【季節風】
2010年、例年になく寒かった冬もようやく終わったようです。今日は、各種住宅の写真を撮りにバイクで走り回りました。南西の風が強く、かなり揺すられました。春先はこの風がよく吹きます。車のドアを開けるときなど要注意です。
探検隊の基地がある場所は、南西方向から北東方向に小さな川が流れていて、今日のような風向きのときは風が吹き通ります。でも、山の上とか、西が空いている平地ほどではありません。
南房総は一般的に季節風が強いようです。冬は北西または西風、春は南西または南風。東京多摩地区ではこれほどまでの強風が吹く日の多さを経験しませんでした。
見たわけではありませんが、数年前、東京町田市から館山の海岸近くに引っ越した友人は、最初の冬、あまりの風の激しさに夜、脅え、部屋の隅で夫婦で固まっていたそうです。風のおさまった翌朝見たら、庭の物置が吹っ飛んでいたとのこと。また、ベランダの手すりに塩の結晶が成長していくさまが観察できるそうです。隣家では、犬小屋に住んでいるのは鉢植えの花です。その友人も今ではそんな風にも慣れて風と共存しています。
【至福のとき】
ポカポカ陽気の春先、ウグイスの鳴き声を聞きながら一人、竹細工用のひごを削ってるとき、至福を感じますが、今日は外は雨、代わりに、お気に入りのテレサテンの優しい歌声を聞きながら、このレポートを書いているので気分は快適です。
【移住者用、南房総地域の住宅事情】
さて、そんな南房総の住まい(といっても、オレの周囲だけ)について知ってる限りのレポートします。
行政的には、南房総というと、鋸南町、鴨川市、南房総市、館山市といったところです。しかし、経済圏的には館山の町と鴨川の町を中心とする地域に二分されます。当地は、館山の町まで車で約10分、鴨川の町まで約40分ですので館山経済圏に入ります。
田舎に住んで、土と一体とならないオレのような生活の場合は、車で15分くらい以内のところに館山の町か鴨川の町があると、なにかにつけて便利です。
●町中心部近接型新興の分譲地
館山の町を走り回ると旧市街の周囲の通り沿いに10〜20区画の分譲地をよく目にします。だいたい1区画200〜300uで坪10〜20万円のものが多いようです。けっこう次々とここに家が新築されていきます。建つ家の形は、今時の最新スタイルのものが多いです。
なにも車の排気ガス濃度が比較的多いと思われるところに家を建てなくとも、もう少し町を外れればもっと土地代も安く空気のいい場所があるのになー、とオレは思ってるのですが。でも地元の人には人気があるようです。
地元の人ではないですが、知人は退職後、「どっか暖かいところに住むべー」と、このようなところに土地を求め、家を建て東京からやってきました。左の写真の手前の家ですが、なんと2階踊り場の目立つところに夫婦二人の笑顔のツーショット写真が立てかけてありました。良く見ると、どこかのお花畑をバックにピースしてます。さらにですが、フレームがハート型でした。オレより何歳か上です。
●別荘型分譲地
千倉駅の北方に峰山別荘地があります。40年ほど前に山全域を開発分譲したらしいです。東の眺望が開ける区画では、太平洋一望です。ここがかなりワイルドというか、あまり原地形をいじらないような造成です。好みは分かれるでしょうが、オレのお気に入りです。1区画100〜200坪くらいで、坪2万円くらいからあるようです。ただし、南房総の売り土地全般にいえますが、海一望、とか富士山が見えるところは見えないところに比べて2倍以上の値がついているのではないでしょうか。
「峰山別荘地」のほかに、館山市神余の「東虹苑」、加賀名の「ポピーランド」などがあります。どちらも坪2〜4万円といったところか。このてのところは、管理費などの支払いを要することが多いです。また、当たり前ですが、上水道下水処理の方法費用についても事前に確認すべきです。
町中心部からは少し(車で15分くらいかな)離れているところが多いようです。車で15分という距離ですが、信号が都会より少なく、渋滞もほとんど無いので距離でいうと、12キロメートルほどでしょうか。
車を使う、ということを前提とすれば、土地代も比較的安いので狙い目ではあります。知人の一人は千葉県北部から昨年このようなところに引っ越してきました。
たいへん美しい中古住宅付きですが、少し脅かしてやりました。もうじき、ハガチのシーズンに入るぞー。「えー?ハガチってなあに?」ムカデのことだよ。遠慮なく夜、布団に入ってきて噛み付くし、天井から落ちてくることもあるんだぞ!足がいっぱいあって、気持ち悪いけど、お腹さわると冷たくていい感触だよ。あ、そうそう、蛇も出てくるし。「やっぱり!物件下見の時、庭に蛇の抜け殻があったんだよー。」
