最新技術情報
<MASTITIS>牛
の乳房炎に関する事についての技術情報です。 |
前搾りは搾乳時間を短縮する
前搾りはミルクを降ろす非常に強い刺激となるので、ミルカーの装着している時間を短縮することができる。コーネル大学が行った400〜2000頭を搾乳す
る4戸の酪農家で行われた試験でもこのことを確認している。それによると少なくとも1本以上の乳頭で3回の前搾りを行った場合、前搾りを行わなかった場合
に比べて、始めの2分間の乳量は10〜15%多く、ミルカーを装着している時間は6.4〜10%短かった。
ミルクを降ろす量(Milk Let Down
)を記録することは、搾乳方法を教育するのに非常に役立つ。LACTOCORDERという測定機械は0.7秒ごとにミルクの流量を測定し、グラフ化する
が、これを見ることで、搾乳準備が適切であるかどうかを見ることができる。前搾りなど適切な準備を行った牛では、始めの数十秒で流量が急激に立ち上がり、
プラトーとなり、その後急激落ち、グラフは台形に近い形となるが、準備が不適切であると、ピークに達するまで時間がかかったり、搾乳時間が長くなったりす
る。ピーク時の1分あたりのミルク流量が7ポンド(3.175Kg)/分以上あることが望ましい。LACTOCORDERは約$3400する。
(Dairy Herd Management,Dec. 2005)
過搾乳の5つのサイン
過搾乳は乳頭にダメージを与え、乳房炎を増加させます。あなたの搾乳が過搾乳かどうかは以下のサインがあるかどうかで判断できます。
- 搾乳後、乳頭の色が変っている(白っぽくなる)
- ミルキングユニットをはずした後、乳頭の付け根に輪の跡ができる
- 搾乳後半に牛が落ち着かなくなり、ユニットを蹴飛ばそうとする
- 初産牛が搾乳中ずっと神経質になる
- クローやミルクホースにミルクがない状態になっている
(Dairy Herd Management, May. 2005)
ティートディップの適切な取り扱い
米国NMCはティートディップの保存や詰め替えに関して次のことに気をつけるよう指導している
1.製造者がその製品の登録ナンバーをもっているかどうか確認
する
2.清潔で化学反応を起こさない容器をティ-トディップ専用に使用する。
3.残ったティートディップに新しいのを足さない。
4.使用済み容器を再使用する際は、3倍量の水で3回すすぎ、よく水を切ってから使用する
5.農家で別の容器に入れて使用するとき、製造者の名前。、製品名、容量、有効成分、使用方法、有効期限、安全情報などを書き写しておくこと。
6.使い切ったあとはまた、新たに新しい情報を書き込む。
7.容器を移し変える時は衛生的に行う。
8.製品は清潔で涼しく、乾燥した場所に保存し、凍結は避ける
(Dairy Herd staff (Wednesday,November 06, 2002)
乾乳時の乳頭の状態と乳房炎の関係
アイオワ州立大、カンザス州立大、コーネル大、ゲルフ大の300頭以上の乳牛を調査した結果、乾乳2週前の乳頭の少なくとも1本が中程度から強度の過角質
化症またはひび割れがある場合、分娩後新たに乳房炎に感染する確率が高いことがわかった。(Dairy Herd Management,
Feb. 2002)
マイコプラズマ乳房炎を防ぐ方
法
マイコプラズマの乳房炎はマイコプラズマ乳房炎であることを正確に診断できることが必要です。マイコプラズ
マの培養は非常に難しいといわれたこともありますが、実際には適切な培地を使用すればそう難しくはありません。マイコプラズマの培養には通常3-7日かか
リます。もし、乳汁中にマイコプラズマが発見されたら、そのストレインを特定する必要があります。
マイコプラズマ乳房炎を発見するための方法
- 臨床症状を示す乳房炎分房乳を血清寒天培地とマイコプラズマ培地(メディア)で培養する。
- バルクタンクの乳汁を定期的に培養しマイコプラズマがないかどうかをチェックする。
- 初産牛、購入牛は必ず乳汁を培養しマイコプラズマがないかどうかをチェックする。
初産牛の乳房炎を防ぐ方法
分娩前の初産牛を導入した際、新たな乳房炎を牛群に持ち込む危険性が高いそうです。分娩前の初産牛の多くはすでに乳房炎に感染しており、このような状況を
未然に防ぐ必要があります。以下、その方法を述べます。
- 乳房炎感染牛の牛乳が黄色ブドウ球菌やマイコプラズマを含んでいる場合、それが子牛に感染する可能性が大きいので、乳房炎牛の牛乳は給与しな
いか、加熱殺
菌してから給与するようにしてください。
- 黄色ブドウ球菌は口腔粘膜や傷口に存在するので子牛がお互いの乳首を吸いあうことにより、黄色ブドウ球菌が乳頭に感染する危険性がありま
す。、よって、子
牛は1頭づつ別飼いすることが推奨されます。
- ハエも黄色ブドウ球菌の媒介として働きます。特に乳頭に傷のある場合、ハエによって運ばれた黄色ブドウ球菌がその傷に住みつき、いづれ乳頭口
