昨日の兄ちゃんは来なかった。寝坊したのか忘れたのか、初めっからすっぽかす気だったのかはわからないが、5:30を過ぎたのでバイクタクシーを使うことにした。空港まで2ドル。バイクの後ろに乗って朝の町を通り抜けるのはとても爽快だ。空港へ着いたのは5:45ごろだった。チェックインカウンタには 6:10 closed の表示がある。早く出て正解だった。空港税US$10を払うカウンタの人はナインティナインの岡村隆史にそっくりだった。顔だけでなく、背格好や仕草まで。早朝の便だからかもしれないが、飛行機の座席は結構空いている。
シェムリアップに着いて空港を出ると、私の名前を書いた紙を持っている人が立っていた。男3人。車に乗って宿(BOREY ANGKOR VILLA)へと向かった。とても陽気で楽しい奴らだ。宿では最初、えらく綺麗な部屋に通された。いかにも高そうだ。いくらかと聞くと$20だと言う。プノンペンで$20の部屋に泊まっていたからだろう。でももうすこし安い部屋がないかと聞くと$15のがあると言うのでそっちにしてもらった。でも部屋を整えるからちょっと待ってくれという。どうやらこの$20の部屋は私のために準備してくれていたらしい。ごめんね。
9:00からアンコール遺跡観光に行くことにした。バイクタクシーの彼の名はSavey。遺跡までの道のりもまた楽しい。いい景色だ。
今、アンコールワット第3回廊の一角に座っている。さっきまで日本語を話す子供ガイドが付いていたが、今は一人。ガイド料$5は高いぞ。ここはとても静かだ。観光客はほとんどいない。なぜだろう。思っていたよりも人がいなくて、孤独に浸れてとてもいい。階段が「うそでしょー」と思わず叫んでしまうぐらいきついので疲れるが、全然かまわない。のんびり観てまわれば良い。
第一回廊の壁にはラーマーヤナなどのレリーフが続いている。また、十字回廊には昔々にやってきた日本人、森本右近太夫の墨で書いた落書(?)が残っていたりして面白い。でも「1997」とか自分の名前を彫ったバカものもいる。ヒンドゥーの寺院だが、現在は仏陀も奉られている。ところどころに僧侶が座り込んでいたりもして、土地の人々は日常的に自由に出入りしているようである。尼僧に何やら背中をポンポン叩きながらお祈りをしてもらったりもした。入口から寺院を遠くに見るのも、寺院内から周りを見るのもとても素晴らしい景色。ここは私の大好きな遺跡のひとつとなった。絶対に来て損はしない。ただし、体力のあるうちに来るべきところだ。
そしてバイヨン。アンコール・トムの中心に位置するこの寺院はすごい。アンコール・ワットより感動的な遺跡だ。すごいものを作ったもんだ。これは多くの人に「見に行け!」と言いたい。この素晴らしさは言葉で説明しづらい。私はこのバイヨンが一番好きだ。
アンコール・トムの印象的な南門をくぐると、木に挟まれた長い真っ直ぐな一本道が続いていた。その道の向こうにバイヨンの一部が見える。Saveyのバイクで真っ直ぐな道を走り、近づいて行く。すると・・・両脇の木々がパッとはれて、開けた視界の左の方に想像よりも高いバイヨンの中心部分がそびえ立っていた。遠くから見えていた部分はバイヨンの中心ではなかったのだ。想像よりも巨大だ。
「うわー。」
バイクに乗ったまま声を上げ、見上げる。無数の四面仏。なんともいえない石の色。ものすごい存在感。バイクを降りて近づくと、崩れ落ちそうになって補強されていたり、進入禁止と書いてある部分がいくつかある。歩き、立ち止まり、ぽかーんと口を開けて見上げてしまう。
ここでは4人組の小さな女の子がついてきた。ときどき横や後ろから扇子であおいでくれる。また、こっちを見ろとバイヨンの中を案内してくれたり、お祈りしたり、一緒に写真を撮ったり、ポリスを見かけると一緒に逃げたりした(なんでだ?)。それは、とてもとても楽しかった! 一応最後にガイド料として$3渡した。
「もっと! もっと!」
と言われはしたが、別にがめつくていやな感じはしなかった。それ以上払わなくても笑顔は変わらず、バイクはあっちだよと待っているSaveyを見つけて、手を振って送ってくれた。今までいろんな国で、観光地にいる「勝手にガイド」には腹がたった。だがここシェムリアップでは全然腹がたたない。それどころかとても楽しいのだ。なんていいところだ。素晴らしい遺跡と子供たち。そして遺跡を修復する国際プロジェクトの力を感じる。1日でここが大好きになった。今日は暑さで倒れそうになりながら、アンコール・トムをひととおり見てまわった。
宿に帰ると、ここを取り仕切っている彼女が笑顔で迎えてくれた。荷物は$15の部屋に移しておいてくれた。このミニホテルは改装&増築中で、これから部屋数が増えるらしい。$15の部屋も改装したばかりでなかなかきれいだった。増築作業がうるさくてごめんねと言われたが、どうせ昼間は出かけてるから気にならない。$20の部屋との違いはTVがないのと、風呂がなくてシャワーだけというところぐらいだ。石鹸もタオルもトイレットペーパーもある。冷蔵庫まである。エアコンと扇風機もある。とても快適だ。中庭もあってなかなかセンスがいい。部屋代とバイクタクシー代はいつでも好きな時に払ってくれればいいと言ってくれた。なんて大らかなんだ。そんなに人を信用してもいいの? 観光客の中にはタチの悪い奴もいるよ。