◄┘
26目の 動きと いっしょに、白い 四つの かげぼうしが、すうっと 空に 上がりました。◄┘ 26目の 動きと いっしょに、白い 四つの かげ ぼうしが、すうっと 空に 上がりました。◄┘
27「すごうい。」と、お兄ちゃんが 言いました。◄┘ 27「すご うい。」と、お兄ちゃんが 言いました。◄┘
28「すごうい。」と、ちいちゃんも 言いました。◄┘ 28「すご うい。」と、ちいちゃんも 言いました。◄┘
29「今日の 記念ねん写真だなあ。」と、お父さんが 言いました。◄┘ 29「今日の 記念ねん 写真だなあ。」と、お父さんが 言いました。◄┘
30「大きな 記念写真だこと。」と、お母さんが 言いました。◄┘ 30「大きな 記念写真だ こと。」と、お母さんが 言いました。◄┘
31次の 日、お父さんは、白い たすきを かたからななめに かけ、日の丸の はたに おくられて、列車に 乗りました。◄┘ 31次の 日、お父さんは、白い たすきを かたから ななめに かけ、日の丸の はたに おくられて、列車に 乗りました。◄┘
32「体の 弱い お父さんまで、いくさに 行かなければ ならないなんて。」お母さんが ぽつんと 言ったのが、ちいちゃんの耳には 聞こえました。◄┘ 32「体の 弱い お父さんまで、いくさに 行かなければ ならないなんて。」 お母さんが ぽつんと 言ったのが、ちいちゃんの 耳には 聞こえました。◄┘
33ちいちゃんと お兄ちゃんは、かげおくりを して遊ぶように なりました。ばんざい したかげおくり。かた手を あげた かげおくり。足を開いた かげおくり。いろいろな かげを 空におくりました。◄┘ 33ちいちゃんと お兄ちゃんは、かげ おくりを して 遊ぶように なりました。ばん ざいをしたかげおくり。かた手を あげた かげおくり。足を 開いた かげおくり。いろいろなかげを 空に おくりました。◄┘
34けれど、いくさが はげしく なって、かげおくりなどできなく なりました。この 町の 空にも、しょういだんや ばくだんを つんだ ひこうきが、とんで くるように なりました。そうです。広い空は、楽しい 所では なく、とても こわい 所にかわりました。◄┘ 34けれど、いくさが はげしく なって、かげおくりなど できなく なりました。この 町の 空にも、し ょういだんやばくだんをつんだひこうきが、とんで くるように なりました。そうです。広い 空は、楽しい 所ではなく、とても こわい 所に かわりました。◄┘
35夏の はじめの ある 夜よ、くうしゅうけいほうのサイレンで、ちいちゃんたちは 目が さめました。「さあ、いそいで。」お母さんの 声。◄┘ 35夏の はじめの ある 夜よ、くうし ゅうけいほうのサイレンで、ちいちゃんたちは 目が さめました。「さあ、いそいで。」 お母さんの 声。◄┘
36外に 出ると、もう、赤い 火が、あちこちに 上がって いました。◄┘ 36外に 出ると、もう、赤い 火が、あちこちに 上がって いました。◄┘
37お母さんは、ちいちゃんと お兄ちゃんを 両手に つないで、走りました。◄┘ 37お母さんは、ちいちゃんと お兄ちゃんを 両手に つないで、走りました。◄┘
38風の 強い 日でした。「こっちに 火が 回るぞ。」「川の 方に にげるんだ。」だれかが さけんで います。◄┘ 38風の 強い 日でした。「こっちに 火が 回るぞ。」「川の 方に にげるんだ。」 だれかが さけんで います。◄┘
39風が あつく なって きました。ほのおの うずが 追いかけて きます。お母さんは、ちいちゃんを だき上げて 走りました。「お兄ちゃん、はぐれちゃ だめよ。」◄┘ 39風が あつく なって きました。ほの おのうずが 追いかけて きます。お母さんは、ちいちゃんを だき上げて 走りました。「お兄ちゃん、はぐれちゃ だめよ。」◄┘
40お兄ちゃんが ころびました。足から 血が 出て います。ひどい けがです。お母さんは、お兄ちゃんを おんぶしました。◄┘ 40お兄ちゃんが ころびました。足から 血が 出て います。ひどい けがです。お母さんは、お兄ちゃんを おんぶしました。◄┘
41「さあ、ちいちゃん、母さんと しっかり 走るのよ。」◄┘ 41「さあ、ちいちゃん、母さんと しっかり 走るのよ。」◄┘
42けれど、たくさんの 人に 追いぬかれたり、ぶつかったり──、ちいちゃんは、お母さんと はぐれました。「お母ちゃん、お母ちゃん。」ちいちゃんは さけびました。◄┘ 42けれど、たくさんの 人に 追いぬかれたり、ぶつかったり──、ちいちゃんは、お母さんと はぐれました。「お母ちゃん、お母ちゃん。」 ちいちゃんは さけびました。◄┘
43その とき、知らない おじさんが 言いました。◄┘ 43その とき、知らない おじさんが 言いました。◄┘
44「お母ちゃんは、後から 来るよ。」◄┘ 44「お母ちゃんは、後から 来るよ。」◄┘
45その おじさんは、ちいちゃんを だいて 走って くれました。◄┘ 45その おじさんは、ちいちゃんを だいて 走って くれました。◄┘
46暗い 橋の 下に、たくさんの 人が 集まって いました。ちいちゃんの◄┘ 46暗い 橋の 下に、たくさんの 人が 集まって いました。ちいちゃんの◄┘
47目に、お母さんらしい 人が 見えました。◄┘ 47目に、お母さんらしい 人が 見えました。◄┘
48「お母ちゃん。」と、ちいちゃんが さけぶと、おじさんは、「見つかったかい。よかった、 よかった。」と 下ろして くれました。◄┘ 48「お母ちゃん。」と、ちいちゃんが さけぶと、おじさんは、「見つかったかい。よかった、よかった。」と 下ろして くれました。◄┘
49でも、その 人は、お母さんではありませんでした。◄┘ 49でも、その 人は、お母さんでは ありませんでした。◄┘
50◄┘ 50◄┘
51ちいちゃんは、ひとりぼっちになりました。ちいちゃんは、たくさんの人たちの 中で ねむりました。◄┘ 51ちいちゃんは、ひとり ぼっちに なりました。ちいちゃんは、たくさんの 人たちの 中で ねむりました。◄┘
52朝に なりました。町の 様子は、すっかり かわって います。あちこち、けむりが のこって います。◄┘ 52朝に なりました。町の 様子は、すっかり かわって います。あちこち、けむりが のこって います。◄┘
53どこが うちなのか·──。「ちいちゃんじゃないの。」と いう 声。ふり向くと、はす向かいの うちの おばさんが 立って います。◄┘ 53どこが うちなのか·──。「ちいちゃんじゃないの。」と いう 声。ふり向くと、はす 向かいの うちの おばさんが 立って います。◄┘
54「お母ちゃんは。お兄ちゃんは。」と、おばさんが たずねました。ちいちゃんは、なくのを やっと こらえて言いました。◄┘ 54「お母ちゃんは。お兄ちゃんは。」と、おばさんが たずねました。ちいちゃんは、なくのを やっと こらえて 言いました。◄┘
55「おうちの とこ。」◄┘ 55「おうちの とこ。」◄┘
56「そう、おうちに もどって いるのね。おばちゃん、今から 帰る ところよ。◄┘ 56「そう、おうちに もどって いるのね。おばちゃん、今から 帰る ところよ。◄┘
57いっしょに 行きましょうか。」◄┘ 57いっしょに 行きましょうか。」◄┘
58おばさんは、ちいちゃんの 手を つないで くれました。二人は歩きだしました。◄ 58おばさんは、ちいちゃんの 手を つないで くれました。二人は 歩きだしました。◄┘
59家は、やけ落ちて なくなって いました。◄┘ 59家は、やけ 落ちて なくなって いました。◄┘
60◄┘ 60◄┘
61「ここが お兄ちゃんと あたしの へや。」 ちいちゃんが しゃがんで いると、おばさんが やって 来て 言いました。◄┘ 61「ここが お兄ちゃんと あたしの へや。」 ちいちゃんが しゃがんで いると、おばさんが やって 来て 言いました。◄┘
62「お母ちゃんたち、ここに 帰って くるの。」 ちいちゃんは、深く うなずきました。◄┘ 62「お母ちゃんたち、ここに 帰って くるの。」 ちいちゃんは、深く うなずきました。◄┘
63「じゃあ、だいじょうぶね。あのね、おばちゃんは、今から、おばちゃんの お父さんの うちに 行くからね。」◄┘ 63「じゃあ、だいじょうぶね。あのね、おばちゃんは、今から、おばちゃんの お父さんの うちに 行くからね。」◄┘
64ちいちゃんは、また 深く うなずきました。◄┘ 64ちいちゃんは、また 深く うなずきました。◄┘
65その 夜、ちいちゃんは、ざつのうの 中に 入れて ある ほしいいを、少し 食べました。そして、こわれかかった 暗い ぼうくうごうの 中で、ねむりました。◄┘ 65その 夜、ちいちゃんは、ざつのうの中に 入れてある ほしい いを、少し 食べました。そして、こわれかかった 暗い ぼう くう ごうの中で、ねむりました。◄┘
66「お母ちゃんと お兄ちゃんは、きっと 帰って くるよ。」◄┘ 66「お母ちゃんと お兄ちゃんは、きっと 帰って くるよ。」◄┘
67くもった 朝が 来て、昼が すぎ、また、暗い 夜が 来ました。◄┘ 67くもった 朝が 来て、昼が すぎ、また、暗い 夜が 来ました。◄┘
68ちいちゃんは、ざつのうの 中の ほしいいを、また 少し かじりました。そして、こわれかかった ぼうくうごうの 中で ねむりました。◄┘ 68ちいちゃんは、ざつのうの中の ほしい いを、また 少し かじりました。そして、こわれかかった ぼう くう ごうの中で ねむりました。◄┘
69明るい 光が 顔に 当たって、目が さめました。◄┘ 69明るい 光が 顔に 当たって、目が さめました。◄┘
70「まぶしいな。」◄┘ 70「まぶしいな。」◄┘
71ちいちゃんは、暑いような 寒いような 気が しました。ひどく のどがかわいて います。いつのまにか、太陽は、高く 上がって いました。◄┘ 71ちいちゃんは、暑いような 寒いような 気が しました。ひどく のどが かわいて います。いつのまにか、太陽は、高く 上がって いました。◄┘
72その とき、「かげおくりの よく できそうな 空だなあ。」と いう お父さんの 声が、青い 空から ふって きました。◄┘ 72その とき、「かげ おくりの よく できそうな 空だなあ。」と いう お父さんの 声が、青い 空から ふって きました。◄┘
73「ね。今、みんなで やって みましょうよ。」と いう お母さんの 声も、青い 空から ふって きました。◄┘ 73「ね。今、みんなで やって みましょうよ。」と いう お母さんの 声も、青い 空から ふって きました。◄┘
74ちいちゃんは、ふらふらする 足を ふみしめて 立ち上がると、たった 一つの かぼうしを 見つめながら、数えだしました。◄┘ 74ちいちゃんは、ふらふら する 足を ふみしめて 立ち上がると、たった 一つの かげ ぼうしを 見つめながら、数えだしました。◄┘
75「ひとうつ、ふたあつ、みいっつ。」いつのまにか、お父さんの ひくい 声が、重なって 聞こえだしました。◄┘ 75「ひとうつ、ふた あつ、みいっつ。」 いつのまにか、お父さんの ひくい 声が、重なって 聞こえだしました。◄┘
76「ようっつ、いつうつ、むうっつ。」お母さんの 高い 声も、それに 重なって 聞こえだしました。◄┘ 76「よ うっつ、いつうつ、むうっつ。」 お母さんの 高い 声も、それに 重なって 聞こえだしました。◄┘
77「ななあつ、やあっつ、ここのうつ。」お兄ちゃんの わらいそうな 声も、重なって きました。◄┘ 77「ななあつ、や あっつ、ここの うつ。」 お兄ちゃんの わらいそうな 声も、重なって きました。◄┘
78「とお。」ちいちゃんが 空を 見上げると、青い 空に、くっきりと 白い かげが 四つ。「お父ちゃん。」ちいちゃんは よびました。◄┘ 78「とお。」 ちいちゃんが 空を 見上げると、青い 空に、くっきりと 白いかげが 四つ。「お父ちゃん。」 ちいちゃんは よびました。◄┘
79「お母ちゃん、お兄ちゃん。」 その とき、体が すうっと すきとおって、空に すいこまれて いくのが分かりました。◄┘ 79「お母ちゃん、お兄ちゃん。」 その とき、体が すうっと すきとおって、空に すいこまれて いくのが 分かりました。◄┘
80一面の 空の 色。ちいちゃんは、空色の 花ばたけの 中に立って いました。見回しても、見回しても、花ばたけ。「きっと、ここ、空の 上よ。」と、ちいちゃんは 思いました。◄┘ 80一面の 空の 色。ちいちゃんは、空色の 花ば たけの 中に 立って いました。見回しても、見回しても、花ば たけ。「きっと、ここ、空の 上よ。」と、ちいちゃんは 思いました。◄┘
81「ああ、あたし、おなかが すいて 軽く なったから、ういたのね。」◄┘ 81「ああ、あたし、おなかが すいて 軽く なったから、ういたのね。」◄┘
82その とき、向こうから、お父さんと お母さんと お兄ちゃんが、わらいながら歩いて くるのが 見えました。◄┘ 82その とき、向こうから、お父さんと お母さんと お兄ちゃんが、わらいながら いて くるのが 見えました。◄┘
83「なあんだ。みんな、こんな 所に いたから、来なかったのね。」ちいちゃんは、きらきら わらいだしました。わらいながら、花ばたけの中を 走りだしました。◄┘ 83「なあんだ。みんな、こんな 所に いたから、来なかったのね。」 ちいちゃんは、きらきら わらいだしました。わらいながら、花ば たけの 中を 走りだしました。◄┘
84夏の はじめの ある 朝、こうして、小さな 女の子の 命が、空に きえました。◄┘ 84夏の はじめの ある 朝、こうして、小さな 女の子の 命が、空に きえました。◄┘
85それから 何十年。町には、前よりも いっぱい 家が たって います。ちいちゃんが 一人で かげおくりを した 所は、小さな 公園になって います。◄┘ 85それから 何十年。町には、前よりも いっぱい 家が たって います。ちいちゃんが 一人で かげ おくりを した 所は、小さな 公園に なって います。◄┘
86青い 空の 下、今日も、お兄ちゃんや ちいちゃんぐらいの 子どもたちが、きらきら わらい声を 上げて、遊んで います。◄┘ 86青い 空の 下、今日も、お兄ちゃんや ちいちゃんぐらいの 子どもたちが、きらきら わらい声を 上げて、遊んで います。◄┘
87◄┘ 87◄┘
88せつめいの しかたを 考えよう◄┘ 88せつめいの しかたを 考えよう◄┘
89何を 取り上げて,どのように せつめいして いるのでしょう。◄┘ 89何を 取り上げて,どのように せつ めいして いるのでしょう。◄┘
90文章全体の 組み立て方,段だん落ごとの 書き方,文の 書き方に 注意して 読みましょう。◄┘ 90文章全体の 組み立て方,段だん落ごとの 書き方,文の 書き方に 注意して 読みましょう。◄┘
91読む◄┘ 91読む◄┘
92◄┘ 92◄┘
93すがたを かえる 大豆◄┘ 93すがたを かえる 大豆◄┘
94◄┘ 94◄┘
95国分 牧衛◄┘ 95国分牧衛◄┘
96◄┘ 96◄┘
97わたしたちの 毎日の 食事には、肉・やさいなど、さまざまな ざいりょうが 調理されて 出て きます。その 中で ごはんに なる 米、パンや めん類に なる 麦の ほかにも 多くの 人が ほとんど 毎日 口に して いる ものが あります。◄┘ 97わたしたちの 毎日の 食事には、肉・ やさいなど、さまざまな ざいりょうが調理されて 出て きます。その 中で ごはんに なる 米、パンや めん類に なる 麦の ほかにも 多くの 人が ほとんど 毎日口に して いる ものが あります。◄┘
98なんだか 分かりますか。それは、大豆です。大豆が それほど 食べられて いる ことは、意外と 知られて いません。大豆は いろいろな 食品に すがたを かえて いる ことが 多いので 気づかれないのです。◄┘ 98なんだか 分かりますか。それは、大豆です。大豆が それほど 食べられて いる ことは、意外と 知られて いません。大豆は いろいろな 食品に すがたを かえて いる ことが 多いので 気づかれないのです。◄┘
99大豆は、ダイズと いう 植物の たねです。えだに ついた さやの 中に 二つか 三つの たねが 入って います。ダイズが 十分 育つと、さやの 中の たねは かたく なります。これが、わたしたちが 知っている 大豆 です。かたい 大豆は、その ままでは 食べにくく、消化も よく ありません。その ため、むかしから いろいろ 手を くわえて、おいしく 食べる くふうを して きました。◄┘ 99大豆は、ダイズと いう 植物の たねです。えだに ついた さやの 中に 二つか 三つの たねが 入って います。ダイズが 十分 育つと、さやの 中の たねは かたく なります。これが、わたしたちが 知って いる 大豆です。かたい 大豆は、そのままでは 食べにくく、消化も よく ありません。その ため、むかしから いろいろ 手を くわえて、おいしく 食べる くふうを して きました。◄┘
100いちばん 分かりやすいのは、大豆を その 形の まま いったり、にたり して、やわらかく、おいしく する くふうです。いると、豆まきに 使う 豆に なります。水に つけて やわらかく してから にると、に豆に なります。◄┘ 100いちばん 分かりやすいのは、大豆を その 形の まま いったり、にたり して、やわらかく、おいしく する くふうです。いると、豆まきに 使う 豆に なります。水に つけて やわらかく してから にると、に 豆に なります。◄┘
