最新技術情報
<NUTRITION>牛 の栄養に関する事についての技術情報です。 |
飼料計算においてNSCはNDFと並
んで非常に重要なエネルギーですが、飼料計算でNFCを考えるときに注意しなくてはいけないことをフロリダ大学のDr. Mary Beth
Hallが彼女のHP で書いていますので、その重要ポイントをご紹介しておきます。詳しく知りたい方は彼女のHPを見てください。http://www.animal.ufl.edu/hall/
NFCは分析で求めるのではなく、差
し引いた残りで求めるため、さまざまな問題が生じます。通常100からCP,NDF,EE,Ashを差し引いて求めますが、最近ではNDF中のCP(NDFIP)が2度引かれることになるため、この分を足すことでより正確にNFCを求めるようになって
います。
NFCの中身は有機酸、糖、でんぷ
ん、水溶性繊維がありますが、これらのなかで飼料計算上気をつけなくてはいけないことを2つ述べておきます。
1.分解性蛋白質の要求量は消化されるNSCやNDFの量によっ
て決定されます。しかし、有機酸は微生物に利用されず、牛に直接
利用されるタイプのエネルギー源なので、その分分解性蛋白は必要なくなります。よって、有機酸が多い飼料(サイレージなど)を用いる場合は、分解性蛋白質
の要求量が実際より多めになっている可能性があります。
2.水溶性繊維に含まれるフルクタン
はフルクトースが長くつながった細胞内容物で、寒地型牧草に多く含まれます(1−30%)。このフルクタンはペクチンやベータグルカンと異なり、発酵して
乳酸を生じます。水溶性繊維は酢酸を生産させるためアシドーシスにならないと一般的に考えられていますが、フルクタンが多い場合はでんぷんや糖と同様、ア
シドーシスに気をつけなくてはなりません。
もう一つの注意点としてNPNを含む
飼料のNSCの問題があります。
窒素の6.25倍がCPとされていますが、これはあくまでも一般論で、飼料によってはその値から大きく外れるものがあります。特にNPNを含む飼料では
NFCはかなり低く計算されることになります。例えば5%の尿素を含む飼料で、乾物あたり10% ash, 4% EE, 20%
CP, 20% NDF, そして 2% NDIN のときのNSCは次のようにして求められます。
100 - [20 CP + (20 NDF - 2 NDIN) + 4 EE + 10 Ash] = 48.0%
しかし、現実には尿素は飼料CP中14.05% を占めるが(尿素のCPは281% x 添加量:0.05 =
14.05% CP ), 実際の重量は飼料中の5%にしかならない。これを修正してNFCを求めると次のようになります。
100 - [(20 CP - 14.05 CPurea + 5urea mass)
+ (20 NDF - 2 NDIN) + 4 EE + 10 Ash] = 57.05%
この場合、修正したNFCの値は通常の計算方法で求めたNFCより9%多く、重大な影響を与えることになります。NPNのNFC含量におよぼす影響
は飼料に含まれるNPNのタイプと量によって決まります。修正NFC%は以下の公式で求めます。
Corrected NFC% = 100% - [Corr. CP mass % + (NDF% - NDIN%) + EE%
+ Ash%]
Corrected CP Mass% = Total CP % - CP% from NPN +
Mass % of NPN
Compound
Mass% of NPN = (CP% in feed from NPN / CP% of NPN compound) x 100
これらの公式を使用するためにはNPNソースが何であるかは知らなくてはいけません(尿素、アンモニア他)。これらの修正NSCを用いることにより、より 正確にNFCの量を把握でき資料設計を行うことができます。
表 各種NPNソースの窒素およびCP含量
NPN Source |
N% of DM |
CP% as N x 6.25 |
Ammonia |
82.35 |
514.7 |
Ammonium (NH4+) |
77.78 |
486.1 |
Ammonium chloride |
26.19 |
163.7 |
Ammonium Phos (Mono) |
11.10 |
69.4 |
Ammonium Phos (Dibasic) |
18.06 |
112.9 |
Ammonium Sulfate |
21.46 |
134.1 |
Nitrate |
22.56 |
141.0 |
Urea, 45% N |
44.96 |
281.0 |
Urea, 46.5% N |
46.56 |
291.0 |
Examples Correcting NFC for NPN
Feed X Analysis (DM basis)
CP% 71.5%、CP% from NPN 60.2%、NDF% 5.0%、NDIN% 0.5%、EE % 1.0%、Ash % 7.9%、NPN source urea
Uncorrected NSC% of DM for Feed X Equation = 100 - (71.5 CP
+ (5.0 NDF - 0.5 NDIN) + 1.0 EE + 7.9 ash) =
15.1% NFC (2)
Method 1. To calculate a corrected NFC for feed X:
Corrected CP Mass% = 71.5% CP - 60.2% CPurea + [(60.2% CPurea / 281% CPurea) x 100] (6)
= 11.3% non-urea CP + 21.4% mass from urea
= 32.7% corrected CP mass %
Corrected NFC% of DM = 100 - (32.7 Corr. CP mass + (5.0 NDF - 0.5 NDIN) + 1.0 EE + 7.9 Ash) (4)
= 53.9% corrected NSC %
Method 2. To calculate CP-containing (FeedN) and CP-free (FeedC) fractions for use in ration formulation programs that automatically calculate NFC.
