新型インフルエンザのパンデミックに備えて  -2009.03.22Up -20090429、0502追記

 (以下は私の個人的な見解を展開してます。決して皆さんにお勧めしている訳ではありませんので、何事も自己の責任において実施してください。)


【追記コメント: 2009.05.19

 今の日本のバタバタ状態を、私は「不幸中の幸い」と捕らえています。

 私は、初めて日本の対策マニュアルを読んだ際に、H5N1型が新型になることを想定しているにしては問題ある対策だという認識から始まりました。少なくとも、私や私の家族を守るという観点でのリスク管理としては甘すぎる(または不十分)と思ったのです。だからこそ、この雑記を記載してアップすることにしたのでした。

 つまり、国内発生した際に、発熱相談を各地の保健所で一括管理して対応することが絶対に機能しないと思ったからです。これが機能しないと言うことは、適切な診療が受けられないということを意味します。今回神戸で発生して、この方法論では対応ができないということが明白になりました。

 今回は、機能しなくても深刻な事態にならないレベルのウイルスだったから良かったものの、もしもっと恐ろしいウイルスだったらどうなっていたのでしょうか?

 現状の対策マニュアルは、H5N1型を想定したものとしても不十分だと思いましたが、だからと言って、H5N1型を想定した最悪のシナリオに対する対策「だけ」を公開するということはパニックを誘導することにもなりかねません。そのような意味においても、外岡先生が常々述べているウイルスの病原性に応じた対策が必要だということになります。

 しかし、そのような議論が、これまで内々においても全くなされていなかったことが今回のことで露呈されました。

 一般論とすれば、最大のリスクを想定した対策を作っておけば、あとは現実の状況に応じて緩めた運用をすることで対応可能となりますが、その為にはそう判断するための論拠を明確に提示する必要があります。
 今回の一連の流れにおいては、「適切に対策をとっていく」ということが述べられるだけで、現状の新型ウイルスの特性を科学的または疫学的な裏づけをもって、どのように解釈できるのか、どのような可能性があるのか等々を公式に発表することはありませんでした。

 事実を把握して公表する、分かっている事と分からないことを明確にする、事実に基づいた見解や方針を公表する、など説得力のある十分な説明を行うこと、こうした当たり前のことが、日本では全くなされないということも明白になりました。

 今、国またはインフルエンザ対策に主導的に関わる方々は、こうした現実を真摯に理解して、これからの対策をどうしていくのかを改めて考え直すべきだと思います。今回、考え直す機会や猶予があることは、本当に幸いなことだと思います。

 こんな取り組みをしているところもあります。参考にして欲しいです。

 まさか、国はこのままのヘボい対応を継続するなんてことのないことを信じたいです。

【追記 2009.05.17

 日本の対応はどんどんヘンテコになってきました。関西で感染者がどっと現れて休校やらイベント中止やらとのことらしい。全ての根源は、政府が科学的事実を正確に述べて、それに基づいた適切で明確な対応方針を示さないからだ。ボクは、5月2日が切っ掛けを失った分岐点だったかなぁ〜と思っている。相変らずH5N1強毒型インフルエンザを想定した対応マニュアルに基づいて政治家(又は役人)が主体だからだ。日本の社会風土の問題もあるが、どうしてこんなにレベルが低いのだろうかと情けなくなってしまう。。。

 確かに、大掛かりな水際作戦を仰々しく展開してしまったので、どの時点でどのような理由で方向を変えるかが難しくなってしまっていた。自宅待機程度で十分だったのに隔離までしてしまったから後に引けない。。。方針変更するには、それなりの理由がないと格好がつかないからだ。日本はどんどん後手後手になってしまった。きっと、明快な宣言をしないで、状況対応できなくなって、しかたがないという形でうやむやに収まることになるのだろう。。。

 少なくとも現時点では、冬場インフルエンザの季節に居る時のように、手洗いを良くしてごく普通に生活をしていればよいだろう。国には、せめて次のシーズンに向けて適切な対応と準備をしてもらいたいものである。

【追記 2009.05.02

 新型インフルエンザの特性が分かってきました。とっても良いニュースですね。

 米国CDC発表(US、5/1)の最新ニュース:
http://www.physorg.com/news160416786.html
http://www.wbng.com/news/local/44185432.html

 新型インフルエンザの遺伝子を解析した結果、スペインかぜやH5N1鳥インフルエンザの毒性に関係している遺伝子が無かった。つまり、毎年の季節性インフルエンザより病原性が高いということはなさそうだ、とのことです。