から侵入し乳
房炎になります。
- 大腸菌などの環境性乳房炎の発生率を押さえ、かかったとき軽く済ませるためにJ-5ワクチンを分娩予定日の6週間前とその4週後に接種する。
- 分娩前の初産牛は経産の乾乳牛と一緒にしない。なぜなら乳房炎の原因となる菌に初産牛は抵抗力がないので感染しやすいからです。
- 初産牛の分娩時も経産牛と同様乳房炎に最もかかりやすい時期ですので、清潔なところ分娩させましょう。
- 分娩前の乾乳軟膏の注入
分娩前の初産牛に対する許可された乾乳軟膏の注入は、すでに存在している乳房炎の治療に有効です。1)黄色ブドウ球菌による乳房炎が多いとき、2)分娩す
る初産牛の5%が臨床症状のある黄色ブドウ球菌の乳房炎にかかるとき、3)原因菌は特定していないが初産牛が乳房炎にかかる割合が多いとき
などは獣医師と相談して、以下の処置をおこなってください。以下の方法で黄色ブドウ球菌の乳房炎はほぼ100%直るそうです。はらみの初産牛を購入した場
合も行うことを推奨します。
- 分娩予定日の2ヶ月以上前に乳房とすべての乳頭をさわって、硬くなっているところがないか、しこりはないかチェックする。
- その際、乳頭からの分泌物についてもチェックする。もし、粘度のある蜂蜜のような分泌物であれば問題ないとして放す。
- 分泌物がホエーのようにさらさらで、白いぶつがあるようであれば、獣医師に言って黄色ブドウ球菌が存在するかどうか検査してもらう。
- クレートに入れ保定する。
- 滅菌したゴムてぶくろをして、サンプルを取る毎に手を殺菌剤で消毒する。
- 乳頭先端を消毒用アルコールに浸した脱脂綿で拭き、滅菌したサンプル管にサンプルを取る。
- バリアタイプのティートディップで乳頭を浸す。
- 黄色ブドウ球菌が発見された牛は次の方法で乾乳軟膏を注入する。
- 牛を保定し、乳頭を消毒用アルコールに浸した脱脂綿で拭く。
- 効果の認められた乾乳用軟膏を注入する。その際、ケラチンプラグをいためない様に注入口を乳頭口に浅く挿入し、ゆっくりと注入する。
- バリアタイプのディッピングを行う。
- 治療した牛は分娩後3-4日目に再び乳汁を検査し、直っているかどうかチェックする。
- 分娩予定日より早く生まれたときは、乳汁を出荷する前に抗生物質の検査を必ず行う。
コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(黄色ブドウ球菌でないもの)のプロトコール
非黄色ブドウ球菌の場合、分娩前の初産牛の約半分が感染しているとの報告がある。しかし、このタイプは抗生物質が良く効くので次の方法で処理すると良い。
- 分娩予定日の3週前からミルキングパーラーに馴らし始める(入れるだけで搾乳はしない)。
- 分娩予定日の14日前に次の順序で乳房炎軟膏を4本の乳頭に注入する。
- パーラーに入れる。
- 殺菌力の確かなディッピング剤でプレディッピングを行い、最低30秒そのままにする
- プレディップを使い捨てのペーパータオルで拭き取る。
- 消毒用アルコールを浸した脱脂綿で乳頭口をきれいにする
- 乳房炎軟膏を注入する。
- 分娩予定日より早く生まれた際には、乳汁を出荷する前に抗生物質の検査を行う
いつ、なぜ、どうして大腸菌性の乳房炎にかかるのか
大腸菌は乳房炎起因菌のなかでも大きな割合を占めるが、これを予防するのは非常に難しい。しかし、最近のUKの研究では乾乳期とそれから引き続く感染が重
要なポイントとなっていることが確認されている。
いつかかるか?
乾乳期は非常に重要で、新規に感染する大腸菌性乳房炎の60%以上がこの期間に感染する。乾乳期のうちでも特に”乾乳直後”と”分娩直前、直後”の時期が
感染し易く、その間の期間は比較的感染しにくい。この時期に感染した大腸菌は、しばらくは臨床症状を現さず、分娩後しばらくたって(長い場合は200日以
上たって)臨床症状を現す。よって、問題は臨床症状を発現した時でなく、それ以前にさかのぼって、原因を究明しなくてはならない。
どうやって感染するか?
大腸菌は牛舎のどの部分にも存在しており、乳頭口から侵入して感染する。よって、牛舎環境を清潔にし、大腸菌の数を少なくするとともに、乳房、乳頭をこれ
らの菌となるべく接触させないようにすることが必要である。通常、乾乳後、乳頭口はケラチンプラグで密閉され、菌の侵入を阻止するとされているが、最近の
データによると、50%は乾乳後1週間たってもふさがっておらず、5%は乾乳後100日たってもふさがっていなかった、そして新しい大腸菌性の乳房炎の
97%はこれらのケラチンプラグのふさがっていない乳牛で起こったと報告されている。よって、このことを解決するためには乾乳期間中(特に乾乳直後)、乳
頭口に人工的に皮膜(ティートシーラント)を作る方法が有効で、これによって、約50%大腸菌性の乳房炎が減少したとの報告がある。
なぜ臨床症状を現す牛と現さない牛がいるのか?
