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今日は朝早く宿を出て、アーグラーカントへ向かう列車に乗った。窓から眺める景色は、のどかな中にもたくましく生きる人々の暮らしが見えてとても良かった。
アーグラーカント駅ではおっさん(リクシャーの運転手)が車両の中まで入ってきて、降りろと言われるまで着いたのがわからなかった。え? ここ本当にアーグラーカント駅か? 見渡したが駅名の表示はない。降りて近くにいた人に聞いたら、そうだと言う。そしておっさんのリクシャーを雇って、今日と明日、アーグラーの足になってもらうことにした。しかしこれが、あやしいインドを体験する始まりであったのだ。
まず、今日は日曜日で BANK が閉まっているというのをおっさんに言われて初めて気がついた。どこか両替できるところはないかと尋ねたら、あるあやしいオフィスへ連れて行かれた。ちょっとどきどきしたが、持参した計算機を出して計算したら適正だったので、安心した。
その後、HOTEL AKBAR INN というところへ行ってもらい、そこに泊まることにした。Rs100 の部屋は全てふさがっていたが、Rs80の部屋があったのでそこに決めた。しかしここは独房のような部屋で、ヤモリや虫がいたりする、ちょっとワイルドなところである。ベッドは寝るとかゆくなりそうだ。
午後はタージマハルやアーグラー城などをリクシャーでまわった。タージマハルは想像以上の素晴らしさであった。正門に立ったとき、奥行きのある美しい敷地の向こうに白い大きなタージマハルが見えた。一瞬にして、これまでと空気が変わった気がした。完璧である。これは本当にすごい。敷地を歩いて近くまで行くと、さらに想像よりも大きいのに驚かされる。そして美しい。靴を脱いで上がると、足がひんやりとして気持ちが良かった。人がたくさんいるのだが、何か落ち着いた気分にさせられた。
敷地を南門へ戻るとき、ある人に声をかけられた。私はインドに来てからの癖で反射的に、
「No!」
と、きつく言ってしまった。するとそのおじさんは小さな声で
「No...」
と言って、すぐ引き下がってしまった。あれ? と思って目で追うと、どうやらそのおじさんはインド人の観光客で、シャッターを押してくださいと私に頼もうとしたらしかったのだ。これは悪いことをした。でもそこで初めて、いかに私が毎日「No」と言いまくっているのかを認識した。もはや人の顔も見ずに、話しかけられたらまず「No!」だったのである。
その後、リクシャーは布屋や大理石屋(ガバメントを名乗っているが、とてもあやしい)により、さんざん買わされそうになった。始めは見るだけでお金はかからないと言っておきながら、やはりあれこれ買わせようとしてくる。
大理石の店では、まず石に模様を掘ったり色のついた石をはめ込んだりしているところをみせてもらい、本物と偽物の違いの説明があった。作業をしている人は2人だった。なんだか、私が来たから急に作業を始めたという感じだ。リクシャーの運転手の話ではここまでだったので来たのだが、やはりその後に商売の話がないはずがない。商品の並んだ部屋へ通された。
興味がないというと次の部屋へ通され、これはどうだ、というのを3回ぐらい繰り返された。次から次へと奥に部屋が現れるので面白かったが、商品はよく見るとあまり良くなかった。ガバメントだからこれだけの品質のものをこんなに安く提供できるんだと言っていたが、非常に嘘くさい。最後はとうとう、働いている人への寄付をねだってきて、私が全く払う気がないとわかると、あからさまに不機嫌な顔になった。
その後、今日あった出来事のメインとも言うべき、宝石店へ連れていかれた。入れ替わり立ち替わり何人かのおっさんや兄ちゃんが出てきて、まさに『地球の歩き方』に出てくるトラブル例のまんまの展開となった。私が店に入ってから、気づかないうちに入り口のドアは閉じられていた。どこから来たんだというような話から始まって、しばらくは普通の話をした。徐々に、鉄道のチケットを取ってやるから名前を書けと紙を出されたり、俺は宝石の輸出をしていると言ってあやしい商売の話をもちかけ、奥の部屋へ誘おうとしたり、いらないと言うのにチャーイを出して来て、しきりに飲め飲めと勧められたりした。
それは、実を言うと内心とてもとても面白かった! あまりにも典型的で、多分その時私の顔はニヤけていたに違いない。チャーイが出て来たときには、面白くて拍手したくなる程だった。これって飲んじゃいけないんだよなー。Noというところをきちんと押えておけば、これは本当に楽しい出来事ではないだろうか。調子にのっていると痛い目に会いそうだが。
リクシャーは今日 Rs200、明日は Rs100、計 Rs300 ということにしてしまったが、今考えるとこれはだまされているに違いない。ボられたんだろうな。宿に着いてから降りようとした時、ちょっと待てと言われてリクシャーに再び座らされた。おっさんは私に小声で話した。今日は Rs200 だと。おっさん、なんで小声なの? 多分、ボってるから宿の人に聞かれたくないんだろう。しかし約束したのは自分だから仕方ないか。
アーグラーは大体一日で全部見てまわれるので、もう明日にはバラナシ(ベナレスまたはバナーラスとも言う)へ出発したい。しかし鉄道の当日券が買えるかどうかはわからない。
この宿は部屋がもっと良ければ何日か泊まっていたい。それは、庭にテーブルと椅子が出ていて、あのペナンの弁慶ゲストハウスのように日本人やその他のツーリストと情報交換や談笑ができるからだ。とても楽しい。
明日はボられないことを祈りつつ、眠りにつこう。ヤモリよ来るな。