  • 新型インフルエンザ遺伝子の中にスペインかぜとH5N1鳥インフルエンザの毒性に関係していた遺伝子は存在していない。
  • よって、新型インフルエンザの病原性は毎年の季節性インフルエンザと同程度かやや低いレベルと思われる。

 国内に入ってきても、とりあえずは普通に生活していれば良さそうです。

【追記 2009.04.29】

 メキシコという予想外の地域から新型インフルエンザが発生した模様だ。もっとも、スペインかぜも米国シカゴが発生源だから、どこでもあり得たということなのだろう。。そして、もっとも恐れていたH5N1型鳥インフルエンザ由来ではなく、H1N1型の豚インフルエンザ由来の新型だとの話だ。

 まだこのインフルエンザの性質は詳しく分かっていないが、どうやら強毒性ではなさそうだ。もう1,2週間ほどすると詳細に解析されて、どの程度警戒すれば良いかが分かってくるだろう。少なくとも現時点ではそれほど怯える必要はなさそうだ。

 政府の対応は、H5N1型を想定した対応マニュアルだったので、どうも現実とそぐわない。そもそも、新型インフルエンザのレベルを決めて、それぞれについての対応マニュアルを考えておかなければならないのに、オプションの無い定型的なマニュアルなので、予想が外れるとヘンテコな対応になってしまう。普段から、良くても悪くても決めてしまった規則に定型的に従うことしかやってないからどうしようもないのだ。

 問題は、次の冬である。これから夏なので、大流行とまでは行かずに適当に治まるだろう。問題は、来年の冬にこの新型インフルエンザが毒性を強くして流行するのかどうかである。スペインかぜの時がそうだった。シカゴで発生した時はそれほどではなかったのが、ヨーロッパに渡って、また夏を越えて冬場に再流行した時には、毒性を増していて被害が甚大になった。

 ところで、スペインかぜで亡くなった方はインフルエンザというよりも2次感染の肺炎でなくなっている。抗生物質の無い時代だし、当然インフルエンザ薬なんてなかったから、実際には発病してもせいぜい熱さましぐらいの治療しか受けられなかった。現在の日本なら十分に治療を受けられるからスペインかぜのような弱毒性なら極端に怖がることは無い。

 H1N1型は通常は弱毒性なので、そういった意味では落ち着いていれば良い。

以上、追記


? Copyright 2006 SASI Group (University of Sheffield) and Mark Newman (University of Michigan) (Worldmapper より引用) ここには面白い地図がいっぱいあるぞ〜!

 この変な地図は何だろう?

 これは、2000〜2005年の間でインフルエンザが流行した期間の割合を国別に集計して、それを各国の面積にして示した世界地図である。日本がとっても太っちょなのは、それだけインフルエンザが流行している期間が長いと言うことであり、つまりインフルエンザにかかり易いともいえる。アメリカも太っているし、ヨーロッパではイタリア・フランス・ドイツも太っちょだ。その点、インドやアフリカにはほとんどインフルエンザがないらしい。高温多湿だからかなぁ〜。。インフルエンザは、寒くて乾燥するところで流行る。ある種の文明病という見方もできるのだろうか。。。いずれにしても日本の太りようはかなりのものだ。

 確かに日本では、毎年冬になるとインフルエンザが流行ってる。普段健康な人にとってはそれほど怖い病では無いが、高齢者や幼児にとっては注意が必要な感染症だ。これまでのインフルエンザはこの程度だった、しかし。。。

 近年、世の中では鳥インフルエンザがよく取り上げられている。いずれ、この鳥インフルエンザが人型、つまり人から人に感染するように変異した新型インフルエンザが蔓延する可能性があるという。N5H1型とも紹介されているインフルエンザのことだ。「パンデミック」という言葉も良く出てくる。パンデミック(pandemic)とは、『なんらかの感染症や伝染病が世界的規模で同時に大流行すること』である。大正時代の1918-19年、いわゆる「スペインかぜ」と呼ばれるインフルエンザのパンデミックが起こった。全世界で感染者6億人、死者4000〜5000万人といわれている。この時、日本では人口約5500万人の内約40%の人が発症し、約40万人程度の方々が亡くなった。今、このようなインフルエンザのパンデミックが近い将来に起こるのではないかと警戒しているのだ。