101正月の おせちりょうりに 使われる 黒豆も、に豆の 一つです。に豆には、黒、茶、白など、いろいろな 色の 大豆が 使われます。◄┘ 101正月の おせ ちりょうりに 使われる 黒豆も、に 豆の 一つです。に 豆には、黒、茶、白など、いろいろな 色の 大豆が 使われます。◄┘
102◄┘ 102◄┘
103次に、こなに ひいて 食べる くふうが あります。もちや だんごに かける きなこは、大豆を いって、こなに ひいた ものです。◄┘ 103次に、こ なに ひいて 食べる くふうが あります。もちやだん ごに かける きなこは、大豆を いって、こ なに ひいた ものです。◄┘
104また、大豆に ふくまれる 大切な えいようだけを 取り出して、ちがう 食品に する くふうも あります。大豆を 一ばん 水に ひたし、なめらかに なるまで すりつぶします。これに 水を くわえて、かきまぜながら 熱します。その 後、ぬのを 使って 中身をしぼり出します。しぼり出した しるに にがりと いうものを くわえると、かたまって、とうふに なります。◄┘ 104また、大豆に ふくまれる 大切な えいようだけを 取り出して、ちがう 食品に する くふうも あります。大豆を 一ばん水に ひたし、なめらかに なるまで すりつぶします。これに 水を くわえて、かきまぜながら 熱します。その後、ぬのを 使って 中身を しぼり出します。しぼり出した しるに にがりと いう ものを くわえると、かたまって、と うふに なります。◄┘
105さらに、目に 見えない 小さな 生物の 力を かりて、ちがう 食品に する くふうも あります。ナットウキンの力を かりたのが、なっとうです。むした 大豆に ナットウキンを くわえ、あたたかい 場所に 一日近く おいて 作ります。コウジカビの 力を かりた ものが、みそや しょうゆです。みそを 作るには、まず、むした米か 麦に コウジカビを まぜた ものを 用意します。それと、しおを、にて つぶした 大豆に くわえて まぜ合わせます。ふたを して、風通しの よい 暗い 所に 半年から 一年の 間 おいて おくと、大豆は みそに なります。しょうゆも、よく にた 作り方を します。◄┘ 105さらに、目に 見えない 小さな 生物の 力を かりて、ちがう 食品に する くふうも あります。ナットウキンの 力を かりたのが、なっとうです。むした 大豆に ナットウキンを くわえ、あたたかい 場所に 一日 近く おいて 作ります。コウジカビの 力を かりた ものが、みそや しょうゆです。みそを 作るには、まず、むした 米か 麦に コウジカビを まぜた ものを 用意します。それと、しおを、にて つぶした 大豆に くわえて まぜ合わせます。ふたを して、風通しの よい 暗い 所に 半年から 一年の 間おいておくと、大豆は みそに なります。しょうゆも、よく にた 作り方を します。◄┘
106これらの ほかに、とり入れる 時期や 育て方を くふうした 食べ方も あります。ダイズを、まだ わかくて やわらかいうちに とり入れ、さやごと ゆでて 食べるのが、えだ豆です。また、ダイズの たねを、日光に 当てずに 水だけを やって 育てると、もやしが できます。◄┘ 106これらの ほかに、とり入れる 時期や 育て方を くふうした 食べ方も あります。ダイズを、まだ わかくて やわらかい うちに とり入れ、さやごと ゆでて 食べるのが、えだ 豆です。また、ダイズの たねを、日光に 当てずに 水だけを やって 育てると、もやしが できます。◄┘
107このように、大豆は いろいろ がたで 食べられています。ほかの 作物に くらべて、こんなに 多くの 食べ方がくふうされて きたのは、大豆が 味も よく、畑の 肉といわれるくらい たくさんの えいようを ふくんで いるからです。そのうえ、やせた 土地にも 強く、育てやすい ことから、多く ちいきで 植えられた ためでも あります。大豆の よい ところに 気づき、食事に 取り入れて きむかしの 人々の ちえに おどろかされます。◄┘ 107このように、大豆は いろいろ  がたで 食べられて います。ほかの 作物に くらべて、こんなに 多くの 食べ方がくふうされて きたのは、大豆が 味も よく、畑の 肉と いわれるくらい たくさんの えいようを ふくんで いるからです。そのうえ、やせた 土地にも 強く、育てやすい ことから、多く ちいきで 植えられた ためでも あります。大豆の よい ところに 気づき、食事に 取り入れて きた むかしの 人々のちえに おどろかされます。◄┘
108◄┘ 108◄┘
1093 みん話や 物語の 組み立てを 考えよう◄┘ 1093 みん 話や 物語の 組み立てを 考えよう◄┘
110どんな 出来事が 起きるのでしょう。◄┘ 110どんな 出来事が 起きるのでしょう。◄┘
111その 出来事は、どのように して 解決するのでしょう。◄┘ 111その 出来事は、どのように して 解決するのでしょう。◄┘
112読む◄┘ 112読む◄┘
113◄┘ 113◄┘
114三年とうげ◄┘ 114三年とうげ◄┘
115◄┘ 115◄┘
116 錦玉 作◄┘ 116錦玉作◄┘
117 宜 絵◄┘ 117 宜 絵◄┘
118◄┘ 118◄┘
119ある ところに、三年とうげと よばれる とうげが ありました。◄┘ 119ある ところに、三年とうげと よばれるとうげが ありました。◄┘
120あまり 高く ない、なだらかな とうげでした。◄┘ 120あまり 高くない、なだらかな とうげでした。◄┘
121春には、すみれ、たんぽぽ、ふでりんどう。とうげから ふもとまで さきみだれました。れんげつつじの さく ころは、だれだってため息の 出るほど、よい がめでした。◄┘ 121春には、すみれ、たんぽぽ、ふで りんどう。とうげから ふもとまで さきみだれました。れんげつつじの さく ころは、だれだって ため息の 出るほど、よい めでした。◄┘
122秋には、かえで、がまずみ、ぬるでの 葉。とうげから ふもとまで うつくしく 色づきました。白い すすきの 光る ころは、だれだって ため息の 出るほど、よい がめでした。◄┘ 122秋には、かえで、がまずみ、ぬるでの 葉。とうげから ふもとまで うつくしく 色づきました。白い すすきの 光る ころは、だれだって ため息の 出るほど、よい がめでした。◄┘
123三年とうげには、昔から、こんな 言いつたえが ありました。◄┘ 123三年とう げには、昔から、こんな 言いつたえが ありました。◄┘
124「三年とうげで 転ぶでない。三年とうげで 転んだならば、三年きりしか 生きられぬ。長生きしたけりゃ、転ぶでないぞ。三年とうげで 転んだならば、長生きしたくも 生きられぬ。」◄┘ 124「三年とうげで 転ぶでない。三年とうげで 転んだならば、三年 きりしか 生きられぬ。長生きしたけりゃ、転ぶでないぞ。三年とうげで 転んだならば、長生きしたくも 生きられぬ。」◄┘
125ですから、三年とうげを こえる ときは、みんな、転ばないように、おそる おそる 歩きました。◄┘ 125ですから、三年とうげを こえる ときは、みんな、転ばないように、おそるおそる 歩きました。◄┘
126ある 秋の 日の ことでした。一人の おじいさんが、となり村へ、反物を 売りに 行きました。◄┘ 126ある 秋の 日の ことでした。一人の おじいさんが、と なり 村へ、反物を 売りに 行きました。◄┘
127そして、帰り道、三年とうげに さしかかりました。白い すすきの 光る ころでした。おじいさんは、こしを 下ろして ひと息 入れながら、うつくしい がめに うっとりして いました。しばらく して、「こうしちゃ おれぬ。日が くれる。」おじいさんは、あわてて 立ち上がると、「三年とうげで 転ぶでないぞ。 三年とうげで 転んだならば、三年きりしか 生きられぬ。と、足を いそがせました。◄┘ 127そして、帰り道、三年とう げに さしかかりました。白い すすきの 光る ころでした。おじいさんは、こしを 下ろして ひと息入れながら、うつくしい がめに うっとり して いました。しばらく して、「こう しちゃ おれぬ。日が くれる。」 おじいさんは、あわてて 立ち上がると、「三年とうげで 転ぶでないぞ。三年とうげで 転んだならば、三年 きりしか 生きられぬ。と、足を いそがせました。◄┘
128お日様が 西に かたむき、夕やけ空が だんだん 暗く なりました。◄┘ 128お日様が 西に かたむき、夕やけ空が だんだん 暗く なりました。◄┘
129ところが たいへん。あんなに 気を つけて 歩いて いたのに、おじいさんは、石に つまずいて 転んで しまいました。おじいさんは 真っ青に なり、がたがた ふるえました。◄┘ 129ところが たいへん。あんなに 気を つけて 歩いて いたのに、おじいさんは、石に つまずいて 転んで しまいました。おじいさんは 真っ青に なり、がたがた ふるえました。◄┘
130家に すっとんで いき、おばあさんに しがみつき、おいおい なきました。◄┘ 130家に すっとんで いき、おばあさんに しがみつき、おいおい なきました。◄┘
131「ああ、どう しよう、どう しよう。わしの ゅみょうは、あと 三年じゃ。 年しか 生きられぬのじゃあ。」◄┘ 131「ああ、どう しよう、どう しよう。わしの ゅみょうは、あと三年じゃ。三年しか 生きられぬのじゃあ。」◄┘
132その 日から、おじいさんは、ごはんも 食べずに、ふとんに もぐりこみ、とうとう 病気に なって しまいました。お医者を よぶやら、薬を飲ませるやら、おばあさんは つきっきりで 看病しました。けれども、おじいさんの 病気は どんどん 重く なるばかり。村の 人たちも みんな心配しました。◄┘ 132その 日から、おじいさんは、ごはんも 食べずに、ふとんに もぐりこみ、とうとう 病気に なって しまいました。お医者を よぶやら、薬を 飲ませるやら、おばあさんは つきっきりで 看病しました。けれども、おじいさんの 病気は どんどん 重く なるばかり。村の 人たちも みんな心配しました。◄┘
133そんな ある 日の こと、水車屋の トルトリが、みまいに 来ました。「おいらの 言う とおりに すれば、おじいさんの 病気は きっと なおるよ。」「どう すれば なおるんじゃ。」◄┘ 133そんな ある 日の こと、水車屋の トルトリが、みまいに 来ました。「おいらの 言う とおりに すれば、おじいさんの 病気は きっと なおるよ。」「どう すれば なおるんじゃ。」◄┘
134おじいさんは、ふとんから 顔を 出しました。◄┘ 134おじいさんは、ふとんから 顔を 出しました。◄┘
135「なおるとも。三年とうげで、もう 一度 転ぶんだよ。」◄┘ 135「なおるとも。三年とうげで、もう一度 転ぶんだよ。」◄┘
136「ばかな。わしに、もっと 早く 死ねと 言うのか。」◄┘ 136「ばかな。わしに、もっと 早く 死ねと 言うのか。」◄┘
137「そうじゃ ないんだよ。一度 転ぶと、三年 生きるんだろ。二度 転べば 六年、三度 転べば 九年、四度 転べば 十二年。このように、何度も 転べば、ううんと 長生き できるはずだよ。」◄┘ 137「そうじゃないんだよ。一度 転ぶと、三年 生きるんだろ。二度 転べば 六年、三度 転べば 九年、四度 転べば 十二年。このように、何度も 転べば、ううんと 長生き できる はずだよ。」◄┘
138おじいさんは、しばらく 考えて いましたが、うなずきました。◄┘ 138おじいさんは、しばらく 考えて いましたが、うなずきました。◄┘
139「うん、なるほど、なるほど。」◄┘ 139「うん、なるほど、なるほど。」◄┘
140そして、ふとんから はね起きると、三年とうげに 行き、わざと ひっくり返り、転びました。◄┘ 140そして、ふとんから はね起きると、三年とう げに 行き、わざと ひっくり返り、転びました。◄┘
141この ときです。ぬるでの 木の かげから、おもしろい 歌が聞こえて きました。◄┘ 141この ときです。ぬるでの 木のかげから、おもしろい 歌が 聞こえて きました。◄┘
142「えいやら えいやら いやらや。 一ぺん 転べば 三年で、 十ぺん 転べば 三十年、 百ぺん 転べば 三百年。こけて 転んで ひざ ついて、しりもち ついて でんぐり返り、長生きするとは、こりゃ めでたい。」 おじいさんは、すっかり うれしくなりました。◄┘ 142「えいやら えいやら いやらや。一ぺん 転べば 三年で、十ぺん 転べば 三十年、百ぺん 転べば 三百年。こけて 転んで ひざ ついて、しりもち ついて でんぐり返り、長生きするとは、こりゃ めでたい。」 おじいさんは、すっかり うれしく なりました。◄┘
143ころりん、ころりん、すってんころり、ぺったんころりん、ひょいころ、ころりんと、転びました。あんまり うれしくなったので、しまいに、とうげからふもとまで、ころころころりんと、転がり落ちて しまいました。そして、けろけろけろっと した 顔を して、「もう、わしの 病気は なおった。百年も、二百年も、長生きが できるわい。」と、にこにこ わらいました。◄┘ 143ころりん、ころりん、すってんころり、ぺったんころ りん、ひ ょいころ、ころりんと、転びました。あんまり うれしく なったので、しまいに、とうげから ふもとまで、ころころ ころ りんと、転がり落ちて しまいました。そして、けろけろ けろっと した 顔を して、「もう、わしの 病気は なおった。百年も、二百年も、長生きが できるわい。」と、にこにこ わらいました。◄┘
144こうして、おじいさんは、すっかり 元気に なり、おばあさんと 二人なかよく、幸せに、長生きしたと いう ことです。◄┘ 144こうして、おじいさんは、すっかり 元気に なり、おばあさんと 二人 なかよく、幸せに、長生きしたと いう ことです。◄┘
145ところで、三年とうげの ぬるでの 木の かげで、「えいやら えいやら いやらや。 一ぺん 転べば 三年で、 十ぺん 転べば 三十年、 百ぺん 転べば 三百年。 こけて 転んで ひざ ついて、 しりもち ついて でんぐり返り、 長生きするとは、こりゃ めでたい。」と 歌ったのは、だれだったのでしょうね。◄┘ 145ところで、三年とうげの ぬるでの 木のかげで、「えいやら えいやら いやらや一ぺん 転べば 三年で、十ぺん 転べば 三十年、百ぺん 転べば 三百年。こけて 転んで ひざ ついて、しりもち ついて でんぐり返り、長生きするとは、こりゃ めでたい。」と 歌ったのは、だれだったのでしょうね。◄┘
1464 かるたに ついて 知ろう◄┘ 1464かるたについて 知ろう◄┘
147かるたに ついて,どんな ことが 書いて あるのでしょう。◄┘ 147かるたについて,どんな ことが 書いてあるのでしょう。◄┘
148まとまりごとに,ないようを 読み取りましょう。◄┘ 148まとまりごとに,ないようを 読み取りましょう。◄┘
149読む◄┘ 149読む◄┘
150◄┘ 150◄┘
151かるた◄┘ 151かるた◄┘
152◄┘ 152◄┘
153江橋 崇◄┘ 153江橋崇◄┘
154◄┘ 154◄┘
155およそ 四百年 前、外国から 日本に、カードを 使う 遊びが つたわって きました。はじめは、まねを して 遊んで いましたが、やがて、日本だけの 遊び方が くふうされるように なりました。そして 生まれたのが、みなさんも よく 知って いる、かるたです。かるた遊びでは、一人が 読みふだを 声に 出して 読み、ほかの 人たちが、それに 合った 取りふだを きそい合って とります。読みふだと 取りふだを 合わせる ところから、合わせかるたともよばれます。読みふだに 何を 書くかに よって、かるたには、さまざまな ものが あります。その 中で、もっとも 広く、長く 遊ばれて きたのが、いろはかるたと 百人一首です。◄┘ 155およそ 四百年 前、外国から 日本に、カードを 使う 遊びが つたわって きました。はじめは、まねを して 遊んで いましたが、やがて、日本だけの 遊び方がくふうされるように なりました。そして 生まれたのが、みなさんも よく 知って いる、かるたです。かるた遊びでは、一人が 読みふだを 声に 出して 読み、ほかの 人たちが、それに 合った 取りふだを きそい合ってとります。読みふだと 取りふだを 合わせる ところから、合わせ かるたとも よばれます。読みふだに 何を 書くかによって、かるたには、さまざまな ものが あります。その 中で、もっとも 広く、長く 遊ばれて きたのが、いろはかるたと 百人 一首です。◄┘