臨床症状があらわれる引き金になる多くの要因があるが、その中でもっとも大きいのはストレスと免疫力の低下である。これは分娩直後の乳牛に臨床症状があら
われやすいことでもわかる。よって、エネルギーの充足度や微量ミネラル、ビタミン、特にセレンやビタミンEは重要である。また、ストレスと言う意味ではそ
の他の病気や発情期などがきっかけになって発病する場合もある。
どうやって防ぐか?
大腸菌性の乳房炎はいろいろなファクターが重なり合って起こるため、1つのことを行ってすべてがうまくいくことにはならない。ただ、感染させないことが重
要で、そのためには環境を清潔にすることが最重要課題である。牛床のベッドを大腸菌が繁殖しにくい砂にすることなどは大きな効果がある。次に、乾乳は感染
する機会を減らすためにも1発乾乳が望ましく、この感染し易い時期(乾乳時、分娩前)にティートシーラントで皮膜を作り、大腸菌を侵入させないことも効果
がある。もちろん乾乳軟膏を用いて乳房内を菌のいない状況にすることは必須である。このように対策をしてもいくらかは感染しするので、そのような乳牛には
適切な栄養管理(ビタミン、微量ミネラルを含む)により、余計なストレスを与えないようにし、発病しないようにするしかない。J5のようなワクチンは臨床
症状の発生を減少させ、症状を緩和するのに役立つ。
(Hoads Dairyman September 10,2001)
夏場の体細胞数を減らす方法
夏場は暑さによるストレスは牛の抵抗力を低下させ、微生物の生育に適し
た気温と湿度は環境に存在する微生物の数を爆発的に増加させる。この2つのことが夏場の乳房炎を増加させる大きな要因となっている。この対策としては牛が
できるだけ快適に過ごせるようにあらゆる手段を講じる必要がある。(Hoads Dairyman, July 2001)
- 牛のストレス源として見過ごされ易いが、サイレージのカビは問題となる。
- Kを給与してDCADを上げる(飲水量を増やし、血液pHを上昇させ、ストレスを緩和させ
る)
- 飼料濃度を上げることは一時的には乳量の増加につながるが、多くの場合アシドーシスにつな
がり長期的な問題となり易い。
- 乳頭、乳房付近のバクテリアの数を下げるあらゆる方策を採る。
- 搾乳室を涼しくする。牛のためだけでなく搾乳する人を働き易くするため。
- 牛の通路の除糞を頻繁に行う。
乾乳期間中の乳房炎感染を
最小限にする方法
乳房炎にもっとも感染し易いのは乾乳時、分娩前後、そして乾乳後の2-3週間である。これらの期間の感染を
防ぐためには次のことを実行する。(Hoads Dairyman、 August 2001)
- 乾乳は1発乾乳とし、アルコールで乳頭先端を消毒し、乾乳軟膏の先端の1部を乳頭口に挿入
し、注入する。
- 乳頭全体をディッピング剤で浸漬する。
- 乾乳期間は60日とする。
- 牛を清潔で乾燥した場所に放す。ケラチンプラグの形成には2-3日かかる。
分娩前2-3週からビタミンEとセレンを飼料に添加する。分娩前にはビタミンEとセレンの注射も行う。
夏場の体細胞増加を防ぐ
昨年は5月のDHIの平均SCCが31万だったのが、7-9月の夏場には39万になり、11-12月の冬場
には30万まで下がった。夏場のSCCの増加は、ストレプトコッカスや大腸菌性などの環境性の乳房炎によるもので次のような対策が有効となる。
(Hoards Dairyman, 2001年6月号〕
- 乳牛にはきれいで、乾燥していて、心地よい日陰を提供してやる。
- 牛舎やホールディングペンや飼槽の周りは換気を良くする。
- 常に清潔で新鮮な水が飲めるようにする。
- 清潔な環境下で初めて、清潔で乾燥した乳頭で搾乳することができる。プレ、ポストディッピ
ングは良い搾乳の一環である。
- 飼料は蛋白、エネルギー、繊維、ビタミン、ミネラルなどバランスの取れたものを給与する。
夏場は乾物摂取量が低下するので注意を要する。
搾乳方法が乳質に影響する
ペンシルバニア州のDHIAでの115軒(牛群サイズは13頭から510頭、平均71頭で、スタンチョンで
パイプラインミルカーを使用している農家が約70%)に対し搾乳方法と乳質に関するアンケートを行った結果次のようなことが判明した。(Hoards
Dairyman, 2001年6月号〕
- SCCが最も低い農家は搾乳中、常に手袋をし、前搾りを行っていた。
- ディッピングにディッパーを使用してプレディッピングをしている農家のSCCは平均より低
く、スプレーを使用している農家は平均より高かった。
- 1頭1頭別々のペーパータオルかタオルを使用しているところのSCCは平均より低かった。
- 良いといわれることをすべて実践している農家はいなかったが、これらのことをより多く実践
することにより平均SCCは低くなっていた。
一般的に推奨される搾乳方法は以下のとおり。これらをすべて実践すれば、SCCは下がる。
- 搾乳方法を紙に書いて全員がその方法を理解し、実践する。