 さて、様々な報道があり、また国(厚生省)や各地方自治体の予測などが行われている。しかし、こうした予測を見ると、ボクには、必ずしも真実が提示されているとは思えない。いたずらに社会不安を煽ることはいけないが、だからと言って真実に目をそむけてはいけない。ボクら個人々々が、様々な情報の中から本当はどうなのか?真実はどこにありそうなのかを判断しなければいけない。

 ボクは有識者と言えるほどの専門家ではないが、邪心無く科学に携わる者として(←自分で言ってる^^)、先ずは新型インフルエンザを概説してみる。厳密にはかならずしも正確な記述とはいえない部分もあろうが、本質を分かりやすくするためと理解して欲しい。

  • インフルエンザとはそもそも鳥(鴨)の病気である。
  • 人に感染するインフルエンザには、A型、B型、C型の3種がある。
  • 毎年人に感染しているのはA型とB型である。
  • A型の中にはいろんな種類(亜型)があって、人に感染しているのは主にH1N1、H1N2、H2N2、H3N2型である。B型とC型はあまり変化しないが、A型は容易に変異するので、同じA型の亜型でも種類が沢山ある。
  • 現在の鳥インフルエンザ(H5N1)は、鳥→鳥、鳥→人への感染はするが、人→人への感染はしない。
  • 現在は、人→人へ感染する新型インフルエンザの出現を警戒している段階だ。
  • 新型インフルエンザに変異する候補として恐れられているのはH5N1型に分類される鳥インフルエンザだが、これは強毒性のウイルスであり、今までのインフルエンザとは基本的に別物と考えたほうが良いほど、すっごく怖いものだ。これまでのインフルエンザは全て弱毒性だった。
  • 何故それほど怖いのか?
    • 全身感染する強毒性であり、これまで2003年からの統計データーでは人に感染した際の致死率が約60%である。(「スペインかぜ」は弱毒性だった)
    • タミフルやリレンザなど感染力を弱める薬はあるが、インフルエンザウイルスを殺す薬は全くない。つまり、特効薬といえるような根本的な治療薬は存在してない
    • 現在のワクチンは製造に約半年かかる。また種類が合わないと効かない。つまり、これから流行するインフルエンザの種類を予測して、それに近い株で作っているので、必ず効くとは断言できない。更に、現在の手法は血液中で免疫させるものなので、感染が起こる呼吸器(粘膜上)での免疫とは違うので、効き方は基本的に弱い(重篤化を防ぐ目的)。つまり、これから流行るインフルエンザにどの程度効果があるかは保証の限りではないし、パンデミック初期の時には間に合わない
    • 現時点ではプレパンデミックワクチンを準備している。プレパンデミックワクチンとは、新型インフルエンザウイルスに変異する可能性が高いと予測している鳥インフルエンザウイルスを基に製造されている。ただし、これらは、ボクら一般人の為に準備しているのではなく、先ずは医療従事者や行政等に携わる人々の為である。
  • 多少専門的になるが、
    インフルエンザウイルスは、感染するためには、ウイルス表面のHAたんぱく質の一部が、ホストつまりヒトが持っているプロテアーゼ
    (たんぱく質を切るハサミのようなもの)によってチョッキンと切られる必要がある。弱毒性のウイルスは呼吸器や消化器の上皮にある特異的なプロテアーゼによってのみ切断されるのだが、強毒性のものは、ヒトの全身の細胞にあるプロテアーゼで切断される構造になっている。つまり、弱毒性のインフルエンザは呼吸器・消化器に感染してダメージを与えるだけだが、強毒性のウイルスは全身感染して、全ての臓器や組織を破壊してしまう。結果、多臓器不全やサイトカインストーム(病原体のウイルスに反応して、自ら、細胞を殺す力をもつ各種サイトカイン(たんぱく質)を体内に大量に放出して、自分自身をやっつけてしまう)が起こって致命的になる。H5N1型は典型的な強毒性なのである。
  • 人→人へ感染する新型インフルエンザに変異する際に、元の強毒性が維持されるのかされないのかは、誰にも予測できない。杞憂で終われば本当に良いのだが。。。

 参考までに、近年のワクチンに使われたインフルエンザワクチン株は、予測に基づいて毎年以下の3種類の混合ワクチンである。予測が外れると大して効果がないのだ。 (感染症情報センターの資料より