オレはハガチの殺し方を幾つか伝授し、マムシの見分け方を丁寧に教えてあげました。
新興住宅地、別荘地ともに、他の土地からやってきて住むには無理なく住み始められるようです。前出の知人の様子を見ても、ほぼ以前と同じように生活できるようです。回りの家との付き合い方も都会の時と同じようにすればいい、という感じです。(断定できないのは、オレはこのような所に住んでないからです。)市役所、大型スーパー、ホームセンター、家電量販店も車で15分くらい以内にあるし。ただ、車を使用できなくなった場合も考慮すべきです。この場合は、日常生活が徒歩で間に合う場所を選ばなければなりません。
オレの家の場合は、徒歩で日常生活ができる場所では無いと思えますので、そのときは、その時だー!です。
都市近郊では建売住宅をよく目にしますが、ここいらではあまり見ません。ほとんど、家は自分で建てます。一般的には土地、建物代金を合わせても1500万円以内に収まるようです。それなのにどういうわけかアパート家賃が高めな気がします。オレだけでなく、数人の知人も同意見です。
●町はずれのゲリラ的売り地
新興住宅分譲地でもなく、別荘地でもなく、通り沿いなどに元、畑のようなところに「売地」の看板を見つけることがあります。だいたい集落の外れあたりによくあります。想像ですが、ここを買って家を建て住むと、集落の一員となるのでは。
このような土地を買って家を建てる場合でも、建物付きの土地を購入する場合でも、その土地の場所によって少し違いがあるように感じます。
知人は、千倉瀬戸浜海水浴場の近くに土地を求め新築しましたが、このあたりはよそからの転入者にとって住みやすいのではと思います。昔から近隣には別荘とかホテルとかが存在していて、よそものの転入に対してスムーズに受け入れる素地があるのではないでしょうか。
しかし、すべてがそういうことではありません。当地域では、「しんこ」という言葉をきくことがあります。どういう意味かと尋ねると、「共有地をもたない住人」のことをいうらしいです。ですので、よそからやってきたオレは「しんこ」です。それに、先祖代々の住人でも分家すると共有地を持たなくなるから、「しんこ」です。
そこで、南房総の観光地として有名な海岸近くに10数年前引っ越してきた人に聞いたのです。「お住まいの地域でも、共有地を持たない場合は「しんこ」というのですか?答えは、
「ヨソモン」という、でした。
南房総もいろいろあります。
---余談<町?会費>---------------------------------------
新興住宅地の場合は不明ですが、オレの場合のように集落の一員となると、町に住むときの町会費みたいなものがあり、年間1万円くらいの支払いとなります(以前住んだ町に比べてかなり高い)。そのほかに、道路清掃の労働奉仕が年1回あり、欠席する場合には確か3000円くらいの支払いを余儀なくされます。
集落の一員となることを拒否することも、もちろんできます。町会費みたいな支払いも、道路清掃奉仕も発生しません。
また、逆に集落の一員となることを拒否されることもあるようです。この場合は、回覧版が回ってこないので、直接役所に行き、「なんとか便り」みたいなものをもらわなければなりません。同じく住民税を払っているのにサービスが違うというのは、システムの欠陥でしょう。役所の怠慢です。
同じ千倉町の知人ですが、新しく家を建てて引っ越してきたとき、「町会入会金?」みたいなものを支払ったと言ってました。数万円くらいかな。オレの場合は無かったから、千倉町でも地区によって違いがあるようです。
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●既存集落内の家を買う
集落のど真ん中の茅葺屋根の旧農家を購入、改築増築して住んでる知人がいます。県外からの移住です。これは、もう本当のど真ん中です。右も左も前も、お隣は昔からの住人です。(後ろは山です。)
隣に畑も借りてご本人たちは充分に満足のようです。もちろん、集落での付き合いは密度が濃いです。
■建物は床が高く(70センチくらい?)、天井も高いです。夏の湿度対策用に昔から続く知恵と思いますが、新たに建築する場合もぜひ床、天井は高くし、屋根裏の換気も充分できるようにすべきです。快適さが違います!
