最新技術情報
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の飼養管理に関する事についての技術 |
乾
乳牛の飼養管理についての最新情報
乾乳牛の飼養管理についての最近の情報を整理してお知らせしたいと思います。従来の話と矛盾する点などもありま
すが、要はまだまだ技術として固まっていないと言うところでしょう。そこのところを理解したうえで、いろいろ試してみてはいかがでしょうか? 私も現在、
いろいろ取り組んでいますので、その辺の話も交えてお話します。
1.乾乳前期の牛のエネルギーレベル
乾乳前期の牛のエネルギーレベルは低くしておくべきとの報告が出ています。1.3〜1.4Mcal/Kg程度とのことですが、通常の飼料でこのエネルギー
レベルにするのは困難で、普通はもっと高くなってしまいます。そのため、麦わらを5cm程度に切断し、1〜3KgTMRに混合して濃度を落として給与する
と良いとされています。こうすることで、乾物摂取量自体は少し低下しますが、ルーメン内に十分な繊維が長時間滞留するため、ルーメン機能が正常に保たれ、
分娩時〜分娩直後の乾物摂取量の低下が防げると言うことです。麦わらを給与する際の注意事項としては5cm以下に切断する、TMR
に混ぜる、1週間程度慣らすことがあります。クローズアップ牛にいきなり麦わらを加えたTMRを給与すると、食えなくて返って疾病になりやすくなるので注
意が必要です。また、この時期にでんぷんなどを多く給与すると、血糖値が高い状況が長く続くことになり、イ
ンスリン抵抗性を持った牛にしてしまう危険性があるのでやめた方が良いとのことです。
2.クローズアップ牛のでんぷんレベル
クローズアップの牛には分娩後の濃度の高い飼料(でんぷん多給)に備えて、ルーメンおよびルーメン内微生物をでんぷんに慣らしておかなくてはなりません。
ただし、この時点で急に大量にやるとアシドーシス、四変になってしまうので注意が必要です。でんぷんレベルが少なすぎると泌乳初期の乳量が低下し、逆に、
多すぎると分娩後に乳房浮腫やケトーシス、四変が起こりやすくなるようです。適切なレベルは水溶性繊維含量にもよりますがでんぷんで18〜20%DM 程
度と考えます。
3.DCAD
クローズアップの牛にやる粗飼料はカリが高くないことが前提ですが、仕方なくカリの高い粗飼料を使用するときはDCADを調整する必要があります。今まで
リンやマグネシウムレベルを高め、カルシウムレベルを60g以下に抑えることで対応してきましたが、乳熱は起こらないものの、分娩後の食い込みや乳量に今
ひとつという感触でした。やはり、DCADを適切に保って潜在性の乳熱を防ぐことで、分娩後の乾物摂取量、乳量を高めることができるのではないかと思い、
現
在、クローズアップの牛に硫酸カルシウムを100〜150g添加し、DCADを100mEq/Kg以下にして、その後の様子を観察しています。硫酸カルシ
ウムは価格的に安く、量が少なくてもDCADを下げることができ、おまけに嗜好性もそんなに悪くないので使用しやすいと思います。さらに、DCADを下げ
た場合はカルシウムを補給しなくてはなりませんが、硫酸カルシウムはカルシウムも補給できるので安心です。尿中pHなどそんなに気にしなくてもやることが
でき、効果があればこれに越したことはないと思って、結果を楽しみにしています。
4.クローズアップ牛への油脂給与
乾乳牛に油脂を給与することは脂肪肝の原因になると考えられてきましたが、最近の研究ではまったく逆で脂肪肝を予防すると言う結果が出てきています。この
時期、エネルギーを補給することで体脂肪動員を抑えるほか、あらかじめ油脂を給与することで肝臓組織での脂質代謝に慣れさせることができ、肝臓の脂肪蓄積
量が低下すると言うことです。また、クローズアップへの油脂の給与は分娩後の繁殖成績を改善するとの報告もあります。分娩後の子宮収縮ではPGF2αとい
うホルモンが重要ですが、このPGF2αの原料はアラキドン酸という必須脂肪酸で、このアラキドン酸はリノール酸から合成されます。これらの脂肪酸が十分
供給されることで、PGF2αが十分合成され、子宮の収縮がうまく行くとのことです。
(文責 MCCS 武中慎治)
ネックレールをあげるとカウコンフォートが良くなる
ネックレールを110cmから125cmに上げるとより快適になり、ストールから敷料(この場合は
砂)をけりだす割合が少なくなった。砂の使用量は約半分になった。
(Dairy Herd Management May, 2005)
痛みの少ない除角方法
ブリティッシュコロンビア大学の研究では鎮痛薬を飲ませて、リドカインで局所麻酔をして、焼けた鉄
棒で除角するよりも、キシラジンなど鎮痛薬を飲ませた後、腐食ペースト(Caustic
Paste:苛性ソーダなどをペースト状にしたもの?)で除角する方が痛みが少ないことを報告した(処置後、頭を振る回数で判断)。腐食ペースト使用時に
は局所麻酔の効果ははっきりしなかった。
(Dairy Herd Management May, 2005)
牛群の環境、社会行動は軽く見てはいけません。
ウィスコンシン大学の獣医師Ken
Nordlundは、フリーストールなどでの環境と牛の社会行動を軽く見てはいけないといっています。これらの問題があれば代謝障害、蹄病、その他の問題
につつながる可能性があります。研究では限られた時間しかベッドで寝ることができなかったり、十分なスペースがなかったり、群の入れ替えを頻繁に行ったり
した場合は事故の発生率を高めるとしています。(Dairy Herd Management May 25, 2004)
無乾乳
にしたほうが良い場合
乾乳期間をとらない場合は次産次の乳量が15から20%低下することは明らかです。しかし、イリノ
イ大学のDr.
Hutjensによると無乾乳をするほうが良い場合もあるそうです。例えば、分娩後に事故を起こしたことのある牛や、なかなかつかなかった牛が最後に止
まったような場合です。このような場合、BCSは4以上であることが多く、分娩後事故を起こす確率が非常に高くなります。無乾乳であれば分娩後事故を起こ
す確率は低くなるので、このような牛であればたとえ乳量が低下しても、分娩後事故で死亡させるよりは良いということになります。(Dairy Herd
Management May 25, 2004)
クローズアップの牛にストロー(わら)を給与する
イリノイ大学のDr.
Hutjensはストローの給与が分娩前1週間の乾物摂取量を維持させるのに役立つと言っています。その際のポイントは、1)きれいでカビのないものを使
用すること 2)中に空間があるタイプのもの(麦わらなど)が、ルーメン内でよく浮き、ルーメンマットを形成するのに良い、3)選び食いを防ぐために2.
5cmから5cmに切断してTMRに入れる 4)1日1頭あたり0.9から1.8Kg給与する。 4Kgぐらいまでは問題なく食べさせられるそうです。
(Dairy Herd Management May 25, 2004)
育成牛をあまり速く大きくするのも考え物
最近は育成牛の管理の重要性が指摘され、かなり増体が良い育成牛が増加して来ました。しかし、授精
が遅れるなどして分娩までにまだ日数があるのに大きくなってしまった牛は、維持エネルギーがより多く必要なので、コストがかかります。よって、育成はコン
スタントな成長と適期の授精、受胎が不可欠といえます。(Dairy Herd Management May 25, 2004)
乾乳牛に運動させましょう
牛床ミシガン州立大学の試験によると乾乳中に運動をさせた牛は、させない牛より事故の率が少なかっ
たそうです。運動は隔日に75分歩かせたそうですが、歩かせた牛は13頭中3頭が病気になりましたが、歩かせなかった牛は13頭中8頭が病気になりまし
た。飼槽と水槽をまったく別のところに置くなどして、なるべく乾乳牛にも運動をさせましょう。(Dairy Herd Management )
牛床ゴムマットのもっとも必要な場所とパーラーに通じる道の傾斜
牛床マットはストールに敷いて寝起きしやすいように使用するのが一般的ですが、パーラーからの帰り
道やよく使用する通路に使用することも効果的です。また、パーラーから帰る道の傾斜は5%以下にしないと過度の蹄の磨耗やびっこの原因になります。
(Dairy Herd Managemeny 2003 September)
カ
ウコンフォートのためのリスト
カウコンフォートを改善するための長期の作業計画をもっていますか?持っていない人は次のリストを
参考にしてください。
1)適切な空気の質と喚起
2)滑らない、きれいな床
3)快適な休憩場所の表面
4)適切な飼料給与、きれいな飼槽、十分なスペース
5)適切な量のきれいな飲水の供給
6)清潔な適切なサイズの乾乳牛舎
7)よい分娩環境と分娩後の牛を隔離する施設
8)快適で治療や回復時に使用しやすい場所
(Dairy Herd Managemeny 2003 September)
乾
乳牛は日長時間を減らすと良い
泌乳牛で日長時間を延ばすと乳量が増加することはわかっているが、今回イリノイ大学から乾乳牛の日
長時間を短縮することで良い結果が得られたとの報告が出ている。この処理は16時間暗くし、8時間明るくするというもので、これにより次産次の乳量が増加
し(2.7Kg)、免疫力が増加し(体細胞数が有意に減少し、乳房炎感染も減少した)、他にも後産停滞や子宮内膜炎が減少したと報告されている。乳量につ
いての効果はいくつかの試験で
も確認されている。この理由は日長時間が短くなることにより、メラトニンの分泌が増加しIGF-Iやプロラクチン濃度が減少する。プロラクチンの減少は分
娩時のホルモンの感受性を高め、それが分娩後の乳量を高めるのではないかと推測している。乾乳期の短日処理から泌乳期の長日処理への移行は特に問題は認め
られていない。(Dairy Herd Management 2003年 3月号)
初産牛の分娩後の調子が悪いのを防ぐには
最近、分娩した多くの初産牛の被毛が粗剛で、体重減少が激しく、分娩後子宮内膜炎が多い。これらはルーメンが
移行期の、泌乳初期のもしくはその両方の飼料中の炭水化物への馴致がうまくいっていないことに原因がある。すなわち飼料の変更のタイミングがおかしかった
り、飼料の変更の程度が急激でありすぎたり、摂取量が限定されすぎたりしている。ルーメンの馴致をうまく行うためには次の2つのことが必要である。
- ルーメン内のバクテリアを変化させる。通常、新しい飼料になれるまでに最低4週間必要である。
- ルーメン内絨毛組織を成長させる。通常、40-50日かかる。
クローズアップ期の期間が短すぎると初産牛はアシドーシスになり、食欲をなくし、エネルギー不足になる。期間
が長すぎるかエネルギーレベルが高すぎる場合、過度の体脂肪動員が起こったり、乳房浮腫、難産、ケトーシス、乳房炎が起こりやすくなる。これらの両極端の
中間を行けばピーク乳量は2Kg程度伸びる。
移行期管理が最も重要
通常、クローズアップ期間は経産牛も初産牛も21日の場合が多いが、初産牛は40日程度取ることが望ましい。
炭水化物のレベルをどの程度変化させるかも初産牛のスタートに影響を与える。通常、放牧や75%以上が粗飼料のファーオフ飼料から、泌乳牛よりもレベルが
高いかもしれないクローズアップ飼料に移行することはルーメンに大きな負担をあたえる
牛群Aの場合
初めの試験では初産牛は被毛が粗剛で乳量も低かった。初産牛の妊娠期間はやや短く、子牛の体重も少なかった。
初産牛は育成牧場から分娩前約1ヶ月に持って来られ、到着後すぐ、生まれて初めてのヘッドロックにかけられ、ファーオフの乾乳牛用の飼料を給与された。そ
の後平均分娩9日前にクローズアップ用の飼料を給与され、分娩後はすぐに経産牛と同じペンに入れられ、フリーストールに移されていた。
分娩した初産牛の90%は分娩後子宮内膜炎なっており、観察によると到着後1週間以内に被毛が粗剛となり、フレッシュペンではまったく飼料を食べなかっ
た。これらの問題を解決するために、初産牛はクローズアップ用の飼料に分娩予定日の6週間前移され、酪農家に到着する前にヘッドロックにかけ、なれるよう
にさせた。
牛群Bの場合
ここでは25%以上の初産牛が後産停滞で、50%以上が子宮内膜炎であった。分娩時のBCSは適切であったが、体重減少は急激で、子牛の生時体重は大きい
傾向にあった。クローズアップペンに空きがあれば、初産牛は乳房の張り具合から選択され、コーンの立ち枯れしかない放牧地からNFCが41%のホットな飼
料のぺんに移動させられた。クローズアップペンで過ごす期間は非常にばらついていた。飢えた分娩前の初産牛は大量に飼料を食べ、大きい子牛を出産し、分娩
前にアシドーシスと急性の蹄病を発症した。この状況を改善するために放牧からあがってきた初産牛は中程度の炭水化物レベルの飼料にまず慣らし、クローズ
アップ期間をできるだけ長くするために、クローズアップ用の飼料への移動はより頻繁に行った。
良い成績を残すには
生産性の高い初産牛は分娩予定日のかなり前から、分娩後の設備、牛群、飼料にあらかじめ慣れている。分娩前後の乾物摂取量が低いことは