156いろはかるたは、ことわざを 集めて 作った かるたです。ことわざと いうのは、「花より だんご」「楽 あれば 苦 あり」「わらう 門には 福 来る」などの 短い 言葉です。短い 言葉の 中に、昔から つたわる ちえや 教えが 表されて います。いろはかるたの 読みふだには、ふつう、「いろは」四十七文字の それぞれを 一文字目と する ことわざが 書かれます。取りふだには、そのことわざの ないようを 表す 絵が かかれます。えらばれて いる ことわざに よって、いろはかるたには、いくつか しゅるいが あります。その 中で、「犬も 歩けば ぼうに 当たる」と いう ことわざが 入って いる いろはかるたは、「いぬぼうかるた」と よばれ、親しまれました。◄┘ 156いろはかるたは、ことわざを 集めて 作った かるたです。ことわざと いうのは、「花よりだん ご」「楽 あれば 苦 あり」「わらう 門には 福 来る」などの 短い 言葉です。短い 言葉の 中に、昔から つたわるちえや 教えが 表されて います。いろはかるたの 読みふだには、ふつう、「いろは」 四十七文字の それぞれを 一文字目と する ことわざが 書かれます。取りふだには、その ことわざの ないようを 表す 絵が かかれます。えらばれて いる ことわざによって、いろはかるたには、いくつか し ゅるいがあります。その 中で、「犬も 歩けば ぼうに 当たる」と いう ことわざが 入って いる いろはかるたは、「いぬぼうかるた」と よばれ、親しまれました。◄┘
157いっぽう、百人一首は、歌かるたとも よばれ、古くから つたわる 短歌を 百首 集めて 作った かるたです。短歌は、「おくやまに もみじふみわけ なくしかの こえきくときぞ あきはかなしき」のような、五・七・五・七・七の 三十一音の 歌です。五・七・五を 上の句、七・七を 下の句と いいます。三十一音の 中に、美しい けしきや 世の 中の 出来事、人の 気持ちなどが 表されて います。歌かるたにも いくつかの しゅるいが ありますが、「小倉百人一首」と よばれる ものが、もっとも よく 知られて います。歌かるたの 読みふだには、 ふつう、上の句と 下の句の 両方が 書かれます。◄┘ 157いっぽう、百人 一首は、歌かるたとも よばれ、古くから つたわる 短歌を 百首 集めて 作った かるたです。短歌は、「おくやまに もみじ ふみわけなくしかの こえきく ときぞ あきは かなしき」のような、五・七・五・七・七の 三十一音の 歌です。五・七・五を 上の句、七・七を 下の句と いいます。三十一音の 中に、美しい けしきや 世の中の 出来事、人の 気持ちなどが 表されて います。歌かるたにも いくつかの し ゅるいがありますが、「小倉百人 一首」と よばれる ものが、もっとも よく 知られて います。歌かるたの 読みふだには、ふつう、上の句と 下の句の 両方が 書かれます。◄┘
158取りふだには、下の句だけが 書かれます。短歌を たくさん おぼえて おくと、読む 人が 上の句を 読み始めた とき、すぐに 取りふだを さがす ことが できます。それで、人々は、子どもの ころから 一生けんめい 短歌を おぼえようと して きました。◄┘ 158取りふだには、下の句だけが 書かれます。短歌を たくさん おぼえておくと、読む 人が 上の句を 読み始めた とき、すぐに 取りふだを さがす ことが できます。それで、人々は、子どもの ころから 一生けんめい短歌を おぼえようと して きました。◄┘
159実は、このような かるたが くふうされる 前に、日本には、元に なる 遊びが あったと いわれて います。それは 貝おおいと いって、はまぐりの 貝がらを 使う ものです。一つの はまぐりの 二まいの 貝がらは、表の 色や もようが 全く 同じで、重ねると ぴたりと 合います。ちがう はまぐりの 貝がらとでは、うまく 合いません。◄┘ 159実は、このような かるたがくふうされる 前に、日本には、元に なる 遊びが あったと いわれて います。それは 貝 おおいと いって、はまぐりの 貝がらを 使う ものです。一つの はまぐりの二まいの 貝がらは、表の 色やもようが 全く 同じで、重ねると ぴたりと 合います。ちがう はまぐりの 貝がらとでは、うまく 合いません。◄┘
160おおいでは、この ことを生かして、何組もの 貝がらを 交ぜて ちらして おき、色や もようを 見て、合う ものを さがします。後の 時代に なると、より 美しく、合う 貝がらが より 分かりやすいようにと、貝がらの 内がわに、同じ 絵が かかれるように なりました。このような、二まいを 合わせて 組を 作る ことと、美しい 絵を かく ことが カード遊びに 取り入れられて、かるたが 生まれたと 考えられて います。◄┘ 160 おおいでは、この ことを 生かして、何組もの 貝がらを 交ぜて ちらしてき、色やもようを 見て、合う ものを さがします。後の 時代に なると、より 美しく、合う 貝がらが より 分かりやすいようにと、貝がらの 内が わに、同じ 絵が かかれるように なりました。このような、二まいを 合わせて 組を 作る ことと、美しい 絵を かく ことが カード遊びに 取り入れられて、かるたが 生まれたと 考えられて います。◄┘
161いろはかるたや 百人一首は、今でも 多くの 人に 親しまれて います。ほかにも、動物かるた、俳句かるた、わらべ歌かるたなど、いろいろな かるたが 生み出され、楽しまれて います。また、全国の 都道府県や 市区町村で 作られる 郷土かるたも あります。ちいきの 名所や 特産品、人物などを 取り上げて いて、そこに 住む 人たちに 大切に されて いる かるたです。◄┘ 161いろはかるたや 百人 一首は、今でも 多くの 人に 親しまれて います。ほかにも、動物かるた、俳句かるた、わらべ歌かるたなど、いろいろな かるたが 生み出され、楽しまれて います。また、全国の 都道府県や 市区町村で 作られる 郷土かるたも あります。ちいきの名所や 特産品、人物などを 取り上げて いて、そこに 住む 人たちに 大切にされて いる かるたです。◄┘
162かるたは、小さくて 手軽な 遊び道具です。けれども、先人の ちえが つまった、大きな おくり物でも あるのです。◄┘ 162かるたは、小さくて 手軽な 遊び道具です。けれども、先人のちえが つまった、大きな おくり物でも あるのです。◄┘
1636 物語を 読んで,しょうかいしよう◄┘ 1636物語を 読んで,しょうかいしよう◄┘
164登場人物を 中心に,物語を しょうかいしましょう。◄┘ 164登場人物を 中心に,物語を しょうかいしましょう。◄┘
165場面の うつりかわり,登場人物の 人がらや 気持ちの 変化に 注意しながら 読みましょう。◄┘ 165場面の うつりかわり,登場人物の 人がらや 気持ちの 変化に 注意しながら 読みましょう。◄┘
166読む◄┘ 166読む◄┘
167◄┘ 167◄┘
168モチモチの 木◄┘ 168モチモチの 木◄┘
169◄┘ 169◄┘
170斎藤 隆介 作◄┘ 170斎藤隆介作◄┘
171滝平 二郎 絵◄┘ 171滝平二郎絵◄┘
172◄┘ 172◄┘
173おくびょう 豆太◄┘ 173おくびょう豆太◄┘
174◄┘ 174◄┘
175全く、豆太ほど おくびょうな やつは ない。もう 五つにも なったんだから、夜中に、一人で せっちんぐらいに 行けたって いい。◄┘ 175全く、豆 太ほど おくびょうな やつはない。もう 五つにも なったんだから、夜中に、一人で せっちんぐらいに 行けたって いい。◄┘
176ところが、豆太は、せっちんは 表に あるし、表には 大きな モチモチの 木がっ立って いて、空いっぱいの かみの 毛を バサバサと ふるって、両手を「わっ。」と あげるからって、夜中には、じさまに ついてって もらわないと、一人じゃ しょうべんも できないのだ。◄┘ 176ところが、豆太は、せっちんは 表に あるし、表には 大きな モチモチの 木が つっ立って いて、空いっぱいの かみの 毛を バサバサと ふるって、両手を「わ あっ。」と あげるからって、夜中には、じ さまについてって もらわないと、一人じゃ しょうべんも できないのだ。◄┘
177さまは、ぐっすり ねむって いる真夜中に、豆太が 「じさまぁ。」って、どんな小さい 声で 言っても、「しょんべんか。」と、すぐ 目を さまして くれる。いっしょにねて いる 一まいしか ない ふとんを、ぬらされちまうより いいからなぁ。◄┘ 177 さまは、ぐっすり ねむって いる 真夜中に、豆太が「じさ まぁ。」って、どんなに 小さい 声で 言っても、「しょんべんか。」と、すぐ 目を さまして くれる。いっしょに ねて いる 一まいしか ない ふとんを、ぬらされちまうより いいからなぁ。◄┘
178それに、とうげの りょうし小屋に、自分とたった 二人で くらして いる 豆太が、かわいそうで、かわいかったからだろう。◄┘ 178それに、とうげの りょうし 小屋に、自分と たった 二人で くらして いる 豆太が、かわいそうで、かわいかったからだろう。◄┘
179けれど、豆太の おとうだって、くまと組みうちして、頭を ぶっさかれて 死んだほどの きもすけだったし、じさまだって、六十四の 今、まだ 青じしを 追っかけて、きもを ひやすような 岩から 岩への びうつりだって、見事に やって のける。◄┘ 179けれど、豆太の おと うだって、くまと 組みうちして、頭を ぶっさかれて 死んだほどの きも すけだったし、じ さまだって、六十四の 今、まだ 青 じしを 追っかけて、きもを ひやすような 岩から 岩への びうつりだって、見事に やってのける。◄┘
180◄┘ 180◄┘
181それなのに、どうして 豆太だけが、こんなに おくびょうなのだろうか。◄┘ 181それなのに、どうして 豆 太だけが、こんなに おくびょうなのだろうか。◄┘
182◄┘ 182◄┘
183やい、木ぃ◄┘ 183やい、木ぃ◄┘
184◄┘ 184◄┘
185モチモチの 木ってのはな、豆太が つけた 名前だ。小屋の すぐ 前に 立って いる、でっかい 木だ。◄┘ 185モチモチの 木ってのはな、豆太が つけた 名前だ。小屋の すぐ 前に 立って いる、でっかい 木だ。◄┘
186秋に なると、茶色い ぴかぴか 光った 実を、いっぱい ふり落として くれる。その 実を、じさまが、木うすで ついて、石うすで ひいて こなに した やつを もちに こね上げて、ふかして 食べると、ほっぺたが 落っこちるほどうまいんだ。◄┘ 186秋に なると、茶色い ぴかぴか 光った 実を、いっぱい ふり落として くれる。その 実を、じ さまが、木 うすで ついて、石うすで ひいて こ なにした やつを もちに こね上げて、ふかして 食べると、ほっぺたが 落っこちるほど うまいんだ。◄┘
187「やい、木ぃ、モチモチの 木ぃ、実ぃ、落とせぇ。」なんて、昼間は 木の 下に 立って、かた足で 足ぶみして、いばって さいそくしたり する くせに、夜に なると、豆太は もう だめなんだ。◄┘ 187「やい、木ぃ、モチモチの 木ぃ、実ぃ、落とせ ぇ。」なんて、昼間は 木の下に 立って、かた足で 足ぶみして、いばって さい そくしたり する くせに、夜に なると、豆太は もう だめなんだ。◄┘
188木が おこって 両手で、「お化けぇ。」って、上から おどかすんだ。夜の モチモチの 木は、そっちを 見ただけで、もう、しょんべんなんか 出なく なっちまう。◄┘ 188木が おこって 両手で、「お化けぇ。」って、上から おどかすんだ。夜の モチモチの 木は、そっちを 見ただけで、もう、しょんべんなんか 出なく なっちまう。◄┘
189さまが、しゃがんだ ひざの 中に 豆太を かかえて、「ああ、いい 夜だ。星に 手が とどきそうだ。おくじゃぁ、しか まめらが、 鼻ぢょうちん 出して、ねっこけて やがるべ。それ、シイーッ。」って 言って くれなきゃ、とっても 出やしない。しないで ねると、あしたの 朝、とこの 中が こうずいに なっちまう もんだから、じさまは、かならず そう して くれるんだ。五つに なって「シー」なんて、みっともないやなぁ。◄┘ 189 さまが、しゃがんだ ひざの 中に 豆太を かかえて、「ああ、いい 夜だ。星に 手が とどきそうだ。おく  じゃぁ、しか  まめらが、鼻ぢょうちん 出して、ねっこけてやがるべ。それ、シイーッ。」って 言って くれなきゃ、とっても 出やしない。しないで ねると、あしたの 朝、と この 中が こう ずいに なっちまう もんだから、じ さまは、かならず そう して くれるんだ。五つに なって「シー」なんて、みっともないやなぁ。◄┘
190でも、豆太は、そう しなくっちゃ だめなんだ。◄┘ 190でも、豆太は、そう しなくっちゃ だめなんだ。◄┘
191◄┘ 191◄┘
192霜月二十日の ばん◄┘ 192霜月二十日の ばん◄┘
193◄┘ 193◄┘
194その モチモチの 木に、今夜は、灯ひが ともる ばんなんだそうだ。じさまが 言った。「霜月の 二十日の うしみつにゃぁ、モチモチの 木に 灯が ともる。起きてて 見て みろ。◄┘ 194その モチモチの 木に、今夜は、灯 ひが ともるばんなんだ そうだ。じ さまが 言った。「霜月の 二十日の うしみつに ゃぁ、モチモチの 木に 灯が ともる。起きてて見て みろ。◄┘
195そりゃぁ、きれいだ。おらも、子どもの ころに 見た ことが ある。死んだ おまえの おとうも 見たそうだ。山の 神様の お祭りなんだ。それは、一人の 子どもしか、◄┘ 195そりゃ ぁ、きれいだ。おらも、子どもの ころに 見た ことが ある。死んだ おまえの お とうも 見た そうだ。山の神様の お祭りなんだ。それは、一人の 子どもしか、◄┘
196見る ことは できねえ。それも、勇気の ある 子どもだけだ。」◄┘ 196見る ことは できねえ。それも、勇気の ある 子どもだけだ。」◄┘
197「それじゃぁ、おらは、とっても だめだ。」豆太は、ちっちゃい 声で、なきそうに 言った。だって、じさまも おとうも 見たんなら、自分も 見たかったけど、こんな 冬の 真夜中に、モチモチの 木を、それも、たった 一人で見に 出るなんて、とんでもねえ 話だ。ぶるぶるだ。◄┘ 197「それ じゃぁ、おらは、とっても だめだ。」 豆太は、ちっちゃい 声で、なきそうに 言った。だって、じ さまも お とうも 見たんなら、自分も 見たかったけど、こんな 冬の 真夜中に、モチモチの 木を、それも、たった 一人で 見に 出るなんて、とんでもねえ 話だ。ぶるぶるだ。◄┘
198木の えだえだの 細かい ところにまで、みんな 灯が ともって、木が 明るく ぼうっと かがやいて、まるで それは、ゆめみてえに きれいなんだそうだが、そして、豆太は、「昼間だったら、見てえなぁ。」と、そっと 思ったんだが、ぶるぶる、夜なんて 考えただけでも、おしっこを もらしちまいそうだ。◄┘ 198木のえだえだの 細かい ところにまで、みんな灯が ともって、木が 明るく ぼうっと かがやいて、まるで それは、ゆめみてえに きれいなんだ そうだが、そして、豆太は、「昼間だったら、見てえなぁ。」と、そっと 思ったんだが、ぶるぶる、夜なんて 考えただけでも、おしっこを もらしちまいそうだ。◄┘
199豆太は、はじめっから あきらめて、ふとんに もぐりこむと、じさまの たばこくさむねん中に 鼻を おしつけて、よいの 口から ねて しまった。◄┘ 199豆太は、はじめっから あきらめて、ふとんに もぐりこむと、じ さまの たばこ くさい むねん中に 鼻を おしつけて、よいの 口から ねて しまった。◄┘
200豆太は 見た◄┘ 200豆太は 見た◄┘
201◄┘ 201◄┘
202豆太は、真夜中に、ひょっと 目を さました。頭の 上で、くまの うなり声が 聞こえたからだ。「じさまぁっ。」◄┘ 202豆太は、真夜中に、ひょっと目を さました。頭の 上で、くまの うなり声が 聞こえたからだ。「じさま ぁっ。」◄┘
203むちゅうで じさまに しがみつこうと したが、じさまは いない。「ま、豆太、心配すんな。じさまは、じさまは、ちょっと はらが いてえだけだ。」◄┘ 203むちゅうでじさまにしがみつこうとしたが、じ さまは いない。「ま、豆太、心配すんな。じ さまは、じ さまは、ちょっとはらが いてえだけだ。」◄┘
204まくら元で、くまみたいに 体を 丸めて うなっていたのは、じさまだった。「じさまっ。」◄┘ 204まくら元で、くまみたいに 体を 丸めて うなって いたのは、じ さまだった。「じさ まっ。」◄┘
205こわくて、びっくらして、豆太は じさまに とびついた。けれども、じさまは、ころりと たたみに 転げると、歯を くいしばって ますます すごく うなるだけだ。◄┘ 205こわくて、びっくらして、豆太はじさまに とびついた。けれども、じ さまは、ころりと たたみに 転げると、歯を くいしばって ますます すごく うなるだけだ。◄┘
206「医者様を よばなくっちゃ。」◄┘ 206「医者様を よばなくっちゃ。」◄┘
207豆太は、子犬みたいに 体を 丸めて、表戸を 体で ふっとばして 走り出した。◄ 207豆太は、子犬みたいに 体を 丸めて、表戸を 体で ふっとばして 走り出した。◄
208まきの まんま。はだしで。半道も ある ふもとの 村まで。◄┘ 208 まきの まんま。はだしで。半道も ある ふもとの 村まで。◄┘
209外は すごい 星で、月も 出て いた。とうげの 下りの 坂道は、一面の 真っ白い 霜で、雪みたいだった。霜が 足に かみついた。足からは 血が 出た。豆太は、なきなき 走った。いたくて、寒くて、こわかったからなぁ。◄┘ 209外は すごい 星で、月も 出て いた。とうげの 下りの 坂道は、一面の 真っ白い 霜で、雪みたいだった。霜が 足に かみついた。足からは 血が 出た。豆太は、なき なき 走った。いたくて、寒くて、こわかったからなぁ。◄┘
