記憶に残るテイスト  -2009.03.08Up

 人間の三大欲求とは、「睡眠欲」・「食欲」・「性欲」らしい。ヒトという生命体が本能として持っている最も基本的な欲求ということだろう(「本能」の定義もいろいろあって複雑らしいが、ボクらは素直に単純に理解すればよい)。「性欲」だけ、かなり質が違うような気がするが、とりあえずここではどうでもよい。とにかく、いずれも生命の基本である「生存と継続」に不可欠なものである。

 取り敢えず、ボクには単なる「食欲」以上に「美味しいものを食べたい」という気持ちがかなりある。美味しいものを食べると、なんだかとっても幸せな気分になれるのだ。

 ところで、美味しいとか美味しくないとかは、考えてみるとなかなか複雑で難しい感覚だ。

 ただ、とりあえず「味覚」が重要な要素であることは直ぐ分かる。食いしん坊のボクとしては、この辺りのことを多少は理解・整理しておきたいと思う。

【味覚について】

 この「味覚」に関する解釈や見解、または科学的知見はこれまで紆余曲折様々な説を経てきたが、ここ10年ぐらいの著しい研究成果によって、概ね解明されてきた。

 味覚は主に舌で感じるわけだが、舌には「味蕾(みらい)」という味を感じる組織がある。この味蕾という組織は、味を感じる味細胞(taste cell)が多数集まってできており、小さな蕾のような形をしている。

 現在、味覚の基本味は、旨味・甘味・苦味・酸味・塩味の五つとされているが、味細胞には、特定の化学物質を感知する受容体やイオンチャンネルが発現している。例えば、甘味ではグルコースや蔗糖(お砂糖のこと)、旨味ではグルタミン酸といった化学物質を感知して、味としての信号を脳に伝えるのである。

 受容体については、先ずは旨味・甘味・苦味の受容体について明らかになった。また、酸味と塩味については、それぞれ水素イオン(H+)とナトリウムイオン(Na+)がイオンチャンネルを介して細胞内に流入することで味を呈することは分かっていたが、それぞれのイオンを感じる受容体については分かっていなかった。最近(2006年)になって酸味の受容体候補が見つかり、残るは塩味の受容体だけとなったが、この辺りについてはかなり推測や議論のあるところのようだ。(Nature 444, 288 - 294 (15 Nov 2006)

The receptors and cells for mammalian taste: Nature 444, 288 - 294 (15 Nov 2006) より引用

左から、旨み・甘み・苦味の受容体。旨味受容体は、T1R1とT1R3のヘテロダイマーであり、甘味受容体はT1R2とT1R3のヘテロダイマーである。苦味受容体はT2Rs(sは番号)でヒトでは25種類程度ある。対で書いてあるが、グレーのものは可能性として対であることを想定して書いてあり、実証されては居ない。右側は、酸味受容体で、PKD2L1と右側はPKDsと呼ばれるたんぱく質の可能性が高いとされている。

味覚は、味を呈する化学物質が、味細胞に存在するこのような受容体タンパク質によって認識されている。

 このように、旨味と甘味、苦味の受容体たんぱく質が明らかになったが、どれも7回膜貫通型受容体で細胞膜を7回行ったり来たりした構造をしていて、通称「GPCR (G protein coupled receptor)」と言われている種類のたんぱく質だ。

 苦味の受容体はヒトでは25種類ぐらいあって、「T2r1」とか「T2r5」とかの名前が付いているが、それぞれの受容体はそれぞれ個別に苦味物質を認識するようにできている。例えば、マウスのT2r5はシクロヘキシミドという化合物に強くレスポンスする。「良薬、口に苦し」というが、良薬に限らずほとんどの有機化合物は苦いのが普通だし、程度の差こそあれ毒性を持つものも多い。30種類近くもの似たような受容体(サブタイプ)があるということは、進化の上で、極めて重要だったということを意味している。つまり、毒物摂取しないように苦味受容体が発達して数多くの受容体が機能するようになったと考えるのが良いだろう。一般に、生命の進化の過程において、重要な遺伝子は機能不全に陥らないように複数持つようになり、やがて一部変異してサブタイプとして機能分化するようになる苦味受容体は基本的には毒物摂取を避けるために極めて重要だったと思われる。子供の頃は嫌いだった苦味も、年をとると、味覚の好みも変わって好きになってきたりする。ビールなんか典型だし、うなぎの肝なんてのもそうだ。本能的には避けるようにできている苦味も、経験によって苦味を許容できるようになり、更に味覚の複雑さや多様性を求めて好きになる。ボクはこんな風に考える。