ただ、家までの道が狭いことが多いので家まで車が入れるか、その進入路の権利関係などの確認が必要です。道が狭くて車が入れないけど物件自体気に入ったという場合は、至近に駐車スペースを借りるか買うかする方法もありです。
この知人の場合は、車を使わないので侵入路は狭いけど問題は無かったようです。
水は、既存の井戸がありましたが、別途新たに30メートルほどボーリングして、電動ポンプをつけ飲料水、風呂、台所などに使っています。水道をひくことも可能ですが、このほうが安くあがったということです。井戸水はとてもまろやかで、オレも時どきもらい水にいきます。
余談ですが、この茅葺屋根の家は居心地がいいです。囲炉裏もあります。いつも囲炉裏の部屋は煙いです。ときどきおじゃまして、囲炉裏で焼いたつまみでおいしい酒をいただいています。
■売り農家を購入する場合、同時に田畑山林がついていることがあります。山林の売買は売った買ったで問題はないと思いますが、田畑の場合は「農地法」が適用され、売買が制限されます。詳しい説明は避けますが、条件が厳しく手続きも時間を要します。そのため、条件が満足されている場合でも、農地部分については仮登記での取引も行われているようです。田畑を手に入れたい人は、「農地法」の勉強が必須です。
売買価格は、1500万から2000万円くらいが多いようです。ただ、市場に出る物件数としては数が少ないです。業者が一度買ってから再度売りに出してるものとか、個人が購入、手直し後、やっぱり住めないと、売りに出しているものもあるようです。
<無駄話--街角のポスター>
このへんでちょっと一服。
このリポート用の写真撮りの途中、民主党議員青木愛さんのポスターを見つけました。千倉町育ちです。10チャンの「トゥナイト2」にレポーターとして出演してたらしい。「トゥナイト」はオレもよく見ていた。なにしろ雪野ちゃんの「でもあたしは千葉には住みたくない」発言が最高!だった、あの番組。どういう因縁か今オレは千葉に住んでいる。
写真を見てください。可愛いですよね。いつ写したものでしょうね?
いつでもいいですよね。こんなに可愛いい写真があれば。やはり、政治家は可愛い美人か、お金の苦労を知らないおぼっちゃまがいいです。毎日テレビのニュースでお顔を見ていても、気持ちがやんわりします。
一服したところで、閑話休題---
●リゾート型マンション
海沿いのリゾートマンションという手もあります。館山では最近分譲されたものもあるようです。中古での価格もこの地域では300万円前後からあるようです。
釣り好きの友人から、南房総で中古のマンションを買って住みたいのだけど、と相談を受けたときには、もう一度よく考えたほうがいいよ、と答えました。当地域のリゾートマンションは海岸近くにあるものが多く、眺めも素晴らしいはずです。眺めがいいというメリットはあるけど、同時に潮風(しょっかぜ)が吹きます。夏でも冬でも季節風の強いときは窓は閉めっぱなしになります。閉めれば夏は冷房、冬は暖房のエアコンのフル稼働です。ちょうどいい風が吹けば最高に快適でしょうが。リゾートマンションの管理費はかなり高めの場合が多いです。これらを勘案しても、マンションがいいとなった場合はお買い得の物件はありそうです。
でも、田舎定住の醍醐味を求めるオレの選択肢には入りませんが、これらの眺望は捨てがたく、理想をいえば、知人友人親戚の誰かがこういうマンションに住んでいて、天気の穏やかな日に、「これから行くから」などと電話して、眺望最高!、富士山丸見え!の部屋に遊びに行くことです。
●オレの場合
ひとのケースばかしでしたので、最後にオレの場合を報告します。オレの住まいは既存集落内の一番はじっこの方にあります。千倉の町まで車で数分、館山の町までは10分くらい、白浜までも約10分の位置です。専業農家はほとんどなく、お米も自家用分プラスアルファ程度だけを作っているようです。
終の棲家になるかもしれない住まいを探すとき、いくつかの条件を持ちました。庭の七輪でサンマを焼いても隣から苦情がこないことと、庭で立ちションをしていても隣から見えないこと。これらはクリアーできましたが、できなかったのが、畑1500坪、山1500坪を確保すること。畑はゼロ、山は500坪ほどにとどまりました。田んぼは最初から念頭にありませんでした。水田に必要な水の確保が簡単ではない、と知ったからです。将来的には田んぼも欲しいですが。
遠く江戸時代から、農家は山、畑、田んぼ、屋敷をセットでもっていて、どれひとつ欠けても生活が成り立たなかったのです。現在は、屋根材の萱も、炭も、薪も、落ち葉も使わなくなったので山は荒れています。それに当地域では山菜も今ではあまり採りにいきません。しかし、田んぼ、畑は現役続行中です。このような集落のはじにオレはおとなしくヨソモンとして生活しています。