Corrected CP Mass% from above, equation 6 = 32.7
Corrected Non-CP Mass % = 100 - 32.7 = 67.3 (7)
Calculated compositions of FeedN and FeedC (DM basis):
Feed Fraction | % in Original Feed X on a DM basis | Corrected CP Mass % | Fraction %
Feed XN |
Equation |
||
CP |
|
/ | 32.7) x 100 | = |
218.7 |
(8) |
NDIN |
|
/ | 32.7) x 100 | = |
1.5 |
(9) |
Feed Fraction | % in Original Feed X | Corrected Non-CP Mass % | Fraction %
Feed XC |
|||
NDF - NDIN |
|
/ | 67.3) x 100 | = |
6.7 |
(11) |
EE |
|
/ | 67.3) x 100 | = |
1.5 |
(12) |
Ash |
|
/ | 67.3) x 100 | = |
11.7 |
(13) |
Corr. NFC |
|
/ | 67.3) x 100 | = |
80.1 |
(10) |
Calculation of pounds allocated to FeedN and FeedC from 10 pounds of the original feed DM:
Feed XN DM lb = 10 lb Feed X DM x 32.7% Corr. CP Mass = 3.27 lb (15)
Feed XC DM lb = 10 lb Feed X DM x 67.3% Corr. Non-CP
Mass = 6.73 lb (16)
By Dairy Herd staff (Wednesday, November 13, 2002)
カンザス州立大学の研究者分娩前の蛋白レベルと分娩後の乳量の間に関係があることを見出した。75頭の乳牛に 分娩前28日から5種類の異なった飼料を給与した。給与した飼料のCPレベルは9.7、11.7、13.7、14.7、そして16.2%であった。以下に その結果を示す。
エネルギー:エネルギーにおいても乾乳期間中はずっと一定ではなく、妊娠の経過にともない胎児が成長し、その要求量が増加する。よっ て、NRC 2001年度版では妊娠日数と生まれる子牛の体重からその時点での要求量を計算する。この計算によるとクローズアップ気の乾乳牛にはNEで1.54−1. 61Mcal/Kg のエネルギーが推奨される。(1989年度版NRCでは1.26Mcal/Kg)また、分娩前1-2日は乾物摂取量が急激に落ちるため、エネルギー濃度を 高めてやる必要がある。特に初産牛 では重要となる。しかし、アシドーシスなどは気をつけなくてはいけない。1989年度版NRCではNDFの最低レベルが35%、ADFで27%とされてい たが、移行期の乳牛ではこのレベルより低い方がうまくいくことが試験により明らかになっている。繊維が少ないことはNFCが多いことを示しており、エネル ギー濃度も高くなり、この時期の高いエネルギー要求量に対応することができる。よって、2001年度版NRCではNDFの最低レベルが33%,ADFで 21%あればよいことになっている。
蛋白:蛋白においてもエネルギーと同様で、妊娠の経過にしたがって要求量が増加する事がわかっており、経産牛
でCP12%、初産牛で13.5-15%が推奨されている。しかし、分娩直前1-2日の蛋白の増給は必要ない。
1989年度版NRC | 2001年度版NRC 経産牛 |
2001年度版NRC 初産牛 |
|
エネルギー(Mcal/Kg) 蛋白% NDF% ADF% |
1.26 12 35 27 |
1.54-1.61 12 33以上 21以上 |
1.54-1.61 13.5-15 33以上 21以上 |
ミネラル:ミネラルについては1989年度版では吸収利用性はすべて同じとして扱っていたのに対し,2001年度版NRCでは原料に
より吸収利用性が異なることを考慮しておりその原料によって給与量が大きく異なることになった。また、アニオン塩を給与した場合ミネラルの利用性が変化す
るので、アニオン塩を使用する場合としない場合で、その推奨値を変化させている。
栄養素 | アニオン塩を給与していない場合 | アニオン塩を給与している場合 |
Ca (%DM) P(%DM) Mg(%DM) Cl(%DM) K(%DM) Na(%DM) S(%DM) ビタミンA (IU/KgBW) ビタミンD(IU/KgBW) ビタミンE(IU/KgBW) |
0.45 0.3−0.4 0.35−0.4 0.15 0.52 0.1 0.2 110 30 1.6 |
0.6−1.5 0.3−0.4 0.35−0.4 0.8−1.2 0.52 0.1 0.3−0.4 110 30 1.6 |
繊維以外の炭水化物は高泌乳牛にとって重要なエネルギー源であるが、同時にアシドーシスの原因となる ため、それぞれの分画の特徴をよく理解し、どのようにバランスをとるかは重要である。
NFC(Non Fiber Carbohydrate) と NSC(Non Structural Carbohydrate)はしばしば混同されるが、まったく同じものではない。NFCは飼料計算に一般的に利用されるが次の計算式によって計算される。