 旨味と甘味の受容体はいずれも「T1r」という種類のたんぱく質からできていて、旨味は「T1r1 + T1r3」、甘味は「T1r2 + T1r3」で構成されている。甘味を呈する糖類は生命活動のエネルギー源であり、旨味を呈するアミノ酸や核酸類は生命組織をつくるたんぱく質やDNA・RNAの構成成分(化合物の種類として)である。これらを摂取するための味覚が「甘さ」や「旨さ」なのは合理的である。T1r3だけでも高濃度の甘味は感じるらしい。こうした重要な成分を認識する基本的な遺伝子(受容体)が複数になり、その後、旨味と甘味を分けて認識する受容体に進化してきたのが今の姿なのだと思う。年をとって行くと甘味しか感じなくなっていくらしい。なので、高齢者には普通以上に甘めに味付けすると好まれるという。生命のエネルギー源だけは、生まれた直後から生きている限り認識できるようになっているのだ。

 さて、この節の冒頭に「紆余曲折様々な説を経て」と書いたのだが、以下にちょっとビックリする具体例を2件紹介しておこう。

 [具体例1:味マップ]

 多くの皆さんは、舌の位置によって感じる味が違っているという地図(味覚分布地図)を見たことがあるだろう。甘みは舌の先端で、苦味は奥で感じやすいというのを地図にしたものだ。ところがぎっちょん!!これが真っ赤なデタラメなのだ。医学の専門書にまでまことしやかに書いてあった「味覚分布地図」なるものは誤りであって、実は舌の位置によって味の種類で感度が変わるなんてことは無かったのだ。誰にでもできる簡単な実験で分かったはずだが、こうした迷信が長年(ほぼ100年近く)真実とされてきた。いまだに信じておられる人も多いのではないだろうか?

 [具体例2:旨味 umami]

 味覚の基本味(basic taste)はもともと4種類だとされてきた。「甘味」sweetness「塩味」saltiness「酸味」sourness「苦味」bitternessの4つで、西洋人はこの4つで全て説明が付くと考えていた。日本人には当たり前の旨味が、どうも西洋人には分からなかったのだろう。そりゃぁ違うんじゃない?と、日本の研究者が言い出して、国際的に専門の研究者が10年以上も議論をかさね、またラットやイヌ、サルなどを使った様々な動物実験等を重ねて、やっと1990年代末に「旨味」が国際的に認められたそうだ。なので、旨味は英語でも「umami」となっている。今では「旨味」umamiを加えて基本味は5種類となっているが、そもそも西洋には旨味の概念がなかったのだ。

【味覚以外の味】

 さてさて、味覚の基本味は以上の五種類ということになっているが、味ということでは、例えば「辛い(辛味)」・「渋い(渋味)」・「金属味」などなど、他にもいろいろありそうだ。しかし、これらは「味覚」ではないらしい。こうした味は、味蕾にある味細胞上の受容体に作用するのではなく、別の受容体、または神経に直接作用して感じられるものである。辛味は、カプサイシンを認識するVP1という受容体による「痛い」という痛覚と同様な刺激であるとのことだ。実際、VP1は舌や口腔内にだけではなく皮膚など全身に分布している。また、渋柿を食べた時に感ずる強烈な渋みは、歯茎が麻痺してその表面がキュッキュとしたように感じるが、確かに味とは一味違うのは良く分かる。ところで、最近の子供は渋柿を食べたことがないでしょうね〜〜経験させてあげたいと思いませんか?

 ところで、美味しさに味覚がとっても大事なのは良く分かるが、決して味覚だけによるものではない。TVのグルメ番組では、いろんな芸能人が料理を口にいれては「やわらか〜い!」などと、「美味しい」の代名詞代わりに使っていたりする。この人、味が分らないんじゃない??と思うことがある。お料理に対してそんな表現だけだったりすると、折角のお料理が無駄になっている気がして情けなくおもったり憤ったりしたりする。ボクなどはしっかりカミカミするとジワッと美味しさが滲み出てくる固い肉が大好きなんだけど。。。

 最近は、料理や食材をテーマにしたTV番組が増えたが、番組で使った食材や料理は、きちんと消費しているのだろうか、と思わざるを得ない。撮影だけして捨てているなんてことは絶対にあってはならない。もしそうなら、実にけしからんことだ!バチが当るぞ!

