トピックス

        生産調整について(Aug 10、2006)
        北海道の酪農家は現在、生産調整で大変です。3年間の生産調整ということですが、3年たったらいくらでも搾れるというわけではないでしょう。確かにチーズ 製造能力が増強され、生        乳の処理能力はアップしますが、当然、チーズ乳価の割合が増え、乳価は確実に下がります。今までは頭数、乳量を増やすことで収入は 増えて来ましたが、これからは効率化するこ        とでで利益を出していかなければならなくなってきました。その意味で、北海道の酪農家は一つの転機を迎えている といえます。多くの酪農家は今までのやり方をやっていたのでは、近        い将来に訪れる低乳価時代に生きていけません。今から足腰の強い経営体質を築いておく必 要があります。
本質的に見直さなくてはいけないことは、1)売り上げに見合った適切な投資、2)飼料コストの削減、3)繁殖効率の改善、4)育 成コストの削減、5)労働 効率の改善 です。これらを改善することにより利益率は大幅にアップさせることが可能です。とにかく現在の酪農は効率という意味では非常に遅れていること を自覚するべきでしょう。いままでの”どんぶり勘定”をやめて養鶏、養豚並みの経営効率を目指すべきでしょう。これらの農家の数がなぜここまで減って、大 型化したのか考えなくてはいけません。酪農だけが特殊だと思っていてはいけないのではないでしょうか?

CPM Dairy (3.07a)についてJuly 20、2006
CPM Dairyが有償になるとのアナウンスが始まっておりますが、未だ、正式バージョンはリリースされていないようです。現在、下記のホームページ上で今後の 料金体系が記されていましたので紹介しておきます(5/4/06)。
    CPM Dairy ソフト  $550 (メインテナンスフィー1年分$50を含む) ということは毎年$50のメンテナンスフィーを払わなくてはいけない?
       2〜10枚            5%引き
    11〜25枚            10%引き
    26〜50枚            15%引き
また、現在のβバージョンは下記のサイトでまだ、ダウンロードが可能で、このソフトは2006年9月までは有効だそうです。また、それ以降に伸びる可能性 はありますが。
<http://www.cpmdairy.com/cpmbeta3.html>lこアクセスすれば、ダウンロードのサイトにい けます。


酪農経営について(November 30、2005)

最近つくづく思うことは、酪農経営は非常に多くの要因から成り立っている非常に複雑な物だと言うことです。ポイントを押さえてしまえばそんなにたいしたこ とではないのでしょうが、一つ一つの細かいことが全体に影響を及ぼしてきます。単に乳量が多いとか、飼料代が安いといったことだけでなく、疾病発生率、繁 殖成績、育成方法、また、設備投資、機械投資などがもろに経営に影響してきます。教科書的にはいろいろわかっていたつもりでしたが、実際にコンサルタント を始めてから、これらの重要性をひしひしと感じています。逆に言えば、これらのことをそこそこうまくやって行くことができれば、酪農はまだ、非常に儲かる 産業と言うことができると思います。

先日、イスラエルの酪農について話を聞く機会がありました(ファイザー製薬さんに感謝!)。イスラエルの酪農はいろいろな意味で学ぶべきところは多く、今 後、取り入れることができるところは取り入れて行くべきだと思います。以下に印象に残ったことをいくつかあげておきます。

TMRについて
1)すべての農家はTMRを使用
2)それらのTMRは民間の会社であるTMRセンターから購入している
3)TMRセンターは大小さまざまなものが各地にあり、お互い競争している。
4)TMRセンターはありとあらゆる残渣、副産物、余剰物をそのまま利用する(産業廃棄物の処理センター的な役割もになう=処理コストの低減=飼料費の低 減)
5)粗飼料も各センターが作っており(コントラクターの利用)、冬場は小麦のサイレージ、夏場はコーンサイレージかソルガムサイレージを調整している(粗 飼料の輸入は0)。
6)TMRは栄養士が設計したバランスの取れたものであり、品質も管理されている。ちなみにイスラエルの酪農家の年間平均乳量は11000Kgを越えてい る。
7)TMRは1日1回〜2回農家に配送されるが、配送するついでに給仕までしてくる場合もある(酪農家は搾乳に専念)。

各種制度について
イスラエルにも日本の共済制度のようなものがある。
1)政府の補助は一切なく、
2)獣医師の診療はあるがハードヘルスに力を入れた指導的なものが主。
3)獣医師のコストは保険で賄われるが、薬品代は実費で支払う。

補助金
効率化を目指すために規模拡大や施設の改善に政府(?)は50%の補助を出したが、その補助金は乳価を5年にわたって2%ずつ引き下げることによって捻 出。国からの補助は一切ない中で効率化を行っている。

日本の農業は補助金なしに語ることはできませんが、補助金が削られるたびに、もうやっていけないとか、離農するしかないとか言う農家の声を聞きます。生産 性向上の努力もしないで補助金ばかりを当てにする農業では、国民の賛同は得られません。今の状況下でも酪農で大もうけをしている人たちはたくさんいます。 現在、儲けられない酪農家は何かやり方が間違っていることに気がつくべきです。日本の農業が強くなるためには、日本の他産業がすでにやってきたように、外 国と対等に戦える生産性の高い農業を目指すべきだと思います。

CPM Dairy (3.07a)について
(September 1、2005)
<http://mail.vet.upenn.edu/~ejjancze/cpmbeta3.htm>lこアクセスすれば、ダウンロードのサイトにい けます。

飼料
計算ソフトについて(September 20、2004)
今回出席した米国の学会では、NRC2001やCNCPS, CPM Dairyなどのソフトの推定値と実際の現場試験データの比較を発表したものがいくつかありました。その中で言えることは、エネルギーに関しては結構実態 にあっているということです。ソフトで予測した乳量は現実とほぼ同じで(乳量が約40Kgの牛)、特にNRC2001ではかなりの精度でした。

CPM Dairy (3.06)について(8月23日付けで変更)
先日、米国の学会でCPM Dairyを作っているDr.Bill Chalupa(ペンシルバニア大学)に会ったので、CPM Dairyのコマーシャル版はいつになるのか聞いてみました。今のところ   は秋ぐらいに出したいと思っているとのことでしたが、いつもこのような感じで話すときは具体的には決まっていないことが多いので、まだまだ先になるのでは と推測していま       す。ただ、今後はソフトを販売した後もメンテナンスのための年会費を徴収するようなことを言っておりました。日本に帰って来てCPM DairyのHPを 見てみると8月23日付でβバージョン3.06がリリースされていたので、とりあえずお知らせしておきます。CPM Dairyを立ち上げて "Help" から "CPM-Dairy on the Inter Net" をクリックするか、  <http://mail.vet.upenn.edu/~ejjancze/cpmbeta3.htm>lこアクセスすれば、ダウンロードのサイトにい けます。このβバージョンで不具合がなければ、販売にシフトするのでしょうか?