余談ですが(余談が多すぎないー?)、一生懸命、南房総の住まい探しに愛車のスクータで多摩から府中街道、アクアラインを早朝何度も走りました。ある冬などアクアラインに入る前頃、あまりの寒さに意識がボンヤリし始め、このまま死ぬんじゃないかと思いながら、ようやくの思いで海ホタルにたどり着き飲んだコーヒーで生き返りました。そこから見える房総の山並みを見て、ああ、あそこが骨を埋める土地になるのかなー、と、みょうな実感をもちました。
築30年の平屋付きで平坦部分300坪、裏山500坪で固定資産税が年2万円ほど。電気、プロパンガス、水道代が二人家族で計1万5千円/月ほどかな。既存の手掘りの井戸がありましたが今は庭への散水用にのみ使ってます。いざとなれば、飲料水としても使用予定です。
排水は新築の場合、合併浄化槽の使用となるようです。家の場合もトイレは水洗で、浄化槽からの排水です。
当初はご多分に漏れず、庭で野菜を育てて食料の自給をもくろみましたが、あえなく挫折。ただ、うまく育てることができても費用的には買うのと大差ないでしょう(?)。でも、瀬戸浜の知人は見事に何種類もの野菜をたくさん育てます。無農薬で。誉めるとたくさんくれます。何種類かのイチゴなど絶品です。
やはり挫折しかかっている共通の知人と、自分の畑はやめて、誉めて、もらうことにしようか。あのうちの畑が自分の畑と思えばいいのよね。気の持ちようよね。手間もかからないし。と相談してます。
都会から離れれば離れるほどインターネットに接続できることが重要となります。経済的にも接続費用はすぐ元が取れます。オレの場合、現在はNTTのADSL接続です。局から6キロメートルあり、当初NTTから、距離があるのでつながらないかもしれないと言われ、ショック!でした。すでにその時は引越しも終えていたから。インターネット接続ができることが物件決定の条件でもあったのです。結果的にはネット接続に支障はまったくありません。
来年春までには、南房総市が自前で市内全域に光ケーブルを敷設し、インターネット接続もできるようになるとのことです。
●まとめ?
生まれたところで育ち生活し最後を迎えるのが理想ですが、これはもう実現できません。少なくとも親の代から流れ流れて気がついたら都会の住人となっていました。途中からでも住むところくらい自分で決めようと10年前思いました。
しかし、結果は(やはり気が小さいせいか)生まれ育った東京のそばの千葉県房総半島でした。定年後、タイだとかオーストラリアだとか定住する人がテレビで紹介されますが、オレにはできそうもありません。
米作って、野菜作って、山で炭焼いて、土と一体となって生活したらどんな気分になるだろうか?と、思いますが、その世界に入り込む勇気はまだありません。
でも、今程度のオレの生活は誰でもすぐに始めることができることです。オレがしたように金は無くとも東京の家を売っぱらう方法があります。計画的に生活設計をした人は、子供に都会の家を譲り、退職金で終の棲家が手に入ります。あとは年金で充分でしょう。
朝、玄関を開けるといかにも酸素が多いと思われる空気がスーッと入り込みます。晴れた空の色は、あのペンテルクレヨンのケースの青です。稲穂の上には赤とんぼが飛び交い、夕焼けは東京のどこから見るよりもきれいです。
土と一体となる生活はできないけど、これだけでも田舎に住みたくなるでしょう?。そうです、われわれの祖先はつい最近までみなこのようなところで生き続けてきたのですから。(2010.4.17)
JR「なこふなかた」駅から徒歩13分
街道から少し入った典型的新興小規模住宅地
別荘型分譲地「東虹苑」を遠望
町はずれ?の売り地に建てた住宅
瀬戸浜海岸も一望
別荘型分譲地、峰山山頂から
茅葺屋根の家の「囲炉裏」、酒が美味い!
「囲炉裏」がある集落ど真ん中の家
右の白壁の棟を増築
入り口にある別荘地案内図看板
千倉の街角の「青木愛」さんのポスターです
超!かわいい! (撮影:2010.3.3.21)
千倉瀬戸浜海岸沿いのリゾートマンション
峰山別荘地内から太平洋を。強風曇天。
千倉、海岸段丘上に並ぶ住宅、きっといい値段するんだろうな?段丘東下方に太平洋一望!
築30年のオレの家、探検隊基地でもある
基地の裏山に登って北方を望む。中央の道路は安房グリーンライン
館山市内バイパス近くの小規模分譲地
千倉町の海辺の住宅街、密集している。道の先に太平洋。
ヌードで迎えてくれる!上滝田のおさる
さん
きれいな姿で迎えてくれる、千倉の虫