210でも、大すきな さまの 死んじまうほうが、もっと こわかったから、なきなき ふもとの 医者様へ 走った。◄┘ 210でも、大すきな さまの 死んじまう ほうが、もっと こわかったから、なき き ふもとの 医者様へ 走った。◄┘
211これも、年よりじさまの 医者様は、豆太から わけを 聞くと、「おう、おう。」と 言って、ねんねこばんてんに 薬箱と豆太を おぶうと、真夜中の とうげ道を、えちら、おっちら、じさまの 小屋へ上って きた。◄┘ 211これも、年よりじ さまの 医者様は、豆 太から わけを 聞くと、「おう、おう。」と 言って、ねんね こばんてんに 薬箱と 豆太を おぶうと、真夜中の とうげ道を、えっ ちら、おっ ちら、じ さまの 小屋へ 上って きた。◄┘
212とちゅうで、月が 出てるのに、雪がふり始めた。この 冬 はじめての 雪だ。豆太は、そいつを ねんねこの 中から 見た。◄┘ 212とち ゅうで、月が 出てるのに、雪が ふり始めた。この 冬 はじめての 雪だ。豆太は、そいつを ねんねこの 中から 見た。◄┘
213そして、医者様の こしを、足で ドンドンけとばした。じさまが、なんだか死んじまいそうな 気が したからな。◄┘ 213そして、医者様の こしを、足で ドンドン けとばした。じ さまが、なんだか んじまいそうな 気が したからな。◄┘
214豆太は、小屋へ 入る とき、もう 一つふしぎな ものを 見た。◄┘ 214豆太は、小屋へ 入る とき、もう 一つふしぎな ものを 見た。◄┘
215「モチモチの 木に、灯が ついて いる。」◄┘ 215「モチモチの 木に、灯が ついて いる。」◄┘
216けれど、医者様は、「あ、ほんとだ。まるで、灯が ついたようだ。だども、あれは、とちの 木の 後ろに ちょうど 月が 出て きて、えだの 間に 星が 光ってるんだ。そこに 雪が ふってるから、明かりが ついたように 見えるんだべ。」と 言って、小屋の 中へ 入って しまった。だから、豆太は、その 後は 知らない。医者様の てつだいを して、かまどに まきを くべたり、湯を わかしたり なんだり、いそがしかったからな。◄┘ 216けれど、医者様は、「あ、ほんとだ。まるで、灯が ついたようだ。だども、あれは、とちの木の 後ろに ちょうど 月が 出て きて、えだの 間に 星が 光ってるんだ。そこに 雪が ふってるから、明かりが ついたように 見えるんだべ。」と 言って、小屋の 中へ 入って しまった。だから、豆太は、その後は 知らない。医者様の てつだいを して、かまどに まきを くべたり、湯を わかしたり なんだり、いそがしかったからな。◄┘
217◄┘ 217◄┘
218弱虫でも、やさしけりゃ◄┘ 218弱虫でも、やさしけりゃ◄┘
219◄┘ 219◄┘
220でも、次の 朝、はらいたが なおって 元気に なった さまは、医者様の 帰った 後で、こう 言った。「おまえは、山の 神様の 祭りを 見たんだ。モチモチの 木には、灯が ついたんだ。◄┘ 220でも、次の 朝、はらいたが なおって 元気に なった さまは、医者様の 帰った 後で、こう 言った。「おまえは、山の神様の 祭りを 見たんだ。モチモチの 木には、灯が ついたんだ。◄┘
221◄┘ 221◄┘
222おまえは、一人で、夜道を 医者様 よびに 行けるほど、勇気の ある 子どもだったんだからな。自分で 自分を 弱虫だなんて 思うな。人間、 やさしささえ あれば、やらなきゃ ならねえ ことは、きっと やる もんだ。 それを 見て、 他人が びっくらするわけよ。は、は、は。」◄┘ 222おまえは、一人で、夜道を 医者様 よびに 行けるほど、勇気の ある 子どもだったんだからな。自分で 自分を 弱虫だなんて 思うな。人間、やさしささえ あれば、やらなきゃ ならねえ ことは、きっと やる もんだ。それを 見て、他人が びっくらするわけよ。は、は、は。」◄┘
223それでも、豆太は、じさまが 元気に なると、その ばんから、「じさまぁ。」と、ょんべんに じさまを 起こしたとさ。◄┘ 223それでも、豆太は、じ さまが 元気に なると、その ばんから、「じさ まぁ。」と、し ょんべんにじさまを 起こしたとさ。◄┘
224次の 中から どれかを えらんで、取とり組みましょう。◄┘ 224 次の 中から どれかを えらんで、取とり組みましょう。◄┘
225一人で、音読したり、黙読(声を 出さずに 読む こと)したり しましょう。◄ 225 一人で、音読したり、黙読(声を 出さずに 読む こと) したり しましょう。◄┘
226▼「三年とうげ」と にて いると 思う ことを、ノートに 書きましょう。◄┘ 226▼「三年とうげ」と にて いると 思う ことを、ノートに 書きましょう。◄┘
227役に 分かれて、音読したり、えんじたり しましょう。(登場人物·……とら おじいさん    きつね)◄┘ 227 役に 分かれて、音読したり、えんじたり しましょう。(登場人物·…… とらおじいさんきつね)◄┘
228▼「三年とうげ」の、「トルトリ」が みまいに 来た 場面を、脚本に 書きかえましょう。·次のような 本を さがして 読みましょう。 外国の 民みん · ちえを はたらかせる 話◄┘ 228▼「三年とうげ」の、「トルトリ」が みまいに 来た 場面を、脚本に 書きかえましょう。· 次のような 本を さがして 読みましょう。外国の 民 みん ·ちえを はたらかせる 話◄┘
229◄┘ 229◄┘
230脚本◄┘ 230脚本◄┘
231◄┘ 231◄┘
232とらと おじいさん◄┘ 232とらと おじいさん◄┘
233◄┘ 233◄┘
234アルビン=トレセルト 作◄┘ 234アルビン= トレセルト作◄┘
235光吉 夏弥 訳◄┘ 235光吉夏弥訳◄┘
236宮本 忠夫 絵◄┘ 236宮本忠夫絵◄┘
237◄┘ 237◄┘
238(まくが 開くと、大きな とらが やって 来る。)ト書き◄┘ 238(まくが 開くと、大きな とらが やって 来る。) ト書き◄┘
239とら おれさまは ジャングル一の りっぱな とらだ。どうだ、 この 見事な 黒い しまは。どうだ、この 長い 長い しっぽは。 どうだ、この するどい つめと きばは。おれさまが ひと声、ウオッと やると、 ジャングルじゅうが ふるえあがる。ぞうは その 場に 一歩も 動けなく なり、さるは、手も 足も しびれて 木から 落ちる(とらが においを かぎつける。)◄┘ 239とらおれさまは ジャングル一の りっぱな とらだ。どうだ、この 見事な 黒い しまは。どうだ、この 長い 長い しっぽは。どうだ、この するどい つめと きばは。おれさまが ひと声、ウオッと やると、ジャングルじゅうが ふるえあがる。ぞうは その 場に 一歩も 動けなく なり、さるは、手も 足も しびれて 木から 落ちる(とらが においを かぎつける。)◄┘
240とら おや、なにか うまそうな においが するぞ。どこだろう。(とらが おりに 近づいて いく。)◄┘ 240とら おや、なにか うまそうな においが するぞ。どこだろう。(とらが おりに 近づいて いく。)◄┘
241とら は、はん。ここだな。よし、よし。(中に 入った とたんに、戸が しまって、とらは 出られなく なる。◄┘ 241とらは、はん。ここだな。よし、よし。(中に 入った とたんに、戸が しまって、とらは 出られなく なる。◄┘
242とら 助けて くれ。助けて くれ。だれか、助けて くれ。(おじいさんが やって 来る。)◄┘ 242とら 助けて くれ。助けて くれ。だれか、助けて くれ。(おじいさんが やって 来る。)◄┘
243とら おじいさん。おじいさん。おれさまを ここから 出して くれ。◄┘ 243とらおじいさん。おじいさん。おれさまを ここから 出して くれ。◄┘
244おりの 戸が しまって、出られなく なっちゃった。◄┘ 244おりの 戸が しまって、出られなく なっちゃった。◄┘
245おじいさん そうらしいね。わなに かかったんだものね。◄┘ 245おじいさんそうらしいね。わなに かかったんだ ものね。◄┘
246とら いいから、早く おれさまを 出して くれ。早く。◄┘ 246とらいいから、早く おれさまを 出して くれ。早く。◄┘
247おじいさん そんな ことを したら、おまえさんは、すぐに わしを 食べちゃうだろう。とら ばかな ことを 言うんじゃ ないよ。おれさまは もう、めしは すんでるんだ。◄┘ 247おじいさん そんな ことを したら、おまえさんは、すぐに わしを 食べちゃうだろう。とらばかな ことを 言うんじゃないよ。おれさまは もう、めしは すんでるんだ。◄┘
248おじいさん じゃ、わしを 食べないね。きっと 食べないね。◄┘ 248おじいさんじゃ、わしを 食べないね。きっと 食べないね。◄┘
249とら 食べたりなんか するもんか。◄┘ 249とら 食べたりなんか する もんか。◄┘
250おじいさん それなら、出して あげよう。(おじいさんは、おりの 戸を 開けて やる。さっそく、とらが おそいかかる。)◄┘ 250おじいさん それなら、出してあげよう。(おじいさんは、おりの 戸を 開けて やる。さっそく、とらが おそいかかる。)◄┘
251とら やれやれ。助かった。やっと ばんめしに ありつけたぞ。実は、おれさまは、 はらぺこなんだ。◄┘ 251とら やれやれ。助かった。やっと ばん めしに ありつけたぞ。実は、おれさまははら ぺこなんだ。◄┘
252おじいさん そんな、むちゃな。助けて もらって おいて、わしを 食べるなんて。◄┘ 252おじいさん そんな、むちゃな。助けてもらっておいて、わしを 食べるなんて。◄┘
253とら おれさまは、さっきから 食べ物を さがして いたんだ。それで、おりの 中にまで 入りこんだんだ。ぐずぐず 言わずに、さっさと 食べさせろ。◄┘ 253とらおれさまは、さっきから 食べ物を さがして いたんだ。それで、おりの 中にまで 入りこんだんだ。ぐずぐず 言わずに、さっさと 食べさせろ。◄┘
254おじいさん まあ、そう 急いそがないで、とらさん。その 前に、だれかに ちょっと きいて みたいんだ。◄┘ 254おじいさん まあ、そう 急いそがないで、とらさん。その 前に、だれかに ちょっと きいて みたいんだ。◄┘
255とら 何をだ。◄┘ 255とら何をだ。◄┘
256おじいさん おまえさんが わしを 食べると いうのが、むちゃで ないかどうか、 きいて みたいんだよ。もし、みんなが むちゃで ないと 言ったら、しかたが ないから、食べられて あげるよ。だけど、一人でも むちゃだと 言ったら、わしを村へ 帰らせて くれないと いけないよ。◄┘ 256おじいさんおまえさんが わしを 食べると いうのが、むちゃでないか どうか、いて みたいんだよ。もし、みんなが むちゃでないと 言ったら、しかたが ないから、食べられてあげるよ。だけど、一人でも むちゃだと 言ったら、わしを 村へ 帰らせて くれないといけないよ。◄┘
257とら つまらん ことを ききたがるもんだ。みんな、むちゃじゃ ないと 言うに 決まって いるさ。でも、まあ、きいて くるが いいや。なっとくが いったら、 すぐに もどって くるんだぞ。◄┘ 257とら つまらん ことを ききたがる もんだ。みんな、むちゃじゃないと 言うに 決まって いるさ。でも、まあ、きいて くるが いいや。なっとくが いったら、ぐに もどって くるんだぞ。◄┘
258おじいさん い、はい。(おじいさんは 向こうへ 歩いて いく。まもなく、大きい 木の 所へ やって 来る。)◄┘ 258おじいさん い、はい。(おじいさんは 向こうへ 歩いて いく。まもなく、大きい 木の 所へ やって 来る。)◄┘
259おじいさん 木さん、木さん、聞いとくれよ。とらが、わなに かかって おりの 中に いたので、出して やったら、わしを 食べると 言うんだ。そんな むちゃな ことって、あるだろうか。◄┘ 259おじいさん木さん、木さん、聞いと くれよ。とらが、わなに かかっておりの 中に いたので、出して やったら、わしを 食べると 言うんだ。そんな むちゃな ことって、あるだろうか。◄┘
260 じいさんや。まあ、そう なげきなさんな。わしなんか、えだを はり、 葉を しげらせて、人間たちを 木こかげで 休ませて 雨宿やどりを させて やったり して いる。それなのに、人間は、わしの 大事な えだを 切って、たきつけに 持ってったり するんだ。まあ、しかたが ないから、とらに 食べられて やるんだな。◄┘ 260じいさんや。まあ、そう なげきなさんな。わしなんか、えだを はり、葉を しげらせて、人間たちを 木こかげで 休ませて 雨宿 やどりをさせて やったり して いる。それなのに、人間は、わしの 大事なえだを 切って、たきつけに 持ってったり するんだ。まあ、しかたが ないから、とらに 食べられて やるんだな。◄┘
261おじいさん いや、まだまだ。(少し 行くと、今度どは 牛に 会う。)◄┘ 261おじいさん いや、まだまだ。(少し 行くと、今度どは 牛に 会う。)◄┘
262おじいさん 牛どん、牛どん、聞いとくれよ。とらが おりの 中に いたので、出して やったら、わしを 食べると 言うんだ。そんな おん知らずの ことって、あるだろうか。◄┘ 262おじいさん牛どん、牛どん、聞いと くれよ。とらが おりの 中に いたので、出して やったら、わしを 食べると 言うんだ。そんな おん知らずの ことって、あるだろうか。◄┘
263牛 まあまあ、そんなに なげきなさんな。わしなんか、こう して、朝から ばんまで、◄┘ 263牛 まあ まあ、そんなに なげきなさんな。わしなんか、こうして、朝から ばんまで、◄┘
264人間の ために はたらきどおしなんだ。それなのに、人間は、ありがたがる どころか、◄┘ 264人間の ために はたらきど おしなんだ。それなのに、人間は、ありがたがるどころか、◄┘
265むちで ピシピシ やって、もっと こき使おうと するんだ。しかたが ないから、とらに 食べられて やるんだな。◄┘ 265むちでピシピシ やって、もっと こき使おうと するんだ。しかたが ないから、とらに 食べられて やるんだな。◄┘
266おじいさん いや、まだまだ。(少し 行くと、広い 道に 出る。)◄┘ 266おじいさん いや、まだまだ。(少し 行くと、広い 道に 出る。)◄┘
267おじいさん 道さん、道さん。わしの 言う ことを 聞いとくれよ。とらが、わなに かかって おりの 中に いたので、出して やったら、わしを 食べると 言うんだ。そんな ことって、あるだろうか。◄┘ 267おじいさん道さん、道さん。わしの 言う ことを 聞いと くれよ。とらが、わなに かかっておりの 中に いたので、出して やったら、わしを 食べると 言うんだ。そんな ことって、あるだろうか。◄┘
268 おじいさんや。まあ、そんなに なげきなさんな。わしを ごらん。この とおり 人間や 車が 通りやすいように、平らな いい 道を 作って やって いる。それなのに、人間は、あちこち ほり返したり つばを はいたり、ごみを すてたり するんだ。 おん知らずは、人間も とらも、おんなじさ。まあ、とらに 食べられて やるんだな。◄┘ 268おじいさんや。まあ、そんなに なげきなさんな。わしを ごらん。この とおり、人間や 車が 通りやすいように、平らな いい 道を 作って やって いる。それなのに、人間は、あちこちほり返したり つばを はいたり、ごみを すてたり するんだ。おん知らずは、人間も とらも、おんなじさ。まあ、とらに 食べられて やるんだな。◄┘
269おじいさん おう、おう、だれも、わしの 言う ことを 分かって くれる 者は いない。これじゃ、もどって いって、とらの ばんめしに なるより しかたが あるまい。(とちゅうで、きつねに 会う。)◄┘ 269おじいさん おう、おう、だれも、わしの 言う ことを 分かって くれる 者は いない。これじゃ、もどって いって、とらの ばんめしに なるより しかたが あるまい。(とち ゅうで、きつねに 会う。)◄┘
270きつね おじいさん、おじいさん。どうして、そんな 悲かなしい 顔を して いるの。◄┘ 270きつねおじいさん、おじいさん。どうして、そんな 悲 かなしい 顔を して いるの。◄┘
271おじいさん とらが、わなに かかって おりの 中に いたので、出して やったら、◄┘ 271おじいさんとらが、わなに かかっておりの 中に いたので、出して やったら、◄
272わしを 食べるって 言うんだ。そんな むちゃな ことって、あるだろうか。木に きいて みても、牛に きいて みても、道に きいて みても、みんな、しかたが ないから、とらに 食べられて やるんだなって、言うだけなんだよ。◄┘ 272わしを 食べるって 言うんだ。そんな むちゃな ことって、あるだろうか。木に きいて みても、牛に きいて みても、道に きいて みても、みんな、しかたが ないから、とらに 食べられて やるんだなって、言うだけなんだよ。◄┘