飼料価格の高騰の対処策
(June 13、2004)
 とうもろこしと大豆の高騰により飼料代が高くなってきていますが、お客さんの飼料代をなるべく安く上げるべく、最近ではいろいろな食品副産物に興味を 持っています。現状では オレンジパルプや醤油粕などの一般的なものだけですが、今後はもっと幅を広げて生きたいと考えています。何か面白い飼料原料があれば教えてください。た だ、感じることは分析値と飼料設計できる人間がいれば、どんな飼料で も何とか使用できるということです。
 安い飼料原料を入手するためには1車単位(20t程度)の購入が必要であったり、保管スペースが必要であったりするので誰でも利用できるとは限りませ ん。小口でそのような飼料を利用しようとすると結局高くついてしまいます。よって、安い飼料原料をうまく使用するには規模を拡大するか、仲間と組んで共同 で購入するなどの戦略が必要となります。TMRセンターなどではうまく行くと思います。
 これらの飼料を使用する場合は、タンクからオーガで出てくるような製品は少ないので、使い勝手が悪い飼料が多いといえます。その分労働力をかけても安い のかどうかを吟味する必要があります。また、水分の多い飼料副産物などを使用するときは、乾物あたりの価格を計算してから使用しましょう。思ったより高い 飼料がいっぱいあります。
 安い飼料原料を使って、この時期でも最大限の利益確保を狙ってください。


CPM Dairy (3.04)について(March 20、2004)

CPM Dairyの3.05バージョンへの移行は遅れているようで、今回、従来のベータバージョンの延長手続きができるようにしたプログラムのダウンロードがで きるようになりました。そこのページの一番下には日本用のフィードライブラリの入ったJapan バージョンがありますのでそちらをダウンロードしておく とよいでしょう。ダウンロード先は以下のとおり

http://mail.vet.upenn.edu/~ejjancze/cpmbeta3.html

Download CPM-Dairy Beta Files for Japan

Update to v3.0.5 from v3.0.3 or v3.0.4 or v3.0.4a(29 Jan 2004)
Instructions for Update
CPMUpd305.exe (844 KB)


マイコトキシン について(October 15、2003)

先日、マスコミで配合飼料原料のマイコトキシン(カビ毒)について取り上げられていました。輸入した飼料原料の一部にはマイコトキシンが検出されていると のことでしたが、そのあたりは飼料メーカーが何らかの対策をしていただいていると思うので、あまり心配はしていませんが、北海道をはじめとする粗飼料自給 地帯では、調整した粗飼料のマイコトキシンも気にしなくてはなりません。実際、十勝地方で調整されたコーンサイレージ、グラスサイレージを用いて3種類の マイコトキシン(アフラトキシン、DON、ゼアラレノン)を分析した結果、予想以上に多くの検体でマイコトキシンが検出されています。マイコトキシンに汚 染された飼料を摂取した牛は乾物摂取量の減少、乳量の低下、繁殖障害などを起すといわれており、注意しなくてはいけません。マイコトキシンはそもそもカビ が自身を守るために相手をやっつけようとして放出する毒素であり、カビがあれば必ずマイコトキシンが存在するわけではありません。また、逆にカビがなく なってしまった後でも残っている可能性があります。マイコトキシンのない粗飼料にするためにはカビを生やさないことが大切ですが、それはサイレージに詰め 込んでからだけのことではなく、サイレージに詰め込む前の原料草の段階でも注意しなくてはいけません。刈り取り時期を必要以上に延ばしたり、地面に倒れた 原料草を詰めたりすると、マイコトキシンを含む可能性が高くなります。また、土壌にかびが発生しやすい不耕起栽培などもその危険性が増すといわれていま す。マイコトキシンは1種類だけが存在するわけではなく、発生するときには数種類のマイコトキシンが検出されることが多いようです。マイコトキシンが含ま れているかどうかの分析はマイコトキシンを1つづつ分析しなくてはならないので、粗飼料にどのマイコトキシンが含まれているかを分析することは困難です。


CPM Dairy について(June 17、2003)

先日、CPM Dairyの講習会が北海道、北見や東京で開催されたそうです(私はお金がなくて出席できませんでしたが)。まだ、正式に販売したわけではないようで、今 回のCPM はBetaVersion3.04ということだそうです。かなり長い期間BetaVersionで改良を重ねてきていますが、今回のCPMの大きな特徴 は、NFCの中身が細分化されたり、それに対応する蛋白の分画がの要求量が計算されたり、油脂の脂肪酸組成を考慮して、消化率を計算したりする点です(他 にもいっぱいあると思いますが)。基本的にはかなり細かいところまで掘り下げてバランスをとることができるようになっており、だれでもそこそこの飼料設計 ができるようになっていると思います。ただし、飼料ライブラリーにはかなり細分化された多くの飼料が並んでおり、その中から適切なものを選択するには、飼 料についてのそこそこの知識が要求されるかもしれません。また、新しい飼料を使用するときは、成分表にかなりの項目をインプットしなくてはならず、結構、 大変です。飼料業界の方は現場からいろいろな問い合わせが来てこれから大変かもしれません。

現在、現場ではどの飼料計算ソフトを使用するかが非常に大きな問題となっています。今回はNRCでさえ、結構大きく変わったので、改定されてから数年が経 過した現在でも、まだ、昔のソフトを使用している人が圧倒的に多い状況ではないでしょうか?何でもかんでも新しいものがよいとは限りませんが、科学技術に ついては常に新しいことを取り入れていかないと、時代遅れになってしまいます。

NRC2001やCPMDairyについてその概要を学習したいがそのきっかけがなかなかつかめないという方、何人か集まれば私がそのあたりをわかりやす く説明に行きます。3-4時間あれば主だったところは説明できると思います。交通費と講習料はいただきますが、そんなに高くはないので一度連絡してくださ い。


配合飼料の成分値の公開について(April10、2003)

飼料計算をしている人なら誰でも思うことだと思いますが、配合飼料の配合割合はどうして秘密になるのでしょう。何がどれくらい入っているかを給与する人間 が知らないということは非常におかしいことだと思います。BSEの問題でも、何が入っているかわからない飼料を給与したところに大きな問題があったのでは ないでしょうか?給与した牛がおかしくなった時、誰が責任を負うのでしょうか?農家は自分の牛に何を給与しているかを責任を持って把握するべきだし、飼料 を販売する側も何がどれぐらい入っているかを教える義務があると思うのですが。

また、最近ではNRC2001,CNCPS, CPM Dairyとその飼料成分の項目が多岐にわたり、飼料メーカーもそれに対応したデータを提供できな い場合が出てきています。さらに、配合飼料として一つの原料の数字を用いた場合、各飼料原料の発酵スピード、通過速度が一つの数字として表さなくてはいけ なくなるので、各飼料を同じ比率で混合して計算した時との間に誤差が生じてきます。特に蛋白ではその誤差が大きくなります。まあ、そこまで厳密にする必要 はないと言われればそこまでですが。

飼料メーカーの方には最低でも配合飼料のNRC2001用の成分項目、CPM Dairy用の成分項目は準備しておいていただきたく思います。



Dairy-L と 120日間試用出来るCPM Dairyβバージョンのダウンロードサイトの情報(March 5、2003)


Dairy -L

酪農情報にもいろいろなものがありますが、今回はDairy-Lをご紹介します。Dairy-Lは米国のメリーランド大学のエクステンションが中心になっ ている酪農関連の質疑応答を中心としたフォーラムで、メールマガジンのようなものです。誰でも登録すれば毎日いろいろんな話題が送られてきます。配信され る専門分野も選択することができます。もちろんメールを出すことで質問したり、質問に答えたりすることもできます。残念ながら英語とスペイン語だけです が、世界各国からいろいろな質問が寄せられ、なかなかおもしろいです。答えも全米の大学の先生や一般企業の専門家から回答が寄せられ、多くの研究者が見て いることがわかります。質もなかなか高いといえます。今回からこのDairy InformationでもDairy-Lの話題の中で面白い話題をピックアップしてその概要をお知らせするコーナーも作りましたので見てみてください。 興味のある方は以下のURLにアクセスして登録してみてください。念のため、そのURLの購読申し込みのページを下にコピーしておきます。

(http://www.wam.umd.edu/~markv/Dairy-L.html).
++++++++++++++++++++++++++++++++
Instructions for joining Dairy-L
++++++++++++++++++++++++++++++++

1) Send an Internet electronic mail message to the following
address:

listserv@listserv.umd.edu

2) Modify the following line and put it in the body of the
message and NOT the subject:

SUB Dairy-L Firstname Lastname

For example, if your name is Jane Doe, then you would send a
message that had the following line in the body of the message:

SUB Dairy-L Jane Doe

The listserv software will send you an acknowledgement of you
subscription to Dairy-L and provide you with some key
instructions for its use.