- 搾乳中はゴム手袋をしている。
- 前搾りをする。
- ディッパーでプレディッピングをする。
- 乳頭の洗浄と乾燥に1頭ずつ別々のペーパータオルを使用する。
- ポストディッピングを行う。
イースト菌由来の乳房炎対策
イースト菌由来の乳房炎は数は少ないが、どうやってそれを予防するかをしておくことは重要である。イーストは環境中に多く存在するが、イースト菌由来の乳
房炎は乾乳軟膏を注入するなどの治療行為の際、衛生管理が十分でないことによって感染することが多い。たとえば、乳頭が汚れているのにそのまま乳頭に軟膏
を注入したとか、何頭にも同じもので注入したとか。乳汁がもれている場合などにも感染することがある。
イーストの乳房炎の症状は他の乳房炎の症状、特に大腸菌性の乳房炎と似ている。まず、熱が出て、乳房が腫れるが1週間程度で腫れは収まり、2-3週
間は菌が検出されなくなる。大腸菌とイーストとの違いは大腸菌の場合はルーメンの動きが止まるのに対し、イーストの場合は正常である点である。イーストは
スメアを作ることができれば血清寒天培地上で簡単に培養でき、グラム染色を使用することにより、大きなグラム陽性のフットボール型に見えるため容易に判別
できる。また、培養が進めばイースト特有の匂いがしてくるためすぐわかる。
イースト菌には抗生物質は効かないが、数日で通常自然治癒するため、細菌培養検査の結果を待って、抗生物質による治療を行うかどうか決める方が良
い。こうすることにより、抗生物質の代金と、出荷停止期間の乳代が無駄にならずにすむ。
イーストの乳房炎を防ぐためには抗生物質の乳頭注入の際、乳頭先端を丁寧に殺菌し、手は殺菌した手袋をし、軟膏を注入する機器は必ず使い捨て(1乳
頭に1回)とすることである。
(Bovine Veterinarian 2001年3月号)
ミルクホースは太いほどよいのか
ミルクホースを太くすることが推奨される場合があるが、次のような欠点もあり、一概にいいとはいえない。1)ミルカーが扱いにくくなり、ミルカーの装着時
の収まりが悪くなる場合がある。それによるライナースリップが起こりやすくなる。 2)ライナースリップやミルカーが落ちた時に吸い込む空気の量が多くな
るため、より大きな容量のバキュームポンプが必要となる。 3)洗浄が難しくなり、洗浄のための水や洗剤の使用量が増加する。 重要なのはクローでの真空
圧の変動がローラインで2インチ水銀、ハイラインで3インチ水銀以下であることである。5/8インチのミルクホ-スと7/8インチのもの平均真空圧の差
は、ミルクの流量が1.5ガロン/分の時で1/4インチ水銀以下となっており、そんなに大きな差ではない。このぐらいの差であれば、ミルクホースを不必要
に長くしないで、ねじれを避け、リフトの高さを30cm程度下げたり、真空圧を1/4インチ水銀上げて、自動離脱装置を装着するなどしても同様な結果が得
られる。(Western Dairy Business 2001年2 月号)
初産牛の乳房炎を防ぐには
分娩前の初産牛の乳房炎を防ぐことは牛群全体の臨床型乳房炎と体細胞数を減らす上で重要である。初産牛が乳房炎に感染する原因は完全にわかっているわけで
はないが、乳房炎牛の廃棄乳を飲んだ子牛がお互いの乳首を吸いあったり、牛床が汚れていたり、ハエにさされたり、乳頭に傷を負ったりすることなど原因と考
えられる。これらの初産牛の乳房炎起因菌はほとんどすべての菌を含んでいる。通常、分娩前の初産牛の乳汁は蜂蜜のような形状であるが、乳房炎に感染してい
るとそれが水っぽく中にぶつがあるようなものになっている。初産牛の分娩予定日の45日から60日前に乾乳軟膏などの抗生物質の治療を行った場合、乳房炎
の発生率が50−60%低下し、分娩後体細胞が低く、乳量も10%多くなったとの報告がある。 ただし、分娩予定日より早く生まれた場合、乳汁に抗生物質
が出る場合があるので注意が必要である。黄色ブドウ球菌の乳房炎がある農家では、経産牛
だけでなく初産牛の乾乳治療(少なくとも予定日の45日前)も行った方がよい。(Western Dairy Business 2001年2 月号)
乳房炎を防ぐ乾乳時の処理の仕方
どんな善いディッピング剤を使用しても、どんなに良い搾乳機器を使用しても、基本的な乾乳時の処理ができていないと乳房炎はなくならない。乾乳時にはあま
り注意が払われていないが、重要なポイントである。牛群の中で乾乳前には乳房炎でなかったのに、分娩後すぐ乳房炎になった牛が何頭いるかを数えれば、乾乳
時の処理が適切に行われているかどうかがわかる。 (Hoard's Dairyman 2001年 5月 25日号)
- 乾乳時の処置に使用する器具は殺菌消毒し、清潔な場所に保存する。
- 最後の搾乳時には完全に搾りきり、ディッピング剤で乳頭全体を完全に浸し、最低30秒はそのままにする。その後は清潔なタオルで完全に乾燥さ
せる。
- アルコールに浸した脱脂綿で乳頭先端を完全に消毒する。あまり小さい脱脂綿を使用すると、使用前に乾燥してしまうことがあるのである程度の大