NFC=100−CP%−NDF%−EE%(Ether Extract=脂肪)−Ash%(灰分)NFCの大きな4つのカテゴリーとして、1)有機酸、2)糖(Mono, Oligosaccharides)、3)でんぷん、4)NDSF(Neutral Detergent-soluble fiber)に分類される。
1)有機酸は本当の意味で炭水化物ではないがNFCの中に入れてい る。この中にはサイレージの発酵によって生じる酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸、そして新鮮な植物に含まれるマレイン酸、クエン酸、キニン酸= Quinateなどがある。サイレージの発酵によって生じる有機酸は動物には利用されるが、ルーメン内微生物にはうまく利用されない。2)糖には単糖類と多糖類があり、後者は2−20の単糖の鎖となっている。植物中 で多いのはグルコース(ブドウ糖)、フルクトース(果糖)、そして2糖類のシュークロース(ショ糖)で、乳糖は乳製品に含まれる。糖は急速に発酵する傾向 があり、乳酸を生じる。いくらかの多糖類を除いて糖類は哺乳動物の酵素によって単糖類にされ、吸収される。糖の一般的な供給源は糖蜜、シトラスパルプ、 アーモンドハル、パンくず(Bakery waste)、大豆粕、生草、乾草である。糖として分析されるサイレージ中の炭水化物は発酵されていない糖か、酸性条件で一部加水分解を受けた炭水化物と 考えられ、これらは通常の糖とは異なった発酵をすることが考えられる。
3)でんぷんはグルコースがアルファ結合した鎖でできており、植物体によって結晶 状の顆粒として貯蔵されたものである。アルファ結合は微生物によっても牛によっても利用される形であるが、その発酵、消化の程度は加工方法、貯蔵方法、植 物の種類によって非常に大きな違いがある。でんぷんの発酵によって主に乳酸が生じる。でんぷんの主な供給源は穀類、コーン、ソルガム、副産物、芋類、パン くずなどがある。
4)NDSFにはNDFに含まれない、ペクチン様物質、ベータ-グルカン、フルク タン、その他のでんぷんと異なる多糖類がはいる。これらの炭水化物は哺乳類の酵素によっては消化されないため、微生物によって消化されないといけない。可 溶性の繊維は大豆皮(4%/Hr)のものを除いて比較的早く発酵する(20−40%/Hr)。この分画のほとんどを占めるペクチンは他のNFCより多くの 酢酸を生産する。フルクタンを除く可溶性繊維は乳酸をほとんど生産せず、pHが低い状況ではNDFのようにその発酵は低下する。主な可溶性繊維の供給源は 豆科の粗飼料、シトラスパルプ、大豆皮、大豆粕などである。
発酵によって生産される有機酸は異なっても、pHが中性域で発酵スピードが同じで あれば、NFCは同等の微生物体蛋白を生産すると考えられている。これらのNFCの違いが乳生産に及ぼす影響についての研究はあまり多くないが、NFCが乳生産に大きな影響 を及ぼすことが示されている。
1)可溶性繊維と糖を多く含む飼料(シトラスパルプ、ビートパルプ)はでんぷんを多く含む飼料より、
乾物摂取量が低く、乳蛋白率が低く、乳脂率が低い傾向があった。
2)アルファルファのサイレージをベースとした飼料で19%のシトラスパルプと19%のハイモイスチャー
シェルドコーンに加熱大豆粕でバイパス蛋白質を補った場合、39%のハイモイスチャーシェルドコーンの時に比べてより多くの乳量と、乳蛋白を生産した。こ
のことはシトラスパルプではルーメン内の微生物によって非蛋白体窒素がうまく利用されていないことを示している。
3)でんぷんの代わりにショ糖を給与したある試験では乳脂肪は増加したが、他の試験ではその傾向は認められ
なかった。コーンスターチをショ糖で置き換えた(0-7.5%DM)試験では(NFC=43%DM)乾物摂取量、乳脂肪率、乳脂肪量、及び乳脂補正乳量は
増加した。飼料効率の点から言えば乾物摂取量あたりの乳量は1.6から1.52に低下し、窒素が乳蛋白に変換される効率もショ糖の割合が増加するとともに
直線的に低下した(0.31から0.29)。1.5%DMのコーンミールをショ糖に置き換えた試験では乾物摂取量と乳量、乳脂補正乳量に変化はなかった
が、乳脂肪量は2.12ポンドから2.14ポンドに増加し、乳蛋白率は3.51%から3.28%に低下した。
糖を給与した際の乾物摂取量の増加は嗜好性の改善か、ルーメン内の液体および固形物通過速度の増加に よるものと考えられる。この証拠となる研究はほとんどないが、結果は一定していない。有機物中16.8%に相当するグルコースシロップをルーメン内に注入 したところ、有機物のルーメン通過速度は早まった、との結果がある一方、影響がなかったという報告もある。その他の試験結果も総合して考えると、糖の給与 はルーメンの通過速度に影響があるらしい。
以上の事実から糖、でんぷん、可溶性繊維の比率を変えることで、乳牛の泌乳能力を変化させることがで きると考えられる。しかし、ある条件で最大の効果をあげる炭水化物の比率を決定するためにはそれぞれの試験でのもっと詳細な情報が必要である。
糖や可溶性の繊維を給与した場合、明らかに乳蛋白が減少したり、CPの利用効率が低下することが報告 されている。可溶性繊維と糖はルーメン内pHが酸性でない限り、ルーメンですぐに発酵され微生物の成長に利用される。1996年版NRCでは発酵スピード が同じであればNFCはすべて同量の微生物体蛋白を生産するとしていたが、このことは実際の状況と矛盾することが報告されていた。その後の研究で微生物体 蛋白の合成量はNFCの中身の違いにより変化することが証明され、同じレベルでもでんぷんがもっとも微生物体蛋白の合成量を増加させることが明らかになっ た。でんぷんの発酵で生産される微生物体蛋白量を100%とすると、ペクチンで88%、ショ糖で86%となる。この影響で供給できるアミノ酸が減少し、乳 蛋白の減少につながると考えられる。