後産停滞、子宮内膜炎、ケトーシス、第4胃変位、過度の体重減少、低い乳量につながる。初産牛にはできるだけ慣れた環境で、健康なルーメンと十分に食べら
れる環境を提供してやることが必要である。(Dairy Herd Management 2003年 3月号)
飼
育密度の重要性
高い飼育密度は乳牛にとって非常に大きなストレスとなる。まず、バンクスペースより先にベッドのスペース、ス
トールの数をチェックする。すべての牛が快適に休めることが前提で、少なくとも1頭につき1箇所のストールが必要で、食べたり、飲んだりする時以外無理や
りに退かされることがないことが必要である。Dr.Brian Perkinsは以下の推奨値を示している。
乾乳牛:ベッド数の100%(100ストール=100頭)
クローズアップ:ベッド数の80〜100%(100ストール=80〜100頭)
フレッシュカウ:ベッド数の80〜100%(100ストール=80〜100頭)
搾乳日数が100日まで:ベッド数の100%(100ストール=100頭)
もし、数を増やさなくてはならないのであれば分娩後100日以上の牛で行うこと。蹄病や環境性の乳房炎は過密になるほど増加する。飼料設計よりもまずカウ
コンフォートが重要である。 By Dairy Herd staff (Wednesday, March 05, 2003)
牛の糞をチェックする(フロリダ大学 Dr.Mary Beth Hallの研究からの紹介)
糞によってルーメンの健康状態をチェックすることができる。糞にはあまり注意が払われないが、見てみると見掛けの異常はルーメン機能や飼料の異常を
教えてくれる。
アシドーシスの場合次の5つの異常が糞に現れる。1)荒い粗飼料片が認められる、2)未消化の穀類が認められる、3)粘膜が混じる、4)糞中に気泡
が混じる、5)下痢。 これらを把握することでルーメンの健康と飼料の問題点を知り、修正することができる。
糞のチェックは牛群を見て回る際の、歩様のチェック、BCSのチェック、一般的な健康チェックとともに日常的なチェックの一つの項目となるべきであ
る。同じペンの糞にもいくらかのばらつきがあるが、異常を示す糞が全体の5%を超えるようであればそれは問題の兆候といえる。その時には糞のサ
ンプルをとって評価しなくてはならない。糞のチェックは飼料を変更した後1-2週間や牛に何か異常が起きているときなどにも行うと良い。
糞サンプルの評価の仕方
1)サンプルの採取 同じ牛群のなかでいろいろなタイプ4−5個の糞の塊をサンプルとし、そのばらつきを観察する。次にそれらを代表するサンプル
を選び出す。サンプル量は200g程度でよい。
2)採取した糞サンプルを直径18cmぐらいで、網の目が0.75−1.5mmの台所用のざるに入れ、水がきれいになるまで丁寧に洗い流す。
3)洗ったサンプルを評価する。ざるに何が残ったかを観察し、粗飼料の粒度、未消化の飼料、粘膜。その他の異常をチェックする。
何度かこの評価を行うと、牛群の中を歩く時に糞のチェックをすることが癖になる。以下の写真を見ることで、糞診断の技術レベルを上げることができる。
長い粗飼料が残っている
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穀類が残っている
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見るべき点:
長さが1.25cm以上の大きく、荒い繊維。このサンプルは上の写真に示したやわらかい糞から採取したものである。
意味すること:
大きく長い繊維が残っていることが意味することは、十分な繊維が与えられていないか、機能的に有効な繊維が十分与えられていないかで
ある。この状況ではルーメン内に十分な繊維のマットが形成されておらず、飼料片は消化を受ける前にルーメンを通過してしまう。こうなる原因は飼料の選び食
いであることが多い。
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見るべき点:
糞中の未消化の穀類片。穀類片は6mm以下である。
意味すること:
少しの量であれば問題ないが、量が多い場合は問題である。穀類のほかシトラスパルプやビートパルプ、綿実がそのままの状態で出ているの
であれば、ルーメンを通過するのが早すぎることを意味する。この場合、飼料は十分消化、発酵を受けていない。サイレージの収穫方法、穀類のかため食い、乾
燥穀類の不十分な粉砕などが原因となる。
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ムチン質の抜け殻
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泡の入った糞
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見るべき点:
糞中のムチン質のチューブ。爪先を使って上から糞を削っていくとソーセージの皮のようなものが引っかかってくる場合がある。それがム
チン質の抜け殻で、洗うと上の写真のように長細く、ちぎれたようになっている。これは腸管のような形をしているものもあるが、腸管の一部ではない。
意味すること:
ムチン質のキャストは大腸へのダメージを表している。このことは穀類や発酵しやすい炭水化物がルーメンでの発酵を逃れ、大腸まできて
発酵し、その発酵産物
である酸とガスが発生し、大腸にダメージを与える。ムチン質のキャストは腸管がダメージを受けているとのシグナルであり、このことはルーメンない発酵がう
まくいっていないことを示す。
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見るべき点:
糞中の泡、気泡。糞の状態はシェイビングクリーム状
意味すること:
ムチンキャストのように糞中の気泡や泡は穀類や他の発酵する炭水化物が大腸で発酵したことにより起こる。しかし、この場合、ガスの発生が特徴となる。腸管
で発酵してできたガスは糞中の気泡や泡となる。このことはルーメン発酵がうまくいっていないことを示し、未消化の飼料が大腸に到達していることを示す。ま
た、穀類のルーメン内通過速度が速すぎることも原因である。
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Diarrhea
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見るべき点:
流れるようなゆるい下痢便
意味すること:
疾病から来る下痢でない場合、飼料がルーメン内での発酵を受けずに大腸に来て発酵したことが原因。この発酵で酸とガスが産生し、ムチンキャストが排出され
たり、糞に気泡が混じるようになる。酸の産生は腸管を刺激し、下痢を発生させる。これらの兆候はルーメン発酵がうまくいっていない証拠であり、洗った糞の
サンプルは長い繊維や未消化の飼料片が残っていることを示している。過剰な蛋白の給与、ある種のミネラル、腐敗した飼料、カビの生えた飼料もゆるい便につ
ながる。
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Kimberlee
Schoonmaker (DHM Wednesday, October 16, 2002)
乾乳期間を20日短縮する
乾乳期間は60日というのが一般的であるが、新しい研究では40日かそれ以下で十分とする結果が出ている。これを実行するためには正確な妊娠日の把
握と適切な移行期管理が要求される。通常、乾乳期間が40日では十分でなく、次の乳期での乳量が低下すると考えられていたが、フロリダ大学が2002年4
月号のジャーナルオブデイリーサイエンスで示した試験では、乾乳期間が長い牛より多くの乳量を生産した。フロリダ大学の最近の大学農場での試験では、乾乳
期間が32日で乾乳期間が61日の牛より13%多くの乳量を生産した。このとき、32日の乾乳期間の牛に特別な処置はとっていなかった。また、同大学での
似たような試験では乾乳期間が32日の牛が61日の牛に比べて2%多くの乳量を生産したことを報告している。これらの事実は1970年前半のコーネル大学
の試験、1991年のデンマークでの試験結果と一致する。
現在、5頭だけの試験結果なので、もっと多くの試験が必要であるが、データは40日の乾乳期間が従来の60日乾乳期間より利益が多いことを示してい
る。なぜなら、20日余計に搾乳でき、次の乳期でも乳生産に悪影響を与えないからである。
60日という乾乳期間についてここ十数年異論は出なかったので、この仮説は波紋を投げかけるであろう。しかし、60日ルールは蓄積された生産データ
から導き出されたもので、積極的に適切な乾乳期間を特定しようとして行われた実験から得られたものではない。また、牛も昔の牛とは変わってきている。現在
の牛は泌乳後期でも乳腺胞を失うことはなく、長期の休みを取らせる必要はないのかもしれない。また、良好な移行期管理はルーメン内微生物の数やルーメンの
絨毛組織の発達に有効に働くと考えられる。結局、短期間の乾乳期間は何回も飼料の変更を行う必要がなくなり、実質上、ファーオフグループをなくすことがで
きる。分娩後に食べる飼料により近い、濃度の高い飼料を短い乾乳期間中食べさせることはその期間の飼料代と別の飼料を調整する時間も節約することができ
る。生理学的には40日以下の乾乳期間を否定するものはなく、この決定は生産者の経済的なことによって判断すべき問題となってきている。
ただ、疑問として残るのは、長期間にわたった場合の影響である。現在のデータでは短い乾乳期間の後の乳器の乳量について影響がないことはわかってい
るが、その次の産次以降についてのデータはない。注意しておかなくてはいけないことはこれらのデータは2産目から3産目、もしくはそれ以上の時の乾乳期間
の話であり、初産から2産目にかけての乾乳期についての適切なデータは持っていない。また、ヒートストレスの際、妊娠期間は短縮する可能性が高く、このこ
とが乾乳期間をさらに短縮することになるかもしれないので注意が必要である。もう少し正確なデータが出るまで、自分の牛群で乾乳期間を短くした場合、次の
乳期にどの程度の乳生産をするのか確認し、自分の牛群システムに会うかどうかを確認すると良い。
経済的な評価を行ううえで次のような数字を考えてみよう。
1.保守的に考えて20日の乾乳期の短縮は次乳期の乳生産量を4%、もしくは880ポンド(年間22000ポンドの牛として)低下させるとする。
2.2200ポンドの乳量を維持するためには、短縮した乾乳期間の20日分の乳量は44ポンド/日となる。
3.もし、この余分な20日間の乳量が日平均で44ポンドを上回るようであれば、経済的なメリットはあることになる。
4.ただ、この泌乳後期の乳量が搾乳牛群としての様々なコストを計算する上で見合うものなのかどうかをチェックする必要がある。
Shannon Linderoth (Wednesday, October 16, 2002)
削蹄料の支払方法を見直す
By Dairy Herd staff (Wednesday, November 20, 2002)
フロリダ大学のエクステンション獣医であるDr.Jan
Shearerは削蹄の必要がないのに削蹄をする場合が増えていると警告している。削蹄が必要ないのに削蹄をしたり、つめを削りすぎることは爬行につなが
る。
削蹄師に1頭いくらで支払う場合、削蹄師はその牛に削蹄の必要がなくても、削蹄してしまう可能性が高いため、
時間または1日いくらで代金を支払うほうが良いかもしれない。
良い削蹄師は削蹄する前に爪をチェックし、必要ないと判断すればそのまま削蹄せずに戻す。しかし、その場合、
削蹄師の判断に対する報酬を考慮する必要がある。よって、削蹄料金は時間で支払う方が双方にとって良い。
牛舎の改造で分娩直後の乳
牛を守る
By Dairy
Herd staff (Wednesday, November 20, 2002)
このワシントン州の酪農家は牛舎の改造でホスピタルペンから分娩房を分離した。単に牛を分けただけでなく、個々の分娩房はミルキングパーラーの向かい側に
設置した。こうすることにより分娩直後の牛がホスピタルペンからの空気感染や直接感染で病気になることを防ぐことができる。
糞尿の取り扱い
方が窒素のロスに影響を及ぼす
By Dairy Herd staff (Wednesday, November 20, 2002)
糞尿の取り扱い方が窒素の環境への流出に影響する。ウィスコンシン大学の研究者は4種類の糞尿貯留システム
(溜池、バーンクリーナによる排出、層状に堆積、野積み)で糞尿中の窒素とリンの比率(通常6.5)を測定することにより失われた窒素量を推定した。
Researchers at the University of Wisconsin
reviewed
the test results 778 manure samples from four types of manure-storage
systems ? earthen basin, daily haul, bedded pack and stack.