きさであるこ
とが望ましい。
- 乳頭先端が完全にきれいになるまで何回も脱脂綿を交換して消毒を行う。この場合、自分から遠い側の乳頭から行うこと。
- 4本の乳頭を完全に殺菌した後、乾乳軟膏を注入する。乾乳軟膏の注入は自分に近い方から行うこと。
- 注入器具は殺菌されたものを使用し、先端を最低限(3mm程度)しか挿入しないこと。
注入終了後、バリアタイプのディッピングを行うことを推奨する。
乾乳期治療を成功させるための要因
乾乳期治療で乾乳時におもな乳房炎起因菌に感染した牛の40-60%が治癒する。乾乳期治療による効果に影
響を与える要因には次のようなものがある。(Dairy Herd Management 4月号)
- 牛の年齢 (年取った牛は直りにくい)
- 乾乳前の体細胞数(乾乳前の体細胞数が多い牛は直りにくい)
- 何本の乳頭が感染しているか(複数感染していると直りにくい)
- 抗生物質に対する感受性(ペニシリン抵抗性をもつ黄色ブドウ球菌由来の乳房炎は直りにく
い)
- 抗生物質の選択(適切な抗生物質の選択が治癒率を向上させる)
- 複合治療(抗生物質を局所と血管注射の両方で処理すると治癒率が向上する)
体細胞数はどこまで下げるべきか
体細胞数が少ない牛は病原菌に感染しやすく、例えば体細胞数が5万/ml以下の乳牛では臨床型の乳房炎に感染する確立が高く、その程度もひどくなる。よっ
て体細胞が低い程よいということにはならない。オランダの調査では牛群の平均体細胞数が10万以下の牛群は40万の牛群より、臨床型乳房炎に感染する割合
が高かったと報告しており、イギリスでも同様の報告がなされている。しかし、バルクの体細胞の話をする場合、そのばらつきが問題で、バルクの体細胞数が同
じでも、すべての牛がその平均レベルなのか、極端に低い牛、高い牛がいてその平均になっているのかで状況は異なるし、大多数の酪農家においてはバルクの体
細胞数を低下させることはまだ利益があることと考えられる。(Dairy Today, March, 2001)
大腸菌性乳房炎の症状のレイティングとその治療方法
大腸菌性の乳房炎に感染した場合にどのような処置をすればよいのか? 正しい答えは症状によって対応を考えるということである。大腸菌性の乳房炎の場合、
その程度は非常にばらつきが大きいため、経済的な治療の方法を選択するのが非常に難しい。そこで症状の程度をスコア化して対応を決める方法がコロラド州立
大学で開発された。スコアリングには直腸温(0,1,2)、脱水症状(0,1,2,3)、ルーメンの動き(0,1,2)、牛の態度(0,1,2)が使用さ
れ、それらのスコアのトータルして軽症(Mild)、中程度(Moderate)、重症(Severe)に分類する。彼等の研究によれば大腸菌性の乳房炎
で淘汰された、もしくは死亡した割合は軽症と診断された牛で9%、重症と診断された牛で52%であった。さらに血液中に病原菌が存在する
(Bactermia)割合は軽症の牛で4%であったのに対し重症牛では40%以上になった。中程度の症状の牛に対する抗生物質の治療は乳量の減少と、乳
中に抗生物質が残留するリスクを考えるとに、経済的に無意味であり、重症の場合も抗生物質で治療しても死ぬ確率が高い。
大部分の大腸菌性乳房炎は乳房の中央部に発生し、食欲、乳量が低下し、やや元気がなくなり、熱もあるかないかという中程度の症状を示す。感染した場所は熱
を持ち、堅くなり、腫れ、分泌物を出す。このような場合にはオキシトシンを用いて(用いなくても良いが)乳汁を絞り出し、抗炎症剤の投与と経口補液療法を
おこなうことで直る場合が多い。このような場合には抗生物質の使用は推奨しない。抗生物質を使用しないことで、乳汁中に抗生物質が出ることがなくなり、治
療コストを下げることができる。症状が中程度から重症であれば回復する見込みは少ないか、回復に時間がかかる。この症状では抗生物質を使用する意味があ
り、経口補液療法もあわせて治療する。重症の牛は死ぬ確率が高いため、安楽死を考えるのも
一つの対処方法でもある。スコアによる治療方法については更なる研究が必要である。
乳房炎スコアリングシステム
パラメーター |
診断 |
スコア |
直腸温(℃) |
37.8-39.3
39.3-39.8
39.8以上 |
0
1
2 |
脱水症状 |
普通
軽度
中程度
顕著 |
0
1
2
3 |
ルーメン収縮率
(収縮回数/分) |
2回以上
1回から2回
なし |
0
1
2 |
牛の態度 |
通常
元気がない
全く元気がない |
0
1
2 |
判定
トータルスコア(各項目の合計) |
程度 |
0−2
3−5
6−8 |
軽症
中程度
重症 |
種雄牛の遺伝的形質と臨床型乳房炎の発生頻度
ペンシルバニア州立大で行なわれた試験では、体細胞数が高い牛の種雄牛の娘牛は、そうでない種雄牛の娘牛に比べて臨床型の乳房炎の発生頻度が2倍だったそ