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
Instructions for sending a message to Dairy-L
+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

After you have subscribed to Dairy-L you may wish to send a
message or request for information to the other Dairy-L members.
To do that, you send a message to:

dairy-l@listserv.umd.edu

Put in an appropriate subject in that section of your message and
then type your message or question in the body of the text.

Please note that you do not see a copy of your own Dairy-L
message, though the other members each get a copy. You do,
however, get an acknowledgement from the listserv software that
your message has been distributed.

+++++++++++++++++++++++++
Dairy-L Moderators
+++++++++++++++++++++++++

Warren Gilson
Univ. of Georgia
wgilson@arches.uga.edu

Teresa VanWagner
VanWagner Holsteins, FL
vwdairy@atlantic.net

Mark Varner
Univ. of Maryland
varner@umd5.umd.edu
      CPM Dairy βバージョンのダウンロード
 CPM Dairyの最新のβバージョンが無償でダウンロードできるサイトをご紹介します。米国のBioproductsという会社の技術のHP、Dairy 1to 1 で、名前とパスワードを入れて登録するとダウンロードができます。ダウンロードしたらインストールは簡単にできます。このβバージョンは120日間使用で きます。
バイオプロダクツ社は重曹(バッファーライト)、脂肪酸カルシウム(エナジーII)、メチオニンアナログ(アリメット)を販売し ている会社で、CPM Dairyの開発に協力しています。また、この会社は三井物産の関連会社でもあります。

Dairy 1 to 1 のホームページはこちらをクリックしてください。
http://www.dairy1to1.com/auth.asp?action=nav&category=tech&subcat=warez
       
NRC2001のソフト(December 25、2002)
NRC2001 がでてから2年が経とうとしていますが、現場での状況はいかがなものでしょう。飼料計算ではもう、NRC2001に対応した形で行われているのでしょう か?今回の改定は結構大きなものだったので、慣れるのには少々大変かと思いますが、中身を見る限り、なかなかリーズナブルな感じです。実際使用してみた方 のご意見を伺いたく思います。私自身、これを現場で使用したいと思っているのですが、このままだと英語だし、データのアウトプットが見づらく未だ現場で使 用するに至っておりません。まずは、農家の皆さんがわかりやすいようにアウトプットされデータが日本語でかかれ、自分の必要な項目が1枚にまとまった形に なればもっと使いやすくなり、普及すると思うのですがいかがでしょうか?ということで私は現在、NRC2001をベースに日本語であり、かつアウトプット を自分で好きなように変更できるタイプのソフトを作成中です。私自身、コンピューターの知識が余りないのでエクセルの原始的な方法のみを用いて作成してい るので、無駄が多く、扱いづらいと思いますが、逆にいえばエクセルの基本を知っている人なら誰でも自分の好きなように変更できるということでもあります。 昔、NRC1989をベースに飼料計算ソフトを作成し、多くの皆様に使用していただきましたが、今回も基本的にはそれとまったく同じようなフォーマットに なる予定です。もし、このソフト(?)に興味のある方はご一報ください。
食品のブランド(March 15、2002)
雪印食品の事件後、いろいろな食品企業の不正表示が明らかになってきました。これらの企業がやったことは消費者を欺くものであるとともに、生産者をも欺く ものであることを忘れてはいけません。生産者はそれなりの努力をして付加価値をつけてブランド製品を作っているわけで、流通業者がそのラベルを真似するだ けでブランド品として流通させたら、ブランド品は評価を落とし、生産者は大きな打撃を受けます。 よって、ブランドを維持するためには第3者機関または政 府機関なりがそれなりの検査を定期的に行い、不正表示を行った企業に対しては社名を一般に公表するとともに、重い罰金を課すなどの制度が絶対必要と思われ ます。残念ながらもうモラルに頼っていられない時代になってしまったようです。

また、食品のブランドと言うものに対しては消費者もそれなりに吟味しなくてはいけなくなってきたとも いえます。自分はブランドに何を期待するのか?無農薬だから、有機栽培だから、
味がいいから などなど。これらをどうやってチェックすればよいのか消費者も考えなくてはいけません。ある 程度目が肥えてくれば見分けられるものもあるでしょうが、多くは実際の品物を見ただけではわかりません。そうなるとやはり信頼できる生産者、流通業者を選 択するしかないわけです。消費者は製品を見る眼を持つとともに、信頼できる業者を選択する目をもたなくてはならず、そのためにはいろいろな情報を入手しな くてはなりません。 生産者、流通業者も消費者に対し情報公開を積極的に行い、消費者の信頼を得なければいけません。このようにおたがいが努力して付き 合っていくことが必要ではないでしょうか? よりよい関係は適度の緊張感を持ってはじめて築ける物かもしれません。
 

日本における大学再編(January 20, 2002)
現在、日本の国公立の大学では統合再編問題が持ち上がっています。学生数が減少し、国からの研究費が削減される中でどのようにして生き残っていくか、それ ぞれの大学で検討しているようです。確かに今の日本の大学の畜産系の学部に限って言えば、数こそ多いものの、現場で役立つ研究が多いとは言えず、非常に中 途半端な存在であるようにも思えます。今回の再編問題で各大学の存在意義が問われた時に、地域に貢献できるもしくは企業に貢献できる何かを持っていない と、研究費は出ないでしょうし、地域住民の支持も得られないでしょう。こういう動きは私個人としては歓迎すべきことだと思います。米国の州立大学のように 大学は研究によって地域社会、企業に貢献し、それらの研究費は地域の自治体、企業から持ってくる体制を作るべきです。そうすれば大学は地域に密着した研究 を主に行うことになり、地域の産業が発展します。日本の畜産では新しい技術が生産性の向上に結びつくものなのかどうかを確認し、普及を行う機関がないた め、その技術の真偽が確認されることもなく、普及が行われていることも多くあります。よって大学がこれらの最新技術を見極め、その発信基地となって普及し ていく体制が取れればよいと思います。このこと可能にするためには、大学側が地域の畜産関係者ともっと密接に連携を取る必要があり、そのための機会を積極 的に作っていく必要もあると思います。今後、大学が地域に密接な形でつながって行くことを期待しています。

バイオテロリズム(December 20, 2001)
9月11日以降、テロに対する意識が高まっていますが、テロはワールドトレードセンターアタックのようなテロだけとは限らず、米国東海岸で発生している炭 疽菌のようなバイオテロも認識しておく必要があります。特に、日本ではこの手のテロは他人事と考える傾向が強いので要注意です。狂牛病の時も他人事で済ま していたからこのような大きな問題に発展しているわけで、日本がテロの標的になることももう少しまじめに考えないといけません。以前にオーム真理教がボツ リヌス菌をバイオテロの方法として研究、実験していたことは良く知られていますが、これらが北海道の農家で実際に試験されていたという未確認情報がありま す。その当時、まさかそういうことを故意に行う人間がいるとは誰も思っていなかったので、このような珍しい病気が出ても、それを見た農家、獣医師、その他 の畜産関係者はたまたま条件が重なっただけとしか思わなかったのでしょう。運良く、それはそれで失敗に終わったようで大事には至りませんでしたが、もしそ れが実際にうまく行っていたとしたら、その時点で芽を摘み取ることができなかったことを後悔していたでしょう。米国の炭疽菌にしても、あれがもし日本であ れば多分見逃されていて、被害はもっと大きくなっていたかもしれません。米国のUSDAは米国内の畜産関係者に対し小さなことでも何かおかしいことがあれ ばすぐに報告するように通達を出しています。具体的には 1)突然、原因不明で家畜が死んだ 2)飼っている家畜の多くが何らかの病気に感染した 3)口 蹄疫の症状(口、舌、足に水泡ができる)、4)珍しいタイプのダニやうじの発生 5)中枢神経麻痺による起立不能(狂牛病の症状)などをあげています。畜 産関係者は常にこのことを頭に入れて、何か発見したとにはすばやく関係機関に連絡し、その対応を取っていただきたいと思います。決して、それを隠蔽するた めの対策でないことを祈りますが。