273きつね ぼくには、おじいさんの 言う ことが さっぱり 分からない。こんがらかって しまって。いっしょに とらの ところへ 行って、よく 話を 聞いて みよう。(とらが、おじいさんに 言う。)◄┘ 273きつねぼくには、おじいさんの 言う ことが さっぱり 分からない。こんがらかって しまって。いっしょに とらの ところへ 行って、よく 話を 聞いて みよう。(とらが、おじいさんに 言う。)◄┘
274とら やっと、もどって きたな。さあ、早く 食べさせろ。◄┘ 274とら やっと、もどって きたな。さあ、早く 食べさせろ。◄┘
275おじいさん い、はい、ただ今。でも、この きつねが、とらさんに、なにか ききたい ことが あるんだそうで。◄┘ 275おじいさん い、はい、ただ今。でも、この きつねが、とらさんに、なにか ききたい ことが あるんだ そうで。◄┘
276きつね ぼくには、おじいさんの 言う ことが さっぱり 分からない。さいしょから、 くわしく 話して くれませんか。◄┘ 276きつねぼくには、おじいさんの 言う ことが さっぱり 分からない。さいしょからくわしく 話して くれませんか。◄┘
277とら なんにも 話す ことなんか ないよ。まず、おれさまが おりの 中に いて。◄┘ 277とら なんにも 話す ことなんか ないよ。まず、おれさまが おりの 中に いて。◄┘
278きつね あれですね。あの おりですね。◄┘ 278きつねあれですね。あの おりですね。◄┘
279とら そうだ。それから、この じいさんが やって 来て、おれさまを◄┘ 279とらそうだ。それから、この じいさんが やって 来て、おれさまを◄┘
280助けて くれたんだ。◄┘ 280助けて くれたんだ。◄┘
281きつね どう やって。◄┘ 281きつね どう やって。◄┘
282とら おりから、出して くれたんだよ。◄┘ 282とらおりから、出して くれたんだよ。◄┘
283きつね それなら、お礼を 言わなくちゃね。◄┘ 283きつね それなら、お礼を 言わなくちゃね。◄┘
284とら だから、食べて やると 言ったんだ。助けて くれた お礼にね。◄┘ 284とらだから、食べて やると 言ったんだ。助けて くれた お礼にね。◄┘
285きつね どうも、よく 分からないな。おじいさんが おりの 中に いて、それから、◄┘ 285きつね どうも、よく 分からないな。おじいさんが おりの 中に いて、それから、◄┘
286とらさんが やって 来て、おじいさんを 出して やって、食べて やると 言うのに、おじいさんは、ありがとうも 言わない。◄┘ 286とらさんが やって 来て、おじいさんを 出して やって、食べて やると 言うのに、おじいさんは、ありがとうも 言わない。◄┘
287とら ちがう、ちがう。この おれさまが、おりの 中に いたんだよ。こんな ふうに。(とらが 入ると、きつねが 急いで 戸を しめる。)◄┘ 287とら ちがう、ちがう。この おれさまが、おりの 中に いたんだよ。こんなふうに。(とらが 入ると、きつねが 急いで 戸を しめる。)◄┘
288きつね これで、やっと 分かった。◄┘ 288きつねこれで、やっと 分かった。◄┘
289とら それから、じいさんが やって 来て、おれさまを 出して くれたんだ。じいさんや、もう 一度 出して おくれよ。さあ、早く。(おじいさんは げらげら わらいだす。そして、きつねに 向かって。)◄┘ 289とらそれから、じいさんが やって 来て、おれさまを 出して くれたんだ。じいさんや、もう一度 出して おくれよ。さあ、早く。(おじいさんは げらげら わらいだす。そして、きつねに 向かって。)◄┘
290おじいさん なるほど、なるほど、きつねどん。あんたは、ちえ者しゃだね。わしは、あんたに、うんと ありがとうを 言わなくちゃ ならないね。◄┘ 290おじいさん なるほど、なるほど、きつねどん。あんたは、ちえ者しゃだね。わしは、あんたに、うんと ありがとうを 言わなくちゃならないね。◄┘
291きつね うまく いって、ゆかい ゆかい。今夜は、おじいさんも ぼくも、 さぞ よく ねむれるでしょうよ。(おじいさんと きつねは、いそいそと 村の 方へ 帰って いく。)◄┘ 291きつね うまく いって、ゆか い ゆか い。今夜は、おじいさんも ぼくも、さぞ よく ねむれるでしょうよ。(おじいさんと きつねは、いそいそと 村の 方へ 帰って いく。)◄┘
292とら 出して くれ。出して くれ。助けて くれ。助けて くれ。(ジャングルでは、とらの わめき声が 聞こえても、ぞうも さるたちも、平気で 遊び回って いる。)◄┘ 292とら 出して くれ。出して くれ。助けて くれ。助けて くれ。(ジャングルでは、とらの わめき声が 聞こえても、ぞうも さるたちも、平気で 遊び回って いる。)◄┘
293とら ああ、あ。この あわれな はらぺこの とらを、ここから 出して くれる 者は だれも いないのか。(まくが しずかに 下りる。)◄┘ 293とら ああ、あ。この あわれな はら ぺこのとらを、ここから 出して くれる 者は だれも いないのか。(まくが しずかに 下りる。)◄┘
294◄┘ 294◄┘
295音読しよう◄┘ 295音読しよう◄┘
296いつ、どこで、どんな できごとが おきるのでしょう。◄┘ 296いつ、どこで、どんな できごとが おきるのでしょう。◄┘
297その とき、まわりは、どんな ようすでしょう。◄┘ 297その とき、まわりは、どんなようすでしょう。◄┘
298読む◄┘ 298読む◄┘
299◄┘ 299◄┘
300きつつきの 商売◄┘ 300きつつきの 商売◄┘
301◄┘ 301◄┘
302林原 玉枝 作◄┘ 302林原玉枝作◄┘
303村上 康成 絵◄┘ 303村上康成絵◄┘
304◄┘ 304◄┘
3051◄┘ 3051◄┘
306◄┘ 306◄┘
307きつつきが、お店を 開きました。◄┘ 307きつつきが、お店を 開きました。◄┘
308それは もう、きつつきに ぴったりの お店です。◄┘ 308それは もう、きつつきに ぴったりの お店です。◄┘
309きつつきは、森じゅうの 木の 中から、えりすぐりの 木を 見つけてきて、かんばんを こしらえました。◄┘ 309きつつきは、森じゅうの 木の 中から、えりすぐりの 木を 見つけて きて、かんばんを こしらえました。◄┘
310かんばんに きざんだ お店の 名前は、こうです。◄┘ 310かんばんに きざんだ お店の 名前は、こうです。◄┘
311おとや◄┘ 311おとや◄┘
312それだけでは、なんだか 分かりにくいので、きつつきは、その 後に、こう 書きました。◄┘ 312それだけでは、なんだか 分かりにくいので、きつつきは、その 後に、こう 書きました。◄┘
313「できたての 音、すてきな いい 音、お聞かせします。四分音符 一こに つき、どれでも 百リル。」◄┘ 313「できたての 音、すてきな いい 音、お聞かせします。四分音符一こに つき、どれでも 百リル。」◄┘
314「へええ。どれでも 百リル。どんな 音が あるのかしら。」◄┘ 314「へええ。どれでも 百リル。どんな 音が あるのかしら。」◄┘
315そう 言って、まっさきに やって 来たのは、茶色い 耳を ぴんと 立てた 野うさぎでした。野うさぎは、きつつきの さし出した メニューを じっくり ながめて、メニューの いちばん はじっこを ゆびさしながら、「これに するわ。」と 言いました。◄┘ 315そう 言って、まっさきに やって 来たのは、茶色い 耳を ぴんと 立てた 野うさぎでした。野うさぎは、きつつきの さし 出した メニューを じっくり ながめて、メニューの いちばん はじっこを ゆびさしながら、「これに するわ。」と 言いました。◄┘
316ぶなの 音です。◄┘ 316ぶなの 音です。◄┘
317「四分音符分、ちょうだい。」◄┘ 317「四分音符分、ちょうだい。」◄┘
318「しょうちしました。では、どうぞ こちらへ。」◄┘ 318「しょうちしました。では、どうぞ こちらへ。」◄┘
319きつつきは、野うさぎを つれて、ぶなの 森に やって 来ました。◄┘ 319きつつきは、野うさぎを つれて、ぶなの 森に やって 来ました。◄┘
320それから、野うさぎを、大きな ぶなの 木の 下に 立たせると、自分は、木の てっぺん近くの みきに 止まりました。◄┘ 320それから、野うさぎを、大きな ぶなの 木の下に 立たせると、自分は、木の てっぺん近くの みきに 止まりました。◄┘
321「さあ、いきますよ、いいですか。」◄┘ 321「さあ、いきますよ、いいですか。」◄┘
322きつつきは、木の 上から 声を かけました。野うさぎは、きつつきを 見上げて、こっくり うなずきました。◄┘ 322きつつきは、木の 上から 声を かけました。野うさぎは、きつつきを 見上げて、こっくり うなずきました。◄┘
323「では。」◄┘ 323「では。」◄┘
324きつつきは、ぶなの 木の みきを、くちばしで 力いっぱい たたきました。◄┘ 324きつつきは、ぶなの 木の みきを、くちばしで 力いっぱい たたきました。◄┘
325コーン。◄┘ 325コーン。◄┘
326ぶなの 木の 音が、ぶなの 森に こだましました。◄┘ 326ぶなの 木の 音が、ぶなの 森に こだましました。◄┘
327野うさぎは、きつつきを 見上げた まま、だまって 聞いて いました。◄┘ 327野うさぎは、きつつきを 見上げた まま、だまって 聞いて いました。◄┘
328きつつきも、うっとり 聞いて いました。◄┘ 328きつつきも、うっとり 聞いて いました。◄┘
329四分音符分よりも、うんと 長い 時間が すぎて ゆきました。◄┘ 329四分音符分よりも、うんと 長い 時間が すぎて ゆきました。◄┘
3302◄┘ 3302◄┘
331ぶなの 森に、雨が ふりはじめます。·◄┘ 331ぶなの 森に、雨が ふりはじめます。·◄┘
332きつつきは、新しい メニューを 思いつきました。◄┘ 332きつつきは、新しい メニューを 思いつきました。◄┘
333ぶなの 木の うろから 顔を 出して、空を 見上げて いると、◄┘ 333ぶなの 木の うろから 顔を 出して、空を 見上げて いると、◄┘
334「おはよう。きつつきさん。」◄┘ 334「おはよう。きつつきさん。」◄┘
335「何 してるんですか。きつつきさん。」◄┘ 335「何 してるんですか。きつつきさん。」◄┘
336木の 下で、声が しました。◄┘ 336木の下で、声が しました。◄┘
337見下ろすと、ぶなの 木の もとに、野ねずみの 家族が、みんなで きつつきを 見上げて います。◄┘ 337見下ろすと、ぶなの 木の もとに、野ねずみの 家族が、みんなで きつつきを 見上げて います。◄┘
338たちつすみれの 葉っぱの かさを かたに かついで 上を 見上げて いるので、みんな、顔じゅう びしょぬれでした。◄┘ 338たちつ  すみれの 葉っぱの かさをかたに かついで 上を 見上げて いるので、みんな、顔じゅう びしょぬれでした。◄┘
339「おとやの 新しい メニューが できたんですよ。」◄┘ 339「おとやの 新しい メニューが できたんですよ。」◄┘
340きつつきは、ぬれた 頭を ぶるんと ふって 言いました。◄┘ 340きつつきは、ぬれた 頭を ぶるんと ふって 言いました。◄┘
341「へえ。」◄┘ 341「へえ。」◄┘
342「今朝、できたばかりの、できたてです。」◄┘ 342「今朝、できたばかりの、できたてです。」◄┘
343「へえ。」◄┘ 343「へえ。」◄┘
344「でもね、もしかしたら、あしたは できないかも しれないから、メニューに 書こうか 書くまいか、考えてたんですよ。」◄┘ 344「でもね、もしか したら、あしたは できないかも しれないから、メニューに 書こうか 書くまいか、考えてたんですよ。」◄┘
345「へえ。じゃあ、とくべつメニューって わけ。」◄┘ 345「へえ。じゃあ、とくべつメニューって わけ。」◄┘
346「そうです。とくとく、とくべつメニュー。」◄┘ 346「そうです。とくとく、とくべつメニュー。」◄┘
347「そいつは いいなあ。ぼくたちは、うんが いいぞ。 それで、その、とくとく、とくべつメ二ューも、 百リル。」◄┘ 347「そいつは いいなあ。ぼくたちは、うんが いいぞ。それで、その、とくとく、とくべつメ二ューも、百リル。」◄┘
348「いいえ。今日のは、ただです。」◄┘ 348「いいえ。今日のは、ただです。」◄┘
349「よかった。ますます うんが いいぞ。ここに、 おとやが 開店して、すてきな いい 音を 聞かせて もらえるって ことは、 もう ずいぶん 前から 聞いてんだけどね。今日 やっと、はじめて みんなで 来て みたんですよ。」◄┘ 349「よかった。ますますうんが いいぞ。ここに、おとやが 開店して、すてきな いい 音を 聞かせて もらえるって ことは、もう ずいぶん 前から 聞いて たんだけどね。今日 やっと、はじめて みんなで 来て みたんですよ。」◄┘
350「朝からの 雨で、おせんたくが できない ものですから。」◄┘ 350「朝からの 雨で、おせんたくが できない ものですから。」◄┘
351母さんねずみが 言うと、「おにわの おそうじも。」「草の実あつめも。」◄┘ 351母さんねずみが 言うと、「おに わの おそうじも。」「草の 実あつめも。」◄┘
352「草が ぬれてて、おすもうも できないよ。」「かたつむりたちは、できるけど。」◄┘ 352「草が ぬれてて、おすもうも できないよ。」「かたつむりたちは、できるけど。」◄┘
353「かたつむりじゃ なくて、あまがえるだってば。」「どっちもだよ。」子どもたちも、口々に 言いました。◄┘ 353「かたつむりじゃなくて、あまが えるだってば。」「どっちもだよ。」 子どもたちも、口々に 言いました。◄┘
354「だから、ひとつ、聞かせてください。」野ねずみの 家族は、そろって、うれしそうに 言いました。「しょうちしました。」◄┘ 354「だから、ひとつ、聞かせて ください。」 野ねずみの 家族は、そろって、うれしそうに 言いました。「しょうちしました。」◄┘
355きつつきは、木の うろから 出て、野ねずみたちの いる 場所に とび下りました。◄┘ 355きつつきは、木の うろから 出て、野ねずみたちの いる 場所に とび下りました。◄┘
356「さあさあ、しずかに しなさい。おとやさんの、とくとく、 とくべつメニューなんだから。」◄┘ 356「さあさあ、しずかに しなさい。おとやさんの、とくとく、とくべつメニューなんだから。」◄┘
357野ねずみは、野ねずみの おくさんと 二人で、ぺちゃくちゃ 言ってる 子どもたちを、どうにか だまらせてから、きつつきを ふりかえって 言いました。「さあ、おねがいいたします。」「かしこまりました。」◄┘ 357野ねずみは、野ねずみの お くさんと 二人で、ぺちゃくちゃ 言ってる 子どもたちを、どうにか だまらせてから、きつつきを ふりかえって 言いました。「さあ、おねがいいたします。」「かしこまりました。」◄┘
358葉っぱの かさを さした 十ぴきの 子ねずみたちは、きらきらした きれいな 目を、そろって きつつきに むけました。◄┘ 358葉っぱの かさを さした 十ぴきの 子ねずみたちは、きらきら した きれいな 目を、そろって きつつきに むけました。◄┘
359「さあ、いいですか。今日だけの とくべつな 音です。お口を とじて、 目を とじて、聞いて ください。」◄┘ 359「さあ、いいですか。今日だけの とくべつな 音です。お口を とじて、目を とじて、聞いて ください。」◄┘
360みんなは、しいんと だまって、目を とじました。◄┘ 360みんなは、しいんと だまって、目を とじました。◄┘
361目を とじると、そこらじゅうの いろんな 音が、いちどに 聞こえて きました。◄┘ 361目を とじると、そこらじゅうの いろんな 音が、いちどに 聞こえて きました。◄┘
362ぶなの 葉っぱの、 シャバシャバシャバ。 地面からの、 パシパシ ピチピチ。◄ 362ぶなの 葉っぱの、シャバシャバシャバ。地面からの、パシパシピチピチ。◄┘
363葉っぱの かさの、 パリパリパリ。 そして、ぶなの 森の ずうっと おくふかくから、 ドウドウドウ。 ザワザワザワワ。◄┘ 363葉っぱの かさの、パリパリパリ。そして、ぶなの 森のずうっと おくふかくから、ドウドウドウ。ザワザワザワワ。◄┘
364「ああ、聞こえる、雨の 音だ。」「ほんとだ。聞こえる。」◄┘ 364「ああ、聞こえる、雨の 音だ。」「ほんとだ。聞こえる。」◄┘
365「雨の 音だ。」◄┘ 365「雨の 音だ。」◄┘
366「へえ。」◄┘ 366「へえ。」◄┘
367「うふふ。」◄┘ 367「うふふ。」◄┘
368野ねずみたちは、みんな、にこにこ うなずいて、それから、目を 開けたり とじたり しながら、ずうっと ずうっと、とくべつメニューの 雨の 音に つつまれて いたのでした。◄┘ 368野ねずみたちは、みんな、にこにこ うなずいて、それから、目を 開けたり とじたり しながら、ずうっとずうっと、とくべつメニューの 雨の 音に つつまれて いたのでした。◄┘
369読んで,かんそうを もとう◄┘ 369読んで,かんそうを もとう◄┘
370まとまり(段落)に 気を つけて 読みましょう。◄┘ 370まとまり(段落)に 気を つけて 読みましょう。◄┘