- 溜池とバーンクリーナーまたは溜池と野積みの間にN-P比の差はなかった。
- 表面を覆う、覆わないの差はなかった。
- スラリー貯留槽に移す時、トップローディングの方がボトムローディングより窒素の流出が多かった。
- 糞尿が排泄されてから貯留場所から移動するまでの間の窒素の環境への流出量は2-36%であった。
電柱をブリスケットボードとして使用する
By Dairy Herd staff (Wednesday, October 30, 2002)
カンザス州のマッカーシー牧場では
電柱をブリスケットボードの代わりに使っている。一本$15で長さ10m前後の電柱を購入し、いくつかのフリーストールにかけて設置している。使い勝手は
良く角材で作られたものよりも良いと感じている。電柱はシンプルで、安く、動かすのが簡単だ。ウィスコンシン大学のフリーストールの専門家は表面がスムー
スで丸くなっている電柱ならブリスケットボードの良い材料であると言っている。
飲
水槽設置時の3つの原則
Dairy Herd staff (Wednesday, November 06, 2002)
カンザス州立大学での新しい研究では飲水槽をどこに設置するかが新鮮な水を供給するのと同じぐらい重要であると言っている。
研究者は昨年の夏、14週にわたって3軒の4つのフリーストールバーンで飲水行動を観察し、次のようなことを発見した。
- 十分な飲水スペースを設ける
ペンにいる牛の15%が同時に水を飲めるスペースが必要である。もし、現在の飲水施設がその条件に合わないなら別に飲水設備を作る必要がある。この観察
中、飲水量の9%を移動できる飲水設備から摂取していた。 - ミルキングパーラーからの出口に飲水設備を設置する
観察ではミルキングパーラ近くの飲水設備から1日1頭あたり10-18リットルの水を飲んでおり、これは1日の摂取量の10%に相当する -
飲水設備は複数箇所に設ける
飲水できる場所を増やすことは混雑を緩和し、ストレスを軽減する
最後に、飲水設備は1日に何回かはチェックし、汚れていないか、正常に機能しているかどうかをチェックする必要がある。
移行期牛の飼養管理チェックポイント
- 初産牛はクローズアップペンに最低3週間入れること
- クローズアップ牛の1頭あたりの飼槽の幅は最低でも60cm、通常、90cmはとること
- クローズアップの牛を密飼いしないこと。フリーストールやヘッドロックの数と同じか、その9割ぐらいとすること
- 牛床は清潔にし、クローズアップ牛1頭あたり7−9m2の面積が必要
- 分娩房は1頭あたり13.5m2程度の面積が必要で、そこに入れる時間はできるだけ短くする
- クローズアップ牛は自由に動き回れるようにし、水飲み場、飼槽、フリーストールに競争なしにアクセスできるようにする
- 初産牛と経産牛 を同じ場所に入れるときや、頻繁に牛を入れ替えるときは、カウコンフォートにより気を配る
- 常に選び食いできない新鮮なTMRを食べられるようにする。カビの生えた飼料や嗜好性の悪い飼料は給与しない
- 暑熱時にはクローズアップの牛だけでなく、乾乳牛はすべて暑熱対策を講じる
- 一時に何頭もの牛が水をのめるだけの十分な水飲み場のスペースを確保する
- 行うことはすべていつも同じであること(首尾一貫していること)
(Dairy Herd Management, Feb. 2002)
フリーストールVSドライロット(ルーズバーン)
フリーストールとドライロットの比較です。
- 場所
- ドライロットは通常、年間降水量が降水量が500mm以下の乾燥地域に適している。
- 気温
- 極端な寒冷地、暑熱地ではフリーストールが適している。
- 都会からの距離
- 環境問題
- フリーストールや屋内バーンは糞尿の地下への流出を防ぐ
- 投資金額
- カンザス州立大学のデータではフリーストールの1頭あたりのコストはドライロットより$750高い。その分は乳量増加でまかなわなくては
ならない。
- 飼養管理スタイル
- 高泌乳は高レベルの飼養管理を要求する。もし、高泌乳牛を飼養する技術を持たなければ(高泌乳を目指さないのであれば)、フリーストール
にかかる余分なコ
ストは吸収できない。
- 健康管理
- フリーストールは環境から守られているメリットがあるが、ドライロットでは蹄病、関節の問題が少なく、発情も見つけやすい
- 労働効率
- 牛乳100ポンドあたりの管理コストで比較するのが一番良いが、平均的にはドライロットで1人あたり130-140頭、フリーストールで
は90−100頭
管理できる
- 粗飼料品質
- フリーストールではより高い乳量が要求されるので、粗飼料品質もよりよいものが求められる。
(Dairy Herd Management, Feb. 2002)
移行期のマネージメント(Update)
第5回Western Dary Management
Conferenceで公演されたUSDA Dr.Jesee Goffによる移行期管理のサマリーです。
- BCSの調整:分娩前後のエネルギー不足はケトーシス、脂肪肝の原因と
なる。よって、分娩前後の乾物摂取量が低下する乳熱、後産停滞などは避けなくてはならない。分娩前後のエネルギー不足を防ぐためには、BCSを分娩時で
3.25-3.75にすること(3.25の方がDMIは多いが、うまくいけば3.75の方が乳量は増加する)。乾乳時に太った牛は稲わらにトレースミネラ
ルと若干の大豆粕を加えて NElが0.9−1.1Mcal/Kg、CPが11%程度に調整したものを給与する。クローズアップからは通常のクローズアッ
プ牛と同じ飼料を給与する。この場合、分娩日が正確であることが前提となる。でないと十分なクローズアップ期間が取れず問題が大きくなる。ただし、この方
法を初産牛に適応するとフレームの成長が遅れる可能性がある。
- 穀類に馴らす:エネルギーを高めるために穀類を増加させると、アシドー
シスになり、かえって乾物摂取量を低下させることにもなる。これを防ぐためにはまず、ルーメン内微生物を穀類に馴らさなくてはいけない。通常、微生物が慣
れるには3週間かかるとされているので、クローズアップ期間は最低でも3週間取ることが推奨される。また、ルーメンの長く、幅広い柔毛組織はルーメン内の
表面積を広げ、発酵によって生産されたVFAをすみやかに吸収し血中に送り込むために重要である。しかし、乾乳時に粗飼料主体の飼料になると約1週間でこ
の柔毛組織は退化し吸収できる面積が50%程度になってしまう。これを元の柔毛組織に変えるためには穀類多給の状況下で約5週間かかる。米国の乳牛では乾
乳期でもある程度の穀類(コーンサイレージ)を給与しているため、ある程度の長さの柔毛は有している。そのため3週間のクローズアップ期間で十分と考えて
いる。ただし、初産牛に関してはルーメンの柔毛の発育と社会性の観点からより長い期間(5週間)のクローズアップ期間を推奨する。双子を身ごもっている牛
についてもより多くのエネルギーを必要とすること、通常2週間程度早く分娩することが多いことから5週間のクローズアップ期間を推奨する。分娩予定日と実
際の分娩日とのばらつきはプラスマイナス9日であり、牛群の95%が最低でも2週間のクローズアップ期間を与えられるようにするには、予定日の23日前に
クローズアップの飼料を給与開始すべきである。
- 機能性繊維とNFC:クローズアップ期とフレッシュ期にでんぷん質の多
い飼料を給与すると乾物摂取量が増加し、トータルのエネルギー摂取量を増加させ、体脂肪動員を少なくする。でんぷん質はルーメン内でプロピオン酸に変わ
り、肝臓でグルコースに転換される。繊維はルーメン内で酢酸に変えられるが、酢酸は脂肪の原料とはなるが、直接グルコースの原料とはならない。クロ-ズ
アップ期のNFCの推奨値は33-38%であるが、43.8%のNFCレベルでもうまくいく例がある。この場合23.5%のNFCに比較して分娩前の
DMIが10.2Kg に対し
13Kgと増加し、乳量も5ポンド/日多かった。分娩後の飼料のNFCレベルが46.5%で、クローズアップ期のNFCが43.8%の場合はアシドーシス
や蹄病がなかったが、分娩後の飼料のNFCレベルが41.7%で、クローズアップ期のNFCが23.5%の場合は蹄病が増加した。よって、エネルギー濃度
の異なる飼料の切り替えは急激に行うべきでなく、徐々に行うべきで、こうすることで高でんぷん質の飼料でも問題がでることはない。sクローズアップ期は
DMIが少ないため、でんぷん質の量を増加させることでアシドーシスになることは少ない。しかし、でんぷん質を増やして、NDFを減少させれば四変などの
問題が発生する。ポイントは適切な機能性繊維を供給できる粗飼料(3.75cm程度の長さで、嗜好性の良いもの)を給与し、選び食いさせないようにTMR
の水分含量を55−60%程度に調整する。場合によってはいくらかのわらなどを給与することも有効である。アルファルファのサイレージは十分な機能性繊維
を供給できないため、四変(左方変胃)の予防にはならないかもしれない。1.25cm以下に切断したコーンサイレージも十分な機能性繊維を供給できない。
- 安全な推奨としてクローズアップ期のNFCは35−38%、NDFは最低でも
33%(うち粗飼料由来のNDF が少なくとも26%)とし、分娩後はNFCを40−42%とし、NDFは27%以上(うち粗飼料由来のNDF
が少なくとも21%)としたい。
- チャレンジする場合はクローズアップ期のNFCは38−42%、NDFは最低でも
30%(うち粗飼料由来のNDF が少なくとも26%)とし、分娩後はNFCを44%とし、NDFは27%以上(うち粗飼料由来のNDF
が少なくとも21%)としたい。この場合、粗飼料は必ず食っていることが重要で、選び食いをしていれば当然問題が起こる。
- 油脂の給与:分娩前後の乳牛に油脂を添加することは残念ながら効果はな
く、NEFAを上昇させるだけとなる。分娩後DMIが増加し(分娩後2-3週間以降)、ある程度の量の油脂を添加することは乳量の増加やBCSの回復に有
効である。
- 蛋白給与について:分娩した乳牛はエネルギー不足を補うために筋肉中の
アミノ酸を用いて糖新生をおこなうため、分娩後1週間で60-80ポンドの筋肉を失う。よって、クローズアップ期の蛋白給与量を増やすことで分娩後の乳牛
の生産性を高めることが期待されたが、試験の結果は一定しておらず、場合によっては悪くなる場合もあった。よって、クローズアップ期の蛋白の推奨レベルと
しては、初産牛で15%、経産牛 で12−13%、初産牛と経産牛 が同居の場合も15%を推奨する。
- 分娩後の乳牛の飼料の蛋白含量は泌乳中期のDMIによって設定され16.5−17%で
あることが多い。しかし、分娩直後ではDMIが低いため、このレベルでは蛋白が不足し、体蛋白の動員を必要とする。一概に蛋白と言っても分解性の蛋白は必
要以上にあっても無駄になるだけで、エネルギーとのバランスを考えて給与する必要があり、バイパス蛋白についても微生物体蛋白の合成で足りない蛋白を補え
るレベルを給与し、アミノ酸のバランスを取れるものであることが望ましい。いずれにしても過剰の蛋白は糞尿に排泄され環境汚染に結びつくばかりでなく、窒
素の排泄のために無駄なエネルギーを消費することになる。もし、分娩後2週間の間、別の飼料給与が可能であればバイパス蛋白やバイパスアミノ酸を給与する
ことは良いかもしれない。しかし、バイパス蛋白の嗜好性が悪くDMIを落とすようではよい結果には結びつかない。
- 一般的な推奨値:分娩後2週間の間はCP17-18%にし、そのうち10.5%が
分解性の蛋白であること。
- チャレンジする場合:分娩直後の2週間はCP18-19%とし、うち分解性蛋白を
10.5%、残りをバイパス蛋白とする。バイパス蛋白源は加熱大豆粕のような嗜好性の良いものとし、バイパスアミノ酸(リジン、メチオニン)を利用してア
ミノ酸バランスを整える。
- 飼料添加物の利用:
- ナイアシン;ナイアシンは体脂肪の動員を抑え、血中のNEFAを下
げ、肝臓への脂肪の蓄積を緩和すると言われている。また、乾物摂取量を高めるとも言われている。給与量は6−12g/頭/日でコストは6−12セント。
オーバーコンディションの牛には良いかもしれない。
- プロピオン酸CaまたはNaとプロピレングリコール;プロピオン酸
はグルコースの前駆体で肝臓ですぐにグルコースに転換される。そのため、これらの製品はケトーシスの治療にも使用される。プロピオン酸NaはDCADを上
げ乳熱を引き起こす可能性がるので分娩前には使用すべきでない。プロピオン酸Ca(113g/日/頭)やプロピレングリコール(300ml/日/頭)を分
娩前の飼料に添加することが行う場合があるが、コストがかかり(20セント/日/頭)、乾物摂取量の低下につながる場合もあるので一般的には推奨しない。
分娩直後にスポットでやる方が効果的かもしれない。推奨する方法としては分娩直後に、プロピオン酸Caのボーラス(丸薬)の強制投与、プロピオン酸Ca
のペーストの強制投与がある。製品のコストは$1-12と幅がある。
- 微生物製剤;繊維の消化率を向上させ乳酸の利用を促進するためイー
ストなどの微生物製剤を使用する場合があるが、効果はばらつく。コストは3−18セント/日/頭である。使用する場合は少なくとも複数の大学での試験結果
がでている物を選び、クローズアップからフレッシュの時期に給与すると良い。
- バイパスコリン;コリンはメチルドナーであり肝臓での脂肪蓄積を緩