2頭目の狂牛病(November 25, 2001)
日本では2頭目の狂牛病が発見されたとのこと。1頭目と同じ北海道のオホーツク海沿岸の酪農家で、原因はヨーロッパから輸入した汚染された肉骨粉の入った 配合飼料(代用乳???*)の可能性があるとか? このような場合はいったい誰に責任があるのでしょうか?飼料をやった酪農家?飼料を売った飼料会社?汚染した肉骨粉(血漿蛋白???)を輸入した業者?そ れを見逃した検疫、農水省?厚生省?

日本の場合、このような問題で責任の所在を明らかにするのは困難です。みんな自分の責任ではないと考えていますし、後になってあれは仕方なかったと 言い逃れをします。同じ組織でも、担当者、課長、部長、社長それぞれある中で、責任を取らされるのは決して社長や部長でなく、課長や担当者となります。ト カゲのしっぽきり、スケープゴートなどといわれますが、これでいいのでしょうか? 組織は普通、下のものに対して見えない圧力をかけており、下はそれに逆らえず、もしくは疑問を持たずやってしまいます。これはやはり組織のトップの問題で しょう。知らなかったというのは管理不行き届きですから、当然責任があるわけです。

ヨーロッパで狂牛病が問題になったときに、その重大性を認識できず、それを伝えるとパニックを起こすと馬鹿なこと考えて、何も対策を打たなかった農 水省、厚生省。 中身が何かチェックしないでその配合飼料を言われるままにやっている酪農家。これで食品製造者としての責任を果たしていると言えるでしょうか? 販売している製品の中身に対してはすべての情報を消費者に公開し、その安全性を補償する義務があるはずの配合飼料メーカー。たとえ、わかっていないことで も、常に最新情報を入手するよう努力し、危険性があるという情報を入手した際にはいち早く手を打てる体制を作っていたのでしょうか?

農水省、厚生省はまず、何が今一番大事なことなのかを認識できる能力が必要です。なぜか日本のお役所や企業は何か問題が起ったとき、まずそれを隠そ うとします。何もなかった様にもみ消そうと努力します。それが、隠し切れないとわかって初めて、最低限のことをだけを説明します。それでもだめなら、もう 少し情報公開します。・・・・・根本的な問題解決の対策を練る前に、こんなことを一所懸命やっているからすべてが後手後手にまわってしまうのです。このよ うな態度が直らない限り、今後もいろいろな問題が発生するでしょう。とにかく、日本人は物事の本質をすばやく見抜き、それに対する適切な対応をとるいう訓 練を常日頃から行わなくてはいけません。飼料メーカもそれなりの情報公開はしなくてはいけないし、情報収集をしなくてはいけません。そして何かあったとき には隠すのではなく、すべての情報を公開し最善の対策を取るようにしなくてはいけません。酪農家も中身が何かは最低限知っておき、分からないものに関して は納得するまで聞く姿勢が必要です。それぞれの立場の人々がこのようなことをきっちりやっていれば、少なくとも被害は最小限に食い止められるのではないで しょうか?今一度その辺をじっくり考えてみる必要があると思います。

*注
一部の新聞の報道では代用乳が感染源とも言われていました。これには何らかの科学的根拠があるのでしょうか? マスコミももう少し勉強して、正確に事実だけを伝えていただきたいものです。この報道により、多くの国民が誤った知識を身につけてしまうことになれば、こ れはマスコミの責任です。
 
 

全米乳質優秀牧場表彰(October 15, 2001)
今回のDairy Todayに全米からノミネートされた乳質優秀牧場の紹介がありました。下記にその牧場の成績を示しました。皆さんの成績と比較してみてください。
 
2001 National Dairy Quality Awards Sponsored by the National Mastitis Council, Westfaloa-Surge and Dairy Expo in cooperation with Dairy Today
地域 Midwest Midwest Northeast Northeast Northeast Southeast Southeast Western Western
住所 マクベイン,
ミシガン州
サムナー
アイオワ州
サットン
マサチューセッツ州
ブルームフィールド、ニューヨーク州 フェアフィールド、
バーモント州
ウッドローン
バージニア州
アメリア
バージニア
オースチン
コロラド州
アルバカーキ
ニューメキシコ州
乳牛頭数 143 45 120 85 515 30 140 305 1059
平均乳量(Kg) 11603 10918 10807 11520 12020 10830 10062 14062 10699
搾乳回数 2x 2x 2x
2x 2x 2x 3x
年平均SSC 49000 72000 85000 80000 138000 116000 159000 137000 188000
乳房炎発生頭数 17 10 12 118 51 120

狂牛病について(October 1, 2001)
日本で狂牛病が発見されましたが、狂牛病についていろいろなうわさが飛び交い、いろいろなところに影響が出ているようですね。この機会に狂牛病について正 しい知識を身につけて、変なうわさに惑わされないよう、また、消費者に対し、正しい知識を提供してあげる姿勢が必要と思います。 狂牛病に対する情報を米 国のInternetサイトからひいてまとめてみましたので参考にしてください。

狂牛病は Mad Cow Disease,または BSE(Bovine spongiform encephalopathy)と呼ばれ、1986年にUKで初めて発見されました。同様の病気は羊(スクレピー)、ミンク、人間(クロウツフェルトーヤ コブ病 Creutzfeldt-Jakob Disease:CJD)で報告されています。BSEはこの病気に感染した羊、やぎまたは牛の肉骨粉を食べて感染したと考えられていますが、現在のところ 大量にBSEが発生しているのはUKだけであり、これは1988年に反芻動物の肉骨粉の反芻動物への使用が禁止になるまで、感染牛の肉骨粉が繰り返し使用 されたためと考えられます。現在のところ、母牛から子牛に垂直感染することはまれで(種によって異なる)、また、ヨーロッパ各国でのBSEの発生は少ない ので、これらはUKからのBSEに汚染された肉骨粉の使用によって感染した可能性が高いと考えられています。肉骨粉は古くから反芻動物の飼料として使用さ れてきましたが、それがなぜ1988年の大量発生につながったのかについては明らかではありませんが、一説によると1970年代から1980年代にかけて レンダリングプラントの処理方法が油と蛋白の歩留まりをよくするために加熱処理から溶媒抽出法に変換したことが原因とも言われています。 また、もう1つ の理由はUKでは牛に対する羊の割合が多く、必然的に羊のスクレピーの汚染を受け易い環境にあったことも揚げられています。