371「問い」と 「答え」は 何か,どのように 「答え」を◄┘ 371「問い」と「答え」は 何か,どのように「答え」を◄┘
372出したかを,読んで いきましょう。◄┘ 372出したかを,読んで いきましょう。◄┘
373◄┘ 373◄┘
374イルカの ねむり方◄┘ 374イルカの ねむり方◄┘
375◄┘ 375◄┘
376幸島 司郎 文◄┘ 376幸島司郎文◄┘
377寺越 慶司 絵◄┘ 377寺越慶司絵◄┘
378◄┘ 378◄┘
379 イルカは、魚と 同じように 水の 中で くらして います。ただ、魚と ちがって、ときどき 水面に 上がって いきを します。ねむって いる ときでも、いきは しなければ なりません。イルカは、いつ、どんな ねむり方を して いるのでしょうか。◄┘ 379イルカは、魚と 同じように 水の 中で くらして います。ただ、魚と ちがって、ときどき 水面に 上がって いきを します。ねむって いる ときでも、いきは しなければ なりません。イルカは、いつ、どんな ねむり方を して いるのでしょうか。◄┘
380 動物の ことを 調べて いる 関口さんは、その ことを 知りたいと 思いました。そこで、水族館に 行って、一日じゅう イルカを かんさつする ことに しました。しかし、いくら 見て いても、イルカたちは いつも およいで いて、ほとんど じっと して いる ことは ありませんでした。これでは、いつ ねむって いるのか 分かりません。·◄┘ 380動物の ことを 調べて いる 関口さんは、その ことを 知りたいと 思いました。そこで、水族館に 行って、一日じゅう イルカを かんさつ する ことに しました。しかし、いくら 見て いても、イルカたちは いつも およいで いて、ほとんど じっと して いる ことは ありませんでした。これでは、いつねむって いるのか 分かりません。·◄┘
381 関口さんは、およぐ はやさと、水面に 上がって いきつぎを する 回数を 調べて みる ことに しました。すると、夜中には、およぐ はやさが ゆっくりと なり、いきつぎの 回数も 少なく なる ことが 分かりました。この ことから、関口さんは、イルカは この 時間に ねむって いるのでは ないかと 考えました。◄┘ 381関口さんは、およぐ はやさと、水面に 上がって いき つぎを する 回数を 調べて みる ことに しました。すると、夜中には、およぐ はやさが ゆっくりと なり、いきつぎの 回数も 少なく なる ことが 分かりました。この ことから、関口さんは、イルカは この 時間に ねむって いるのではないかと 考えました。◄┘
382④ さらに、およいで いる ときの 動きを、昼間と 夜中で くらべました。昼間は、 いろいろな 方向に 向かって、はやく およいで いました。それに 対して 夜中は、プールの ふかい 所で むれを 作り、ゆっくりと 円を かくように およぎつづけて いました。よく 見ると、この ときは かた目を とじた まま およいで いました。そして、ときどき、とじる 目を 交代させて いました。イルカは、ゆっくり およぎながら ねむって いるに ちがいありません。·◄┘ 382④ さらに、およいで いる ときの 動きを、昼間と 夜中で くらべました。昼間は、いろいろな 方向に 向かって、はやく およいで いました。それに 対して、夜中は、プールの ふかい 所で むれを 作り、ゆっくりと 円を かくように およぎつづけて いました。よく 見ると、この ときは かた目を とじた まま およいで いました。そして、ときどき、とじる 目を 交代させて いました。イルカは、ゆっくり およ ぎながらねむっているにちがいありません。·◄┘
383⑤ 本当に ねむって いるか どうかは、脳のうが 休んで いるか どうかを 調べないと 分かりません。関口さんは、これまでに 行われた、ほかの 研究を 調べて みました。すると、イルカは、 脳を 休ませて いる ときは、目を とじて いる ことが 分かりました。かた目を とじて いる ときは、脳を 半分 休ませて いる ことに なります。イルカは、脳の 右半分と 左半分を べつべつに 休ませる ことが できるのです。◄┘ 383⑤ 本当に ねむって いるか どうかは、脳のうが 休んで いるか どうかを 調べないと 分かりません。関口さんは、これまでに 行われた、ほかの 研究を 調べて みました。すると、イルカは、脳を 休ませて いる ときは、目を とじて いる ことが 分かりました。かた目を とじて いる ときは、脳を 半分 休ませて いる ことに なります。イルカは、脳の 右半分と 左半分を べつべつに 休ませる ことが できるのです。◄┘
384 イルカは、夜中に、脳を 半分ずつ 交代で 休ませて、 ゆっくりと およぎながら ねむって いるのです。◄┘ 384イルカは、夜中に、脳を 半分ずつ 交代で 休ませて、ゆっくりと およぎながら ねむって いるのです。◄┘
385◄┘ 385◄┘
386ありの 行列◄┘ 386ありの 行列◄┘
387◄┘ 387◄┘
388大滝 哲也 文◄┘ 388大滝哲也文◄┘
389内藤 貞夫 絵◄┘ 389内藤貞夫絵◄┘
390◄┘ 390◄┘
391夏に なると、庭や 公園の すみなどで、 ありの 行列を 見かける ことが あります。その 行列は、ありの 巣から、えさの ある 所まで、ずっと つづいて います。ありは、ものが よく 見えません。それなのに、なぜ、ありの 行列が できるのでしょうか。◄┘ 391夏に なると、庭や 公園の すみなどで、ありの 行列を 見かける ことが あります。その 行列は、ありの 巣から、えさの ある 所まで、ずっと つづいて います。ありは、ものが よく 見えません。それなのに、なぜ、ありの 行列が できるのでしょうか。◄┘
392アメリカに、ウイルソンと いう 学者が います。◄┘ 392アメリカに、ウイルソンと いう 学者が います。◄┘
393この 人は、次のような 実験を して、ありの 様子を かんさつしました。◄┘ 393この 人は、次のような 実験を して、ありの 様子を かんさつ しました。◄┘
394はじめに、ありの 巣から 少し なれた 所に、ひとつまみの さとうを おきました。しばらく すると 一ぴきの ありが、その さとうを 見つけました。これは、えさを さがす ために、外に 出て いた はたらきありです。ありは、やがて、巣に 帰って いきました。すると、巣の 中から、たくさんの はたらきありが、次々と 出て きました。そして、列を 作って、さとうの 所まで 行きました。ふしぎな ことに、◄┘ 394はじめに、ありの 巣から 少し なれた 所に、ひとつまみの さとうを おきました。しばらく すると 一ぴきの ありが、その さとうを 見つけました。これは、えさを さがす ために、外に 出て いた はたらきありです。ありは、やがて、巣に 帰って いきました。すると、巣の 中から、たくさんの はたらき ありが、次々と 出て きました。そして、列を 作って、さとうの 所まで 行きました。ふしぎな ことに、◄┘
395その 行列は、はじめの ありが 巣に 帰る ときに 通った 道すじから、外れて いないのです。◄┘ 395その 行列は、はじめの ありが 巣に 帰る ときに 通った 道すじから、外れて いないのです。◄┘
396次に、この 道すじに 大きな 石を おいて、ありの 行く手を さえぎって みました。すると、ありの 行列は、石の 所で みだれて、ちりぢりに なって しまいました。ようやく、一ぴきの ありが、石の 向こうがわに 道の つづきを 見つけました。そして、さとうに 向かって すすんで いきました。そのうちに、ほかの ありたちも、◄┘ 396次に、この 道すじに 大きな 石を おいて、ありの 行く手を さえぎって みました。すると、ありの 行列は、石の 所で みだれて、ちりぢりに なって しまいました。ようやく、一ぴきの ありが、石の 向こうが わに道の つづきを 見つけました。そして、さとうに 向かって すすんで いきました。その うちに、ほかの ありたちも、◄┘
397一ぴき 二ひきと 道を 見つけて 歩きだしました。また だんだんに、ありの 行列が できて いきました。目的地に 着くと、ありは、さとうの つぶを もって、巣に 帰って いきました。帰る ときも、行列の 道すじは かわりません。ありの 行列は、さとうの かたまりが なくなるまで つづきました。◄┘ 397一ぴき 二ひきと 道を 見つけて 歩きだしました。また だんだんに、ありの 行列が できて いきました。目的地に 着くと、ありは、さとうの つぶを もって、巣に 帰って いきました。帰る ときも、行列の 道すじは かわりません。ありの 行列は、さとうの かたまりが なくなるまで つづきました。◄┘
398これらの かんさつから、ウイルソンは、はたらきありが、地面に 何か 道しるべに なる ものを つけて おいたのでは ないか、と 考えました。◄┘ 398これらの かんさつから、ウイルソンは、はたらきありが、地面に 何か 道しるべに なる ものを つけておいたのではないか、と 考えました。◄┘
399そこで、ウイルソンは、はたらきありの 体の しくみを、細かに 研究して みました。すると、ありは、おしりの ところから、とくべつの えきを 出す ことが 分かりました。それは、においの ある、じょうはつしやすい えきです。◄┘ 399そこで、ウイルソンは、はたらき ありの 体の しくみを、細かに 研究して みました。すると、ありは、おしりの ところから、とくべつの えきを 出す ことが 分かりました。それは、においの ある、じ ょうはつしやすいえきです。◄┘
400この 研究から、ウイルソンは、ありの 行列の できる わけを 知る ことが できました。◄┘ 400この 研究から、ウイルソンは、ありの 行列の できる わけを 知る ことが できました。◄┘
401はたらきありは、えさを 見つけると、道しるべと して、地面に この えきを つけながら 帰るのです。ほかの はたらきありたちは、その においを かいで、においに そって 歩いて いきます。そして、その はたらきありたちも、えさを もって 帰る ときに、同じように、えきを 地面に つけながら 歩くのです。そのため、えさが 多いほど、◄┘ 401はたらき ありは、えさを 見つけると、道しるべとして、地面に このえきを つけながら 帰るのです。ほかの はたらき ありたちは、その においを かいで、においに そって 歩いて いきます。そして、その はたらき ありたちも、えさを もって 帰る ときに、同じように、えきを 地面に つけながら 歩くのです。その ため、えさが 多いほど、◄┘
402においが 強くなります。◄┘ 402においが 強く なります。◄┘
403このように、においを たどって、えさの 所へ 行ったり、巣に 帰ったり するので、ありの 行列ができると いう わけです。◄┘ 403このように、においを たどって、えさの 所へ 行ったり、巣に 帰ったり するので、ありの 行列が できると いう わけです。◄┘
404聞いて 楽しもう◄┘ 404聞いて 楽しもう◄┘
405先生に 読んで もらって むかし話を 楽しみましょう。◄┘ 405先生に 読んでもらって むかし話を 楽しみましょう。◄┘
406◄┘ 406◄┘
407ばけくらべ◄┘ 407ばけくらべ◄┘
408◄┘ 408◄┘
409松谷 みよ子 文◄┘ 409松谷みよ子文◄┘
410蓬田 やすひろ 絵◄┘ 410蓬田やすひろ絵◄┘
411おもしろかった ところを、みんなで 出し合いましょう。◄┘ 411 おもしろかった ところを、みんなで 出し合いましょう。◄┘
412だれが、何を した ところですか。◄┘ 412だれが、何を した ところですか。◄┘
413130ページを 見よう◄┘ 413130ページを 見よう◄┘
414読んで,考えた ことを 発表しよう◄┘ 414読んで,考えた ことを 発表しよう◄┘
415どんな 人物が 登場するでしょう。◄┘ 415どんな 人物が 登場するでしょう。◄┘
416人物の 会話や 行動,気もちに 着目して 読みましょう。◄┘ 416人物の 会話や 行動,気もちに 着目して 読みましょう。◄┘
417読む◄┘ 417読む◄┘
418◄┘ 418◄┘
419海を かっとばせ◄┘ 419海を かっとばせ◄┘
420◄┘ 420◄┘
421山下 明生 作◄┘ 421山下明生作◄┘
422杉浦 範茂 絵◄┘ 422杉浦範茂絵◄┘
423◄┘ 423◄┘
424ワタルは、今年から 野球チームに 入った。今は まだ ベンチ せんもんだが、夏の 大会までには、なんとか しあいに 出たい 思って いる。ピンチヒッターでも いいから、なんとか 出たい。◄┘ 424ワタルは、今年から 野球チームに 入った。今は まだ ベンチせん もんだが、夏の 大会までには、なんとか しあいに 出たい 思って いる。ピンチヒッターでも いいから、なんとか 出たい。◄┘
425ワタルは、ひみつの とっくんを する ことに きめた。「毎朝、海辺まで ランニングして、はまべで 百回 すぶりを しよう。」◄┘ 425ワタルは、ひみつの とっくんを する ことに きめた。「毎朝、海辺まで ランニングして、はまべで 百回 すぶりを しよう。」◄┘
426さいしょの 日、ワタルは、バットを つかんで うちを とび出した。風の 強い 朝だった。走りはじめると、耳元で かみの 毛が ヒュルヒュルと 鳴った。◄┘ 426さいしょの 日、ワタルは、バットを つかんで うちを とび出した。風の 強い 朝だった。走りはじめると、耳元で かみの 毛が ヒュルヒュルと 鳴った。◄┘
427海には、だれも いなかった。はまべに 打ち上げられた 流木が、クビナガリュウみたいに◄┘ 427海には、だれも いなかった。はまべに 打ち上げられた 流木が、クビナガリュウみたいに◄┘
428ねそべって いた。こわいのを がまんして、ワタルは、すなはまに かけ下りた。◄ 428ねそべって いた。こわいのを がまんして、ワタルは、すな はまにかけ 下りた。◄┘
429じゅうなんたいそうを しながら、波打ちぎわまで すすんで いった。海に 向かって バットを かまえた。波が おしよせて きては、ワタルの 前で ぐうんと 上がり、はまに ザザーッと くずれ落ちる。波が いちばん 高く もり上がった ゅんかんを ねらって、力いっぱい バットを ふった。一回、二回と 数えながら、気合を こめて バットを ふった。◄┘ 429じゅうなん たいそうを しながら、波打ちぎわまで すすんで いった。海に 向かって バットを かまえた。波が おしよせて きては、ワタルの 前で ぐうんと 上がり、はまに ザザーッと くずれ落ちる。波が いちばん 高く もり上がっ ゅんかんをねらって、力いっぱい バットを ふった。一回、二回と 数えながら、気合を こめて バットを ふった。◄┘
430五十回を すぎた ころから、うでが だんだん 重たく なった。足が ふらつき、目が 回る。東の 空の 朝やけ雲も、水平線と いっしょに 回りだした。◄┘ 430五十回を すぎた ころから、う でが だんだん 重たく なった。足が ふらつき、目が 回る。東の 空の 朝やけ雲も、水平線と いっしょに 回りだした。◄┘
431「六十六回。」◄┘ 431「六十六回。」◄┘
432そう さけんで、こしを ひねった ときだった。足元の すなが くずれて、ワタルは ぺたんと しりもちを ついた。◄┘ 432そう さけんで、こしを ひねった ときだった。足元の すなが くずれて、ワタルは ぺたんとしりもちをついた。◄┘
433その とたん、今日 いちばんの 大きな 波が、ゴオーッと すなはまを かけ上り、ワタル 目がけて せまって きた。ワタルは、しりもちを ついた まま、大あわてで 後ずさりした。波の 雨が 顔に かかって、口の まわりが しょっぱかった。◄┘ 433その とたん、今日いちばんの 大きな 波が、ゴオーッと すな はまを かけ上り、ワタル 目がけて せまって きた。ワタルは、しりもちを ついた まま、大あわてで 後ずさりした。波の 雨が 顔に かかって、口の まわりが しょっぱかった。◄┘
434「何 してるんだ、そこで。」◄┘ 434「何 してるんだ、そこで。」◄┘
435ふいに、そばで 声が した。顔を 上げたワタルの 前に、男の子が 立って いた。白い ぼうしに 青い 服の、ちっちゃな 子。◄┘ 435ふいに、そばで 声が した。顔を 上げた ワタルの 前に、男の子が 立って いた。白い ぼうしに 青い 服の、ちっちゃな 子。◄┘
436「だれだ、おまえ。」◄┘ 436「だれだ、おまえ。」◄┘
437ワタルは きいた。ちっちゃな 子は、それには 答えず、◄┘ 437ワタルは きいた。ちっちゃな 子は、それには 答えず、◄┘
438「何 してるんだ、そこで。」と、また 言った。◄┘ 438「何 してるんだ、そこで。」と、また 言った。◄┘
439「見りゃ 分かるだろ。すぶりさ。」◄┘ 439「見りゃ分かるだろ。すぶりさ。」◄┘
440「すぶりって。」◄┘ 440「すぶりって。」◄┘
441「野球の バットを ふる ことさ。」◄┘ 441「野球の バットを ふる ことさ。」◄┘