 「やわらか〜い」が美味しい意味にはならないが、「食感」はとっても大切だ。ボクはキノコや貝類の食感だ大好きだ。あの弾力のあるプキッとした食感がたまらない。好き嫌いは基本的に無いボクだが、豆類やジャガイモなどで呈される粉っぽい感じは苦手である。レバーを食べた時など、新鮮なら張りがある食感で美味しく食べられるが、鮮度が落ちるとドロドロと崩れるような食感はなんとも気持ち悪い感じで、味わいどころではない。先日、「鯖しおから」を頂く機会があったが、そのまま食べると発酵している鯖の身は崩れるような食感で、どうにもよろしくない。。。それが、煮物やパスタで使うと直ちに溶けて素晴らしい塩味を呈する見事な調味料に変身する。細胞が壊れて崩れるようなドロドロするような食感は、腐ったものに通じる食感であり、ヒトは本能的に拒否するようになっている気がする。

市場仲間のMTさんに頂いた「鯖しおから」

生臭さはなく、むしろ良い香りかも。。。そのまま食べると食感は酷いが、アンチョビのように調味料として使うと素晴らしい。これを1かけ入れてナスを水から煮るだけで美味しいし、スパゲティーに合わせてもOK。洋風・和風、いずれもOKのお塩として使えます。固形魚醤という感覚かな。。

島根特産「鯖しおから」

 また、「香り」も大切だ。珈琲の香りなど、あぁ〜っと目を閉じて幸せを夢想させる。美味しい香りが漂ってくるだけで空腹が実感できたりする。料理の香りのみならず、口に含んで内側か感じられる香りも決定的だ。わいんのテイスティングではグラスから香る匂いと口に含んで香る匂いも評価する。魚の生臭さはショウガで、肉の臭みは胡椒などで消すと同時に香りと刺激を加えている。普段意識する以上に臭いは美味しさを演じている。

 そして、「刺激」だ。辛さはその典型だ。唐辛子をちょっと入れるだけで味が引き立つ。大根おろしの辛味なんかはとっても日本的な使い方におもえる。ワサビの刺激も凄い。日本では素材の味を行かすために使われるところが醍醐味であるし、それが日本の味が最高だと思う私の視点でもある。その点、海外では様々なスパイスを使って料理するが、新たにコンビネーションさせた味に仕上げる意図があるようだ。中国・四川で良く使う「山椒」は口の中がしびれてくるが、舌や口の中がやけに敏感になってくる。様々な刺激を使うことで、味の広がりや階層がかわってくる様に感じる。

 一口に「美味しい」といっても、こうした味覚、食感、香り、刺激などが総動員した複雑な作用の結果だろう。更に、「記憶としての食体験」が重要だし、落ちついた心で楽しく食事することも重要だ。それに、なんといっても空腹であることだ(笑)。(もうこの辺で解説は控える。。。)

【記憶に残るテイスト】

 人それぞれ様々な食体験をもっているが、ボクには以下の様な「記憶に残るテイスト」がある。「テイスト」と書いた理由は、単に「味」という表現では表せない、とっても複雑な作用の結果として感じる味わいを表現する日本語が思いつかないので、そんな様々な意味を含ませて「テイスト」という言葉を使ってみたのだ。

 最初に、ボクの「記憶に残るテイスト」のリストを掲げて、その後に内容などを書くことにする。皆それぞれの食体験があるはずだが、こんなところがボクの食体験の中で特に記憶に残っている印象深いテイストだ。

  • 大昔のブルドック中濃ソース(だと思う)
  • 豚ロース醤油焼き
  • コーヒー
  • アジの干物・サケカマ
  • アワビの肝
  • イワガキ
  • まぐろのアゴ
  • シマアジ・ニシン・オオモンハタの刺身
  • クエ

【以下、それぞれの内容記載】

  • 大昔のブルドック中濃ソース(だと思う)

 ボクが子供の頃は、我が家では近くの食料品店から買ってきた「量り売りのソース」を使っていた。大きな樽に入ったソースを一升瓶とかに入れてもらって、何グラムいくらというソースだ。幼い頃からこのソースしか知らなかったのだが、ある時、小瓶に入ったブルドック中濃ソースを使う機会に遭遇した。衝撃だった!なんと美味しいことかと驚いた。旨味・甘み・複雑なテイストが口の中に広がる。。。当時の味は、きっと今のソースとは違うだろうが、あの衝撃は忘れられない。それだけ量り売りのソースは不味かったのではなかろうかと思う。