  • 2008/2009冬シーズン
    •   A/Brisbane(ブリスベン)/59/2007(H1N1)
    •   A/Uruguay(ウルグアイ)/716/2007(H3N2)
    •   B/Florida(フロリダ)/4/2006
  • 2007/2008冬シーズン
    •   A/Solomon Islands(ソロモン諸島)/3/2006(H1N1)
    •   A/Hiroshima(広島)/52/2005(H3N2)
    •   B/Malaysia(マレーシア)/2506/2004
  • 2006/2007冬シーズン
    •   A/New Caledonia(ニューカレドニア)/20/99(H1N1)
    •   A/Hiroshima(広島)/52/2005(H3N2)
    •   B/Malaysia(マレーシア)/2506/2004
  • 2005/2006冬シーズン
    •   A/New Caledonia(ニューカレドニア)/20/99(H1N1)
    •   A/New York(ニューヨーク)/55/2004(H3N2)
    •   B/Shanghai(上海)/ 361/2002

【現在の国の被害予測は…】

 さて、新型インフルエンザが流行した際の被害状況についての国の予測はどうなっているだろうか?

次回の大流行予想(日本):厚労省(新型インフルエンザ対策行動計画、2009年2月改訂版)

    発症(罹患率)  25%

    受診   1300〜2500万人 

    入院   53〜200万人

    死亡   17〜64万人(現在の人口13000万人)

 ちなみに、スペインかぜ(1918-19年に流行)では、

    発症   38〜42%

    死亡   38〜45万人(当時の人口5500万人)

 これが国の予想だが、リスク管理としてはちょっと甘いんじゃない?と思う。(パニックにならないような数字を示すしかないのだろう)

 スペインかぜのインフルエンザウイルスは弱毒株であり、致死率2%だった。『死亡 17〜64万人』という国の予想は、弱毒性だったスペインかぜの例を「重度」として、それを上限とした予測なのだ。しかし、H5N1型鳥インフルエンザは強毒株であり、これまで人類は遭遇したことがないのだ。

【現実のデーターから考察すれば…】

 では、現実のデーターはどうなのだろうか?

 世界保健機構WHOの集計データーでは、2003年以降今日(27 February 2009)まで、全世界で鳥インフルエンザに感染した人は408名、そのうち亡くなった方は256名である。つまり、致死率はなんと!60%である。アジアの低開発国がほとんどなので、どれだけ適切な治療が行われたかはかなりの疑問があるが、これが現実のデーターである。

 日本の医療水準で起こった場合はどうなるのだろうか?そもそも、ワクチンや薬があるとは言っても特効薬のようには効かないのが現実だ。バッチリ上手く使えればかなりの効果が期待できる可能性もあろうが、上手いこと行かなければ予測をはるかに越える凄い被害が待っている。つまり、もし仮に25%の日本人が感染するとして3250万人が発症(罹患)、最悪その60%の約1950万人が亡くなることも視野に入れておかなければならない。国が準備するであろうワクチンの効果でその半分が、更に備蓄している薬の効果で更に半分の方々が助かるとしても1950万人の25%、つまり約500万人が亡くなることになる。この約500万人に入らないためには、自己防衛の努力をしっかりするしかないのである。

 国や自治体などが、ボクら個人個人を助けるために最大限の努力をすることは決してありえないし、時には嘘を付いてまで自分の体面、自分の保身や利益に走ろうとするはずだろうことを考えておかねばなるまい。悲しいが、これまでの政治家や行政の行動をみれば、こう考えるのが当然の帰結である。

【国の示す対策では…】

 では、どのような自己防衛ができるのだろうか?

 厚労省の新型インフルエンザ対策ガイドライン(平成21年2月17日策定)概要には、「個人・家庭の対応」として以下のように書かれている。

 [個人・家庭の対応]

(発生前)

  • 情報収集
  • 通常のインフルエンザ対策や咳エチケットの励行
  • 学校休業、不要不急の業務縮小等が行われる場合への準備
  • 2週間分程度の食料品・生活必需品等の備蓄

(発生時)

  • 情報収集
  • 感染拡大防止(マスク着用、外出自粛等)
  • 本人、家族等が発症した場合の対応(適切な受診、自宅療養等)
  • 医療の確保への協力(不要不急の受診の自粛等)

 皆さんは、これを読んでどう思われるだろうか?