時間ごとの微生物体蛋白の生産パターンも、NFCの中身によって異なり、ペクチンはラグタイム(実際 に発酵するまでの時間)が短く、すばやく発酵され、でんぷんの発酵が始まる前にピークを迎え低下していく。でんぷんはNFCの中でもっともラグタイムが長 く、ペクチンの後にピークが来る。これらの発酵パターンが微生物体蛋白の合成と重なるわけで、発酵量が増加していく時は合成量のほうが多く、減少していく ときは生産より分解する量が多くなる。
よって、NFCによって生産される微生物体蛋白の量は一定の比率で生産されるわけではない。例えば ショ糖はもっとも早く発酵するが微生物体蛋白の量はもっともゆっくり減少する。このことは微生物がショ糖や他の糖類をグリコーゲンのように蓄えて利用する ためではないかと考える。ルーメン内微生物は18%程度をグリコーゲンの形で蓄えることができ、それの利用は糖の存在量によって変化する。 すなわちすべ ての糖が微生物体蛋白の合成、有機酸の合成に使用されるわけではなく、微生物自身の生存のためのエネルギーとしても利用され、ルーメン内を通過した微生物 中のグリコーゲンはそのまま小腸で吸収される。このことは粗飼料だけ給与した乳牛の小腸でかなりの量のグリコーゲンが存在することによっても証明される。
以上のことを踏まえて飼料計算上注意する点をまとめると
油脂原料 | 油脂のタイプ | 消化率(%) |
脂肪酸カルシウム(パーム油) | 脂肪酸 | 86 |
水素添加牛脂(タロー) | 脂肪酸 | 79 |
一部水素添加牛脂(タロー) | 脂肪酸とグリセリン | 43 |
牛脂(タロー) | 脂肪酸とグリセリン | 68 |
植物性油脂 | 脂肪酸とグリセリン | 86 |
飼料設計の目標
乳牛飼料を設計する上でもっとも大切なことは、乳牛を健康にたもちながらVFAと微生物体蛋白の合成量をいかに増やすかということになります。当然、エネ
ルギーを増やすために穀類を多給するとアシドーシスになり、乳量は低下するし、粗飼料ばかりではDMIが低下し、エネルギーが不足しこれも乳量が低下しま
す。このバランスをいかにとるかがポイントとなります。
炭水化物の種類
炭水化物はエネルギー源であり、これには繊維(セルロース、ヘミセルロース=NDF)、でんぷん、糖、ペクチンなどがあり、発酵スピードも異なります。
発酵スピードの関係から繊維(NDF)以外をNFCとして表したりしますが、この数字は100から蛋白、脂肪、NDF,灰分を差し引いたもので、蛋白中の
NDFを重複して差し引いていたり、有機酸などが含まれていたりして、飼料によっては中身が大きく異なる場合があります。
繊維(NDF):
繊維は牛の重要なエネルギー源であるとともにルーメンの健康にとって重要な働きをしています。粗飼料由来のNDFは一般的に消化が遅く、ルーメン内に長時 間とどまるため(24-40時間)、飼料摂取量を制限する要因にもなります。ある一定量の長い粗飼料が必要な理由はでんぷん:反芻を促し、緩衝作用を持つ(重曹を含む)唾液を分泌させる。 ルーメンマットを形成し、小さい飼料片がそこにとどまり、十分消化が行われるようにする。 微生物に対し持続的にエネルギーを供給する。
でんぷんは最も安いエネルギー源であると言え、その消化率は40-90%と大きなバラツキがあります。その要因は以下のとおり。コーンミールは消化は遅いが、粒度が細かいためルーメン内通過速度が速く、ルーメン内での微生物へ供給できるエネルギーは少なくなるが(よって、微生物体 蛋白の合成には大きき寄与しない)、小腸、大腸での消化により全体としての消化率は高くなる。ただし、あまり荒い粉砕だと消化率が低下する。穀類の種類:小麦>大麦>コーン 保存方法:ハイモイスチャーコーン>コーン 加工方法:スチームフレーク>圧片>粉砕>そのまま 粒度:小さいと通過速度が速く消化率が落ちる でんぷんのゼラチン化度合い:熱をかけてゼラチン化するほど消化率上がる 子実のでんぷんを取り囲んでいるエンドスパーム蛋白の量と水への溶解性:大麦、小麦は少なく、コーンソルガム多い。
ペクチン:
ペクチンは可溶性の繊維であり、発酵は繊維より早く、でんぷんより遅いが、消化率は高い。飼料中の含量は通常2-3%と少ないが、シトラスパルプ (15%)、ビートパルプ(15-20%)、アルファルファ(3-10%)と多い飼料原料もある。ルーメン内pHが低下すると消化率も下がる。
糖:採食量の調節
糖蜜やホエーに含まれる糖は発酵が早く、消化率もほぼ100%であるが、青刈りの牧草などに含まれる糖は利用されるまでに少し時間がかかる。飼料中の含量 はペクチンと同様2-3%と非常に少ない
炭水化物の量 炭水化物の発酵速度(プロピオン酸が増加すると採食量が減少。また、ルーメン内pHが低下すると酸の吸収も早くなり、採食が抑制される) ルーメン内容積の物理的限界(Filling Effect)
これに影響を与えるのは
ルーメン内微生物
ルーメン内微生物は大きく分けて繊維分解菌、でんぷん分解菌、プロトゾアに分けられます。繊維分解菌はpHの変化に弱く、酸性状態(pH5.7以下)にな
ると繊維の消化能力が低下し、さらに下がると死滅してしまいます。また、増殖するのに非常に時間がかかるので、すぐに回復できません。それに対し、でんぷ
ん分解菌は多少pH
が低くても働くことができ、また、増殖スピードも早いです。 ただし、一時に大量の糖、でんぷんなどの発酵し易い炭水化物が給与されると微生物は増殖を止