 ところで、ボクらが普通に言う「ソース」とは一体何物なのだろう???かなり以前のことだが、日本独自の調味料であることを知った時はかなりビックリした。エッ!外国にはないの?っと思った。Wikipedia(日本のウスターソース類)によれば、『日本のウスターソース類は、トマトやリンゴなどといった野菜・果実の搾り汁・煮出し汁・ピューレ、またはそれらを濃縮したものに、糖類、食酢、食塩、香辛料、でん粉、カラメルなどを加え、貯蔵熟成させてつくる。』と書いてある。これも海外のものを日本独自にアレンジしてしまう日本文化の結果なのかと思う。

  • 豚ロース醤油焼き

 中学生または小学校高学年の頃だったように思う。叔母さんがロースの薄切りを買ってきてくれたことがある。ボクには初めてのロース肉だった。それまで肉を食べることは極めて少なかったし、そんな高級な肉は口にしていなかった。もっと以前の子供の頃は、何せ、カレーライスでも野菜ばっっかりでお肉が入ってないのだ。入っているにしても、僅かに挽肉がポツポツある程度だった。なので、肉と言えば、ラーメンに入っている一枚の貴重なチャーシューだけだ。これはまさに宝物だった。最後まで残して、心を込めてじっくり味わうのである。子供の頃、ボクはチャーシュー麺を食べるのが夢だった。あの美味しいチャーシューがラーメンの表面全体を覆っているなんて…!

 とにかく、そんな状況だったので、お肉欠乏症の気持ちだった。そこへ、突然のロースの醤油焼きである。世の中にこんな美味しいものがあるのか!というほど衝撃のテイストだった。

  • コーヒー

 カリタが発売されてまもなくの頃だったように思う。大昔のことだ。兄貴分の従兄弟がカリタのセット(紙フィルターを使う陶器でできた珈琲ドリップ)を買ってきて、これが本当のコーヒーだ!っと初めてホントのコーヒーを飲んだ。それまで、コーヒーといえば、ネツカフェのインスタントコーヒーしかなかった。それがコーヒーだと思っていた。そこへ、コーヒー豆の粉から熱湯抽出した入れ立てのコーヒーを初めて飲んだ。なんだか酸っぱいのだ?!。これは驚きだった。とても美味しいとは思えなかったが、これまで飲んでいたコーヒーとは全然違っていて、びっくりしたのだった。味はなんだこれ!というものだったが、豆の香りが素晴らしいのにも驚きだった。

 その時は美味しいと思わなかったコーヒーだが、その後いつの頃からか大好きになった。大学時代の同級生もコーヒー好きが多くて、お互いの下宿に行っては、手でグルグル回すミルでコーヒー豆をガリガリ挽いてコーヒーを入れて飲んだものだ。学園祭でも、コーヒーの研究+コーヒー店をやった。コーヒーフレーバーの解析とフリーズドライ製法によるインスタントコーヒーの作成、それにコーヒー店では各国のコーヒー豆を揃えて味の違いを楽しめるような内容だった。お陰で卒論がほとんど出来ちゃったというぐらいのやつもいた(笑)。この時に生のコーヒー豆を初めて見て、生豆を「グリーン」と呼ぶことも知った。このグリーンをフライパン等で丁寧に煎って、挽きたてのコーヒーを飲んだが、その爽やかなテイストは感動ものでもあった。

 最近は、ドトールだとかスターバックスとか、とても美味しいとはいえないコーヒーばかりで、一昔前に流行った味にこだわった専門店はほとんどなくなった。めっきり美味しいコーヒーを飲むことが無くなってしまったが、昨年ボクは素晴らしく美味しいコーヒーに出会った。それは神田駿河台下でのことだった。知人の展覧会に足を運んだのだが、その前に腹ごしらえをしようと、駿河台交差点近くのカレー専門店「エチオピア」本店に入った。カレー専門店としては有名なお店で都内に何軒かお店がある。ここのカレーを食べたいと思って、ボクはチキンカレー8倍、ゆうこんは野菜カレー5倍に加えて、その後コーヒーも飲もうとコーヒーチケットも購入して注文した。ここはカレーの辛さを細かく指定できるのだ。何十倍まであるのか忘れたが、1倍でも普通なら辛口である。ボクは辛いのがかなり好きなので8倍ぐらいで調度良い加減だ。さて、カレーを食べ終わって、コーヒーを頂く。その香り高く雑味のない深い味わいの見事なコーヒーテイストにびっくりした。絶品だった。このコーヒー美味しいね〜とゆうこんと感嘆だ。ここ何年?という中で最高のコーヒーだった。二人で、こんな美味しいコーヒー飲んだの久しぶりだよ!いや〜美味しいね〜などと、べた褒めしてたら、隣のアベックが、「カレーの後はコーヒー飲みたいわね…」などと、追加でコーヒーを頼んでしまった程だ(笑)。近くに行ったら、コーヒーを飲みにまたエチオピアに行きたいと思っている。(もちろんカレーも美味しいです)