和すると言われている。コストは10セント/日/頭。バイパスコリンの試験結果は芳しいものとは言えないので推奨はしない。
- 正常な血中Caレベルを維持すること
- 低カルシウム血症は単に乳熱を引き起こすだけでなく、第4胃の収縮を阻害し四変を引き
起こしやすくしたり、乳頭の平滑筋の収縮を妨げ、乳房炎にかかりやすくなったり、低カルシウムのストレスがコルチゾールの分泌を促し、免疫力をさらに低下
させるなどの影響がある。乳熱や低カルシウム血症は乾物摂取量を低下させ、ケトーシスにかかりやすくもする。低カルシウム血症は多くは乾乳期の粗飼料中の
カリの過剰摂取により、血液がアルカリになることがもっとも大きな原因であり、2番目としてマグネシウムの吸収阻害による血中マグネシウム濃度の低下であ
る。マグネシウムレベルが低いと体内でのカルシウムの調節機能がうまく働かなくなる。
- 低カルシウム血症を防ぐ方法
- 大きな原因は粗飼料中のカリが多いことであり(ナトリウムも悪いが粗飼料には少な
い)、カリの少ない粗飼料を作ることが必要である。畑への糞尿の散布量を制限したり、コーンサイレージを使用したりすると良い。糖蜜を添加してないビート
パルプも良い。NIRで測定したKレベルを信用してはいけない。
- クローズアップ期の飼料のマグネシウムレベルを硫酸マグネシウムと酸化マグネシウ
ムの混合で0.4%にする。分娩後12時間以内の血液中に少なくとも2mg/dlのマグネシウムが必要。
- クローズアップ期の飼料中リンは40g/日/頭、カルシウムはDM中1%にする。
血液中カルシウム濃度が5mg/dl以下になると筋肉の収縮がうまくいかなくなる。
- クローズアップ期のカリの飼料中の濃度を1.6%にとどめる。2産以上の乳牛でK
のレベルが高ければ、アニオン塩(塩素、硫酸塩)を給与し、血中の酸性度を高める。ただし、嗜好性が良くないので、乾物摂取量が落ちた場合は状況が悪くな
る可能性がある。塩素は硫酸塩よりアニオン塩としての効果は高く、塩酸は嗜好性もましで効果がある。ただし、非常に危険な薬品であるので現場での使用は推
奨しない。
- アニオン塩の給与量については飼料中の陽イオン(Na,
K)と陰イオン(Cl、S)の差(mEq/Kg)で表され、まずこの差を0とすることから始める。給与開始後2−3日目に6−8頭のクローズアップ牛の排
尿途中の尿をサンプリングしpHを測定する。分娩1週間前の尿中pHはホルスタイン種で6.2−6.8、ジャージーで5.8−6.3が望ましい。これより
高ければさらにアニオン塩を増加し、5.8より低ければ減少させる。アニオン塩の給与する際はかならず尿中のpHを測定しなくてはいけない。アニオン塩を
給与する際、カルシウム源は塩化カルシウム、マグネシウム源は硫酸マグネシウムを使用すると良い。塩酸を使用するときは50−75gの硫酸マグネシウムを
まず使用し、炭カルと酸化マグネシウムを必要量(Mg= 0.4%, Ca= 1.0%)給与する。
- 初産牛は通常アニオン塩は必要ない。嗜好性が悪いためDMIが低下し、逆の結果が
現れる可能性がある。できれば経産牛
と別にして蛋白レベルを上げ、競争を減らすことでよい結果がえられる。カリが高い場合、乳房浮腫が問題になる場合があるが、この場合塩素の量を増やすこと
で乳房浮腫を緩和できる場合がある。しかし、塩化アンモニウムではこの効果は現れない。
- Caのドレンチ(強制的に飲ませるもの)、ペースト(歯磨き粉のようなもの)の利
用: 血中のCaレベルを上げ、ケトーシスを予防する商品が一杯出回っている。水溶性のCa(塩化Ca
とプロピオン酸Ca)を含む製品を分娩後6−10時間後に飲ませると効果がある。いくらかの製品はプロピレングリコール、プロピオン酸との合剤でエネル
ギー供給もできるようになっている。ドレンチよりはペーストの方が専用投与器などがついており投与しやすく、肺への誤飲も少なく安全性が高い。
- 分娩直後とその24時間後に様々なものを混合したカクテルを強制的に投与すること
もよく行われているが、必ずしも有効であるとはいえない。しかし、敢えてこのときに含むべき成分として挙げれば次のようなものがある。これらを10−18
リットルの暖かい御湯に混合してポンプで強制投与する。
- Ca源=この場合はプロピオン酸Caが望ましく、ホルスタイン種では675g
が適当である。
- エネルギー源=この場合もプロピオン酸Caが望ましい。上記の675gで十分
なグルコース前駆体を供給できる。500mlのプロピレングリコール、または900mlのグリセロールを加えても良い。
- 電解質=100−150gの塩化カリは分娩時に失われた体液を補うのに十分で
ある。
- Mg源=200gの硫酸マグネシウムがMg源として十分である。
- リン不足の起立不能牛がでる場合は200gの燐酸ナトリウム
(MonoSodiumphosphate)を加える。
- オプションとして、ルーメンの働きを促進するため2−3ポンドの細かく粉砕し
たアルファルファミールを加える。
蹄病を防ぐためにはその記録が重要
蹄の健康状態の記録はその牛群の蹄病に関する問題点を解決する糸口を与えてくれます。その記録というのは
1)どの牛が蹄病になったのか、2)その症状はどのようなものであったか、3)いつそのような状況になったのか、4)どのような治療を行ったか、の4つで
す。 これらの記録からもし、泌乳初期の牛に多く発生していれば乾乳牛の飼養管理上の問題であることが考えられ、その場合はフットバスを搾乳室の入り口に
おいても効果は現れないことになります。 また、通常、蹄病の原因となることが起こってから実際に症状が現れるまでタイムラグがあります。膿瘍
(Abscess)の場合は数週間から1ヶ月、潰瘍(Ulcer)の場合はそれより長く6-10週となります。よって、症状を発見したらこのタイムラグ分
さかのぼって、その時何が変わったのかを調べることである程度原因が特定できます。 蹄病が多い農家の場合、4-5月令の育成牛の蹄に出血やホワイトライ
ンの問題が多いことがあります。初産牛が蹄葉炎になることは少ないですが、もし多ければ、初産牛のグルーピングや牛床表面(コンクリート)に問題があるこ
とが考えられます。理想的なプログラムとしては分娩3-6週前、分娩後100日、その後は120-140日ごとに削蹄を行い、蹄病の有無、その進行度を確
認し、問題のある牛は記録し、その後の治療スケジュールを立てます。こうすることで蹄病をいち早く発見し、その対策を立てることが可能になります。
一般的な蹄病とその要因
蹄病の種類と起こる部位 |
環境(状態) |
栄養(飼料) |
畜舎(牛床) |
感染 |
White line Abscess
多くは後ろ足の内側に起こりやすい |
x |
|
x |
|
Digital dermatitis
ウィルスによる感染病で踵の皮膚部分にできる |
x |
|
|
x |
Sole hemorrhage or ulcer
後ろ足外側の蹄の内側に起こりやすい |
x |
x |
x |
|
Interdigital phlegmon
蹄の間の皮膚がバクテリアによる感染で痛む |
x |
|
x |
x |
(Dairy Herd Management Nov.2001、表の一部は改定)
初産牛の問題を防ぐために
初産牛に問題が多くて困っている場合は次のようなことがないか調べてみてください。
- 分娩後BCSが急激に低下する
- 第4位変胃、胎盤停滞、子宮内膜炎が通常より多い
- 飼料の選び食い
- 初産牛が飼料を食べていない。
- 休憩時に反芻をしていない
- ロックアップを嫌う
これらを解決するためには次のような対策を取ってみてください。
- 初産牛と経産牛を別飼いする。できればその乳期を通じて。
- 別々にするのがむりなら、ペンに入れる数をの85-90%に押さえる。
- 初産牛は分娩4-6週前にロックアップに馴らしておく。
- 選び食いしない飼料の粒度にする。
- 分娩前には十分なバンクスペースを取る(60cm/頭は狭すぎる)
- 難産にならないような種牛を使う
水
の中に含まれるミネラルはクローズアップ期のDCADに影響を及ぼす
以前にもご紹介しましたが飲水の中のミネラル、特に、Na,Clの含有量がクローズアップ期のDCADに大
きな影響を与えます。米国の調査では地域によって、また酪農家によって大きく異なり、その量も大きな違いがあります。日本においてはどうなのかは知りませ
んが、いくら飼料中のDCADを調製しても効果がない場合は、飲み水が原因かも知れません。いちど、飲水分析してみてはいかがでしょう。下記に
AgriKingと言う会社が米国2600個所の水の分析値を示します。かなり大きなばらつきがあり、これを30リットル以上飲むわけですから影響は少な
くありません。DCADを調製するときは尿中のpHを測定することが推奨されていますが、飼料のばらつきの他にこのようなことを避けるために必要な技術と
言えます。
また、その他のマクロ、ミクロミネラルについても同様で大きなばらつきがあり
ます。毒性を示すほどの量ではありませんが、嗜好性に影響を与えることは十分考えられるます。
表 2600個所の飲水の分析結果
|
平均 |
最低 |
最高 |
通常レベル |
*推奨レベル |
カルシウム、ppm
マグネシウム、ppm
ナトリウム、ppm
カリウム、ppm |
62.8
22.2
36.8
3.7 |
0
0
0
0 |
590.0
190.0
920.0
23.0 |
0−43
0−29
0−3
0−20 |
100以下
50以下
50以下
10以下 |
塩素、ppm
イオウ、ppm
リン、ppm |
54.0
57.1
0 |
0
0
0 |
727.0
997.0
0 |
0−250
0−250
0−250 |
100以下
50以下 |
銅、ppm
鉄、ppm
マンガン、ppm
亜鉛、ppm
硝酸体窒素 |
|
|
|
|
0.2以下
0.2以下
0.05以下
25以下
25以下 |
*は別の資料から引用(Dr.Socha,ZinproCorp)
ミルクホースを太くす
ると搾乳が速くなる
アイダホ州のある酪農家はミルクホースを0.625インチから0.875インチに変えることにより、1日の
搾乳頭数を2800頭から3200頭に増やすことができたと言っています。おまけに過搾乳が少なくなり、乳質もよくなったそうです。
敷料の粒度が微生物の繁殖
に関係する
敷料の粒度が細菌の繁殖と関係していることがミネソタ大学の試験で明らかにされました。それによると有機物
ではおがくずのように粒度の細かいものほど細菌の数が多く、チップのように粒度が荒くなるほど細菌数はすくなくなったそうです。
分娩直後の乳牛のバンクスペースは広めが良い
通常の乳牛1頭あたりのバンクスペースは60cmが良いとされるが、試験では38cmでもDMIは落ちなかったという報告がある。しかし、実際には分娩直
後のフレッシュペンでバンクスペースを90cm以上にすると乾物摂取量が増加し、乳量が増加し、第4胃変位の発生率が低下した。よって、分娩後10-15
日ぐらいまではバンクスペースを90cm以上とり、分娩後30日を過ぎれば60cmにすることは効果があるかもしれない。
(Hoads Dairyman, September 25)
移行期の栄養、環境管理が乳牛の生産性を向上させる
移行期とは一般的には分娩前30日と分娩後70日の計100日をさすが、この時期は乳牛にとってもっともス
トレスのかかる時期であり、この時期のマネージメントはもっとも重要である。この時期の飼養管理がうまくいっているかどうかは、ピーク時の乳量、代謝性疾
患の治療費、繁殖成績を見ればわかる。
乳量について言えば、経産牛の分娩後14日間の1日あたりの乳量の増加割合が10%(初産牛で
8%)、分娩後20日までに乳量が45Kg/日を越えること(初産牛では32Kg)が一つの目安で、達成できない場合は何らかの問題がある。
分娩後の乳牛のチェックポイント
診断項目 |
正常牛 |
問題牛 |
一般的な外見 |
元気良く、物事にすばやく反応する |
元気がなく、鈍い |
直腸温 |
37.8℃ から 39.2℃ |
37.8℃以下 または 39.2℃以上 |
ルーメンの蠕動 |
1分間あたり1-3回 |
1分あたり1回以下 |
ケトーシス |
尿中にケトン体が検出されない |
尿中にケトン体検出される。 |
推奨される移行期のマネージメント
- 1日24時間、飼料を食べられるようにしておく。
- 牛が快適に過ごせる環境にする(過密にしない)。
- 飼料はTMRにする。
- 分娩前にはルーメン絨毛組織の発育と、微生物の馴致のためでんぷんのような発酵し易い飼料
を給与する。
- 分娩直後にはグルコースを供給しケトーシスを予防するためプロピレングリコールを給与する
と良い。
- 飼料中30-32%のNDFを給与する(長い繊維給与時は少なく、長い繊維が少ない時は多
くする。TMRと別に1.4-2.3Kgの長い乾草を給与すると良い。
- 分娩後は35-40%のNFCを給与する。
- 水を簡単に、十分に飲めるようにしておく
- 分娩前のKとNaはできるだけ少なくする(Kは1.2%以下、Naは2%以下)
- 分娩前の飼料にはバッファーは入れない。
- 分娩前の飼料では分娩後のDMIを高め、低カルシウム血症を防ぐためにDCAD(アニオン
カチオンバランス)を考慮する(−5からー10meq/100gDM)。ただし、尿中pHを測ること。