め、酸の産生量を増加させます。これは微生物体蛋白の合成が低下し、ルーメン内pHを低下させるという点で望ましくありません。微生物にとっては一定のス
ピードでエネルギー、蛋白源が続して供給されるのがもっとも効率が良く、また、生産者にとっても血中のインシュリンレベルも抑えられるため、エネルギーを
体組織に蓄えるの方向でなく、乳生産に持っていく方向になるので望ましいといえます。
飼料計算上のポイント
粗飼料由来のNDF含量(この場合あくまでも量でなく濃度%)を下記の要因を考慮して17-28%の間で設定する。
粗飼料由来NDF含量(DM中) 17% ******************************************************* 28% 高泌乳 低泌乳 アシドーシスになりやすい アシドーシスになりにくい |
発酵の早いでんぷん、糖を多く含む場合 >> << 粗飼料以外の繊維源(NFFS)を多く含む場合 << 粗飼料中のNDF含量が多い 粗飼料NDFの消化が早い >> 粗飼料の切断長が短い >> 分離給与で給与回数が少ない >> << TMR バンクスペースが十分でない >> << 油脂を添加した場合 << 重曹などバッファーを添加した場合 |
TMRのチェック
ペンシルバニア大学のパーティクルセパレーターを用いて飼料粒度をチェックする。一番上に10‐15%以上、1番下には40%以下、真ん中に45%程度残
るのが理想。選び食いをしているのであれば、粗飼料の切断長を均一化する、給与回数を増やす、水分含量を増やすなどの処置を行う。
Nutrient | 経産牛 | 初産牛 |
CP% NEl NFC NDF |
12% 1.54-1.61Mcal/Kg 36−43%DM 25−33%DM |
13.5-15% 1.54-1.61Mcal/Kg 36−43% 25−33% |
Ca Mg P Se |
0.45%(アニオン塩をやる時は0.6-1.5%) 0.35-0.4% 0.3-0.4% 0.3ppm |
0.4% 0.35-0.4% 0.3-0.4% 0.3ppm |
ビタミンA ビタミンD ビタミンE |
10万IU/日 25,000IU/日 1,200IU/日 |
75,000IU/日 20,000IU/日 1,200IU/日 |
1)飼料中の構造性炭水化物(NDF)の量 => NDFが多いとDMI低 下
2)摂取NDFのルーメン内での消化性(dNDF:30分間の試験管内培養で消化するNDF)= >ある一定量以上のNDF含量の場合、dNDFの割合が低いとDMI低下
3)飼料中の非構造性炭水化物(NSC)の量 => NSCが既にある一定量あるとき、NSCが 増加するとDMI低下(アシドーシス)
4)体重とBCS =>大きい牛ほど、やせた牛ほどDMI増加
5)飼料中の含水量 =>20-50%がベストこれらの要因を考慮して各グループの乾物摂取量を推定する。次のウェブサイトのスプレッドシー トで潜在的な最大乾物摂取量を簡単に推定できる。http://www.animalscience.ucdavis.edu/faculty/robinson>
6)飼料中の油脂含量
7)産次
8)蹄の状態(ロコモーションスコア)
9)妊娠、泌乳ステージ
ビオチンはビタミンB群の1つで、脂質の合成、ケラチン質の合成に関与しているほか、各種の代謝反応において補酵素として働く。ビオチンは粗飼料中
やケーンモラセスに多く含まれており、穀類には少ない。ビオチンの約半分はルーメン内で分解されるが、経口投与でも血中乳中のビオチン含量は増加する。通
常、ビオチンの1日の摂取量は4.9mgであるが、濃厚飼料多給の場合は、粗飼料の割合が少なくなるため摂取量が少なくなる。分娩後100日間乳牛にビオ
チンを0mg、10mg、20mg/頭/日給与した試験では、ビオチン給与は乾物摂取量、BCS、乳蛋白に変化は与えなかったが、乳量はそれぞれ36.
9Kg、37.8Kg、39.7Kgと投与量に従い増加させた。また、乳脂率は若干低下した。
糖の給与
銅の給与は慎重に
(Dairy Herd Management 2000年 9月号)
- 銅の要求量は乾物あたり10ppmであるが、他の飼料原料から来る銅の量は非常にばらついている。たとえば4000点のコーンサイレージ を分析した結果銅 の含有量は2−12ppmとばらついていた。よって、10ppm以上の銅はやる必要はない。
- モリブデン、イオウ、鉄などの含有量に注意すること。これらのミネラルは銅の利用性を低下させる。よって、次のミネラルの比率を覚えておくと良い。
亜鉛:銅=4:1、銅:モリブデン=6:1、鉄:銅=40:1
- 有機体と無機体の銅を合わせて使用するのが望ましい。あるガイドラインでは特に亜鉛、モリブデン、鉄が飼料中に多い場合は有機体35%、 無機体65%が望 ましいとしている。
リンを少なくしても繁殖には影響なし
穀類の粉砕粒度は乳量に影響を与える
表 コーン粉砕程度の測定のためのふるいの大きさ、および各種コーンの推奨粒度分布
ふるいの番手(Fisher) | 4 | 8 | 16 | 30 | パン |
網目の大きさ | 4500ミクロン以上 | 2200ミクロン以上 | 1100ミクロン以上 | 500ミクロン以上 | 500ミクロン以下 |
ふるい上に残るコーンの状態 | そのまままたは粗引きコーン | 引き割りコーン | 粉砕コーン | 豚のえさ | 粉状 |
乾燥コーン | 0% | 0% | 30% | 50% | 20% |
ハイモイスチャーコーン (水分25−30%) |
25% | 50% | 25% | 0% | 0% |
ハイモイスチャーコーン (水分30%以上) |
75% | 25% | 0% | 0% | 0% |