442「なんだ、野球か。それなら 知ってる。はまべに 来た 人たちが やってるからね。でも、あれ、白い ボールを つかうんだよ。」◄┘ 442「なんだ、野球か。それなら 知ってる。はまべに 来た 人たちが やってるからね。でも、あれ、白い ボールを つかうんだよ。」◄┘
443「だから、これは 練習さ。白い ボールが ある つもりで、波に◄┘ 443「だから、これは 練習さ。白い ボールが ある つもりで、波に◄┘
444向かって バットを ふるんだ。」◄┘ 444向かって バットを ふるんだ。」◄┘
445「分かった。それなら、ぼく、練習を てつだって やるよ。」◄┘ 445「分かった。それなら、ぼく、練習を てつだって やるよ。」◄┘
446そう 言ったかと 思うと、男の子は すたすたと 海の 中へ 歩いて いき、波の うらがわに きえて しまった。◄┘ 446そう 言ったかと 思うと、男の子は すたすたと 海の 中へ 歩いて いき、波の うらが わに きえて しまった。◄┘
447「行くぞ。」◄┘ 447「行くぞ。」◄┘
448男の子の 声が 聞こえた。同時に、波の 後ろから ひょいと うでが あらわれて、真っ白い ボールが とんで きた。ワタルは、あわてて バットを ふった。◄┘ 448男の子の 声が 聞こえた。同時に、波の 後ろから ひ ょいとうでがあらわれて、真っ白い ボールが とんで きた。ワタルは、あわてて バットを ふった。◄┘
449「空ぶり。」◄┘ 449「空ぶり。」◄┘
450海で わらい声が した。◄┘ 450海で わらい声が した。◄┘
451白い ボールは、次から 次へと とんで きた。まるで、ピッチングマシンの ように、波がしらが ぎゅうんと もり上がっては、白い ボールを 投げこんで くる。バットに ボールが めいちゅうすると、ピシッと 気もちいい 手ごたえが あった。その 代わり、打ちそこなうと、はなの 中まで しょっぱい しぶきが とびこんだ。◄┘ 451白い ボールは、次から 次へと とんで きた。まるで、ピッチングマシンのように、波が しらが ぎゅうんともり 上がっては、白い ボールを 投げこんで くる。バットに ボールが めい ちゅうすると、ピシッと 気もちいい 手ごたえが あった。その 代わり、打ちそこなうと、はなの 中まで しょっぱい しぶきが とびこんだ。◄┘
452ワタルは、もう むちゅうだった。さむさで 耳が いたいのも、クビナガリュウが こわいのも わすれて いた。ボールと いっしょに、いろんな かけ声も とんで くる。◄┘ 452ワタルは、もう むちゅうだった。さむさで 耳が いたいのも、クビナガリュウが こわいのも わすれて いた。ボールと いっしょに、いろんな かけ声も とんで くる。◄┘
453がんばれ、がんばれ。◄┘ 453がんばれ、がんばれ。◄┘
454かっとばせ、かっとばせ。◄┘ 454かっとばせ、かっとばせ。◄┘
455気を ぬくな。◄┘ 455気を ぬくな。◄┘
456球を、よく 見ろ。◄┘ 456球を、よく 見ろ。◄┘
457一発 ホームランだ。◄┘ 457一発 ホームランだ。◄┘
458フレー、フレー。◄┘ 458フレー、フレー。◄┘
459いつのまにか、ワタルは、本物の バッターボックスに 立って いる 気分に なって いた。赤い ぼうし、青い ぼうし、黄色い ぼうし。いろんな ぼうしの 観客が、いっせいに せいえんを おくって いる。◄┘ 459いつのまにか、ワタルは、本物の バッターボックスに 立って いる 気分に なって いた。赤い ぼうし、青い ぼうし、黄色い ぼうし。いろんな ぼうしの 観客が、いっせいに せいえんを おくって いる。◄┘
460「かっとばせ。ワタル。」◄┘ 460「かっとばせ。ワタル。」◄┘
461ワタルの バットが、ビュンと うなった。会心の 手ごたえ。白い ボールは、白い 鳥に なって、かるがると 空の かなたへ とんで いく。◄┘ 461ワタルの バットが、ビュンと うなった。会心の 手ごたえ。白い ボールは、白い 鳥に なって、かるがると 空の かなたへ とんで いく。◄┘
462◄┘ 462◄┘
463やったぞ。◄┘ 463やったぞ。◄┘
464ホームラン。ホームラン。◄┘ 464ホームラン。ホームラン。◄┘
465すごい。さいこう。ぎゃくてんだ。◄┘ 465すごい。さ いこう。ぎゃくてんだ。◄┘
466グラウンド全体が、ごうごうと どよめく。ワタルは、しっかりと むねを はり、ダイヤモンドを 一周しゅうする。観客の 顔が ばら色。スタンドの 上に のぞく アドバルーンも まっかっか。◄┘ 466グラウンド全体が、ごうごうと どよめく。ワタルは、しっかりと むねを はり、ダイヤモンドを 一周 しゅうする。観客の 顔が ばら色。スタンドの 上に のぞく アドバルーンも まっかっか。◄┘
467ワタルは、目を ぱちぱちさせた。とたんに、スタンドが 海に もどった。けれども、まだ、かんせいは つづいて いる。きらきら かがやく 波の 中から、赤い ぼうし、黄色い ぼうし、いろんな ぼうしが ぴょんぴょん とびはね、はくしゅして いる。◄┘ 467ワタルは、目を ぱちぱちさせた。とたんに、スタンドが 海に もどった。けれども、まだ、かんせいは つづいて いる。きらきら かがやく 波の 中から、赤い ぼうし、黄色い ぼうし、いろんな ぼうしが ぴょんぴょん とびはね、はくし ゅしいる。◄┘
468「君たち、だれだ。」◄┘ 468「君たち、だれだ。」◄┘
469ワタルは、海に 向かって どなった。◄┘ 469ワタルは、海に 向かって どなった。◄┘
470「波の 子どもさ。朝は たいてい、ここに 来るんだ。」◄┘ 470「波の 子どもさ。朝は たいてい、ここに 来るんだ。」◄┘
471「じゃ、また、練習を てつだって くれるかい。」◄┘ 471「じゃ、また、練習を てつだって くれるかい。」◄┘
472「いいとも。すきなだけ、海を かっとばしに 来いよ。」◄┘ 472「いいとも。すきなだけ、海を かっとばしに 来いよ。」◄┘
473「ぜったい 来るからね。」◄┘ 473「ぜったい 来るからね。」◄┘
474そう さけんで、ワタルは、すなはまを もどりはじめた。せなかが、ほくほく あったかかった。もう いちど、ワタルは 海を ふりかえった。のぼりはじめた 太陽の うでが、ワタルの かたを ぽんと たたいた。◄┘ 474そう さけんで、ワタルは、すな はまを もどりはじめた。せ なかが、ほくほく あったかかった。もう いちど、ワタルは 海を ふりかえった。のぼりはじめた 太陽のうでが、ワタルの かたを ぽんと たたいた。◄┘
475いろはにほへと◄┘ 475いろはに ほへと◄┘
476◄┘ 476◄┘
477今江 祥智 作◄┘ 477今江祥智作◄┘
478長谷川 義史 絵◄┘ 478長谷川義史絵◄┘
479◄┘ 479◄┘
480少し むかし、まだ さむらいが たくさん いた ころの 話です。◄┘ 480少し むかし、まだ さむ らいが たくさん いた ころの 話です。◄┘
481その 日、かっちゃんは、はじめて 文字を 習いました。◄┘ 481その 日、かっちゃんは、はじめて 文字を 習いました。◄┘
482いろはにほへと◄┘ 482いろはに ほへと◄┘
483の 七つです。読む ことも できます。書く ことも できます。かっちゃんは、うれしくて、うれしくて、いろはにほへと、いろはにほへと∥を くりかえしながら、道を 歩いて いました。わすれないように、いろはにほへと、いろはにほへと∥。◄┘ 483の 七つです。読む ことも できます。書く ことも できます。かっちゃんは、うれしくて、うれしくて、いろはに ほへと、いろはに ほへと∥を くりかえしながら、道を 歩いて いました。わすれないように、いろはに ほへと、いろはに ほへと∥。◄┘
484すると、そこで、どんと、何かに ぶつかって、つきとばされました。◄┘ 484すると、そこで、どんと、何かに ぶつかって、つきとばされました。◄┘
485「いたいよう、らんぼうだなあ。」◄┘ 485「いたいよう、らんぼうだなあ。」◄┘
486しりもちを ついて、べそを かきながら にらむと、目の 前に、さむらいが こわい 顔を して 立って いました。◄┘ 486しりもちを ついて、べそを かきながら にらむと、目の 前に、さむ らいが こわい 顔を して 立って いました。◄┘
487「こぞう、前を 見て 歩け。」◄┘ 487「こぞう、前を 見て 歩け。」◄┘
488かっちゃんは、負けずに 言いかえして やりました。◄┘ 488かっちゃんは、負けずに 言いかえして やりました。◄┘
489「だって、いろはにほへとを おぼえた とこなんだよう。一生けんめい、おぼえながら 歩いて いたんだい。」◄┘ 489「だって、いろはに ほへとを おぼえた とこなんだよう。一生けんめい、おぼえながら 歩いて いたんだい。」◄┘
490さむらいは、ひょうしぬけした みたいに、はっはっはっと わらって、行って しまいました。◄┘ 490さむ らいは、ひょうしぬけ したみたいに、はっはっ はっと わらって、行って しまいました。◄┘
491「ふん、いろはにほへと、とな。かわいい もんだ。いろはにほへと、とな◆。」◄┘ 491「ふん、いろはに ほへと、とな。かわいい もんだ。いろはに ほへと、とな◆。」◄┘
492さむらいは、思わず そう くりかえしながら 歩いて いると、曲がり角で、でんと、何かに ぶつかりました。◄┘ 492さむ らいは、思わず そう くりかえしながら 歩いて いると、曲がり角で、でんと、何かに ぶつかりました。◄┘
493「こ、これは 失礼。」◄┘ 493「こ、これは 失礼。」◄┘
494あわてて おじぎを しましたが、相手は 何も 言いません。◄┘ 494あわてて おじぎを しましたが、相手は 何も 言いません。◄┘
495そっと 顔を 上げると◆目の 前に、長い 馬の 顔が ありました。◄┘ 495そっと 顔を 上げると◆ 目の 前に、長い 馬の 顔が ありました。◄┘
496「わしと した ことが、あわてて しもうて◆。」◄┘ 496「わしと した ことが、あわててしも うて◆。」◄┘
497さむらいは、あわてて 馬に おじぎを して しまった ことが くやしくて、した打ちを しました。◄┘ 497さむ らいは、あわてて 馬に おじぎを して しまった ことが くやしくて、した打ちを しました。◄┘
498すると、馬の 上の 方から 声が しました。◄┘ 498すると、馬の 上の 方から 声が しました。◄┘
499「これは これは、八木五平どの。いかが いたされたな。」◄┘ 499「これは これは、八木五平 どの。いかが いたされたな。」◄┘
500見上げると、ご家老ろうが、馬の 上で わらって いました。◄┘ 500見上げると、ご家老ろうが、馬の 上で わらって いました。◄┘
501さむらい 八木五平は、すっかり あわてて しまい、「はっ、これは どうも。いや、なに、つい、いろはにほへとの ことを 考えて おりました もので◆。」◄┘ 501さむ らい八木五平は、すっかり あわてて しまい、「はっ、これは どうも。いや、なに、つい、いろはに ほへとの ことを 考えておりました もので◆。」◄┘
502「ほほう、いろはにほへとの せいとな。これは おもしろい。」◄┘ 502「ほほ う、いろはに ほへとの せいとな。これは おもしろい。」◄┘
503ご家老は、八木五平が てれかくしに そんな ことを 言った ものと 思いましたが、「いろはにほへとの せいとは、おもしろいぞ。 はっはっはっ。」と わらって、行って しまいました。◄┘ 503ご家老は、八木五平がてれ かくしに そんな ことを 言った ものと 思いましたが、「いろはに ほへとの せいとは、おもしろいぞ。はっはっはっ。」と わらって、行って しまいました。◄┘
504さて、ご家老は おしろに 着きましたが、どうしてか、さっきの「いろはにほへとの せい」が、わすれられません。「いろはにほへとの せいか。これは おもしろい。◄┘ 504さて、ご家老は おしろに 着きましたが、どうしてか、さっきの「いろはに ほへとの せい」が、わすれられません。「いろはに ほへとの せいか。これは おもしろい。◄┘
505いろはにほへと、いろはにほへと◆。」言いながら、つい、調子に のって とことこ 歩いて いて、どしんと、何かに ぶつかって しまいました。◄┘ 505いろはに ほへと、いろはに ほへと◆。」 言いながら、つい、調子に のって とことこ 歩いて いて、どしんと、何かに ぶつかって しまいました。◄┘
506「ぶ、ぶれい者。」◄┘ 506「ぶ、ぶれ い者。」◄┘
507すばやく、一歩 下がって みがまえて、さあ、前を 見ると◆。そこには、のほほんと し かべが あるばかり。◄┘ 507すばやく、一歩 下がって みがまえて、さあ、前を 見ると◆。そこには、のほほんと し かべが あるばかり。◄┘
508ご家老は、すっかり きまりが 悪く なって しまって、「へっへっ。」と わらって しまいました。その わらい声が おわらぬ うちに、「あっはっはっはっ。」わらいする 者が います。◄┘ 508ご家老は、すっかり きまりが 悪く なって しまって、「へっへっ。」と わらって しまいました。その わらい声が おわらぬ うちに、「あっはっはっはっ。」 高わらいする 者が います。◄┘
509「ぶ、ぶれいな。」◄┘ 509「ぶ、ぶれ いな。」◄┘
510きっと なって ふり向くと、なんと、そこに 立って わらって いるのは、との様でした。◄┘ 510きっと なって ふり向くと、なんと、そこに 立って わらって いるのは、との様でした。◄┘
511これでは、おこる わけにも いきません。しぶい 顔に なるのを、との様は、まだ わらいつづけながら、◄┘ 511これでは、おこる わけにも いきません。しぶい 顔に なるのを、との様は、まだ わらいつづけながら、◄┘
512「あはは、じい。うふふ、いかが いたしたのじゃ。」と たずねました。◄┘ 512「あはは、じい。うふふ、いかが いたしたのじゃ。」と たずねました。◄┘
513ご家老は、すっかり てれて しまって、かえるみたいに かしこまりながら、口の 中で、「いろはにほへとの せいの せいで ござりまするわ。」と ぼやきました。◄┘ 513ご家老は、すっかり てれて しまって、かえるみたいに かしこまりながら、口の 中で、「いろはに ほへとの せいの せいで ござりまするわ。」と ぼやきました。◄┘
514「なに、はっきりと 申せ。」◄┘ 514「なに、はっきりと 申せ。」◄┘
515ご家老は、ええい、もう どうでも よいわいと 思い、はじめて 文字を 習った ときの かっちゃんみたいに、大声で、「いろはにほへとの せいの せいで ござりまする。」◄┘ 515ご家老は、ええい、もう どうでもよいわいと 思い、はじめて 文字を 習った ときの かっちゃんみたいに、大声で、「いろはに ほへとの せいの せいで ござり まする。」◄┘
516 なりました。◄┘ 516 なりました。◄┘
517「なに、いろはにほへとだと。これは おもしろい。いろはにほへとの せいで、じい かべに ぶつかったか。あっはっはっ。」との様は、また 高わらいを しながら、向こうの へやへ 行って しまいました。◄┘ 517「なに、いろはに ほへとだと。これは おもしろい。いろはに ほへとの せいで、じいがかべに ぶつかったか。あっはっはっ。」との様は、また 高わらいを しながら、向こうの へやへ 行って しまいました。◄┘
518◄┘ 518◄┘
519向こうの へやでは、となりの 国から やって 来た、つかいの さむらいが、まって いました。◄┘ 519向こうの へやでは、となりの 国から やって 来た、つかいの さむ らいが、まって いました。◄┘
520「これは これは、とので ござりまするか。」その さむらいは、ていねいに 言って、ゆっくりと 顔を 上げました。◄┘ 520「これは これは、とので ござりまするか。」 その さむ らいは、ていねいに 言って、ゆっくりと 顔を 上げました。◄┘
521のほほんと した 顔でした。その 顔を 見て いると、との様は、のほほんと し かべを 思い出しました。それから、その のほほんと した かべに ぶつかった さっきの じいの あわてぶりを 思い出して、思わず、にこにこして しまいました。◄┘ 521のほほんと した 顔でした。その 顔を 見て いると、との様は、のほほんと しかべを 思い出しました。それから、その のほほんと したかべに ぶつかった さっきの じいの あわてぶりを 思い出して、思わず、にこにこして しまいました。◄┘
522となりの 国から やって 来た、つかいの さむらいは、そんな との様の 顔を 見て、ほっと いきを つき、「さて、れいの 湖の 水の ことで ござりまするが◆。」◄┘ 522となりの 国から やって 来た、つかいの さむ らいは、そんなとの様の 顔を 見て、ほっと いきを つき、「さて、れいの 湖の 水の ことで ござりまするが◆。」◄┘
523と、用件けんを 話しはじめました。安心した せいか、ゆっくりと、ていねいに せめいできました。◄┘ 523と、用件けんを 話しはじめました。安心した せいか、ゆっくりと、ていねいに せ めい できました。◄┘