 (発生前)に書いてあることはほとんど意味がない。いざという時の為に食料等の備蓄をしておけと言っている。

問題は(発生時)である。

  • 情報収集---これは重要だ。政府やマスコミだけではなくて、インターネット情報など極力多くの情報を集めて、その中から真実を探らないといけない。一つの情報を決して鵜呑みにしてはいけない。
  • できるだけ外出するな、マスクを着用しろとなっている。------ これは重要だ。良いマスクを備蓄しておく必要がある。うがい・手洗いも重要だ。
  • 「適切な受診・自宅療養、不要不急の受診の自粛」 ------ これは何だろう?全体版を読んでみると以下のことが書いてある。
  • 発熱・咳・全身痛などの症状が出てきて自分がかかったかなと思ったら保健所に電話して、どの病院に行くか指示を受けろ。その病院に事前連絡を取ってから指示を受けろ。感染が蔓延してしまった時には、軽症者は自宅療養せよ。

となっている。他にもいろいろ書いてあるが、基本的にはこれだけである。。。

その他、別の項目にはこんな重要な記載もある。

  • 「発生した地域を封じ込めろ」とある。つまり、その地域外に拡散しないように隔離せよということだ。どこまでの強制力をもって隔離するのかできるのかわからないが、身近なところで患者が発生したら、速やかにその地域から移動しないと、逃げ出せなくなるということだ。薬を支給するから留まってくれと要請することになっている。つまり、薬が欲しかったらここでじっとしていろと行政が迫ってくるということだ。

【マスクについて】

 マスクについては、良いマスクを事前に備蓄しておくことが必要だ。では、良いマスクとは? ボクらが普通に使っているペラペラの隙間のあるマスクはダメだ。またサージカル(手術用)マスクと書いてあるのも、良さそうだがこれは感染者につけてもらう目的として最適だ。手術用マスクは、手術を受けている患者に感染しないようにするためのものなので、自分への感染を避けるためではない。インフルエンザの時は、患者が付けてウイルスを回りに飛散させないために付けるものだ。

それでは?

 「N95」と書いてあるマスクは良いだろう。このマスクで確実に安全だという証明はなされていないが、一般のマスクよりは効果が高いと考えられる。ガイドラインには、『N95 マスク:日常生活において使用することは想定されていない。新型インフルエンザ患者に接する可能性の高い医療従事者等については、着用が勧められている』と記載されているので、いかにも適切ではない雰囲気で書いてある。しかし、ボクら一般人でもこうしたマスクを着用するのが良い。花粉症と違って、命にかかわるのだから、医療従事者と同等レベルのマスクを着用すべきである。問題は、自分の顔にフィットするかどうかである。こればかりは実際に着けて確認するしかない。様々なN95マスクがあるので、自分にフィットするマスクを探しておくことも大切だ。

【薬について】

 現在インフルエンザに効く薬としては、タミフルとリレンザという薬がある。薬の本体である化合物は異なるが、作用点は全く同じであり、いずれもインフルエンザウイルスが感染しにくくなる作用をもっている。タミフルは錠剤で飲み薬、リレンザは粉を吸い込んで直接肺の中に入れるものなので、使い勝手の良さからタミフルが処方されることが多かった。しかし、最近タミフル耐性のウイルスが発見されたためにリレンザが見直されている。他には、富山化学のT−705等、開発中の薬もいくつかあるが、まだ発売にはいたっていない。現時点では、リレンザが作用面では最も良い薬といえるだろう。

 さて、これらインフルエンザの薬だが、これは一般の薬局では買えない。医者の処方箋がないといけない医療用の医薬である。これらの医薬は感染後(発熱後)48時間以内に飲まないと効果がないとされている。つまり、インフルエンザかなぁ〜〜と怪しく思った時に飲み始めないと効果が無いのだ。しかし、病院に行って医者の診断を受けないと飲めない。これが困ったものだ。

 国内で新型インフルエンザの流行が始まったとしよう。新型インフルエンザは飛沫感染や空気感染が想定されている。空気感染なら、どんなに注意していても普通に呼吸をしている限りウイルスを吸い込む可能性は否定できないのだ。症状は、「発熱・咳・全身痛など」通常のインフルエンザと同じだ。流行時には、熱っぽくなったらインフルエンザかもと思わざるを得ない。命にかかわるからだ。

 この段階で病院に行って薬をいち早くもらいたい。しかし、病院はインフルエンザの患者さんが集まってくるところである。それに、熱っぽくなった人は怖いからどんどん集まってくるに違いない。こんな状況の病院に出向いたら、単なる普通の風邪だったのに、病院で新型インフルエンザにかかってしまうかもしれない。(このあたり一定の対策方針が示されてはいるが、現実のヒトの行動は想定どおりにはいかないものだ)

 以上のような事態が容易に想像できるのである。

 ボクは、なんとかリレンザの個人備蓄を考えたい。既にスイスやニュージーランドでは国として個人備蓄できるような環境・制度になっている。アメリカでもどう扱うべきかの議論が今なされている。

