狛犬の撮影




 そもそも、狛犬に興味を持ったのは、写真の題材として面白いと思ったことからだ。まだ20代の頃。一生続けられる趣味として、狛犬の写真を撮るというテーマを決めた。
 だから、最初は狛犬の建立年度や石工の名前なんて、まったく気にしていなかった。被写体としての面白さだけを考えていたのだ。
 狛犬の撮影といっても、別段他の写真と大きく変わることはない。強いて言えば、屋外での「ポートレート」撮影に近い。違うのは、狛犬は生きている人間のモデルのように動いてはくれないから、光線の加減が悪くても、その悪条件下で撮影するしかないということだ。
 いい写真を撮るためには、レフ板やパラソルなどを用いて、積極的に光線をコントロールすることが求められるが、たいていの人はそこまで根性がないだろう。もちろん私も同じだ。
 数百段の石段を登っていっても、お目当ての狛犬がいないということもザラにある。レフ板や大型ストロボなどを担いで、そんな思いはしたくない。

 かといって、レンズの貧弱な小型軽量のカメラで撮影していたのでは、味のある写真は撮れない。趣味というからには、一眼レフを使用するのは当然……となってくる。

大前神社

●大前神社の狛犬(新潟県南魚沼郡大和町)ο建立年度・文久元(1861)年9月。ο石工・栄吉。ο石取人足穴地村同新田関巻中、穴地邑関惣左エ門。ο撮影年月日・97/10/19
●ニコン FG-20 ニッコール85ミリF1.8 1/60秒
 上の写真は、F1.8/85ミリ という明るい単焦点レンズを使って撮影したもの。背景のぼけ具合を得たくて大枚はたいて買ったレンズ。コンパクトカメラではこうした写真は決して撮れない。
 神社の境内は昼でも暗いことが多いから、明るいレンズは必須だ。しかし、明るいレンズはでかいし重い。それを装着する一眼レフカメラ本体も重い。
 ズームレンズは概して暗いから、明るいレンズというと単焦点になる。一時は、F1.4の50ミリと、F1.8の85ミリをつけた一眼レフ2台を持ち歩いていた。
 道具さえあれば、そこそこの写真は撮れるものだ。

 しかし、写真をインターネットで発表するようになると、スキャンが面倒になる。せっかくポジフィルムで撮影しても、スキャンするとそれほど大した画像にならないことも多い。
 デジタルカメラの便利さを覚えてしまうと、どうしても怠け癖がつく。
 画像の加工も、最初からデジタルデータになっていると非常に楽だし、仕上がりがきれいだ。フィルムカメラではまっ暗にしか写らないような暗がりでも、それなりにちゃんと写っている。
 要するに、失敗が少ないのはデジタルカメラのほうだ。フィルムの購入や現像に出す手間、費用も不要。
 当初は一眼レフとコンパクトデジカメの2台を持ち歩いていたが、だんだん、デジカメしか持たないようになってしまった。

 今使っているのは、オリンパスのC-2000というモデルで、レンズ性能はf6.5〜19.5mm (35mmフィルム換算35〜105mm相当)、F2.0〜2.8、6群8枚 1/2インチCCD、210万画素というもの。
 デジカメは画素数競争を繰り広げているが、画素数は200万画素で十分だ。同じサイズのCCDで400万画素のものより、結果的には200万画素くらいのほうがきれいな画像になることが多い。
 ただ、どうにもならないのはレンズの性能。C-2000は、コンパクトなサイズながらF2.0という明るさを誇る優秀なカメラだが、望遠側ではF2.8だから、どうしてもボケ具合が物足りない。
C-2000での画像

 ●オリンパス Camedia C-2000 F2.8 103ミリ相当 1/160秒
 この写真は、祭りの中の狛犬という題材だから、これくらいくっきり背景が写り込んでいたほうがいいのだが、狛犬単体で写した場合は、もう少し背景がぼけてほしい。しかし、C-2000ではこれが目一杯なのだ。

 かといって、一眼レフ用のレンズを使えるデジカメは、安いものでも実売価格が30万円くらいする。一般の道楽ではちょっと手が出せない。
 また、銀塩一眼レフカメラのレンズがそのまま使える高級一眼レフデジカメであっても、ボケ具合はずっと落ちる。なぜなら、フィルムに相当する撮像素子(CCDやCMOS)部分が小さいため、レンズの焦点距離との比率が相対的に違ってしまうからだ。記録部分が小さければ、それだけ被写界深度は深くなり、背景がぼけてくれない。
 35ミリフィルムとほぼ同じ面積の記憶素子を搭載するコンタックス N DIGITALやCanonのEOS 1Dsなどというデジカメもあるが、実売で80万円くらいする。道楽で手が出せる人は極めて少ないだろう。
 私が現在メインに使っているのはSONYのF-707(初代)というデジカメで、性能や使いやすさにはほぼ満足しているものの、唯一満足できないのは「ボケ具合」。F707の撮像素子は2/3インチ型CCDだが、対角長が2/3インチ(約17mm)のCCDかというとさにあらず、実際には11mmしかない。
 一般のデジカメに搭載されている撮像素子(ほとんどはCCD)のサイズは、具体的には以下のようになる。
2/3インチCCD: 8.8mm(W)×6.6mm(H)
1/2インチCCD: 6.4mm(W)×4.8mm(H)
1/3インチCCD: 4.8mm(W)×3.6mm(H)
1/4インチCCD: 3.6mm(W)×2.0mm(H)

 これに対して、デジタル一眼レフは、一般にもう少し大きな撮像素子を持っている。
 EOS 1Ds:36×24mm(35ミリフルサイズ)  EOS Kiss Digital:22.7mm×15.1mm
 NIKON D70 :23.7mm×15.6mm

 F707は8.8mm×6.6mmだから、これらのデジタル一眼レフと比べても背景はぼけてくれない。
なんとかぼかす方法は、目一杯望遠で撮ること。しかし、望遠で撮ってもレンズからの距離が大きければ背景はぼけないわけで、顔のアップなど以外はあまり期待できないということになってしまう。
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