524との様の 国と、となりの 国の 真ん中に、大きな湖が あります。そこの 水を、今年も 半分ずつ 分けて、おたがいの 国の 田に 引きたい、と いうのでした。◄┘ 524との様の 国と、となりの 国の 真ん中に、大きな 湖が あります。そこの 水を、今年も 半分ずつ 分けて、おた がいの 国の 田に 引きたい、と いうのでした。◄┘
525これまでは、いつも この ことで、ごたごたが ありました。どちらも しぶって しまうのです。国ざかいでは、いつも、ひゃくしょうたちが あらそいました。毎年、少しずつ◄┘ 525これまでは、いつも この ことで、ごたごたが ありました。どちらも しぶって しまうのです。国ざかいでは、いつも、ひゃくしょうたちが あらそいました。毎年、少しずつ◄┘
526悪く なり、おととしは、おたがいの 国から さむらいが 出て しずめました。去年は、その さむらいどうしの 切り合いまで ありました。この ぶんで ゆけば、今年は、もしかすると いくさに なるかも しれませんでした。◄┘ 526悪く なり、おととしは、おた がいの 国から さむ らいが 出て しずめました。去年は、その さむ らいどうしの 切り合いまで ありました。この ぶんで ゆけば、今年は、もしか すると いくさに なるかも しれませんでした。◄┘
527それで、のほほんと した 顔の つかいの さむらいは、しぶい 顔で まって いたのです。それが、との様が すわるなり、にこにこした もの ですから、ほっと して、ゆっくりと せつめいが できました。◄┘ 527それで、のほほんと した 顔の つかいの さむ らいは、しぶい 顔で まって いたのです。それが、との 様が すわるなり、にこにこした ものですから、ほっと して、ゆっくりと せつめいが できました。◄┘
528ゆっくりと 聞けば、ちゃんと 分かる ことでした。との様は、よいよい、そのように いたそう、と いう ふうに、大きく うなずきました。◄┘ 528ゆっくりと 聞けば、ちゃんと 分かる ことでした。との様は、よい よい、そのように いたそう、と いうふうに、大きく うなずきました。◄┘
529のほほんと した 顔の つかいの さむらいは、大きな ためいきを ついて、顔を ほころばせました。◄┘ 529のほほんと した 顔の つかいの さむ らいは、大きな ためいきを ついて、顔を ほころばせました。◄┘
530「ありがたき しだい◆。」◄┘ 530「ありがたきしだい◆。」◄┘
531すると、のほほんと した 顔が、よけいに のほほんと して 見えました。その 顔を 見ると、との様は いっそう はっきりと、かべの ことを 思い出し、じいの ことを◄┘ 531すると、のほほんと した 顔が、よけいに のほほんとして 見えました。その 顔を 見ると、との様は いっそう はっきりと、かべの ことを 思い出し、じいの ことを◄┘
532思いおこして、「あっはっはっはっ。」と、大わらいして しまいました。◄┘ 532思いおこして、「あっはっはっはっ。」と、大わらいして しまいました。◄┘
533のほほんと した 顔の さむらいも、すっかり うれしく なって、はっはっはっと わらいました。いくさは さけられました。さむらいは、いそいそと、となりの 国へ 帰って いきました。◄┘ 533のほほんと した 顔の さむ らいも、すっかり うれしく なって、はっはっ っと わらいました。いくさは さけられました。さむ らいは、いそいそと、となりの 国へ 帰って いきました。◄┘
534との様は、へやに もどって、おくがたに 今までの ことを 話しました。◄┘ 534との様は、へやに もどって、おく がたに 今までの ことを 話しました。◄┘
535「とにかく、のほほんと した 顔でな。かべを 思い出したわ。すると、じいの ことを 思い出してな。それは おかしかったぞ。」◄┘ 535「とにかく、のほほんと した 顔でな。かべを 思い出したわ。すると、じいの ことを 思い出してな。それは おかしかったぞ。」◄┘
536そして、もう いちど、「あっはっはっはっ。」と 高わらいされました。との様は、上きげんでした。◄┘ 536そして、もう いちど、「あっはっはっはっ。」と 高 わらいされました。との様は、上き げんでした。◄┘
537おくがたの ほうは、いくさが さけられたので、ほっと しました。そして、これも、もとはと いえば、いろはにほへとの せいだと 思うと、いろはにほへとが ありがたく、いろはにほへと、いろはにほへとと くりかえして、ほっほっほっと、口を おさえて わらいました。◄┘ 537おく がたの ほうは、いくさが さけられたので、ほっと しました。そして、これも、もとはと いえば、いろはに ほへとの せいだと 思うと、いろはに ほへとが ありがたく、いろはに ほへと、いろはに ほへとと くりかえして、ほっほっ っと、口を おさえて わらいました。◄┘
538それから、小さな むすめを よんで、「さあ、いろはにほへとを 書いてごらん。ていねいに 書くのよ。」と 言いました。◄┘ 538それから、小さな むす めを よんで、「さあ、いろはに ほへとを 書いて ごらん。ていねいに 書くのよ。」と 言いました。◄┘
539おひめ様は、たっぷりと 筆に すみを ふくませて、◄┘ 539おひめ様は、たっぷりと 筆に すみを ふくませて、◄┘
540いろはにほへと◄┘ 540いろはに ほへと◄┘
541と 書きました。◄┘ 541と 書きました。◄┘
542おひめ様は まだ 四さいでしたから、だいぶ へんてこりんな 「いろはにほへと」に なりました。けれども、おくがたには、こんなに うつくしい 文字が ないように 思えました。◄┘ 542おひめ様は まだ 四さいでしたから、だいぶ へんてこりんな「いろはに ほへと」に なりました。けれども、おく がたには、こんなに うつくしい 文字が ないように 思えました。◄┘
543夕ぐれが しずかに おしろを つつみ、今日も おだやかな 一日でした。◄┘ 543夕ぐれが しずかに おし ろを つつみ、今日も おだやかな 一日でした。◄┘
544☆「聞いて 楽しもう」(60·61ページ)で 読んで もらった 話です。ほかに、◄┘ 544☆「聞いて 楽しもう」(60·61ページ)で 読んでもらった 話です。ほかに、◄┘
545どのような 楽しみ方が あるでしょう。◄┘ 545どのような 楽しみ方が あるでしょう。◄┘
546◄┘ 546◄┘
547ばけくらべ◄┘ 547ばけくらべ◄┘
548◄┘ 548◄┘
549松谷みよ子 文◄┘ 549松谷みよ子文◄┘
550◄┘ 550◄┘
551昔、ある ところに、ごんべえだぬきと、へらこいぎつねが あったと。どちらも、ばけるのが 大の くいだ ものだから、「ばけるんなら、きつねに かなう ものは いね。」「なんたって、たぬきだ。ばけ方は、たぬきが いちばんだ。」と、顔 合わせては、言い合って おった。◄┘ 551昔、ある ところに、ごんべえだ ぬきと、へら こい ぎつねがあったと。どちらも、ばけるのが 大の くいだ ものだから、「ばけるんなら、きつねに かなう ものは いね。」「なん たって、たぬきだ。ばけ方は、たぬきが いちばんだ。」と、つき 合わせては、言い合って おった。◄┘
552ある 日の ことだ。へらこいぎつねが、ごんべえだぬきの ところへ やって 来た。◄┘ 552ある 日の ことだ。へら こい ぎつねが、ごんべえだ ぬきの ところへ やって 来た。◄┘
553「ごんべえどん、ごんべえどん、ひとつ、ばけくらべを しようじゃないか。今 すぐ お宮の 所で 勝負を 決めよう。おらは 先に 行っとるで、すぐ 来いよ。いいな。 分かったな。」◄┘ 553「ごんべえ どん、ごんべえ どん、ひとつ、ばけくらべを しようじゃないか。今 すぐ お宮の 所で 勝負を 決めよう。おらは 先に 行っとるで、すぐ 来いよ。いいな。分かったな。」◄┘
554へらこいぎつねは、一人で しゃべって、さっさと 行って しまった。◄┘ 554へら こい ぎつねは、一人で しゃべって、さっさと 行って しまった。◄┘
555◄┘ 555◄┘
556ごんべえだぬきは、さあ、おおごとだと、なかまを 集めて、「さて、何に ばけるか。」と、ごせんぞ様さまから つたわる 「たぬき流 ばけ方秘伝」と いう まき物を 出して きて、とっくりと ながめたと。そこには、まあ、やさしいのからむずかしいのまで、たぬきの ばけ方の、ありったけが 書いて あった。◄┘ 556ごんべえだ ぬきは、さあ、おお ごとだと、な かまを 集めて、「さて、何に ばけるか。」と、ごせんぞ 様さまから つたわる「たぬき流 ばけ方秘伝」と いう まき物を 出して きて、とっくりと ながめたと。そこには、まあ、やさしいのから むずかしいのまで、たぬきの ばけ方の、ありったけが 書いてあった。◄┘
557ずうっと 見て いって、「よめ入り行列に ばける 法」と いう ところまで きた ときだ。めだぬきどもが、いっせいに、「これに 決めた。」「よめ入り行列に ばけるべ。」「よめ入り、よめ入り。」と さわぎ立てた。その さわぎが あんまり ひどい もので、ごんべえも あきれて、とうとう それに 決めた。すると 今度は、みんな よめに なりたくて、また、さわぎに なった。「おらが なる。」「いや、おらだ。」◄┘ 557ずうっと 見て いって、「よめ入り 行列に ばける 法」と いう ところまで きた ときだ。めだ ぬきどもが、いっせいに、「これに 決めた。」「よめ入り 列に ばけるべ。」「よめ入り、よめ入り。」と さわぎ立てた。その さわぎが あんまり ひどい もので、ごんべえも あきれて、とうとう それに 決めた。すると 今度は、みんな よめに なりたくて、また、さわぎに なった。「おらが なる。」「いや、おらだ。」◄┘
558と、ひっかいたり、食いついたり、きいきいさわぎ立てる もので、ごんべえだぬきが どなった。「だまれえ。しずかに せい。花よめには、おらが なる。」◄┘ 558と、ひっかいたり、食いついたり、きいきい さわぎ立てる もので、ごんべえだ きが どなった。「だまれ え。しずかに せい。花 よめには、おらが なる。」◄
559そこで ようやく、馬に ばける たぬき、ちょうちん持ちに ばける たぬき、おともに ばける たぬき、それぞれ 役が 決まって、ずらり、せいぞろいを したと。◄┘ 559そこで ようやく、馬に ばける たぬき、ちょうちん持ちに ばける たぬき、おともに ばける たぬき、それぞれ役が 決まって、ずらり、せいぞろいを したと。◄
560「おうい、用意は いいかあ。」◄┘ 560「お うい、用意は いいかあ。」◄┘
561「いいぞう。」◄┘ 561「いい ぞう。」◄┘
562「なら、ばけるぞう。それえ。」◄┘ 562「なら、ばける ぞう。それ え。」◄┘
563どうん。見事に ばけた。◄┘ 563どうん。見事に ばけた。◄┘
564◄┘ 564◄┘
565たぬきどもは、すっかり くいに なって、ジャングゴングと すずの 音を◄┘ 565たぬきどもは、すっかり くいに なって、ジャングゴングと すずの 音を◄┘
566ひびかせながら、しずしずと 歩きだした。しっぽを 出す ものも なく、うまい 具合に お宮の 前まで 来た。◄┘ 566ひびかせながら、しずしずと 歩きだした。しっぽを 出す ものも なく、うまい 具合に お宮の 前まで 来た。◄┘
567ところが、鳥居の 前に、うまそうな まんじゅうが 一つ おちて いる。◄┘ 567ところが、鳥居の 前に、うまそうな まんじゅうが 一つ おちて いる。◄┘
568「あっ、まんじゅう。」◄┘ 568「あっ、まんじゅう。」◄┘
569だれかが さけぶのと、行列が くずれるのと いっしょだ。◄┘ 569だれかが さけぶのと、行列が くずれるのと いっしょだ。◄┘
570「おらんだ。」◄┘ 570「おらんだ。」◄┘
571「おらんだ。」◄┘ 571「おらんだ。」◄┘
572「おらの あい。」◄┘ 572「おらの あい。」◄┘
573たぬきたちは、ばけて いたのも わすれ、われ先に、まんじゅう 目がけて とびついた。とたんに、ばけの皮は はがれて、みんな、元の たぬきに もどって しまった。すると、「ごんべえ、勝ったぞ。やあい。」と いう 声が して、まんじゅうは◄┘ 573たぬきたちは、ばけて いたのも わすれ、われ先に、まんじゅう 目がけて とびついた。とたんに、ばけの 皮は はがれて、みんな、元の たぬきに もどって しまった。すると、「ごんべえ、勝ったぞ。や あい。」と いう 声が して、まんじゅうは◄┘
574とび上がり、へらこいぎつねに なった。◄┘ 574とび上がり、へら こい ぎつねになった。◄┘
575「食いしんたぬき、食いしんたぬき。食いしんぼうで、ばけの皮が、ははは、あは、はがれた。はははあ。」◄┘ 575「食いしん  たぬき、食いしん  たぬき。食いしんぼうで、ばけの 皮が、ははは、あは、はがれた。はは はあ。」◄┘
576へらこいぎつねが、転げ回って わらう もので、たぬきは もう、くやしいやら、はずかしいやら、あなでも ほって もぐりこみたいようだった。◄┘ 576へら こい ぎつねが、転げ回って わらう もので、たぬきは もう、くやしいやら、はずかしいやら、あなでも ほって もぐりこみたいようだった。◄┘
577「今に 見て おれ、へらこいぎつねめ。」◄┘ 577「今に 見て おれ、へら こい ぎつねめ。」◄┘
578「ぎゅうと いう めに あわして やるぞ。」◄┘ 578「ぎゅうと いうめにあわしてやるぞ。」◄┘
579たぬきたちは 集まって、ああ しようか、こう しようかと 相談した。そのうち、いい 考えが うかんだので、「それだ。」と、いっぺんに 話が 決まった。そこで、さっそく へらこいぎつねの ところへ、「あすの 昼ごろ、街道の 松なみ木の 所まで 来られたし。」と、使つかいを 出した。◄┘ 579たぬきたちは 集まって、ああ しようか、こう しようかと 相談した。そのうち、いい 考えが うかんだので、「それだ。」と、いっぺんに 話が 決まった。そこで、さっそく へら こい ぎつねのところへ、「あすの 昼ごろ、街道の 松なみ木の 所まで 来られたし。」と、使つ かいを 出した。◄┘
580へらこいぎつねは、次つぎの 日に なると、池の 水草を 頭に のせ、くるりと とんで、おさむらいに ばけた。◄┘ 580へら こい ぎつねは、次つぎの 日に なると、池の 水草を 頭に のせ、くるりと とんで、お さむ らいに ばけた。◄┘
581「たぬきめ、何に ばけても、へらこい様が、いっぺんで 見やぶって くれるわい。」◄┘ 581「たぬきめ、何に ばけても、へら こい様が、いっぺんで 見やぶって くれるわい。」◄┘
582へらこいぎつねが、松なみ木の 根元でまって いると、「えいほう、よれえ。えいほう、よれえ。」と、りっぱな 大名行列が やって 来た。いや、その りっぱな こと。山々の たぬきと いう たぬきを 集めて きても、こう 見事な 行列は 組めんと 思うほどだ。おまけに、目を 皿のように して ながめても、しっぽ とつ たれて いない。きつねは たまげて、あんぐり 口を 開け、いつのまにか、元の きつねに もどって◄┘ 582へら こい ぎつねが、松なみ木の 根元で  まって いると、「えいほう、よれ え。えいほう、よれ え。」と、りっぱな 大名行列が やって 来た。いや、その りっぱな こと。山々の たぬきと いう たぬきを 集めて きても、こう 見事な 行列は 組めんと 思うほどだ。おまけに、目を 皿のように して ながめても、しっぽひとつ たれて いない。きつねは たまげて、あんぐり 口を 開け、いつのまにか、元の きつねに もどって◄┘
583しまったのにも、とんと 気が つかなかった。そうして、さあ、こう しては おれん、負ける ものかと、いきなり 行列の そばへ とび出した。◄┘ 583しまったのにも、とんと 気が つかなかった。そうして、さあ、こうしては おれん、負ける ものかと、いきなり 行列の そばへ とび出した。◄┘
584「ごんべえどん、ごんべえどん。お主、との様に ばけたろうが。ちょっと、かごから 顔 出して みい。」◄┘ 584「ごんべえ どん、ごんべえ どん。お主、との様に ばけたろうが。ちょっと、かごから 顔出して みい。」◄┘
585ところが、これは 本物の 大名行列だったから、たまらない。◄┘ 585ところが、これは 本物の 大名行列だったから、たまらない。◄┘
586「ぶれい者め。」◄┘ 586「ぶれ い者め。」◄┘
587たちまち おさむらいに とりかこまれ、さんざん めに あわされた。◄┘ 587たちまち お さむ らいに とりかこまれ、さんざん めに あわされた。◄┘
588「ええ、くやしい。たぬきに、まんまと だまされたわい。」◄┘ 588「ええ、くやしい。たぬきに、まんまと だまされたわい。」◄┘
589へらこいぎつねは、ぐえんこ、ぐえんこ なきながら、山へ にげ帰った。たぬきは、それを 見て、手を たたいて よろこんだ。◄┘ 589へら こい ぎつねは、ぐえんこ、ぐえんこなきながら、山へ にげ帰った。たぬきは、それを 見て、手を たたいて よろこんだ。◄┘
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