酵素と微生物製剤の乳牛飼料への添加 (Tri-State Nutrition
Conference
2000)
様々な消化酵素や微生物製剤は乾物摂取量が増加したときの消化率の低下をある程度補える可能性がある。消化酵素自体の添加は微生物製剤のもつ消化酵
素活性よりはるかに高い活性を有し、ルーメン内でも比較的安定で、指摘pHも一般的なルーメン内微生物の好むpHより低い。よって、乳牛の消化率の改善に
有望であるが、ルーメン内を流れ出てしまえば消化に携わる時間が少なくなり効果が期待できない。飼料にあらかじめ混合し、消化酵素を作用させる事により、
ルーメン内でのより早い消化が可能になるが、どの消化酵素をどのぐらい、どの割合で混合すると良いのかは未だわかっておらず、また、酵素の活性はそれぞれ
のメーカーで異なるため比較ができないという欠点がある。よって、消化酵素の乳牛飼料への使用は有望であるが、その詳細については更なる研究が必要であ
る。
繊維が少ない飼料のガイドライン (Tri-State Nutrition
Conference
2000)
粗飼料の品質にばらつきがある事、粗飼料の量に限界がある事、粗飼料の価格が高い事、また、飼料のエネルギー濃度を上げるためなどの理由によって、
粗飼料の割合が少ない飼料を使用する事が増えている。しかし、最低限の粗飼料は乳牛の健康のために必要である。ルーメン機能が正常であるかどうかは
1)乾物摂取量のモニター、2)乳脂率、をチェックする事でわかる。 ルーメン機能の正常化には最低限の機能性せんいとNFCの最大量を超えないことが必要である。粗飼料のNDF割合(Forage NDF、FNDF)は機能性せんいの良い指標であるが、FNDFの必要最小レベルを決めるには、
3)乳脂率と乳蛋白率の比、
4)反芻している牛の割合、
5)疾病発生率
1)粗飼料の種類(綿実のNDFは粗飼料からのものとして計算しても良い。ただし2.5Kg程度まで)、を考慮しなくてはならない。 粗飼料の少ない飼料は管理上、より多くの注意を必要とし、通常分娩後30日までの牛に与えるべきでない。なぜなら、乾物摂取量が少なく病気になりやすいた めである。
2)切断長、
3) NFCの種類(コーン、大麦、ビートパルプ、豆皮、ビール粕、ふすまなど)、
4) NFCの発酵速度(コーンの加工方法、例えばスチームフレーク、ミール、圧片)、
5) 重曹の使用の有無(通常0.8%DM)、
6) イーストなどのプロバイオティクス給与の有無
粗飼料とNFCのガイドライン 粗飼料割合: 40-60% DM NDF: 26-28% DM ADF: 19-21% DM Forage NDF(FNDF): 16-21% DM NFC: 35-42% DM Starch: 25-35% DM FNDF/NFC: 0.45-0.5(綿実を含まないとき) ただし |
ルーメン機能のチェック(正常値) 乳脂率: 3.3% 以上 乳脂率/乳蛋白率: 1:1以上 反芻している 牛の割合: 40% 以上 乾物摂取量: 22.5Kg 以上 乳量: 少なくない ケトーシス:
2-5% 以下
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泌乳牛においてDCADを調製する必要はあるか(Tri-State Nutrition
Conference
2000年5月)
Is it Important to Adjust the Dietary Cation-Anion Difference for
Lactating
Dairy Cows ?
Elliot Block and William K. Sanchez
DCAD(Dietary Cation−Anion Difference)は乾物中の陽イオンであるNa、K から 陰イオンであるCl、S の量を引いたもの、meq で表わされる((Na+K)−(Cl+S))。DCADが増加すると血中の炭酸イオン(HCO3−)も増加し、中和する作用(Buffering Capacity)が強くなり、血中pHも高くなる。高泌乳牛においては肝臓、腎臓、乳腺から代謝性の物質を産生し、これらの状態は乳牛の生産性、健康、 乾物摂取量に悪影響を与える。最近のデータでは泌乳初期の乳牛の飼料のDCADを35−45meq/100gDM に高めると乾物摂取量と乳量が増加することが報告されている。さらに、DCADを高めるためにNa と K の両方を使用した方が、どちらか片方を使用するより効果は勝れている。K と 乳量には正の関係があり、特に暑熱ストレス時は顕著となる。KはMgの吸収を阻害するため、K:Mg= 4:1のレベルを維持しなくてはならないので、K を増加させるとき、Mgも同時に増加させなくてはならない。泌乳初期の乳牛のK の量は1.8%DM は必要で、最高で3.0%DMまでは問題ない。しかし、このレベルを越えると悪影響がある。
K の補給には 炭酸カリ(K2CO3) を用いていましたが、価格はやや高めのようです。
栄養が蹄の健康におよぼす影響について(Tri-State Nutrition
Conference
2000年5月)
Effect of Nutrition on Hoof Health
Dr.H.Hoblet (The Ohio State University)