 リレンザは、治療用には1回2ブリスター(ザナミビルとして10mg)を、1日2回、5日間、専用の吸入器を用いて吸入する。予防用には(日本では)1回2ブリスター(ザナミビルとして10mg)を、1日1回、10日間、専用の吸入器を用いて吸入する。以下のような異常が感じられない限り、この処方を守って適切な時に飲めることが一番良いのだ。

  • 主な副作用としては、下痢、発疹、悪心・嘔吐、嗅覚障害などが報告されている。このような症状に気づいたら、担当の医師または薬剤師に相談する。
  • まれに下記のような症状があらわれ、[ ]内に示した副作用の初期症状である可能性がある。このような場合には、使用をやめて、すぐに医師の診療を受ける。
    • 口の中や喉や顔面がむくむ又はかゆい、発疹、じんましん[アナフィラキシー様症状]
    • 呼吸困難、動悸[気管支攣縮、呼吸困難]
  • また、これらの副作用ですべてではないので、上記以外でも気になる症状が出た場合は、医師または薬剤師に相談することである。
  • 詳しくは、このリレンザ添付文書にある。(現実には、概ねの医者はこうした詳しい内容までは理解しないで処方しているのが実際なのだ。)

 もし、個人輸入を考えるなら、「厚生労働省 医薬品等を海外から購入しようとされる方へ」をよく読んでから、自己の責任において考えてください。

 決して万人に勧めるわけには行かないが、自己防衛をしっかりしようとしたら、こうした対応がとっても重要なことはすぐに理解できるだろう。ボクには定額給付金の代わりにリレンザやN95マスクを配って欲しいと思うのである。

【ボクの考える[個人・家庭の対応]】

 様々な情報を鑑みた結果、現時点でボクが行き着いた[個人・家庭の対応]の概要は以下の通りだ。

 ボクの考える[個人・家庭の対応]

(発生前)

  • 情報収集 -- 下記のサイト辺りから、いろいろ飛んでみるとよさそうだ。
  • 鳥インフルエンザ、新型インフルエンザの怖さを理解する
  • 2週間〜1ヶ月分程度の食料品・生活必需品等の備蓄リスト、調達方法を考えておく。
  • 自分や家族に合ったN95マスクを探して備蓄する。
  • リレンザを備蓄する

(発生時)

  • 最大限の情報収集 --- 公的機関の情報を頼りにしない
  • ただちに1ヶ月分程度の食料品・生活必需品を購入して備蓄する。
  • 一番良いのは「自宅篭城」
  • 感染防止(外出自粛等。しかたなく外出する時は、N95マスク着用、リレンザ予防投与)
  • 本人、家族等が発症した場合の対応(早々にリレンザ投与してから適切な受診、自宅療養等)
  • 軽度の病での病院は避けて自己防衛する。医療の確保への協力(不要不急の受診の自粛等)

【心に決めていること】

 ボクは、ある事件以来、心に決めていることがある。

 それは、『大規模な事件があった際、行政等公的機関の言うことを鵜呑みにしてはならない。』ということである。つまり、『できうる限りの情報収集を行って、自ら正しいと判断したことに依存した行動を取る』ということでもある。

 現実には難しいかもしれない。しかし、政治家や公務員という類の言うことは全く信用できない、ということを肝に銘じておこう!と心に決めたのだった。

 新型インフルエンザの患者が国内に発生した場合、国や感染症センターなどの公的機関はそれを決して直ちに公表することは無いと考えるべきだ。そもそも、国や地方自治体など公と名のつく組織は、そもそもボクたち国民や市民の個人個人のことを考えて行動する性格は持ち合わせてないし、その上、彼らは自分に落度がないという体面をつくることを最優先にする傾向がつよい。また、常に定型的な仕事をこなすことに邁進しているので、予測できない危機に対してどれほど適切な判断が下せるかはかなり怪しいと考えるべきだろう。国内に新型インフルエンザが発生したとしても、そうした事実を公表するには1〜2週間程度の遅れがあってしかるべきであると考える。また、日本のマスコミに期待することもできない。週刊誌ネタには飛びつくが、本質的なところは避けて通ろうとする傾向がある。ボクらは、国内外問わず広くインターネットの情報にも注意して、海外で新型が発生したらまもなく日本でも起こっていると考えて行動するべきであろう。

 尚、『ある事件』のことは、いずれこの雑記に書きたいと思っている。

以上

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