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小松寅吉・小林和平の作品を見に行く 8

王子八幡神社には、謎の?狛犬がいました。

王子八幡神社 (石川郡石川町王子平)

王子八幡
王子八幡 吽 王子八幡 阿
王子八幡神社狛犬台座の銘 ご覧の通りの飛び狛犬。これは和平の作品だということなのですが、自己主張の強い和平にしては珍しく、台座に名前が彫られていません。
これは本当に和平の作なのでしょうか?
和平にしては尻尾などのダイナミズムがやや弱いと思うのです。顔も少し違いますし、彫りも全体にやや甘い。
また、台座が黒御影石で、新しそうです。後から台座だけ変更したのかもしれません。
その台座には、<昭和拾四年旧正月十七日戌亥會建設><初老記念>と刻まれています。最初はこれを「成亥会」と読んでしまい、一瞬「成亥會建設」という会社なのかとも思いましたが、「戌亥(いぬい)會」という同窓会一同が「初老記念」としてこれを「建設」した、という意味でした。石都都古別神社御仮屋に奉納されている、大竹俊吉と連名の狛犬も「戌亥會」が初老記念に建立したものですので、同じ奉納者が同じ年に別々の場所に2対の狛犬を奉納したことになります。
ここ、王子八幡神社のほうは、奉納者の中に、和平が目をかけていたお弟子さんの名前も入っています。もしかすると、このお弟子さんが刻むのを和平が指導して、ところどころは自分でも彫った、というような状況だったのかもしれません。それで、弟子に遠慮して自分の名前を刻まなかった、弟子も師匠を差し置いて自分の名前を「石工」として刻むのははばかられた、とすれば、石工名が刻まれていないのも納得できます。

さらに新たな有力情報があるまでは、「謎の狛犬」としておきましょう。
なお、和平の生家はこの神社のすぐそばだそうです。お墓もあるそうなので、次回はぜひ墓参りをしてきたいと思っています。

■Data:王子八幡神社(福島県石川郡石川町王子平):
ο建立年月・昭和14(1939)年? ο石工・小林和平?
ο撮影年月日・04年3月25日。

次に、小松寅吉の生誕地・福貴作(ふきざく)を訪ねてみました。
福貴作公民館には、寅吉作の仁王像があるということです。これは、寅吉が作りかけたまま「失敗作」として破棄したものを、寅吉の死後、地元の人たちが「名工の作品なのだから、もったいない」と掘り起こしてここに置いたという話です。
寅吉はこの仁王像を造るのに相当苦労したらしく、自分の手足をあちこち動かし、ああでもないこうでもないと一日中踊るような仕草を繰り返していたため、周囲の人たちはついに寅吉は気が狂ったかと思ったとか。
福貴作には他にも子安観音像、虚空蔵像などがあるはずなのですが、一体どこにあるのか分かりませんでした。人に訊こうにも、人通りというものがまったくない。人家もほとんど見あたらないという辺鄙な場所。寅吉は作品に自分の名と一緒に「福貴作」という地名をよく刻んでいますが、いかにこの郷里を愛し、誇りに思っていたかがうかがえます。
福貴作の公民館
↑福貴作公民館 左横に見えるのが問題の仁王像
仁王像は、確かに作りかけで、しかもデッサンが変な失敗作でした。
名人・寅吉としては、これを残すことはプライドとして許せなかったのでしょう。死後、掘り起こされてこんな風に飾られるとは思ってもいなかったかもしれません。しかし、人間・寅吉を知る上で、興味深いものだと思います。
作りかけのまま失敗作として破棄した仁王像

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