- 分娩前の飼料では蛋白含量を12%ととし、DMIが低下する場合は14-15%に引き上げ
る(初産牛)。場合によってはバイパス蛋白も増加させる。
- 油脂を給与する(分娩直後は意味がない)
- 暑熱時には涼しくしてやる
移行期管理がうまくいかない10の理由
- 分娩直後の乳牛の観察の仕方、処置方法が確立されていない。
- 粗飼料の品質が悪かったり、バンクマネージメントが悪かったりして十分な乾物摂取量が取ら
せられない。
- クローズアップ牛、フレッシュ(分娩直後)牛のペンが過密状態。
- 種付けの遅れから来る太りすぎの乾乳牛
- 移行期牛のペンの汚れ
- 移行期のグループの数が多すぎることと飼料の変更
- 分娩直後の牛を低乳量の群に入れること
- 未経産牛 の管理の悪さ。
- 水が十分に飲めないこと。
- 飼料が移行期牛の栄養要求量を満たしていない。
(Midwest Dairy Business Oct.2001)
クローズアップ期間をもう2週間長くすると乳量が2000ポンド増加する
クローズアップ期間を1-7日の場合と15-21日の場合で比較すると、長い方が305日換算で2000ポンド(900Kg)乳量が増加した。この傾向は
夏場の暑い時期にピークを迎えた牛でも同様な傾向にあった(1/1から5/1分娩牛;クローズアップ期間1-7日=21316ポンド VS クローズアッ
プ期間15−21日=23126ポンド、7/1から8/1分娩牛;クローズアップ期間1-7日=19349ポンド VS クローズアップ期間15−21日
=21619ポンド)。クローズアップ期の飼料を長い期間食べさせると牛が太ると考える人もいるようであるが,DMIが低下し,胎児の成長に伴なう栄養の
要求量増大するこの時期には、太ることは逆に困難である。また、分娩予定日に基づいてクロ-ズアップペンに導入する場合は、分娩日のずれを考えた場合、最
低でも3週間前にはつれてこなくてはならない。初産牛の場合も同様にクローズアップ期間を長くすると同様な効果があり、逆に短い場合は分娩後、四変、後産
停滞、分娩後の食欲不振、乳房浮腫などが多く発生するといわれている。また、これらのことは分娩後の繁殖成績にも影響する。分娩日の特定は経産牛
より困難になるが、多くの場合は分娩直前になって、クローズアップペンに移されることが多いようである。(Hoads Dairyman, July
2001)
ホールディングペンでの暑熱ストレスが少ないほど乳量は増加する。
乳牛にとってホールディングペン(パーラーへ入るために待たせるところ)は、もっともストレスを感じる場所
で、非常に多く体熱を発散させる乳牛は、冷却機がなく、狭い、密度の高いところに押し込められると20分程度で体温が1.7℃程度上昇する。よって、ホー
ルディングペンでの冷却機の設置は暑熱ストレスを大幅に緩和する。ホールディングペンでの暑熱ストレスを緩和するための方法として次の方法がある。
(Hoards Dairyman, 2001年6月号〕
- グループのサイズを適切にし、ホールディングペンで待たせる時間を最低限にする。
- 24時間連続で搾乳することは避け、できれば暑い時間帯の搾乳は避ける。
- ホールディングペンの側壁は最低でも60%は空け、自然の換気ができるようにする。
- ファンを設置し、強制的に換気をさせ、スプリンクラーを取り付け蒸散熱で体温を冷やしてや
る。
十分水を飲ませるためには適切な飲水スペースが必要
泌乳牛は1日に114-190リットルの水を飲むが、1分あたり5リットルの速さで、1回あたり5.7リッ
トル程度しか飲まない。このことは乳牛は水を飲むのに1日に12-16分しか使わないということになる。しかし、実際には乳牛は2.5%の時間を水を飲む
のに費やしており、十分な飲水スペースが必要であることがわかる。(Hoards Dairyman, 2001年6月号〕
暑熱対策(2001年版)
ヒートストレス時、牛は分娩時の疾病が多くなり、最高乳量が低下し、泌乳持続性もなくなり、繁殖障害も増
加し、蹄病も増加します。 また、このような状況から回復するのに数ヶ月かかリます。 よって、早めの暑熱対策でヒートストレスを最小限に抑えることは経
済的に大きなメリットがあるわけです。 以下、いろんな雑誌からちょこちょこ暑熱対策に関連する部分を抜き出して見ました。 中にはフロリダの酪農家向け
に書いた部分があるので、少し極端なところもありますが。 また、無秩序に並べてあるので読みにくくてすいません。
<設備関連>
牛舎の環境は人間の立っている場所ではなく、牛の身になって考えなくてはいけない(飼槽の鼻の先の温度とか、フリーストールに寝そべった時の温度とか)。
乾乳牛、分娩前の初産牛への暑熱対策は泌乳牛以上に重要で、分娩時の疾病が減少し、分娩後の泌乳生産性が向上する。クローズアップ期に暑熱対策を行
うと初乳品質も向上する。
湿度が低い地域ではスプリンクラーなどで牛体を水でぬらして、水の蒸散により涼しくさせてやることができる。 しかし、湿度の高い地域ではスプリン
クラーだけでは蒸散がうまくいかないため扇風機を回し、蒸散を助けてやる必要がある。 扇風機は通常36インチ(0.5-1.0馬力、空気流量が
11000cfm以上のもの)のものをスプリンクラーの上に9mごとに、20-30度下向きに設置し、気温が27℃以上になったら自動的に作動するように
セットする。 スプリンクラ-は15分おきに1-2分作動させる。必要な場所は飼槽の上が最優先であるが、できればフリーストールの上にもあればよい。
また、パーラーの待機場所はの密度が高くなるためヒートストレスを受け易い。スプリンクラーとファンを設置することが望ましいが、待機場所に90分以上と
どまらせるべきでない。3回搾乳であれば45分以内、2回搾乳であれば60分以内が目標。
高圧の噴霧器、ミスト(Foggerはミストより水滴が細かい)は蒸散が早く、空気の温度を下げるのには有効であるが、湿度を増加させる。 これら
の設備は風の強い場合や、湿度の高い地域では(扇風機との組み合わせでも)あまり効果がない。
ミルキングパーラーから飼槽、水槽まで距離がある場合は、パーラーから出る通路で自動的に水をスプレーする設備を作ると効果がある。
天然の木は涼しい日陰を提供するが、その根元に牛が多く集まるため、通常寿命が短くなる。いい方法は南側と西側に木を植え、その前をフェンスで仕切
ることである。飼槽や、水飲み場を近くにおくことを忘れてはいけない。
人工の日よけは下に盛り土をすれば、特に雨の多い季節は非常に有効である。密集による熱の蓄積を避けるため一頭あたり3.4-4.3平方メートルは
必要である。
<飲水関連>
暑熱対策で水を十分飲めるようにすることは重要である。飲水を制限するようなことはあってはならない。引水設備は最大限に水を飲んだ時を想定して設計すべ
きで、定期的な点検も忘れずに行うこと。通常の泌乳牛では1日あたり130-170リットルの水を飲み、ヒートストレス時にはこの1.2-2倍は飲む。
ミルキングパーラーを離れる時に、冷たい清潔な水(飼料やこけが生えていない)を飲めるようにすると良い。テキサス州での試験では水の温度を15℃以下に
下げると、牛の体温を下げるのには有効であるが乳量への反応はわずかであり、水をここまで冷やすコストと比較すると経済的にメリットはないとしている。通
常、21-30℃であれば牛は水を良く飲む。 水槽は日陰にあることが望ましく、また、距離もそう離れていない方が良い。大きさは一列の並びの牛床数が
25以下の場合は長さが2.4m程度の水槽で十分である。
<飼料関連>
ヒートストレス時パンティングのためエネルギ-を多く必要とするが、採食量は低下する。よって、涼しくする設備をもうけ、飼料給与はできるだけ早朝、夕方
遅くの涼しい時間帯にする。バッファーの給与は採食量を維持するためには重要で乾物あたり0.75%の重曹を添加すると良い。
ヒートストレス時は選び食いが多くなり、繊維を多く食べない事からアシドーシスになり易く、乳脂肪も下がり易い。そのため嗜好性の良い高品質の粗飼
料を給与し(夏場サイレージは腐り易い)、選び食いをしないようにしなくてはいけない。選び食いをなくし水の摂取量を増加させるのでTMRに水を添加する
のは良い方法である。潜在性のアシドーシスの傾向(採食量や糞の状態が一定でなくなる、乳量が変動する、給餌後2時間たって50-60%の牛が反芻してい
ない)が現れたら、余分に2ポンドの長い粗飼料を給与し、でんぷん質を減らし、その分脂肪でバランスをとる。 飼料中のエネルギー含量を増加させるために
は、油脂の給与が有効で、でんぷんなどに比べ約2倍のエネルギー価をもち、ルーメン内での熱発生量も少ない。ただし、経済的にメリットがあるのは乳量が
27Kg/日以上の時。 また、消化率の高い繊維性の副産物(ビートパルプなど)の利用も役に立つ。
アシドーシスになった時、血液も酸性になる。酸性になった血液は十分な酸素を運ぶことができず、一番遠い足先で酸素欠乏状態になり、足がむくむ。こ
れにより蹄壁と骨の間の圧が高まり、痛みを感じ、出血し、化膿する。高泌乳牛では特にこのような状態になり易い。 このことはカリの濃度とも関係してい
る。 牛は汗をかくとカリを失う。カリの供給源としては炭酸カリ、重炭酸カリのほうが塩化カリよりも優れている。なぜなら塩素の増加は夏季の乾物摂取量を
減少させ、乳量を減少させる。 DCAD{(Na+K)-(Cl+S)}を30-35Meq/100gDMにすることにより、乳量が増加したとの報告があ
る。個々のミネラルの推奨値はカリで1.6-1.8%DM、Clで0.3-0.5%DM、K:Mg=4:1。
ヒートストレス時は採食量が減少するため蛋白の濃度も高めに設定しなくてはいけないが、過度に与えるとかえってエネルギーを無駄遣いさせる結果とな
る。
(Midwest Dairybusiness 2001年5月号 & Hoads Dairyman2001年4月25日号 他)
何を給与しているのか常
に把握すること
安い飼料原料(単味飼料)は魅力的であるが、その成分値を分析して本当に安いのかどうかを検討する必要があ
る。でないと、実際には価格が安くても栄養価としてはそれ以上に低く結局損することもある。例えば綿実の平均脂肪含有量が20%であったとして、安く購入
した綿実の脂肪含量が16%であったとしたら、20%のカロリーダウンを補うための飼料を考慮しなくてはならず、その分のコストを計算に入れなくてはなら
ない。それをせずに通常の綿実と同じように考えて同量を飼料に混合した場合、乳量が低下する。(Dairy Herd Management 3月号)
乳価が低い時にいかに生き残るか考える
乳価が低い時は、いかにして収入を増やすか、いかに将来生き残ってくべきかを考える良い機会である。
(Dairy Herd Management 3月号)
- キャッシュフローを維持するための規模拡大。ただし、すべての人に当てはまるわけではな
い。規模拡大できないか、したくない人はキャッシュフローを維持するために酪農ツアーを開催したり、市乳の自家製造を行ったり、チーズを作ったりして、
キャッシュフローを維持する。
- 自家育成牛の育成コストを計算し、すべての育成牛を購入した場合、すべて委託した場合と比
較検討する。
- 粗飼料調整の機械をすべて自分で持つのがよいのか,すべて自分で作るのがよいのかコストを
考え,場合によっては機械を共同使用したり,粗飼料をすべて購入に切り替えるなどの方法も検討する。
- 共同経営も考える。
MUNを見るときの注意点
多くの酪農家はMUNを牛群の栄養プログラムがうまくいっているかどうかを評価するために使用している。専
門家も牛群の状態を判断するには良い方法と考えているが以下のことが原因でMUNが変化することを覚えておくべきである。(Dairy Herd
Management 3月号)
1)季節:夏に高く、春に低い
2)時間帯:夕方の搾乳時のほうが朝の搾乳時より高い(給餌時間の関係。採食後5-6時間が最も高くな
る)。
3)泌乳ステージ:分娩直後は低く、分娩後3-6ヶ月で最高に達し、その後は徐々に減少する。これは牛の生
理の変化と給与飼料の関係による。
飼料会社で飼料
を混合してもらうことを考える
TMRに必要な飼料原料をすべて自分で混ぜるより,一部を飼料会社に混ぜてもらった方が経済的な場合があ
る。混合してもらう費用はかかるが、飼料原料の在庫を持たなくて済む事、混合比率がより正確であること、飼料のロスが少ないことなどが混合する費用を吸収
する。(Dairy Herd Management 3月号)
ヘッ
ドロックとネックレール、どちらが牛にとって快適か?
カンザス州立大学で行われた試験では、ヘッドロックとネックレールで採食量、乳量がどの程度変わるかを
260頭の泌乳中期牛を用いて試験した。その結果、乳量,採食量ともほとんど変わりはなかった。(Dairy Herd Management 4月号)
フリース
トールでは水のみ場をどこに設置するべきか?
カンザス州立大での試験では、フリーストールの端に置かれた水のみ場より、中央の横切る通路に置かれた水の
み場のほうが、より頻繁に利用されると報告している。但し、中央通路に置かれた水のみ場の後ろの空間の長さが3.6m以下の場合は、乳牛の通行を妨げ、水
のみ場での競争が激しくなるとしている。(Dairy Herd Management 4月号)
フリース
トールではファンをどこに設置するべきか?
