お雑煮考  -2012.05.18Up

ボクはお雑煮が大好きだ!

そもそもお餅が好きで、更にスープや汁物系が好きなので、お雑煮はその合体料理みたいなものだ。
よって、大好きにならない訳がない。(と、自己分析する(^^))

まず最初に、この記事の目的を明確にしておこう。
それは、ネット上で『東京の雑煮は鶏肉を入れる』との間違った記載を指摘することである。

この本題に入る前に、先ずはイントロとしてお餅に関していろいろ記載してみる。

お餅といえば焼餅、焼いて醤油を付けて海苔をまいて食べるのが定番だ。辛味餅アンコロ餅は、餅をついた時に、つきたての餅に絡めて食べる。ボクが子供の頃は、庭で餅つきをやった。ボクは見ているだけで、最後にちょっとだけ杵を担がせてもらってペッタンやるが、子供の力ではなかなか思うようにならない。臼の端を叩いたりすると、お〜カツブシ人れたな!つとか言われてしまったり。

辛味餅は、つきたての柔らかい餅に大根おろしと醤油を絡めたものだ。これは、もの凄く美味しいと思うのだが、ボクが子供の頃は、大根おろしが無茶苦茶辛かった。尋常な辛さてはなかったので、子供にとっては身が震え上がるような辛さで、ヒイヒイ言いながら食べた記憶がしっかりと残っている。

アンコロ餅は、小豆で作った飴子を絡めるのだが、いま思い返すと、子供の頃から好きてはなかったようだ。当時から、甘いのは苦手だったみたいですね。。

もう成人になってから、ある時、つきたての餅を頂く機会があった。その時、すった生姜を絡めた生姜餅を初めて食べた。あ〜、こんなお餅もあったのか〜とビックリしたが、とっても美味しいと思った。

関東では「のし餅」である。それを包丁で切って長方形の角餅にする。柔らかいうちに切っておかないと、包丁が入らなくなってとっても大変だ。この角餅を、昔なら火鉢の上の網に置いてプク〜つと膨れてくるまで焼いて、ジュツつと醤油につけて、海苔をまいて食べる!美味しい〜〜

我が家では、お雑煮とこの焼餅にするぐらいしかレシピがなかったのだが、小学生の時に同級生のうちに遊びに行ったら、おやつにお餅をだしてくれたことがあった。これが、バター焼だったんですね!仰天しました!バターは、当時我が家ではほとんど使うことがなかったけれど、バターの味が絡んだお餅はとても斬新な味に感じられました。

所帯をもってからは、納豆餅というのも食べるようになった。炊き立て御飯に納豆をかけて食べるのだから、お餅と合わせても美味しいのは当たり前だが、そんなことも自分だけではなかなか思いつかないものだ。もっとも昔の納豆は、大きな大豆で作るのが当たり前で、今のように小粒納豆ではなかったので、食感はかなり違っていた。好き好きだとは思うが、小粒大豆で作った納豆の方が、ボクには食感が良くて美味しいと思う。(まあ、豆が好きな人は別かな!)

あと、お餅と言えば、お供えのお餅だ。これはカピカピになるまで乾かすと、バラバラになって、これを油で揚げるととっても美味しい。最近は、韓国料理でトッポギがある。細い棒状のお餅を甘辛いタレと絡めたものだが、ボクにはあまりお餅の感触ではない。材料が違うのか突き方がちがうのか分からないが、日本のお餅とはかなり違って感じられる。正直、それほど好きではないかな。。

こうしてみると、お餅の食べ方もいろいろありますね!

さて、やっと本題のお雑煮だ!