BSEを引き起こすプリオンは蛋白質の一種で、脳、脊髄、網膜、神経系に存在し、血液、乳汁、肉には存在せず、これらの摂食によっては感染しないこ とが報告されています。よって、動物用飼料として使用される肉骨粉には、脳や脊髄は除かれています。BSEは実験的にはねずみ、猫、霊長類に感染すること が確認されています。 摂食による感染は品種によって大きく異なり、マウスの試験ではBSE摂食による感染は細胞内に注入して感染させる10-20万倍の 量を必要とするのに対し、牛においては感染に要する量は少なく、感染牛の脳0.5-1.0gを摂食しただけで感染します。摂食したプリオンが消化管からど ういう経路で神経系に到達するのかは明らかではありませんが、リンパ系から脾臓由来の白血球によって運ばれるのではないかと推測されています。しかし、 BSE感染牛のリンパ節による感染は報告されていません。 神経系から脳に到達したプリオンは脳細胞を変性させ、スポンジ状にしていきますが、この病気が 感染してから発病するまでの潜伏期間が非常に長いことから、その進行は非常に遅いものと考えられています。
 
 
部位別のBSE感染の危険性
危険度ランク 部位
もっとも感染し易い 脳、脊髄、眼球
中程度に感染し易い リンパ節、脾臓、扁桃腺、大腸、下垂体、副腎、胎盤、松果体
感染しにくい 末梢神経、肺、すい臓、骨髄、甲状腺、鼻汁
感染しない 牛乳、初乳、血液(血清、血漿も)、腎臓、甲状腺、唾液腺、卵巣、子宮、睾丸、副睾丸、胎児組織、被毛、皮膚、骨、結合組織、胆汁、 唾液、尿、糞
また、人間のCJDとBSEの関連についてはまだ、まだ、明らかになっていませんが、その可能性は高いと考えられます。しかし、必要以上に消費者の恐怖心 をあおることは避けなくてはなりません。 食品製造に携わる人は上記の事実を認識し、可食部分がBSEに感染し易い部位に汚染されないように気をつけると ともに、消費者には何が安全で、何が危険か正しく理解してもらうことが必要です。

ここで、畜産関係者向けにBSEの対策をまとめておきます。日本政府、農水省の指示は安全性をみて、かなりきびしい規制になっています。 しかし、 今後はそれでいいですが、過去に給与した農家に不必要な混乱をさせないために、科学的な根拠をもとにしたガイドラインを記しておきます。 決して、政府の 規制を無視せよといっているのではないので誤解のないように。 また、BSEは潜伏期間が長いため、症状があらわれていなくて食品にまわされるものもない とはいえません。その際も上記の感染し易い部位を避けることで無用な心配をせずに済みます。

牛用飼料について: 
血粉および反芻動物以外(鶏、豚)由来の肉骨粉は基本的には安全である。 これが確認されていれば過去に給与したことがあっても心配は要らない。 しかし ながら、これらの製造場所がきっちりとした管理が行われているか(汚染の可能性のある品種と区別されているか、危険のある部位がきっちりと処分されている かなど)確認しておく必要がある。 もちろんBSEに感染していない牛はどの部分も飼料用として使用しても問題はない。 よって、米国産のものはOKと考 えられるが、だれもその保証ができないので避けることが懸命である。

食品として: 
乳製品、肉、ゼラチンでは例えBSE感染牛のものであっても、感染することはない。 ただし、肉に上記の感染し易い部位の汚染がないことが条件となる。  のこぎりで脊髄を切断した場合、その感染組織が肉に付着することなどは考えられるので、食肉加工場でのこのようなことを避ける教育が必要。
 

今はやりの”CLA”を知ってますか?(September 8, 2001)
今回のADSA/ASAS Joint MeetingではCLAに関する発表が結構一杯ありました。飼養管理技術としてはあまり関係ないのでAbstractの紹介はしていませんが、今後、日 本でも話題になるかと思いますので、どういうものか御話しておきます。まず、CLAとは Conjugated Linoleic Acidを略したもので、2重結合を有するリノレイン酸(炭素数18、1つの結合をはさんだ2重結合を2つ持つ)のことです。普通の食品にもいくらか含ま れているものですが、これがなぜ脚光を浴びているのかと言うと、このCLAが様々なタイプの癌や腫瘍を減らしたり、糖尿病を減らす可能性があるからです。 食品の中でも特に乳製品、牛肉に多いことがわかっています(乳脂肪中0.4-1.3%、牛肉の脂肪中0.4-0.5%)。そこで、このCLAの働きを明ら かにする研究と、乳製品中のCLA含量を増加させるにはどのような飼料を給与するとよいかなどの研究がここ数年多くなってきているわけです。

乳脂肪中のCLAを増やすためには、CLAまたはリノレイン酸を多く含む飼料、油脂を給与するとよい といわれています。魚油とサフラワー油の組み合わせ、カノーラ油、亜麻仁油が良いとの報告もあります。ただ、油脂を給与した場合、とくにCLAを多く含む 場合は肝心の乳脂肪率が極端に低下することがわかっているので、脂肪酸カルシウムの形での給与が望ましいとされています。また、乳脂肪や牛肉の場合、放牧 などで青草を多く食べさせるほど高くなることが報告されています。
このようなことから、今までカロリーやコレステロールの面で敬遠されていたバターや牛肉の脂などが逆に見直 され、癌を防ぐためにはある程度なら摂取したほうが良いというふうになってくると思われます。また、それにともなって、ヨード卵ではありませんがCLA牛 乳というものがはやるかもしれません。現在、放牧をしている酪農家の皆さん!ここで一つ、CLA牛乳と言うブランドを作って売り出してみればいかがでしょ う?
 

日持ちする食品(July 25,2001)
日本に行った時に、最近は日持ちのする製品が受けているとの話を聞きました。単に防腐剤などの添加物を使うのではなくて、無菌状態にしてパッキングして保 存日数を増やすのだそうです。パッケージや充填の技術が進歩して可能になったようですが、やっぱり日持ちする製品は便利です。特に単身赴任の私には週一回 の買い物で、生鮮食料品がいつでも食べられるのはいいです。おまけに添加剤の影響を心配しなくていいですから。ただ、このような製品に使用する原材料はや はりそれなりの品質のものが要求されるでしょうし、特に牛乳は体細胞数が少なくて、品質のよいものに限られるでしょう。前にこちらの酪農雑誌に出ていまし たが、体細胞数が多い牛乳は低いものに比べて日持ちがしないとか。細菌は加熱処理で死滅させられるでしょうが、もともと少ないのがいいのに決まっていま す。高温殺菌、無菌充填の牛乳もいいですが、それより低温殺菌で十分日持ちのする牛乳の方がさらにいいですよね。牛乳を売り込むための差別化が必要と言わ れていますが、単に”何々牧場の牛乳"とイメージで販売するだけでなく、こうした品質面で差別化していくことも必要では。
 

バイオセキュリティについて(June 1、2001)
ヨーロッパの口蹄疫の発生で米国でも酪農場でのバイオセキュリティーの関心が高まってきています。ヨーロッパの農場に行った人は空港で靴や衣服の殺菌を 行ったり、海外からの農場視察の受け入れを断ったり、出入り業者に農場への立ち入り場所を制限したりとなかなか厳しくなってきたようです。各地での農業 ショーなども取りやめたところがいくらかあるようです。毎年10月にウィスコンシン州、マジソンで開催されるワールドデーリーエキスポも開催するかどうか 危ぶまれましたが、今のところは通常どおり開催の予定のようです。