カンザス州立大の試験では、4列フリーストールの場合、飼料を食べる場所のみにファンを設置した場合と、飼
料を食べる場所とフリーストール両方にファンを設置した場合では、両方に設置した方が乾物摂取量、乳量が多く、呼吸数は少なかった。(Dairy
Herd Management 4月号)
飼料コストについて
飼料コストは乳生産コストのうち35-50%を占め、乳価が下がってくるとこの部分を再検討しないといけないかも知れません。
飼料給与戦略がうまくいっているかどうかを見るための重要な要因として乾物摂取量があります。
1)現在のレベルから1ポンドの乾物摂取量の増加は2ポンドの乳量の増加につながります。
2)始めの11-13ポンド(5−6Kg)はホルスタイン種の場合維持に使われるので(10Mcal NE)、実際の乾物摂取量から13ポンドを引いて2
倍した値が推定乳量となります。例えば53ポンドのDMIの乳牛では(53ポンド-13ポンド)X 2=80ポンドとなります。
3)乳量(3.5%Fat)を乾物摂取量で割った値は乾物を乳生産に変える効率を現します。この値が1.5以上あれば上出来です(80ポンド/53ポンド
=1.51)。1.3以下であれば何らかの理由で泌乳量が押さえられているか、飼料の食べすぎか、その両方かです。
4)もし、飼料を変更して乾物摂取量が2ポンド以上増加したならそれを続けます。飼料給与回数を増やす、プロピオン酸をベースとする変敗を防ぐ添加物を混
合する、バッファーを添加する、良質の粗飼料を給与するなどはさらに乾物摂取量を増加させます。
牛舎でのムクドリ対策
ムクドリなどの鳥害を防ぐためには次のことに気をつけよう。
- できるだけ餌を食べられないようにする。すなわち、こぼした飼料はすぐ片付ける、穀物はムクドリが入れないようなところに保管する、早朝から
昼前までの時
間はムクドリが餌を食べる時間なので、その時間に給仕しない、水のみ場は水槽の端に止まって水を飲めないように水のレベルを低くするなど。
- 牛舎にムクドリが入れないようにする。ネットを張ったり、入り口にプラスチックを短冊状に切った物をつるすとか。
(Dairy Herd Management、2月 2001年)
30秒の猶予を与えましょう
初産牛を分娩前に新しい場所に移動させる時には、入る前に30秒程度の時間を与えてやることが重要なようです。この時間で、初産牛は新しい場所の匂いをか
いだりして、入るための心の準備ができます。新しいこと(環境)は牛にとって大きなストレスとなるので、できるだけストレスが少なく、良い印象が残るよう
にするのが良いそうです。(Dairy Herd Management、2000年 12月号)
採食、飲水を妨げない、Tie−Rail(牛をそれ以上前に来るのを防ぐ棒)の取り付け位置
Tie−Railは、床から120cmの高さ(大きい牛では125cm)で、飼槽の端から20cm(大きい牛では25cm)前方に取り付け、ウォーター
カップからは55cmから60cm離して取り付けると、立ち上がったり、寝る時に問題が出ず、採食、飲水をしやすくなるそうです。(Dairy
Herd Management、2000年 12月号)
タワーサイロ付近ではガスに注意
タワーサイロではサイロから発生したガスが非常に危険な状況を作り出すことがあるので気をつけなくてはなりません。例えば硝酸ガスは死亡したり肺機能がや
られたりします。そこでサイロを詰めてから2-3週間は次のことに注意してください。(Dairy Herd Management、2000年
12月号)
1.サイロを詰めてから2-3週間は近づかない
2.サイロを取り出す部屋と牛舎との間には戸をつけて〆ておくこと。
3.サイロを取り出す部屋の窓と戸は開けておき、換気できるようにしておく。
4.サイロのシュートドアもサイレージのレベルまでは開けておく。
5.サイロに入る時は15-20分サイレージブローアーを動かすこと。
6.サイロ内では常に命綱をつけ、誰かが外で待機すること。
7.もし、咳き込んだり、のどに刺激を感じたらすぐに脱出し、手当てをすること。
乳牛に蹴られないようにするための方法
乳牛に蹴られたり、雄牛に突進されるのが原因の怪我は牧場の怪我の2/3にあたるそうです。次の項目をよく読んで、蹴る牛を作らないように、また、牛に蹴
られないようにしましょう。(Dairy Herd Management、2000年 12月号)
1.パーラー内でよく蹴る牛は、過去の扱われ方が悪かったために、それが習慣化したり、怖がった結果そうなっていることを認識しておきましょう。
2.特に初産牛を始めて搾乳するときは叩いたり蹴ったりせずにやさしく扱いましょう。
3.牛を移動させる際に犬を使うのも辞めましょう。犬に足をかまれたことのある牛は、蹴る習慣を身につけることが多いようです。
4.牛に近づくときは声をかけたり、やさしく触ったりして近づくことを知らせてやりましょう。
5.牛は驚くことは嫌いです。 牛の後方の見えない位置にとどまることは辞めましょう。
乳頭の凍傷を防ぐ方法
低い気温と冷たい風が乳頭を凍傷にさせる場合があります。乳頭組織の凍傷によるダメージは乳房炎や淘汰につながります。これを防ぐためには次のことを気を
つけてください。(Dairy Herd Management、2000年 12月号)
1.下の表で凍傷になる可能性が印がついている環境下では、ディッピングで濡れている場合凍傷になりやすい。
2.かといってディッピングを中止するのではなく、ディッピングした後30秒後にふき取ってやる必要があります。
3.敷料を増やしてやり、隙間風が入ってこないようにしてやる。
4.軟膏を塗ってやる。ただし、殺菌効果はないのでディッピングの代わりにはなりません。
気温と風速が乳頭の凍傷発生に及ぼす影響
(O ならない、X なる可能性大)
気温/風速(m/秒) |
2.2m |
4.4m |
6.6m |
8.8m |
11.0m |
13.2m |
15.4
m |
4.4℃ |
O |
O |
O |
O |
O |
O |
O |
-6.7℃ |
O |
O |
? |
? |
X |
X |
X |
-17.8℃ |
? |
? |
X |
X |
X |
X |
X |
-28.9℃ |
? |
X |
X |
X |
X |
X |
X |
-40℃ |
X |
X |
X |
X |
X |
X |
X |
-51℃ |
X |
X |
X |
X |
X |
X |
X |
削蹄が適当か見分ける方法
削蹄の意義は、1)過剰に成長した部分の爪を取り除くこと、2)蹄に均等に体重がかかるようにすること、3)蹄の傷を早期に直すことであり、次のような方
法で削蹄が適切に行なわれたかどうか判断できます。
1)蹄を上から見て、爪の生え際から先端までの長さが成牛のホルスタインで7.5cmであるのが理想。大型の牛、種雄牛では少し長めになり、育成牛では少
し短くなります。また、切り口は地面と平行でなくてはなりません。短くしすぎるとアプセス(潰瘍)が発生しやすくなります。アプセスは爪の外側に多く発生
します。
2)蹄を裏側から見て、爪の部分の厚さが6.25mmであることが理想。 1)の長さと、2)の厚さは互いに関係しているため、爪の長さを7.5cmにし
た場合、厚さは6.25mm程度になっているのが普通だそうです。
3)削蹄の際、見た目を気にしすぎて、機能的であることを見逃してしまいがちです。 削蹄された蹄の形は立ったり、歩いたりする時に体重を各足で均等に支
えることに影響します。つま先の爪が長すぎると、踵で歩くようになりますし、どちらかが長いとそちらに体重がかかりやすくなります。これらがうまくいって
いるかどうかは次の方法で確認してください。
つま先部分:蹄を裏側にむけ、蹄の先の部分を合わせて持ち、ナイフなどを当てて両方が平衡になっているかどうかを確認する。
踵部分:同様に踵部分が並行かどうかを確認する。
つま先から踵にかけての部分:同様につま先から踵にかけて、ナイフなどを当て、まっすぐになっているかどうかを確認する。
また、削蹄をどのくらいの頻度で行うと良いかと言う質問がよく出されますが、これは飼養管理状況によって異なるため一概に言えません。一般的には分
娩前3-8週に1回と、分娩後100日ぐらいに1回の計2回行なうのが良いでしょう。(Dairy Herd Management、2000年
12月号)
なぜ分娩前に乳房の毛を焼いてきれいにしなくてはいけないか
乳房の長い毛を焼いてなくしてしまうことが乳房炎を防止する上で大事であることはよく知られるようになった
が、なぜ、分娩前でなくてはならないのか?分娩前というのはスチームアップ(クローズアップと同時期?)のグループに移動させる時期で、乳頭付近の泥や糞
尿のこびりついた乳房の長い毛を焼いて取り除くことにより、この重要な時期の乳房の新たな感染を防ぐことができる。by Dr.Andy
Johnson (Dairy Herd Management, Oct 2000)
初産牛は早めにトランジッショングループに導入すること
Wisconsin大学のDr. Ric
Grummerは、初産牛は分娩5週間ぐらい前にトランジッショングループに入れることを推奨している。16の異なる試験用いられた699頭の初産牛の分
娩前3週間の乾物摂取量は体重の1.63%であり、経産牛
の1.76%に比べて少ない。よって、初産牛にはそのグループや飼料にに慣れさせるために十分な時間を与えてやらなければならない。また、初産牛には乾物
摂取量が少ない分、より栄養濃度の高い飼料が必要となるが、初産牛と経産牛 が同じペンにいる場合は、栄養濃度を初産牛に合わせるべきである。
(Dairy Herd Management, Oct 2000)
初産牛の分娩前の断尾は問題ない
USDAによって行なわれた試験の結果が2000年7月号のJ,DairyScienceに発表された。試
験では1)ゴムバンドを装着し、1週間後に断尾した群、2)5mlのリドカインをを注射後、ゴムバンドを装着し、1週間後に断尾した群、3)断尾しなかっ
た群にわけ、その後の行動と血液を分析した。それによると初産牛の分娩前1ヶ月の断尾はその方法にかかわらず、その後の日常行動(立っている時間、寝てい
る時間、歩いている時間、採食時間、飲水時間、その他)や肉体的(ホルモン分泌、血液性状に悪影響は認められなかった。ただ、断尾した群では、しなかった
群に比べて、乾物摂取量が増加した。これは、若干のストレス下で採食回数と量が増加したためと考えられる。試験の結果ではリドカイン注射の効果は認められ
なかったが、ゴムバンド装着後の痛みを和らげるため、アスピリンを服用させることも考えてよい。また、ゴムバンド装着の位置(椎骨の間)も断尾のときの痛
みを和らげ、無駄な腫れを防ぐために重要である。(Dairy Herd Management, Oct 2000)
分娩直前の乳牛の乾物摂取量に及ぼす要因
分娩前の乳牛の乾物摂取量(DMI)に及ぼす要因として次のようなものがある。
- 分娩までの日数 : 61%
- 飼料中のNDF 含量 : 14%
- 年齢 : 9%
- BCS : 8%
- 飼料中油脂含量 : 6%
- 飼料中のバイパス蛋白含量 : 1%
- 飼料中の分解性蛋白含量 : 1%
最も多きい要因は分娩までの日数であり、分娩日が近づくとともにDMIは低下し、分娩日当日が最低となる。飼料中のNDF含量は14%程度影響し、特にし
りょうちゅうのNDFが40%以上の場合DMIは低下する。
BCSは4以上であるとDMIが低下し、油脂の給与もDMIを低下させる(特に初産牛)。蛋白レベルはほとんど影響しない。 (Dairy Herd Management, Nov. 2000)
分娩直後の乳牛の乾物摂取量を最高に持っていくための戦略
分娩後8-10週目に最大の乾物摂取量を取れるように持っていくためには、適切な乾乳期の管理とそれに続く
分娩直後の適切な管理が必要となる。
分娩直後の乳牛は(経産と初産牛)1-2日ホスピタルペン(分娩房)においた後、20-30日間は
Freshグループに置く。このグループには高品質の乾草を与え、油脂は最低限に押さえる。
フレッシュカウの栄養ガイドライン
成分 |
推奨値
%DM |
CP |
17-19% |
NEl |
0.76Mcal/ポンド |
NFC |
35-40% |
NDF |
28-40% |
Fat |
1%以下 |
Ca |
1-1.2% |
P |
0.4% |
Mg |
0.4% |
K |
1.0% |
Na |
0.18% |
Cl |
0.25% |
S |
0.25% |
Fe |
50ppm |
Co |
0.1ppm |
Cu |
10pm |
Mn |
40ppm |
Zn |
40ppm |
I |
0.6ppm |
Se |
0.3ppm |
VitA |
7万-10万/頭 |
VitD |
2.4万/頭 |
VitE |
500-1000/頭 |
Wisconshin大のDr.Ric
Grummerは分娩後2-3週間の飼料はエネルギーレベルが乾物あたり0.76MCal/ポンド(1.675MCal/Kg)にし、分娩前のエネルギー
レベル(0.72MCal/ポンド)から搾乳牛のエネルギーレベル(0.78-0.8MCal/ポンド)まで、段階的に押し上げるnのが良いとしている。
蛋白の重要なファクターではあるが、分娩直後の蛋白の要求量についての適切な試験結果がない。しかし、17-19%程度を推奨している。次に重要な点は高
品質の乾草を給与することで、高品質の乾草はエネルギー価が高く、嗜好性も良い。 5%以上の油脂の添加は乾物摂取量を減少させるし、分娩直後の牛には多
くは必要ない。初産牛には0.5%程度の油脂の給与が油脂を含む搾乳牛用飼料に慣らす意味で必要である。よって、初産牛と経産牛
を分娩後2-3週間分けて飼う場合、初産牛群に0.5%程度の油脂を給与するのは良い方法である。分娩直後の乳牛の乾物摂取量に大きく影響する要因は飼養
管理(フィーディングマネージメント)である。分娩直後の牛は牛群の中でもっとも傷つきやすく、競争しない。そのためこの時期の牛に競争をさせるような飼
養管理は乾物摂取量の低下につながる。次の方法がWisconshin大のDr.Ric Grummer, Nebraska大の Dr. Ric
Grant、 Ohio州立大のDr. Bill Weissによる分娩直後2-3週の乳牛の乾物摂取量を増加させる方法である。
- 少なくとも20時間は新鮮な飼料が食べられる状況においてやる。
- 1日に最低でも3回、飼料を給与するか、分離給与の場合は1日4回給与する。
- 1日に最低4回は飼料を掃き寄せてやる。
- 毎日、飼槽と水槽をきれいに掃除する。
- いつでもきれいな水が十分飲めるようにする。
- フリーストールでは飼槽の長さが最低でも50cm/頭以上必要で、それ以下になると競争が
激しくなる。
- フリーストールでは水槽の長さが最低でも30cm/頭、周りには最低4.2mの空間がある
ようにする。
- 残飼の量をチェックする。通常5%程度残るようにする。
- できれば初産牛は経産牛 と別飼いする。
- 夏場の暑いときは採食する場所にクーリングシステム(ファン、ミスト)を設置する。
(Dairy Herd Management, Oct 2000)
理想的な乳牛の行動パターン
ABS GROBAL が乳牛の理想的な1日の過ごし方を報告している。それによると
- 50%(12時間):横になっている、
- 21%(5時間):採食している、
- 13%(3.1 時間):搾乳している、
- 6%(1.44時間):社会的行動(発情による乗駕など)、
- 6%(1.4 時間):ロックされている、
- 4%(0.96時間):水を飲んでいる
これらの時間が何らかの要因で短くなったり、長くなったりした場合、その影響は他の行動時間の短縮、延長に
つながり生産性に影響を及ぼす可能性がある。大まかにこれらの時間を把握することによって、どこに問題があるかを知ることができる。これらを把握するため
のスプレッドシートは次のHPへ<http://www.absglobal.com>(Dairy Herd Management,
Nov. 2000)
トランジッ
ション時の乳牛の肝臓の代謝と健康の関係
Interactions of Liver Metabolism and Health in Transition Dairy
Cows;
T.R. Overton, M.S. Pipenbrink and M.R. Waldron, Cornell
University
分娩移行期の乳牛の肝臓代謝と疾病との関係について Dr.Overtonが面白い話をしましたのでご紹介します。
乳牛の分娩前後はエネルギー不足により脂肪肝になりやすいことが知られていますが、これは需要が急激に増加したグルコースを糖新生で補え切れないことから
起こります。このことはさらに、糖新生の原料不足によるものか、肝臓での糖新生が妨げられた結果起こるかです。確かに脂肪が蓄積した肝臓細胞は糖新生の能
力が劣っていますが、InVitroの試験結果から推測すると、これは脂肪の存在によって糖新生が阻害されたのではなく(訳者注;物理的に圧迫され血流障
害による代謝の阻害についてはここでは述べられていない)、脂肪の存在により尿素サイクルに異常が生じたことに関係しており、このことが血中のアンモニア
濃度を増加させ、その結果として糖新生が阻害されたということになります。分娩時、肝臓のTG蓄積量が多い乳牛の血中アンモニア濃度が通常の倍近くになる
ことが実際の乳牛でも観察されています(分娩前27日:33.4マイクロモル、分娩後22時間:64.8マイクロモル)。よって、分娩前後の過度の可溶性
蛋白、炭水化物とのバランスの不均衡がアンモニアの発生を増やし、糖新生に影響を与えるかもしれません。
NEFAの過度の動因を防ぐためには基本的に2つのアプローチ方法があります。1つはエネルギ‐不足にさせないこと(プロピオン酸の投与)、もう一つは肝
臓でのTGの代謝を高めることです(VLDLとして放出)。最近のバイパスコリンを用いた試験では、肝臓中のTGの量が投与量に比例して減少する傾向が認
められましたが、その差は優位ではありませんでした。
ミルカー装着時の蹴りを防ぐには
ミルカー装着時に蹴る牛の多くは、過去に手荒い扱いを受け、それを記憶しているために蹴る。もし初産牛が始めてミルカーを装着時に叩かれたり、ミルカーを
落としたりしたら、その恐怖感はずっと存在し続ける。 牛を蹴らないようにさせるためにはこのような恐怖心を始めに持たさないことである。 初産牛の搾乳
時には注意深く、やさしく扱い、決して驚かせてはいけない。 このことは乳量の増加にもつながる。 (Hoad's Dairyman 9/10
2000)
死産が増加している?