  • アジの干物・サケカマ

 仕事の関係で静岡県の漁港の町に住んでいた。引っ越ししてまもなくの頃だが、近くに水産物を売っている施設があって、そこで巨大なアジの干物を見つけた。こんなデッカイのは見たことがない!と思って、何枚か買い求めたのだが、これが素晴らしく美味しかった。デカイので身が厚い。その上、見事に脂がのっていて旨味も凝縮されている。お世話になった方にも送ったりしたが、大好評だった。しばらく重宝していたのだが、その後、このアジの干物は手に入らなくなってしまった。今でもアジの干物を見ると思い出すのである。

 サケカマは、ゆうこんがあちこちから買ってくる。当たりはずれはかなりあるが、当たりのサケカマは素晴らしく美味しい。脂ののりも重要だが、塩加減も重要だ。適度な塩加減のサケカマの焼き物は本当に美味しいと思う。我が家では、切り身より断然サケカマである。

  • アワビの肝

 静岡で知人を呼んだ時だろうか?それとも親に来てもらった時だろうか?状況は忘れてしまったが、近くの魚屋さんに舟盛りをどん!と頼んだときだろう。。。立派なアワビがどんと乗っていた。肉肉人間だったボクは、それまでアワビを丸ごと頂くなんてことはなかった。徐々に魚介類に興味がわいてきた頃だろう。アワビのお刺身の脇には深い緑色した肝があった。初めてでした。アワビの刺身はそれはそれでとても美味しいと思っていたのだが、この緑色した肝を初めて口にして、その味わいは喩えようもないものでした。これまで味わったテイストとは明らかに違ってました。こんなに深い味わいがあるなんて…!、と思ったのでした。

  • 岩牡蠣(イワガキ)

 鳥取に行く機会が何度かあった。秋〜冬に行こうかという話になった時に、どうせなら11月○○日以降にしたら…と言われた。松葉蟹(ズワイガニ)の解禁日らしい。賀露港の近くに、現地の人でもまだ気づいてない素晴らしいところがあるとのことで、それでは!ということで、そこで蟹コースを頂いた。凄かったです!様々な食べ方で頂いて無茶苦茶美味しかったです。もうボクは蟹はこれで良い!と思いました。そんなことがあって、次回は夏に!という話で、それだったら「岩牡蠣(イワガキ)」ですねということにあいなった。牡蠣といえば冬場、ところがイワガキは夏が旬だという。。。

 そして、夏に鳥取に行きました。イワガキを頂きました。手のひら以上もあるデッカイイワガキを頂きましたが、いわゆる普通の牡蠣とは全然違ってました。クリーミーでトロトロしています。こんなテイストは初めてでした。それから2次会で居酒屋に行ったのですが、なんとそこではお通しにイワガキが出てきました。

 鳥取でイワガキを知って、近くの市場でも求めるようになりました。とにかくデカイのが良いです。小さいのはクリーミーではありません。一個600円とかのドデカイのは、クリームソースみたいにトロトロクリーミーで美味しいですね〜〜

  • まぐろのアゴ

 長年、市場に通っていても気が付かないものがある。「まぐろのアゴ」なんかは典型的だ。目に入っていた筈なのに…と思うのだ。切っ掛けは、ゆうこんが正月明けにマグロ屋さんに寄った時に、これも美味しいから持ってきな〜とおまけ気分で買わされたのだった。お酒と生姜醤油につけといてオーブンで焼くといいよ!と教わって、家でトライした。ビックリです!脂が乗っていて噛みごたえがしっかりあって、食べやすい上に分量も沢山ある。美味しくて安い、こんあCPの高い食材はないだろうと感激した。ほとんど店頭に並ぶことはないので、それからは時々マグロ屋さんに行っては「アゴなぁい〜?」と聞いて求めるようになった。これも100Kg超級のマグロからとれる大きいアゴが素晴らしく美味しい。