日本は今年になってからの口蹄疫の発生が報告さ れていないので、日本からの訪問は特に問題はないのでしょうが、それでも海外の酪農関係者が自分の農場を見学すると言うと農家はあまりいい気はしないよう です。 海外で農場に滞在した者は少なくとも5日以上の自主検疫期間を置いてから訪問すべしとの指導や、コンサルタントあたりも海外からの農家視察はでき るだけ避けるようにとアドバイスしているところもあるようなので、これから、海外の農場を視察しようと思っている人はその辺のところをよく理解して、プラ スチックブーツを靴の上からつけたり、靴を殺菌したり、衣服を取り替えたりして、先方に変な気を使わせないような配慮が必要と考えます。
 

CPM Dairy Ver. 2.0について(May 9、2001)
Tri-State Nutrition Conferenceに先立って行われたバイオプロダクツ社主催のプレコンファレンスでDr Bill ChalupaがCM Dairy Ver.2.0についての現在の進行状況について説明しました。CNCPS Ver.4.0への改定、NRC2001の改定にともない、全く新しい操作画面で、内容も一新して、現在ベータバージョンで不具合をチェックしている最中 だそうです。見た感じではなかなか痒いところに手の届く感じで,従来のものより一段と使いやすくなっているようです。スパルタンで使い勝手の良かった、 ミックス機能(ミックス,アンミックスができる)、CPM Ver.1.0 のオプティマイゼーション、その他。今のところ発売開始は来年初めと言うことですが、価格についてはまだ、何も相談していないとのことでした。CNCPS Ver.4.0, NRC2001, CPM Ver.2.0 あなたはどれを使用しますか?

 
将来の畜産公害についての規制について(March 22、2001)
先日、アリゾナで行われた Southwest Nutrition Conferenceに出席しましたが、その中で畜産公害に関する規制についての話が出ていました。従来、畜産公害は糞尿の匂いや糞尿の水質汚染がおもな 対象でしたが、最近では糞尿として排泄される窒素、リンによる水質ふ栄養化、空中に飛散するアンモニアまでもが問題になって来ています。米国ではEPA (Environmental Protection Agency)が新しい規制方針を打ち出しており、それによるとまず、現在様々な規制の対象となる大規模酪農(CAFO: Confined Animal Feeding Operation)の基準となる牛の頭数が引き下げられ(200頭)、CAFOとしての対象になる農家数が10倍以上に増加することに なりました(2500から39000)。また、このサイズの農家は営むために許可が必要となり、公害の発生源にならないことを証明しなくてはなりません。 農場に持ち込まれる栄養素(通常、飼料、肥料で問題にされるのは窒素とリン)、農場から運び出される栄養素(植物の生育、生産物)そして、農場に蓄積され る栄養素が専門家によって計算され、ある程度バランスさせることが要求されます。また、農場に蓄積されるリンや窒素の総排泄量が規制され、それらを散布処 理するために、より多くの土地(リンで計算すると2倍の土地)が必要になる可能性があります。 また、さらに進んで圃場での糞尿散布や牛舎内でのアンモニ アの空中飛散も将来問題になる可能性があります。EPAの話ではアンモニアが空中の硫黄分と結合して空中に滞留し、大気汚染や霧の原因になるとの考えが示 されており、そうなると圃場での糞尿散布は地中に注入しないとだめとか、牛舎内での糞尿処理もすべて密閉して行わないといけないことになるかもしれませ ん。最近、脚光を浴びてきた糞尿のメタン発酵装置は、こういう意味でも理想的な形といえるのかもしれません。
 
NRC2001について(February 1、2001)
先日、NRC2001のサテライトセミナー に参加しました。今回の改定は1987年以来のもので、内容については大幅に変わりました。詳しくは最新情報のところで述べていますので見てください。ポ イントは飼料のルーメン内での消化率、通過スピードによって、そのエネルギー価、バイパス蛋白率が変化することで、一つの飼料のエネルギー価、バイパス蛋 白率は個々の牛によって異なることになりました。 また、ミネラル、脂肪、動物性蛋白の吸収利用性についても個々の飼料原料によって吸収利用効率が異なる ため、それぞれの係数を乗じることにしています。 これらの変更は理論的に言って非常に納得できるもので、従来のものより精度は高まったと言えると思いま す。 ただ、それを推定するために必要なデータも増加しており、インプットする項目の意味が良くわかっていなかったり、いいかげんな数字を入れた場合、ま ちがった結果が出てくる可能性も大きくなります。 飼料分析においても、すべての値を分析しようとすると今までの項目にあと7種類の項目(ADFIP, NDFIP,リグニン、灰分、たんぱくのA,B,C分画の分析、NDFの消化率、蛋白質の消化率)を加える必要があります。 しかし、これらの分析はま だ、どこでも行われているわけではなく分析センターがその方法を確立していかなくてはなりません。 また、これらの値を計算するためには非常に多くの複雑 な計算が必要となり、コンピュータのプログラムも非常に大きなものになっています。飼料計算のソフトなどもこれからどんどんこれに合わせたものが出てくる と思います。NRC2001は酪農家、コンサルタントに栄養学的に大きな意識改革を迫るものですが、業者にとってはこれが一つのビジネスチャンスになるか も知れません。
ある面ではCNCPSに近づいたともいえる NRC2001ですが、CNCPSの始めのバージョンが出た時に、その概念が複雑すぎて理解できなかった、操作性が悪く使えなかった、もしくはその正当性 が疑わしいとして以前のNRCを使いつづけていた人たちがこのNRC2001をどのように受け止めるのか非常に興味があります。 米国の酪農が乳価の低迷 で苦しんでいる時期にリリースされたこのNRC2001がどのような形で普及していくのかじっくり見ていきたいと考えています。 
 