死産とは子牛が分娩直前、もしくは分娩後48時間以内に死ぬことを言い、ホルスタイン種は他の品種に比較して死産の確率は高い。死産の確立は初産牛では
11%、経産牛
では5.7%となっている。 死産の割合は、難産の度合いが増加するほど高まり、また、種雄牛の選択時に死産の確率が高い種雄牛を選択していることも原因
と考えられる。死産を防ぐためにはタイミングの良い分娩時の解除が必要である。 分娩過程には、1時間ぐらいで終わるゆっくりした陣痛と最終的に出産する
時の陣痛の2段階あるが、始めのステージの陣痛では介助すべきでなく、早すぎる介助は早すぎる臍の尾の切断につながり、子牛は死産や、免疫不全になる可能
性が高く、母牛も後産停滞や空胎日数の増加につながる。(Hoad's Dairyman 9/10 2000)
蹄病の発生機序と防ぐための方法
アシドーシスが蹄病を引き起こすことは良く知られているが、その発生メカニズムはルーメン内pHの急激な低下により死
んだ微生物がエンドトキシン、ヒスタミンを放出し、それが蹄の裏側のケラチン層細胞を崩壊させ内出血を起こさせ(この内出血のあとは2週間後くらいに蹄底
に現れる)、これによりケラチン層の血流が阻害され、蹄の発育が異常になり、蹄に傷が生じたり、爪の伸び方が異常になる。また、それらの傷が牛床の影響で
悪化、場合によっては感染し、歩行障害が起こりやすくなる。 アシドーシスを防ぐほかに蹄病を予防するためには次のような添加物、管理がが役に立つ。
1) ビオチンは長鎖脂肪酸の合成とグルコースの代謝に関与しており、また、ケラチンの合成にも関与している。ビオチンは蹄組織の材料をつなぎ合わせる長
鎖脂肪酸の合成とケラチン質の合成に不可欠である。ドイツやオーストラリア、米国の試験では10-20mg/頭/日のビオチンの給与は蹄病の発生率を低下
させている。
2) 微量ミネラルである銅と亜鉛はケラチンの合成に必要なミネラルで100-200mg/頭/日の亜鉛メチオニンの給与もまた蹄病を減少させる。
3) その他、フリーストールを使用しないで立っている時間が多い牛は蹄病になりやすいと言う報告もあり、フリーストールの牛床を快適にすることも蹄病の
減少に役立つ。 4) また、牛床にゴムマットを敷いた場合も効果があったとの報告がある。(Hoad's Dairyman 9/25
2000 ほか)
年間の牛群平均乳量4万ポンド(18182Kg)の飼養管理
7月にボルチモアで行なわれたADSAのシンポジウムで米国の高泌乳牛群に関する調査結果が報告されまし
た。調査の対象はDHI加入の牛群の年間のローリングハードアベレージが全米でトップ10および各地区のトップ10の牛群。
これらの牛群に共通することとして;
1) 体細胞数が25万以下、
2) 41%の牛群が乾乳時と分娩時にボディコンディションスコア(BCS)を使っている。
3) 52%がつなぎ飼いをしている。
4) 99%が搾乳後のディッピング、89%がプレディッピングを行なっている。
5) 生産者は投資、生産効率、達成感を重要視しており、これらが1頭あたりの乳量を増やす原動力となっている。
6) 分娩間隔は14.5ヶ月、受胎に要する人工授精回数は2.8回、空胎日数は163日となっている。。
また、高泌乳牛を飼う飼養管理のポイントとしては;
1) 常に安定した飼料を供給できるようにし、急な変化は避ける。
2) 常にできるだけ多くの種類の飼料原料を使用する。
3) BCSと体重をコントロールできる適切なエネルギー/蛋白の飼料を給与する。
4) 乾物摂取量を最大にする。
5) 適切な乾乳牛の飼養管理により分娩後の疾病を防ぐ。
6) 育成牛を適切なサイズ(体重と体高)、BCSに育てる。
7) できるだけ牛が快適であるようにしてやる。
高泌乳牛群の条件
イリノイ大のDr.MikeHutjensは全米の酪農アドバイザー(獣医、コンサルタント、普及員、その他)に4万ポンドの乳生産を達成するのに必要な
5つのポイントを挙げてもらったところ、次表のような結果が出た。飼料の安定性(Feed Consistency)とは、いつも同じ種類で、同じ品質の
飼料が給与されると言うことで、粗飼料や購入する穀類などのバラツキは予想以上に大きく、これを維持するのはなかなか困難である。飼料の加工および粗飼料
の切断長も重要な要因でこれらが常に安定していることも必要である。初産牛は経産牛
とは違うので同様に管理してはいけない。例えばDMIは1.5−3Kg少ないし、採食パターン(一回に食べる量、採食回数、採食の間隔)も異なり、成長に
要する栄養素も多く、社会的ストレスも大きい。よって、これらのことを補ってやる管理が必要である。また、指導者の知識についても重要で、より、専門的な
アドバイザーが求められている。そのためには酪農家はインターネットなどの情報を含めた複数の情報ソース持つべきである。(Dairy Today,
2000年10月号)
項目 |
獣医 |
普及員 |
コンサルタント |
Total |
粗飼料の品質 |
13 |
5 |
4 |
33 |
カウ コンフォ-ト |
9 |
1 |
7 |
24 |
移行期(Transition Cow)の飼料 |
8 |
2 |
6 |
21 |
フィードバンクマネージメント |
8 |
3 |
4 |
17 |
飲み水の品質、管理 |
2 |
2 |
4 |
13 |
飼料がいつも食べられる状況にあること |
3 |
2 |
2 |
10 |
栄養のバランスと形態 |
5 |
3 |
2 |
10 |
飼料の安定性(いつも同じ品質のえさ) |
4 |
3 |
2 |
9 |
乾物摂取量 |
4 |
3 |
0 |
7 |
飼料の粒度(粗飼料の切断長、粉砕粒度他) |
4 |
1 |
1 |
6 |
バンクサイロのマネージメント |
1 |
0 |
4 |
5 |
飼料を混合する人 |
1 |
1 |
1 |
3 |
残飼のマネージメント |
2 |
0 |
0 |
2 |
飼料の嗜好性 |
1 |
0 |
0 |
1 |
飼料のかび |
1 |
0 |
0 |
1 |
コーンサイレージによる泌乳スランプを避けるためには
9月から11月にかけては新しいコーンサイレージではなく、昨年のコーンサイレージを引き続き給与できることが、この季節によくあるコーンサイレージによ
る泌乳スランプを避けるためには必要である。コーンサイレージは十分発酵していないと、期待する栄養価が得られない場合がある。(Dairy Herd
Management 2000年 9月号)
ルーメンの機能が適切であるかどうかの指標
オハイオ州立大のDr.Eastridgeは少ない粗飼料の飼料(体重あたり0.75% Forage
NDF以下)でも、泌乳中期、後期の乳牛は飼えるが、牛を注意深く観察する必要があると言っている。次のような症状があれば問題が発生している恐れがあ
る。 (Dairy Herd Management 2000年 9月号 & Hoad's Dairyman 9/25 2000))
1)乳脂率がホルスタイン種で3.3%、ジャージー種で3.8%以下。(牛群平均で確認し、次にグループごとに確認する。)
2)乳脂率と乳蛋白率の比が1:1以下。
3)観察時に40%以下の牛しか反芻していない。 (牛を驚かせないようにして観察)
4)高泌乳牛で1日の乾物摂取量が50ポンド(約23Kg)以下。
5)ケトーシスの発生率が2%以上。
6)第4胃変異の発生率が5%以上。
7)牛群の25%以上が蹄底の内出血などによりびっこをひいている。
炭水化物給与のガイドライン
成分 |
推奨値 |
コメント |
粗飼料割合 |
40-60 (%DM) |
粗飼料の品質、NDF含量、NFCの発酵速度、切断長などが要因となるので、いい指標ではない |
NDF |
最低 26-28 (%DM) |
NDFが何から来ているのかがわからない |
ADF |
最低 19-21 (%DM) |
NDFからヘミセルロースを除いたものであるが、品種によって異なる |
粗飼料NDF |
最低 16-21 (%DM) |
機能性繊維の良い指標 |
NFC |
35-42 (%DM) |
計算方法が一定でない |
でんぷん |
25-35 (%DM) |
データがない場合が多い |
粗飼料NDF/NFC |
0.45-0.5 |
ルーメン機能を維持するための炭水化物のバランス指標 |
粗飼料NDFの量を決める要因
ルーメンpH |
低い(安定しない) 高い(安定しやすい) |
粗飼料NDF% |
11% 19% 25% |
粗飼料切断長 |
長い 短い |
TMR |
TMR TMRでない |
重曹の給与 |
使用 使用しない |
でんぷん量 |
少ない 多い |
でんぷんの発酵速度 |
遅い 早い |
FeedManagement |
細かい管理ができる 細かい管理ができない
|
牛の選び食いの状況と潜在性アシドーシス
ウィスコンシン州の飼料会社、VITAPLUSが現場で選び食いの程度を確認する試験を行なった。TMRを給与後6時間おきに24時間、ペンステートの
パーティクルセパレーターで飼料の粒度の変化を調べた。その結果、牛は長い粗飼料をのけて細かい濃厚飼料を先に食べる傾向がはっきりと表れた。このような
状態は潜在性のアシドーシスにつながる。これを防ぐためには、1)TMRを2-3回に分けて給与する。2)できるだけ回数多くTMRを掃き寄せてやる。
3)選び食いをしにくくするようにTMRに水、糖蜜、ウェットのビール粕などを混ぜる。4)乾草を混合する際は切断長に注意する。5)プロセスコーンサイ
レージを使用する。6)乾草は品質の良いものを使用し、粗濃比を50:50に保つ。
表 TMR給与後の飼料粒度の変化
スクリーン |
理想の比率 |
TMR給与直後 |
6時間後 |
12時間後 |
18時間後 |
23.5時間後 |
上(Top ) |
7-12% |
9.3% |
13.7% |
21.5% |
27.5% |
58.7% |
真中(Middle) |
30-50% |
47.0% |
42.3% |
41.6% |
38.9% |
26.7% |
下(Bottom) |
50%以下 |
43.6% |
44.0% |
36.8% |
33.3% |
14.5% |
(Dairy Herd Management 2000年 9月号)
日長時間を増やすと乳量が増加する
イリノイ大学のDr.Geoff Dahlは日長時間と乳量に関する研究を行なっており、それによると夏場と同様の16-18時間の日長時間は13.5時
間の場合に比べて6-10%乳量を増加させるそうです。このことは前にも紹介しましたが、今回はこれに関するQ&A集が載っていましたのでその抜粋を紹介
します。
- そのメカニズムは?