乳牛のほとんどのびっこ(Lameness、Laminitis)は蹄にかかわるもので、イボ(Digital Dermatitis または Hairy Heel Warts)以外は蹄の角質層の異常が原因である。最近では潜在性のびっこ(Subclinical Laminitis)というより、蹄の角質層障害(Claw Horn Disruption)と言う言葉が使用される。これには 蹄のうら(Sole)の黄色変色、White Line Disease、Heel Erosion(かかとの腐食)、Hemorrhage of the Sole(蹄のうらの出血)、Horizontal Ridges of the wall(蹄面の水平の溝)、Double sole、 Sole Ulcer(蹄のうらの潰瘍)などが含まれる。以下に主な蹄病について説明する(それぞれの病気がよくわからなかったので、調べてみました。よって、下記 の部分は他の本からの引用です)。
White Line Disease
後ろ足の片方に体重を乗せることで初めのインパクトはかかと部分に現れる。潜在性のびっこであれば爪の部分と蹄の底の部分が分離し溝ができる。そこに物が 入り込み、爪の内側が炎症を起こす。化膿した部分は爪の中に広がり、膿は爪の付け根の部分からもれる出てくる。場合によっては爪の生え際に大きな潰瘍を生 じる場合もある。かかとは腫れ Foot Rot と間違える場合がある。White Line Disease は軽いものから重傷までいろいろあるが、ほとんどの場合、獣医の診療が必要となる。Foot Rot と思い、そのための治療をして2−3日で快復の兆候が見られない場合は早急に獣医に見てもらう必要がある。
Horizontal Ridges of the wall(蹄面にあらわれる水平の線)
蹄の表面に現れる線は何らかのストレスにより、爪の成長速度が一時的に停滞したことを示す。爪は生え際から成長に伴い前方にゆっくりと移動するが、乳牛で 1ヶ月に0.5-0.6cm伸び、かかと部分は通常若干早い。蹄の表面に現れる溝は通常乳牛では見られないが、極度のまたは長期にわたる場合は発生する。 このようなストレスが発生した時期は蹄の生え際から、溝のある場所までの長さを測ることにより推測できる(2cmのところであれば 2cm/0.5cm=4ヶ月前)。これらの溝の部分は弱いため、この部分が先端まで来ると、特に爪が長い場合は、爪が曲がり、爪が上向きにそりあがった” Buckled Claw”となる。爪の表面のひび割れは爪の成長が一時的にストップしたことを示し、この部分が先端近くまで伸びてくると、爪が部分的にはがれることがお こる。
Sole Ulcer(蹄のうらの潰瘍)蹄の障害の原因
これはびっこの主な原因となっており、経済的にも重大な損失を与える。この障害は主に後ろ足の外側の爪に起りやすく、コンクリートの牛床の場合起りやす い。障害部位は足の裏とかかとの境目あたりに見られることが多い。かかと部分が擦り減って薄くなり、床からの圧力が柔らかいかかとの部分と、骨の間にはさ まれたケラチン質に長期にわたってかかると、その部分が壊死し、爪の成長が止まる。その後、その部分は治癒し、顆粒細胞がそこに入り込むが、結局、この顆 粒細胞が赤い出血後として足の裏に現れる。もし、一方の足に見つかったら逆側も探した方が良い。適切な削蹄はこれらの圧力を緩和するし、正常な足のほうを 木のブロックやゴムの靴の装着で持ち上げることは、悪い方の足を持ち上げることになり体重のかかり具合を緩和でる。
アシドーシス
ルーメン内のpH低下によりルーメン内微生物が死滅し、エンドトキシン、ヒスタミンを放出する。これらの物質は蹄の表皮の下にある真皮層の血管に重大な影 響を与える。例えばヒスタミンは血管拡張と収縮の両方の働きをするため、血液の停滞、出血、ケラチン質への酸素や栄養素の運搬の欠如により真皮層の毛細血 管が破壊される。更に環境ストレス(コンクリートの床、飼育密度の増加、感染症)によっても細胞からヒスタミンが分泌され同様なことが起る。障害が発生し た部位が実際目に見えるところ(蹄の裏側に内出血の後が見えるまで)まで来るのに約2-3ヶ月かかる。
Transition Period.
分娩前後の管理は蹄の健康にとって(特に、初産牛にとっては)重要である。分娩前と分娩後の栄養とびっことの関係を調べた研究では、分娩前の栄養は影響な かったが、分娩後6週間の低せんい飼料群は、高せんい飼料群に比べてはるかにびっこの牛が多くなった(68% vs 8%)(Liversey&Fleming,1984)。また、分娩前数日の乾物摂取量の大きな低下で、アミノ酸の多くは糖新生に使用され、蛋白 の生産に十分使用できなくなる。Liversey ら(1998)は初産牛の分娩後にメチオニンを給与した場合、蹄の成長が促進されたが、2産目以降では変わらなかったと報告している。これらのことは分娩 前の乾物摂取量の低下が、必要な栄養素を不足させ、蹄の障害につながることを示唆している。また、これらのことは乾物摂取量の低い初産牛でより顕著に表れ る。
蛋白
蛋白栄養と蹄の健康の関係についてはまだ良く分かっていない。ある研究では高蛋白飼料(アンモニアの高いサイレージを含む)を給与した場合、びっこの確立 が増加したと報告し(Bazeley & Pinsent,1984)、他の研究(Manson&Leaver,1988)ではCP19.8%の飼料を給与した乳牛は、CP16.1%の飼料を給与 した乳牛より、外側の蹄の長さが長くなり、びっこの数も多くなったが、削蹄はびっこの数を減らしたと報告した。ただし、この試験は頭数が少なく、NDFの 量が低蛋白質飼料群で多かったため、蛋白が関係したかどうかははっきりしない。
ビオチン