21世紀の酪農はどうなるか(January 15, 2001)
21世紀が始まりました。 今世紀はどのよ うな100年になるのでしょうか? 今後の100年は今までの100年に比べて科学技術は加速度的に進み、予想することさえ困難です。 そんな中で酪農は どのようになっていくのでしょう。 農業については技術の進歩とともに、逆に自然に帰ろうという意見も強くなってくると言う面はあります。ただ、今までの 場合はそれが科学的な根拠がない一部の人が求めるイメージ的なものであったのに対し、今後はより多くの人がそういうことに関心を持ち、大きな流れになって いこうとしています。 今後は自然、環境にやさしいと言うことが非常に重要なことになってくることが明らかで、リサイクル、共生と言うことがさらに多く実 践されて来るでしょう。 そうした場合、畜産という産業は別の意味で重要になってきます。現在、廃棄している食品の副産物を利用したり、糞尿を肥料として 利用するのはもちろん、メタン発酵などからエネルギーを取り出すことも現実に可能になっています。 一方で科学技術の進歩は、今まで夢であったことを次々 と現実のものとし、たとえば牛乳は試験管内で培養された乳腺細胞に化学合成した原料を流し込み製造するなんてことも可能になるかもしれません。 こうなっ てくると、将来の農業はそれを消費する人がどのような価値観を持っているかによってそのあり方が決まってくるのかもしれません。 自然を大事に考え、自然 であることに価値観を求める人が増えれば、前者の有機農法的な農業が広く受け入れられるでしょうし、効率優先で自然というものに興味を示さない人が増える と、すべて工場で製造された味気ない合成品が受けるのかもしれません。 このように考えると将来の消費者である子供たちをどのような価値観を持った人間に 育てていくかと言うことが非常に重要な問題になってくると思います。 話が少々飛躍しすぎたようですが、皆さんはどう考えますか? 
BSE(狂牛病)と肉骨粉の使用 (December 15、2000)
最近、また、ヨーロッパの方で狂牛病が話題 になっています。 この病気に感染した牛は、脳がスポンジ状になり、萎縮し、狂ったようになるので、狂牛病とも言われていますが、その感染源として肉骨粉 があげられており、ヨーロッパ諸国では肉骨粉の飼料としての使用をしばらく禁止する方向で動いています。そもそも、狂牛病は羊のスクレピーという病気に似 ており、このスクレピーにかかった羊の混ざった肉骨粉を飼料として摂取した牛が感染したのが始まりで、レンダリングプラントの知識不足がこの病気の感染を 広げたといえます。 ヨーロッパでの肉骨粉の飼料への使用禁止の動きを受けて、植物性蛋白への変更が進んでおり、大豆価格の高騰につながっています。 禁 止されるのが動物性蛋白と書かれる場合もあるので、誤解する方も多いとは思いますが、今のところ肉骨粉だけが対象で、血粉などは含まれていません。血粉か らの感染は報告されておらず、科学的にも血粉は安全ということになっているようです。 日本では肉骨粉はあまりポピュラーな飼料原料ではないかもしれませ んが、他の蛋白価格の高騰につながっているので、他人事ではないと思います。また、為替も予想に反し、現在円安、ドル高で進んでいるので、飼料の輸入コス トはその分でもじわじわ上がってきます。ただ、高泌乳農家では飼料中の蛋白が多めに給与される風潮があったので、蛋白源が高くなればそれだけ、蛋白の使用 量を減らし、利用効率を高めようとするので、かえってよい結果につながるかもしれません。 安い飼料原料をうまく使って、効率の良い乳生産を行なってもら いたいと思います。 12/20/00現在のニュースによると、ヨーロッパ諸国は半年間ほど動物性蛋白の牛 への給与を禁止する処置に出るとしています。これには血粉、その他の動物性蛋白源はほとんどすべて含まれています(魚粉も?)。 ただし、これらは騒ぎが 収まるまでの一時的な処置と考えられ、科学的な根拠は説明されていません。
NRC 2001 とCNCPS Ver.4.0 (October 27、2000)
コーネルニュートリッションコンファレンス でNRC2000についての話が出ていました。前回のバージョンが出てからかなりたちますが、今回のミレニアムバージョンはそれなりに新しい知見が取り入 れられ、精度がアップしているようです。ただ、研究者によってNRCの飼料標準の考え方が違い、すべて新しい知見を取り入れていこうとする人、追試をして 確認してからでも遅くないという人がおり、今回も乳牛のアミノ酸の要求量などまだ研究データが不足している分野については敢えて示されなかったようです。 今回のバージョンでは飼料計算(評価)プログラム機能も含まれているようです。NRC2000の講習会はこれから各地で始まりますが、11/1-2、カン ザスシティーで行なわれるのが一番初めの業界関係者向けのセミナーとなり、来年1/15-16にはアイオワ州立大学でも行なわれます。セミナーでは NRC2000の変更点の解説と、CDROMの使用方法について実技指導が入るそうです。残念ながら私はこの情報を入手するのが遅れたため、11月のセミ ナーには参加できそうもありませんが、来年の分には参加したいと考えています。日本でも近いうちにセミナーか何かあるかもしれませんね?
CNCPSに関しては今年の6月にVer. 4.0が出されています。私はまだ使っていませんが、今回のものはWindows98上で動き、画面がかなり見やすくなっています。使ったことのある人の 話ではなかなか使いがっても良いそうです。その他、内容の大きな変更点はNRC2000に従って変更するべきところは変更している点、ルーメン内での窒素 不足や、側鎖アミノ酸の足りない場合のエネルギー、蛋白の供給量が推測できるようになった点、CPM Dairyのようにアミノ酸の割合が示されるように なった点、糞尿の排泄量などの計算式が組み込まれ、施肥と作物の管理に役立つようにリンク付けされた点、リニアモデルで最小コストの飼料計算ができるよう になった点などなどで、精度はかなり上がったようです。ただ、全農からマイナー研究所に来ている薮内氏の話では日本語版のWindowsでは動かないと言 う話で、今のところ英語版のWindowsを使用しなければならないようです。これに関しては早急に改善が望まれます。このソフトの入手に関しては次の ホームページを参照してください。<http://128.253.135.170>  このサイトからダウンロードもできるそうですが、かなり大きいプログラム(8MB以上)なので遅いモデムでダウンロードすると時間がかかるそうで、 CDROMを注文する方が無難だそうです。私が実際にやった場合、56kbpsのモデムで30分ぐらいでダウンロードできました。インストールもできたの で、これは使えるかなと思ったら、やっぱりだめでした(私のはWindows98SecondEdition)。 コーネル大学の担当者によると、これに関してはまだ、解決していない模様で、今のところ英語版のWindowsで動かすしかないようです。誰かコンピュー タに詳しい人で、このトラブルの解決方法がわかる人は是非ご連絡ください。
 
 

牛乳、乳製品の効用(October 13、2000)
飲み物と言えばコーラやジュースが一般的で、乳飲料については各社いろいろ工夫を凝らしても、なかなか消費が増えないのが現状です。確かに保存性が劣るの は致命的ですが、最近ではロングライフミルクなど技術の進歩によりその差はなくなりつつあります。他の問題としては価格、販売網、広告宣伝があげられま す。乳飲料メーカーはもう少し安く製品を提供すること(私は学生時代、生協では牛乳が一番安い飲料であったことから、クラブが終わった後飲むのはいつも牛 乳でした)、もっと簡単に飲める販売網(ホテルや自動販売機など)、思わず飲みたくなるような広告宣伝(牛乳は体に良いことを強調しすぎている)をやって いただきたいと思います。米国では販売網は日本と変わりませんが、価格は安く、サイズも小さいものは200ccから、大きいものは1ガロン(3.75リッ トル)までいろいろあり、種類も全乳からローファット(1%、2%)、ノンファットなどがあり、その他、出荷する酪農家によってオーガニック、ノンbST などの種類もあり、消費者は好みに合わせて買えるようになっています。酪農家は牛乳消費拡大のキャンペーンのためいくらかの金をつぎ込んでおり、テレビコ マーシャルなどを流しています。有名スポーツ選手を使ったミルクマスタッシュ(牛乳をコップで飲んだときに口の上に牛乳が残って、白いひげのようになるこ と)の宣伝を見たことのある人もいるでしょう。

 
最近、米国では健康食品として牛乳を見直す動きが高まっています。牛乳中のカルシウムは吸収が良いことは良く知られており、年配の特に女性で問題になって いる骨粗しょう症には牛乳が有効であるとされています。また、最近の報告ではカルシウムが体脂肪を減らすのを助けるとの報告が出ています。子供の肥満が問 題になっている昨今、子供にはコーラに変えて牛乳を飲ませることを考えないといけません。また、乳脂肪中に多く含まれるCLA(Conjugated  Linoleic Acid)の抗がん作用、免疫賦活化作用があると報告されており、CLAの量は乳製品が最も多いことも証明されています。この研究のお かげで今まで悪者にされていたバターが再び脚光を浴びており、脂肪の悪影響を考慮しても、マーガリンより健康にはよいと言うことになってきています。
乳製品の消費拡大にはあらゆる方面からのアプローチが必要ですが、時代の流れは乳製品の消費拡大にとって決して不利ではないと思います。もっとミルクを飲 みましょう。 
 
 