うです。また、体細胞数のほかに、生涯期間が長い(Longer productive life)、乳房の付着が浅い(Shallower
udder)、乳房が深くても分かれたタイプ(a deeper udder
cleft)、乳房が前方に強く付着(strongly-attached fore
udders)などの遺伝的形質を持つ種雄牛の娘牛は臨床型の乳房炎の発生が優位に少ないそうです。乳房が汚れにくい形であることが重要と言うことでしょ
うか。(Dairy Herd Management、2000年 12月号)
乳房炎の発生源をチェックする方法
乳房炎の発生源を明らかにするには、現在の状況だけでなく、季節的な要因や、過去の状況もチェックする必要があります。
1)すぐに影響が出てくるタイプ:敷料の病原菌汚染、感染牛の購入など。
2)季節的に繰り返すタイプ:おがくずの敷料を使っている場合、夏場に大腸菌が増殖する。
3)過去にあったことが影響してくるタイプ:数ヶ月前にディッピング剤を変更したことなど。(Dairy Herd Management、2000年
12月号)
乳牛を他の農家から購入する際はバルクタンクの細菌培養検査をしましょう
他の農家から乳牛を購入する際、購入した乳牛(初産牛も含めて)から伝染性の乳房炎(Strep ag, Mycoplasma
bovis)が蔓延する危険性があります。そこで、購入する際には購入先のバルクタンクの細菌培養検査をすることが推奨されています。方法は3-4日おき
に3回、バルクタンクのサンプルをとり、これらの乳房炎の起因菌が存在しないことを確認します。もし、存在していたら、購入は見合わせたほうが無難だそう
です。(Dairy Herd Management、2000年 12月号)
ライナーの交換時期は重要
Wisconsin大学の試験で、ミルカーのライナー交換の推奨時期(通常1000-1200回)を越えて
使用した場合(840回、1680回、2520回)どのようなことが起こるかを調査した。その結果
搾乳時間が延び、ピークのミルクフローも少なくなり、陰圧が不安定になる頻度も増加した。(Dairy
Herd
Management, Oct 2000)
|
新しいライナー |
古いライナー(全部の平均) |
搾乳時間 |
8.9分 |
9.4分 |
ピーク時のミルクフロー |
10.12ポンド |
9.02ポンド |
陰圧が不安定になる頻度 |
24 |
53 |
乳質改善のためのチームアプローチ
Wisconsin州では、大学の普及の先生が中心になって乳質改善のためのチームアプローチを推奨し効果
をあげている。チームアプローチとは農家が信頼している酪農関係者に月に一回、1時間程度集まってもらい、乳質改善のために何をすべきかをそれぞれの立場
から指摘し、議論し、目標を設定し、それを実行する方法である。多くの場合、集まる酪農関係者は獣医、大学の普及員、栄養コンサルタント、搾乳機器メー
カー、および実際に搾乳を行なう従業員などで、それぞれ、今までに考えてもいなかったようなことが指摘される事が多くある。このチームアプローチの効果は
絶大である。乳質改善に関してのウェブサイトとしてWisconshin大学のウェブサイトがある。http://www.uwex.edu/milkquality/かhttp://www.wisc.edu/dysci/
に行って”Milk Quality”をクリック。このウェブサイトは5分以下のビデオクリップがあり、ミルクサンプルの取り方、乳房の毛の取り除き方、
搾乳方法などの基本的な技術が学べるようになっている。(Dairy Herd Management, Oct 2000)
乳房炎による経済的損失
SCCが増加した場合、乳質が低下し、ペナルティーをかけられるが、実際の経済損失への影響が大きいのは、乳房炎牛の淘汰と乳量の減少である。SCCが
20万以上で、牛群の2%以上が臨床型の乳房炎で治療をしている場合、年間一頭あたりで$175以上の損失につながっている。その他の知っておくとよい乳
房炎の経済的損失は
- 臨床方乳房炎の1頭あたりの平均治療費と乳量の損失額は$200
- 分娩後5週間以内に感染した乳房炎は、泌乳後期に感染した場合の1.45倍の乳量損失となる。
- 2産目以上の経産牛 が臨床型の乳房炎になったときは、初産牛に比べて2倍の乳量の損失となる。
- CMTテストで陽性で臨床症状のない乳房炎牛の場合、乳価が$13/100ポンドとして、平均$148の損失になっている。
- 分娩後5週間以内に臨床型の乳房炎が発生した場合、7%の牛が淘汰されるか早期に乾乳されている。
- ひどい臨床型の乳房炎の場合、60日以内に13%の牛が淘汰され、8%の牛が早期に乾乳されている。
- 臨床型の大腸菌性乳房炎の場合、23%の牛が泌乳期間を終える前に死亡するか、淘汰される。
- さまざまな報告をまとめてみると、乳房炎による乳量の損失はトータルの生産量の10-30%に達している。