  • シマアジ・ニシン・オオモンハタの刺身

 いろいろとお魚を自分で捌いて食べるようになって、新鮮ならほとんどなんでもお刺身になることを知った。それまでは、お刺身として普通に流通しているお魚だけが刺身で食べられるもので、その他のお魚に対しては、これ刺身で大丈夫なのかなぁ〜と疑心暗鬼でエイッと試す気分だった。「お刺身で食べられる魚だけがお刺身として流通しているのだ」と勝手に思っていたのだが、これは大きな間違いなのだ。明確な思いを抱いているわけではないだろうが、多くの皆さんはそんな風に思っているような気がしてならない。

 大昔の話だが、東京から静岡の漁師町に移り住んだ直後のことだが、スーパーで刺身用のサンマが売っていた。今でこそ珍しくはないが、何十年も昔のこと、サンマって刺身で食べられるんだ〜とビックリした。頂いてみると、素晴らしく美味しいではないか!さすが漁港の町は違うなぁ〜と思ったのだ。また、その後出張で福岡に行く機会があった。事前にホテルの予約が出来なかったので、博多駅で降りて駅構内のセンターに飛び込んだ。そしたら、そこでもホテルはどこも満室でとれないとのこと、旅館なら取れるけど、若い人は嫌ですよね〜とか言われた。ボクは、いや全然!っと、旅館(朝飯付)を紹介してもらった。ボクは畳の上でゴロゴロしているのが大好きなのだ。その旅館は市内の川沿いの旅館で、近くに行くと柳橋連合市場との看板が目に入った。旅館の方に、どこか晩飯の店は?と聞くと、近くの割烹の店を教えてくれた。そこへ行ってメニューをみると「アナゴの刺身」という文言が飛び込む。エッ!穴子って刺身で食べられるの???注文して食べてみた。美味しかったです。透き通るような白身で歯応えがしっかりとあって旨味も十分、初めてのアナゴ刺しにビックリしたのでした。

 そんなことなど経験してくると、お魚なら何でも刺身でいけるのかもしれないなどと思えてきた。いつの間にか、市場通いが普通の生活になって、美味しい魚貝類を求めるようになったのでした。

 ありがたいことに数々の美味しい刺身を頂きましたが、そんな中でも思い出す幾つかを以下に。

 シマアジ:静岡の漁港町に住みだして、ある時来客の折りに地元の魚屋さんに舟盛りを頼んだ。奮発したのだ。お値段指定で量より質でとお願いした。その中に「シマアジ」があった。初めてシマアジを食べてすっごく美味しいと思った。調べるとかなりの大型の魚で高級魚らしい。清水・美保の東海大学の水族館に行くと、アジア一だかのデカイ水槽にシマアジが泳いでいるではないか!!高級なお刺身が泳いでいるように見えて仕方がなかった。。。その後、市場に行くようになって時に何度かシマアジを買い求めるようになった。美味しい魚ですね!

 ニシン:今年はニシンが何十年ぶりかの豊漁とのことで、立派な刺身用ニシンが市場に出ていた。しかし、ボクが初めてニシンの刺身を食べたのはかなり前のことだ。市場の店に刺身用とかいてあるニシンを見つけた。エッ、ニシンって刺身になるの?という感じだ。当然買い求めて刺身で頂く。こんなに美味しい刺身は滅多にないと思った。いわゆる青物のお魚は鮮度が良ければ素晴らしく美味しい。鱗の付いたニシンを見かけたら、是非お刺身で賞味あれ。

 オオモンハタこれは昨年だ。貝類が大好きなボクは市場でも貝類を買うことが多い。お魚も好きだが、それほどこだわって追い求めてきた訳ではない。そんな中昨年の春頃から、「ゴマアラ」とかいてある魚がどうしても気になりだした。「クエ」という魚があるが、九州では「アラ」という。そんな系統の魚だろうという程度の認識だが、どうも気になる。。。そして、秋になってついに買いましたよ。1キロ少々のゴマアラを。買ってからよく調べてみると、この文様は「ホウセキハタ」か「オオモンハタ」のようだ。尾鰭の特徴から「オオモンハタ」と分かるが、このお刺身は美味しかったですね〜。。淡いピンクのピカピカしたお刺身は上品な旨味を呈して見事な美味しさでした。

  • クエ

 雑雑雑記に書いたので、参照してください。美味しかったです。

以上

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