酪農現場での指導に関する問題点(August 20、2000)
日本ではまだ酪農コンサルタントの数が少なく、酪農家が飼料設計などをしてもらう際に、飼料会社や酪農関係会社の人に頼んでやってもらうことが多いと思い ます。このような場合、何か問題が発生したらどうなるでしょうか?回りの関係者が詳細な調査もせずにあれが悪い、これが悪いといろいろな指摘をし、酪農家 もよくわからないので、言われるたびにあっちを変更、こっちを変更してどんどん状況を悪くしてしまうことがあるのではないかと思います。一般的な飼料でな い場合などは、やれ繊維が少なすぎるとか、濃厚飼料をやりすぎだとか、その裏に隠されている理由も知らないで一般論だけで批判し、農家を混乱させてしまう ことがよくあります。特に獣医師や農協の指導員、普及員などは農家に対する影響力が大きいため、無責任な言動は慎まないといけないと思います。何か問題と 思われる点があれば、農家とその飼料設計者の前で納得いくまで議論をして、お互いが納得できるやり方を見つけることが必要だと思います。今のところ、日本 ではそこまでやる人はいないとは思いますが、大事な点だと思います。米国では何かあれば他のコンサルタントに乗り換えるのは簡単ですが、日本ではそのよう なことができる人の数が少ないため、次を見つけるのが大変ということになりかねません。その地域で酪農にかかわっている人たちがお互いよく話し合い、最新 の技術を共有しながら、共通の考え方で農家をそれぞれの立場から指導するのが理想ですが、現実にはお互いの利益が優先するため、なかなかうまくいかないと 思います。ただ、農家のためにはそれが一番いいことなので、その方向に向けて少しずつ前進していって欲しいと思います。また、農家にとって一番大事なこと は、当然信頼できるから設計を頼んでいるのでしょうから、飼料設計している人を信頼し、回りの雑音に惑わされないことだと思います。また、農家に対して指 導を行っている人は、どういう理由でこういう飼料設計になっているかをわかりやすく説明する必要があります。また問題が発生した場合に、その原因を農家と いっしょに究明し、解決していかなくてはなりません。会社や夫婦の関係もいっしょですが、うまくいっているときは少々のことは気にならないのですが、うま くいかなくなってくると少しのことでも気になってきます。要はお互いの信頼関係がしっかりしているかどうかだと思いますが、何か気になることがあればとこ とん話し合うことが必要かと思います。今回はちょっと気になることがあったのでこのような話になってしまいました。
 

食品生産者としての意識と感染防止対策の意識(July25、2000)
最近、日本で起こった雪印の事件と九州、北 海道で発生した口蹄疫を見て、食品衛生上の管理と伝染性の疾病対策に対する現場での意識について考えさせられました。我々のような畜産関係者が、食品衛生 や伝染性疾病の防疫についてどれだけの知識をもっているのかという点です。私自身を例に取ると、常識的なことはわかるのですが、その詳細を知っているかと 言われれば、知らないと答えるしかありません。食品加工をする人間であれば、どういうところでどういう種類の菌が発生しやすく、それが人間にどのような害 を与えるのかは、当然知っていなければなりませんし、それを防ぐためにどのようなことをしなくてはいけないのかも知っていなくてはなりません。また、農家 を訪問する業者であれば、主な家畜の伝染性の疾病の種類や症状、およびその感染経路などは知っておかねばなりません。でないと自分が農家から農家へ病原菌 を撒き散らすことにもなりかねないと思います。米国でも最近は防疫に関する話題が非常に増加しており、私の知っているコンサルタントも農家を訪問するとき にバケツと殺菌剤、ブラシを持っていき、農家を歩き回ったあと必ず、それらで長靴をきれいに洗浄、消毒してから車に乗り込み、次の農家に向かっています。 伝染性の下痢がはやったときなどだけこうする人もいるかもしれませんが、日ごろからこのようなことに気をつけておくべきだと思います。農家にして見れば、 気にしていても、やってきた業者やコンサルタント、獣医などに靴を洗え、消毒しろなんて言えないと思います。そこはプロフェッショナルな人間として、自ら 率先して行い、みんなにそうすることの重要性を知らしめるべきだと思います。今回、口蹄疫についてその症状や感染経路の記事を翻訳しておきましたので参考 にしてください。
最新技術と有機農法(May 24.2000)
米国では画期的な技術が続々と開発されてい ますが、中でも bST (牛成長ホルモン)と 遺伝子組換穀物 は受け取り方が人によって大きく異なるようです。前回、効率を高めるための規模拡大についてお話しましたが、ある雑誌の投書欄にその反対意見が述べられて いました。現在、牛乳がだぶつき、乳価が下がる状況では、安全性に疑問が残る bSTや遺伝子組換穀物などを使用してまで、効率を高める必要があるのかと言うものです。確かに、現状の分析技術や研究では安全性が確認されていても、将 来もまったく危険はないと言いきる事はできないわけです。今までにもこういうことはいっぱいありました。サッカリン、サリドマイド、アスベスト、原子力発 電、などなど。目先の利益のために、将来に禍根を残す事があっていいのか?食料の生産者としてそういうことをして良いのか? 消費者も、この辺の事を理解して、選択できれば良いのでしょうが、ほとんどの場合、選ぶ事ができなくなっています。確かに、これは非常に難しい問題です。 これほど極端でなくても、化学肥料や農薬の使用についても同様な事が言え、有機農法で生産された食品がそれなりの市場を確立しているのも事実です。今後、 酪農家もメーカーも生産されたものがどのようなものかをはっきりと明示し、消費者に選択の余地を与える事が必要になってくるかもしれません。また、このこ とが一つの差別化となり、生き残り戦略の一つになるかもしれません。
米国酪農の規模拡大と投資について(May 6.2000)
米国の酪農は東と西ではまったく異なります が、その生産性についても大きな差があります。米国西部では大規模化による企業的な酪農が中心となってきており、東部、中西部の家族中心の酪農は何らかの 対策を取らなくてはならない状況になってきています。(この辺の詳しい状況については、Dairy Japan 誌 に数回に分けて掲載される予定ですので参考にしてください。) よって、これらの地区の酪農家が生産効率を高めるためにはどのようなことをしなくてはならないかと言ったとき、まず、出てくるのは規模の拡大です。規模拡 大のメリットとしては次のようなメリットがあります。
1.一人の労働力が扱える頭数が増加し、労 働効率が良くなる。
2.設備や機械に投資したコストをより多くの頭数で割ることができるため、一頭あたりのコストが減少する。
3.飼料購入時など、より大きな単位で購入することができるなどのスケールメリットが出てくる。
4.より細かく群分けをすることができ、最先端の技術を効率よく実践できる(例えば、Close Up、Fresh Cow だけに高い飼料添加物を給与する場合など)
5.従業員を専門家化させることによるメリット(より単純な労働、より専門家化)
これらの規模拡大の程度ですが、投資効率は 設備と飼養頭数、労働力に密接な関係があり、現有、または将来の構想の中でどの程度のものにするか、最も効率の良い規模を選択しなくてはなりません。米国 東部あたりでは最低でも200頭程度は必要ではないかと言われています。ただ、大切なのは設備投資や新しい技術を導入する際、酪農家が何らかの判断材料を 持っていないといけないということです。最近の米国の酪農雑誌ではこの辺の記事が多く取り上げられており、Midwest Dairy Businessという雑誌の5月号に次のようなポイントをチェックすべきと書いていました。
  1. いくらかかるか?
  2. どれくらいの見返りが期待できるか?
  3. その成功の確率は?
  4. 失敗したときの損害は?
  5. 投資してから見返りが得られるまでの期間は?
  6. どうやってその経済的な改善を測るか?
これらのチェックポイントは、投資するもの によって多少違うのでしょうが、基本的には牛舎の設備改善にも、飼料添加物の採用についても同様に使えると思います。これらの6つのポイントが明確で、損 しないのであればやる価値はあるということになります。日本においても酪農家が何らかの投資を行う際、その投資が適切なものであるかどうかを判断するガイ ドラインが必要だと思います。
 
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