従来、ビタミンB群は牛には給与しなくて良いと言われてきたが、最近の高泌乳牛では微生物が合成するだけでは足りないとする意見も出てきている。ビオチン は長鎖脂肪酸、グルコース、合成に関与する補酵素に含まれる物質で、ケラチン質の生産にも関与する。昨年、ドイツの学者がビオチンは蹄組織のケラチン蛋白 の合成に不可欠であり、また、膜同士をつなぐ役割をする物質に含まれる、長鎖脂肪酸の合成にも関与すると報告した(Mullingg,1999)。その後 多くの試験が行われており、10−20mg/日のビオチンの給与は蹄の健康を改善することが明らかになってきている。ただし、ビオチンがすべての状況を改 善できるわけでないので、アシドーシスやその他の要因も同時に取り除く必要がある。
銅と亜鉛
銅と亜鉛もケラチン質の合成に関与するミネラルで、いくらかの研究が報告されている。Mooreら(1998)は乳牛への200mg/日の亜鉛メチオニン の給与は蹄の硬さ、割れの状況、歩行状況から判断して有効とし、Sternら(1998)有機体の亜鉛の給与は酸化亜鉛と比べて肉牛子牛の角質の微細構造 と強度を改善したと報告した。蹄の強度の改善は100mg/日の有機体亜鉛を給与したフィードロットの育成牛でも確認されている。(Relingら、 1992)。
カルシウム
カルシウムは表皮細胞の生化学的な経路(ケラチン層の最終的な角化を含む)を活性化する重要な働きをしている。Mulling(1999)は分娩前後に良 く認められる血中カルシウムレベルの低下は、表皮細胞の最終的な角化に影響を与え、妊娠牛に認められる蹄の”輪”はこれによるものと説明している。よっ て、この時期の血中カルシウムレベルの維持は蹄のダメージを緩和し、その後の蹄の健康に良い影響を与える(Elliot,1999)。また、蹄が根元から 先まで伸びるのには約18-20ヶ月かかる。
環境要因
コンクリート上に立っている時間を少なくすることは、たとえアシドーシスを起こしうる状況であっても、びっこを伴う蹄の障害を減少させる。イギリスでの 130頭2群における試験では、環境、飼料がまったく同じ状況でも片方の牛群にはびっこが多く、もう一方にはまったく発生しなかった。詳しい観察の結果、 びっこが多かった牛群では立っている時間が有意に長く、フリーストールを利用する割合が少なかった。さらに、びっこの多い牛群は45頭に一個の麦わらの ベールが給与されていたのに対し、もう一方の牛群では10頭に1個のベールが与えられていた。びっこの多い牛群に麦わらの給与量を増加させると、その後の びっこの発生はなくなった(Colam-Ainsworthら、1989)。その他、清潔で乾燥した牛床(Bergsten& Petterson,1992)にすること、ゴムのマットの上に立たせる(Bergsten& Herlin,1996)ことは潜在性のびっこにつながる蹄の障害を減らすのに役立つ。
Processed Corn Silageについて
ワシントン州立大の試験ではProcessed Corn Silageのルーメン内でのでんぷんとNDFの消化率は通常のものより高く、微生物体蛋白の増加と乳量の増加につながると報告している。 Processed Corn Silageでは収穫時または詰め込み時にコーンの子実が壊されるため、でんぷんなどの内容物が消化されやすいため。また、ウィスコンシン大の報告による とProcessed Corn Silageの機能性せんいは理論的切断長が(Theoretical Cutting Length)1.9cmの場合まで高まるとしている。ただし、念の為パーティクルセパレータなどで確認しておく必要はある。Processed Corn Silageは通常、飼料分析で推定されたエネルギー値(NEl)より10−20%高くなる。
ビオチンの蹄病に対する効果
この試験は20軒の農家、2705頭のホルスタイン、フリージアンを13ヶ月間にわたって試験し、ビ オチンの蹄病に対する効果を調べたものです。10軒の農家には1日1頭あたり20mgのビオチンを濃厚飼料と一緒に搾乳時に給与し、残りの10軒をコント ロールとし、蹄病の発生状態を観察した。その結果、ビオチンを給与した農家の歩行スコアはコントロールの農家に比べて優れており、びっこをひく牛の数も少 なく、抗生物質による治療も少なかった。ビオチンの給与は乳量には影響はなかったが、夏場の湿った時期には乳脂肪%の低下、バルク体細胞数の減少が認めら れた。(2000 J. Dairy Sci. 83:338-344)
これは非常にラフな試験ですのでビオチンの効果を確認するためには更なる研究が必要かと思います。
コーン粉砕粒度のガイドライン
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スチームフレークコーンの品質
Dairy Herd Management 12月号の記事より
乳牛におけるリンの給与について
家畜の糞尿として排泄される窒素とりんは大きな環境問題となっている。乳牛における飼料中のP
の利用率は比較的高く、また、NRCのBook Valueは実際の分析値よりも低く、Book
Valueを用いて飼料計算をした場合はPが過剰になる場合が多い。Pを過剰に添加するメリットは皆無であり、コストと環境汚染を考えるとデメリットの方
が大きい。糞尿中のP:Nレシオは作物が要求するP:Nレシオの約2倍であり、Pは土壌に蓄積しやすい。飼料中のP推奨レベルは現状では0.48%程度で
あるが、乳量の低い牛群では0.32-0.33%、高泌乳牛でも0.36-0.38%で十分と考えられる。 Cornell Nutrition
Conference、1999 Dr.L. Satter の講演より
日本では特にふすまなどの糟糠類の給与量が多いため、リンの摂取は多いと考えられます。また、カルシウム源として第2リンカルが一般的に用いられて
いるため、ますます多くなっています。今後、この点については見直さなくてはいけないと思います。