目標値としては 1)牛群での体細胞数20万以下、 2)一ヶ月あたりの臨床型乳房炎の発生割合は1%、 3)乳房炎による淘汰割合は5%以下、4)乳房
炎による死亡は0
(Dairy Herd Management June2000)
細菌培養テスト結果をどのように生かすか
バルク乳や固体乳の細菌培養検査により、牛群で乳房炎の原因になっている菌が特定できる。
菌を特定したあとどこに問題があって、この菌が乳房炎の原因になっているのかを調べ、その対策を講じなくてはならない。これを行うためには次に示す2つの
方法がある。
1) 乳房炎の原因菌を特定する
定期的にバルクタンクの牛乳サンプルをとり培養し、購入した牛がマイコプラズマ(Micoplasma bovis)などの病原菌を持ち込
んでいないかをチェックする。もし、発見された場合、それぞれのグループを固定し、グループの搾乳が終わるごとにサンプルをとり、どこのグループに病原菌
を持った牛が居るのかを特定し、さらにそのグループの30-50頭ごとに固体の検査を行い、病原菌を持った牛を特定する。この方法によりこの病原菌に起因
する乳房炎を制圧することができる。
2) 乳房炎予防の管理を向上させる。
乳房炎の起因菌を特定した後、乳汁の培養をすることでさらに乳房炎予防を徹底させることができる。
乳房炎起因菌に対しどの抗生物質が一番効くかを特定できる。しかし,グラム陰性菌である大腸菌(E Coli)は、黄色ブドウ球
菌(Staph.
aureus)のようなグラム陽性菌のように抗生物質は効かない。よって、グラム陰性菌が起因菌であれば獣医と抗生物質の使用が有効か、補助療法
が有効かを相談しなくてはならない。
バルクタンクのサンプリングは1回だけでなく1週間から2週間おきに定期的に行い、飼養管理に役立てることができる。もし、大腸菌が多くなって
いることがわかれば、環境が悪いことに原因があり、牛床のクリーニングの回数を増やしたり、敷料を変えたりするなどの対策を取れる。また、コリネバクテリ
ウム(Corynebacterium bovis)が発見されれば、この病原菌は乳房ではなく、乳頭口に存在するため、不適切な乳頭
ディッピングが問題であることになり、ディッピングの仕方、ディッピング剤を検討する必要がある。その他の乳房炎起因菌の特徴を表に示す。
起因菌 |
菌が存在する場所 |
対策 |
黄色ブドウ球菌(Staph. aureus) |
感染牛の乳房、乳頭の傷、乳房の皮膚表面 |
1頭に1枚のタオルの使用、手の消毒、効果あるディッピング剤を使った適切なディッピング、搾乳機器の殺菌消毒 |
連鎖球菌(Strep.ag) |
感染牛の乳房 |
上記と同じ |
(Strep. uberis, Strep. dysgalactiae) |
牛、環境 |
清潔な環境(特に牛床)を維持する。適切な搾乳前準備 |
大腸菌(E coli, Klebsiella) |
糞尿、敷料(特におがくずなど) |
上記と同じ |
マイコプラズマ(Micoplasma bovis) |
感染牛、未経産牛 |
適切な乾乳牛治療と搾乳機器の殺菌消毒 |
コリネバクテリウム(Corynebacterium bovis) |
乳頭口 |
適切な乳頭ディッピング |
また、乳房炎の原因菌によっては治療をあきらめ淘汰する方がよい場合もあり,黄色ブドウ球菌やマイコプラズマ(Micoplasma
bovis)などはその例である。
サンプリングの注意点
固体乳:乳頭先端はアルコールに浸した脱脂綿などで消毒し、サンプル容器はやふたは決して地面に置かず、サンプル容器の口の周りには決して触らない。
バルクタンク:サンプリングはよくかき混ぜた後、タンクの上から採取する。決して、バルブからサンプリングしないこと。サンプル
は3-5日連続してとり、それをあわせてサンプルとする。 (Dairy Herd Management June2000)
体細胞数が生乳品質に及ぼす影響
高体細胞数の牛乳は製造後15-21日で異常臭、異常風味などの品質上の問題が発生する。 (Dairy Herd Management
June2000)
初産牛の分娩前乾乳軟膏の注入は効果あり
初産牛の臨床型の乳房炎は乾乳期に感染していることが多く、また、分娩前後の時期に感染した初産牛の1ヶ月後の淘汰の確率は高い。よって、すべての初産牛
に対し、分娩予定日の2週間前に泌乳期用の乳房炎軟膏を注入することで、分娩前後の乳房炎感染を防ぐことができる。(Hoad’s Dairyman
June 2000)
乳房炎の原因になる搾乳機器のチェックポイント(2000年5月)
搾乳機器の調製が乳房炎と密接に関わっていることはよく知られていますが、具体的なチェックポイント、盲点となる点について書かれている文章を
Hoard's Dairyman
4/25/00号で見つけましたのでご紹介します。ただし、私自身搾乳機器に詳しくないのでわかりにくいところは英文を併記しております。
わかりますか?