実は最近、身近なところで島根県のお雑煮が話題になった。島根の雑煮は、魚系の出汁を使った醤油味のすまし汁に丸餅だが、具は「十六島海苔」だけらしい。これは是非食べてみたいと思ったが、この機会にネットで「お雑煮」を検索してみた。

様々なサイトがあって、全国各地の雑煮が紹介されており、雑煮マップなども掲載されている。関東など東の方は角餅で、関西は丸餅とか知っていたし、東北のお雑煮は鶏肉を入れて作るとか聞いたことがあったが、改めて全国には様々なお雑煮があるんだ〜と思いながら、我が東京を見てみる。

びっくりしましたね〜に東京のお雑煮には鶏肉を入れると、堂々と嘘が書いてある。

我が家は100年以上東京に住んでいるが、お雑煮に鶏肉を入れることはなかったし、そんな話は聞いたことがなかった。そこで、周囲の何人かの方に聞いてみたが、鶏肉を入れてるというお家はなかった。更に、他の友人にも聞いてみると、確かに鶏肉を入れてる方もいた。ま〜確かに近代では鶏肉を入れるようになった家も増えたのかもしれない。いつの時代をもってして語るのか、という問題はあるが、私は伝統を大切にしたいという気持ちがある。

伝統的な東京のお雑煮というのは、どんなお雑煮なのだろうか?

基本線は、カツオ出汁で醤油味のすまし汁、焼いた角餅、具は、大根や人参、里芋などに小松菜。こんなところではないだろうか。正直、詰まらないお雑煮だ。

さて、東京のお雑煮には鶏肉を入れるとネットでは記載されている。きっと、現代では実際に鶏肉を入れているご家庭もかなりいるのかもしれない。東京という街は、全国から人が集まってくる街だし、昭和末期頃より核家族化して伝統がどんどん失われつつある街でもある。少しのお野菜とお餅だけのお雑煮では物足りなくて、何か入れたくなる気持ちは良く理解できる。

さて、そうは言っても、鶏肉を入れないとする私の主張を少しは補強しておこう。

農水省の賀来康一氏によれば、
 「日本のブロイラー産業は,1953年に藤田観光が箱根で2万羽収容のブロイラー工場を建設したことから始まり,1960年代の導入期,70年代の成長期,80年代の成熟期を経て,2000年を目前に,1999年の今は衰退期に入ろうとしている。その国内生体出荷量は88年の187万トンをピークとして,96年には161万トンに減少した。」とある。(http://www.panrolling.com/etc/users/broiler.html

また,別の記載では,ブロイラーの雛が沢山輸入されたのは昭和40年との記載もある。東京オリンピック(s39)の頃である。確かに、その頃の鶏卵は高かった。一個15〜20円もしていて、当時ラーメンの値段やタクシー初乗り運賃が70〜100円の時代だから、今の感覚からすれば1個200円近くもする感じだろう。

日本で鶏肉が一般に広く普及するのは、このブロイラーが普及した1970年代に入ってからと考えてよい。つまり、昭和末期になって鶏肉が普通に食べられるようになったといえる。高度成長期ともいえるし、核家族化かドンドン進んでいった時期とも重なる。

その当時、東北のお雑煮には鶏肉を入れると聞いて、ボクは、へ〜〜そうなんだ〜と思った記憶がある。農村では多くの家でニワトリを飼っていて、時にそのニワトリを潰してご馳走にするとの話などから、なるほど、お雑煮にも鶏を入れるのかと理解した。もちろん、その当時も我が家の雑煮に鶏肉は入れないし、友人に聞いても入っていなかった。

もし、いま東京で鶏肉を入れる雑煮が増えているとしたなら、こうした昭和末期の時代から増え始めたのだろうと考察できる。もう30年は経っているのだから、それで良いじゃないかという考え方もあるだろうが、ボクとしては、その程度の歴史で正当性は主張できないと考える。
実際、ボクは鴨肉が大好きなので、最近は時々アレンジして鴨肉入りのお雑煮を作ることがある。でも、基本的に鶏肉は使わないし、特にブロイラーを入れたいとは決して思わないのである。

今もこれまでも、私も私の周辺でも、お雑煮に鶏肉は入れない。
よって、東京のお雑煮に鶏肉を入れるとする記載は間違いである
と敢えてここに記載するのである。

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