レギュレーター
レギュレータがうまく作動しないときはミルカーの陰圧(Vacuum)が安定せず、乳頭先端に傷をつけたり、乳房炎を起こしたりする原因になる。レギュ
レーターセンサーユニット(Reglator Sensor
Unit)付きのいくつかの機械でも同様な問題が起っている。センサーユニットの中のアジャスタブルエアーノズルの下にたまったほこりが、エアーフローや
レギュレーターの動作を妨げる。ミルカーが外れてシステム内へのエアー侵入に対し反応が遅くなるなど、バキューム動作に差が出る。あるハイライン農家での
測定では、14-18インチ水銀の差があった。通常、レギュレーターの掃除は頻繁に行っても、センサーについては忘れがちである。メーカーは1年に一回、
または1250時間に一回、エアーノズルを掃除することを推奨しているが、これでは不十分な場合もある。センサーユニットの外側が汚れていれば、内側も当
然汚れていると考え、1週間に一回はコンプレッサーの圧縮空気で掃除する事を勧める。ただし、決して分解しない事。
パイプラインの直径
また、レギュレーターに問題がなくても、レシーバージャーでの真空圧の変化を感知できなければ、乳頭先端の真空圧を一定に保つ事はできない。
National Mastitis Council
の搾乳機器点検方法にしたがって、レシーバージャーの真空圧を0.6インチ水銀にまで下げたとき、あるシステムのレギュレーターの真空圧が変化しないこと
があった。これはパイプラインのせいで、エアーが6個のエルボーに来るまでにレシーバーとレギュレーターの間の一個所のパイプラインの直径の変化が量にし
て70フィートのまっすぐなパイプより大きな真空圧のロスにつながっていた。
これを改善するためには、エルボーの数やくびれを少なくするように配管をやり直すことが必要であった。
クロー
クローの真空圧は12インチが適切であるが、ミルクをハイラインに持ち上げるためのミルクホース30cmごとに1/3インチ水銀真空圧をロスする。
よって、長すぎるホースとハイラインは乳頭先端の真空圧低下につながり、搾乳時間の増加とライナースリップの増加につながる。自動離脱装置をラインに接続
する事が一般的になっているが、これはミルクホースをユニットの中で2回持ち上げる事になり、状況を更に悪くする。
これを防ぐためにはミルクホースをできるだけ短くする事が必要である。クローの真空圧が低すぎるのは問題であるが、逆に高すぎるのも問題である。それは、
分娩直後の牛や乳房炎の牛を搾乳するためバケットを使用した場合によく起る。これはミルクをハイラインに上げる必要がないために起るもので、この場合真空
圧は14インチを越える。このことは敏感な牛の乳頭先端にダメージを与える。初産の分娩直後の牛には特に問題である。
パイプラインのスロープ
パイプラインが平坦であったり、逆勾配であったりする事は驚くほど多い。もし、3頭の搾乳が早い牛を直径2インチのミルクラインで搾乳すると、クローの真
空圧が不安定になり、ライナーのスリップが起る。このような状態のとき、2インチのミルクラインを3インチに変えるよりまず、ラインに勾配をつける事を考
えるべきである。このほうが少ない投資で問題が解決できる。
乳牛の管理
米国と英国の研究では環境性の乳房炎の半分は乾乳中に感染する大腸菌かストレプトコッカスによるもので、乾乳直後か、分娩前2週間が
もっとも感染しやすい。よって、これらの牛は最も清潔なところに置くべきであるが、現実には密飼いで、汚いところにおかれがちである。乾乳時の乳房炎軟膏
の注入、ワクチンの接種だけでは不十分である。牛の乳房を清潔に保つためにフリーストールを利用するのも一つの方法である。
ディッピング剤のスプレー
搾乳者が逆戻りのしないディッピング容器より旨く、乳頭にスプレーできる事はまずない。高体細胞の牛群でのコリネバクテリウムなどのマイナーな菌の蔓延は
ディッピングが完全に行われていない事を示している。ストレプトコッカス
アガラクチェの蔓延はディピングがうまくいっていない証拠である。このような場合、スプレーは辞めて、ディップにするべきである。
泌乳開始時の過搾乳 (Dairy Herd Management 5月号、Hoad's
Dairyman
4・25号)
日本でも有名なDr.Andy Johnson
は過搾乳は搾乳終了時だけでなく、開始時にも起ると言っています。ミルカーを装着した後、10-15秒ミルクが出て、その後30秒ミルクが止まって、その
後、通常の搾乳が始まるような場合も過搾乳となるそうです。これを防止するためには適切な搾乳前処理(前絞り、乳房洗浄
またはプレディッピング、そしてその一定時間後の搾乳開始)が必要としています。
また、乳頭の先端が赤くなったり、硬くなったり、炎症を起こしたりすることが頻繁にあったり、分娩後数週間の初産牛が搾乳中に蹴ったり、痛がったり
することがあれば、搾乳機のチェックをする必要があります。クローの真空圧が低いことや <long unit
on-time>(私にはどういう意味かわからないので、わかる人がいればお知らせください。)がこれらの2大原因です。
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