目から入った光の刺激は脳の松果体に伝えられ、メラトニンというホルモンの分泌を減少させる。メラトニンの減少は肝臓でのインシュリン様成長ホルモン
(IGF−I)の増加を促し(IGF−Iは乳腺に働き乳量を増加させる、bSTと同様)、乳量を増加させる。
- 乾乳牛についてはどうか?
乾乳牛は逆に日長時間を8時間程度にしたほうが12-14時間の場合より、分娩後の乳量が7ポンド程度多かった。分娩後の日長時間との関連などさらに研究
する必要がある。
- どの程度の光の強さが必要か?
牛に昼間であることを認識させるのに20 フット カンデラの明るさが必要。
- 光の強さが強くなればそれだけ乳量が増加するか?
強くしても乳量は増加しない。ただし電気代はそのぶんよけいにかかるため経済的でない。
- 日長時間を長くすればするだけ乳量が増加するか?
長くしても意味はなく、24時間では逆に乳量が減少した。また、暗くしなければいけない時間帯に5フットカンデラ以上の光を30分以上照射すると効果は薄
れる。
- ライトをフィードバンクだけに取り付けても効果があるか?
フリーストールバーンではフィードバンクへの照明だけでは効果はなく、フリーストールとフィードバンク両方に取り付ける必要がある。
- どの種類の照明が有効か?
基本的にどのタイプでも良いが、重要なのは照明器具の設置場所から牛までの距離で、天井が高ければそれだけ強い照明器具が必要になる。
(訳者注:日長時間の調節は季節繁殖動物の鹿や羊の繁殖季節の調整に実際に行なわれているが、注意すべき点は冬毛、夏毛の生え変わりも日長時間によること
も覚えておく必要がある。牛でどの程度の変化があるのかは明らかではないが、鹿では明らかに差が現れる。もしこの技術を寒冷地実践するときは牛が風邪を引
かないようにしてやる必要があるかも?)(Dairy Herd Management 2000年 9月号 & Dairy Today
2000年 10月号)
窒素排泄量を減らす5つの方法
USDAのDr.Larry
Satter は 畜産環境汚染を防止することに情熱を傾けています。昨年、リンの給与量を減少させるべきというキャンペーンは大成功に終わり、一般的に
なってきていますが、次のターゲットとして排泄窒素の低減を取り上げています。ここではDr.Satterの排泄窒素低減策について紹介します。
乳牛に給与した窒素の30-40%はアンモニアとして環境に放出されます。米国環境保護局(EPA)は近い将来これらを規制する法律を作るでしょ
う。そうなる前にちょっとした工夫で排泄窒素を15-20%に減少させる方法があります。排泄窒素を低減することにより次のようなメリットがあります。
1)糞尿を捨てる場所の面積が少なくてすむ。 2)飼料蛋白のコストを節約できる。3)環境へのダメージを少なくすることができる。
1.給与する飼料中の蛋白含量を減少させる。
多くの牛群では蛋白を過剰に給与しています。飼料中の過剰な蛋白を10%を減らすことができれば、尿中の窒素を20%低下させることができます。また、過
剰な蛋白を排泄するために
余分なエネルギーを使用することにもなり、乳牛にとっても好ましくありません。よって、以下ことを実行してみてください。
- 高品質の粗飼料を給与する。粗飼料からの蛋白が高ければ余分な大豆粕などを使用しなくてすみます。定期的に粗飼料を分析し、余分な蛋白を給与
しないように
します。
- 消化性の高い繊維飼料(豆皮、ビートパルプ)はアンモニアの利用率を向上させます。ただし、NDFレベルは泌乳初期牛で28-35%DM、後
期牛で40%
DMを維持すること。
グループ分けを考える。ある特定のグループだけ蛋白を過剰に給与していないかどうか、乳中尿素体窒素(MUN)で確かめましょう。10-14mg/dlで
あることが望ましく、それ以上であれば過剰給与です。
2.相互補完ができるような粗飼料の組み合わせを考える。
コーンサイレージとアルファルファサイレージのように蛋白とエネルギーのバランスが取れるような粗飼料を組み合わせましょう。
3.穀類の加工によりでんぷんの消化利用性を向上させる
粉砕やスチームフレークなどはでんぷんのルーメン内での利用性を向上させ、より多くのアンモニアを微生物体蛋白として固定させ、乳牛に利用させることがで
きる。
4.バイパス蛋白の利用
バイパス蛋白源はルーメン内で分解が遅いため、ルーメン内でのアンモニアの産生は少なくなる。よって、微生物体蛋白で足りない部分をバイパス蛋白で補うこ
とは良い。
5.バイパスアミノ酸の給与
バイパスメチオニン(バイパスリジンも?)はアミノ酸バランスを整えることにより、蛋白の合成量を増やし、尿中排泄窒素量を減少させることができる。
(Dairy Herd Management 2000年 9月号)
正しい乾乳の仕方
乾乳時に40−50Kg絞っている場合でも乾乳のやり方次第では問題なく乾乳できます。乳房炎に感染させないでストレスを感じさせない乾乳方法は以下の通
り。
1.乾乳予定日の2週間前にはbSTの注射を打つのをやめる。
2.飼料の変更を行なう。方法としては1週間前に変更する方法と、直後に変更する方法がある。どちらが良いかは酪農家によって異なる。
- 乾乳予定日の1週間前に飼料を変更する方法
乾乳予定日の1週間前になった牛は個別のペンまたはスタンチョンに移し、粗飼料の多い、低エネルギー飼料を給与する。乾乳日には飼料を全部取り除き、水は
自由に飲めるようにさせる。 - 乾乳時に飼料を変更する。
乾乳日の最後の搾乳が終了すると同時に、粗飼料の多い低エネルギー飼料に切り替え、水は十分飲めるようにしておく。3-5日はこのままにしよく観察する。
3.乾乳時の乳房炎軟膏の注入
最後の搾乳が終了したら乾乳軟膏を注入する。手にはゴム手袋をし、70%アルコールに浸した脱脂綿かガーゼで乳頭を拭く。始めは
自分から遠い方の乳頭を拭き、次に近い方を拭く。乾乳軟膏の注入はバクテリアの侵入を防いでいるケラチンプラグを傷つけないように乳頭口に浅く挿入し、注
入する。注入は自分に近い乳頭から行う。次に搾乳後に使用するディッピング剤で乳頭のディッピングを行い、十分に乾燥させる。ディッピング剤は十分殺菌力
のあるものを使用すること。乾燥させたらきれいな布でふき取り、バリアタイプのディッピング剤を使用しM、乳頭に皮膜を作る。乾燥するまで立たせておくこ
と。乾乳時はストレスが強いので、何回もワクチン接種をすることは避けること。
4.乾乳後は1週間程度ペンに入れ観察できるようにする。
ペンは清潔にし、1日2回は掃除する。乾乳後、牛自身の免疫力が最高になるまでには14-21日かかるといわれており、乾乳直後
の乳房炎感染を防ぐためにはこのことは重要である。乾乳後2-3日は低品質の粗飼料だけを給与する。乾乳後4日目には乾乳期の飼料を混ぜ始め、6日目には
乾乳牛の飼料に全面的に切り替える。4-6日ぐらいで乳房が退縮し、ぺちゃんこになるのを確認したら乾乳牛群に入れる。
5.乾乳牛群に入れる。
乾乳牛のペンは清潔で乾燥していなくてはならず、少なくとも2箇所の水のみ場が必要である。分娩予定日がずれる場合もあるので飼
料給与時のほかに週に1回は乾乳牛のペンを訪れ、観察すること。乾乳期間にBCSを落とすような飼養管理はしてはいけない。
(Dairy Herd Management 2000年 9月号)
後肢の副蹄はやすりで丸めよう
もし、乳頭にしょっちゅう傷をつけるような牛がいれば、後肢の副蹄のとがった部分をやすりで丸めるといいかもしれない。特に乳房が垂れ下がった牛、乳頭の
長い牛、寝起きがしづらい分娩間近の牛、疾病牛、フリーストールのデザインが悪い場合などは役に立つ。(Dairy Herd Management
2000年 9月号)
定期的な削蹄は重要
乳牛の健康と高い生産性を維持するためには、定期的な削蹄が重要である。その理由は 1)歩行困難な牛は飼槽に行くのも困難なため、低乳量になりがち、
2)足の悪い牛は発情をはっきり示さず、多くの場合繁殖成績が悪い、 3)足の悪い牛は寝ている時間が長く、また、同じところに居るため、乳房炎の危険が
高まる、などである。年に2回の削蹄に関する投資は一日あたりの経費にしてみれば安いものである。(Dairy Herd Management
July 2000)
乾物摂取量を決める要因
乾物摂取量は乳生産にとって非常に重要な問題ですが、それに影響を与える要因としては乳量、体重がよく知られていますが、それだけでは乾物摂取量の52%
を説明しているに過ぎず、 飼養管理(22%)、気候(10%)、BCS(6%)なども大きな要因となっています。飼養管理がいかに重要かわかります。な
かでもどれだけ長く乳牛が飼料を食べる時間が与えられているかが問題です。搾乳時間、搾乳室への移動、待機時間が長ければそれだけ採食に要する時間が減少
しますし、飼槽に飼料がない時間があったり、十分なバンクスペースがなかったり、過密な飼育状況であったりすると同様に採食量が制限されます。計算された
飼料摂取量よりも低い場合は、このようなことがないかどうかチェックしてみてください。(Dairy Herd Management July
2000を参考に補足)
飛節(ひざの部分、Hock)の傷は牛床の材質に影響される
カナダの研究によると飛節部分の傷は牛床の敷料と関係しており、20軒の酪農家の1752頭を用いた調査では、マットレスを使用している牛群では91%の
牛の飛節に傷があり、おがくずの場合で70%、砂の場合で24%であった。また、これらの傷を軽いものを1、ひどいものを2とスコア化した数字を見てみる
と、マットレスが1.9、おがくずが1.7、砂が1.3であった。Dairy Herd Management June2000)
暑熱対策特集(2000年版)
Dairy Herd Management
2000年5月号に暑熱対策の特集がありましたのでその部分の概要をご紹介します。特に水飲み場とファンの設置については参考になると思います。また、他
の雑誌にもいろいろ暑熱対策の記事が載っていますので、関係のあるところに書き足しています。
水飲み場の設計
水は牛乳の85%を占める重要な物質で、しかも最も安い飼料原料です。水を十分に飲ませる事ができれば、そうでない場合に比べると、採食量、乳量に大きな
差が生じます。特に暑熱時には重要なファクターとなります。通常、36Kgの乳量を出している牛で、110リットルから135リットルの水が必要で、夏場
にはその倍量が必要となります。夏場を前にもう一度、水飲み場をチェックしてみてください。
乳牛(ホルスタイン種)にとって理想的な水槽は、床から水槽の一番上の部分までの高さが60-80cm、水の深さが15-
30cm、水槽の上部から水面までの高さ5-8cmである。水をすするような飲み方をしたり、水を飲んでいる最中に顔を上げたりするのであれば水面が高す
ぎる可能性がある。水飲み場での競合を避けるためには、水槽の設置場所のス後方のスペースとして最低4.2mの幅を取る事(水を飲んでいる牛の後ろを他の
牛が通りぬけるのに十分なスペース)。その他の水飲み場に関してのチェックポイントは以下の通り;
- 最低でも1グループに2個所の水飲み場を設ける。
- 水飲み場は日陰に置く。
- 水飲み場はミルキングパーラーからの帰り道に置く。大きさはミルキングパーラーから出て来た牛が待つことなく一斉に飲める幅が必要(パー
ラーから一度に出
てくる牛の数に60cmをかけた幅をとる)。順番に飲む事になると次に出てきた牛と取り合いとなり、十分に飲めない牛が出てくる。
- 待たなくても飲めるように常に十分な水量を供給する(最低でも40リットル/分)。
- 水のよどみをなくす。
- 水飲み場にガードを設けるときは最低でも60cmのクリアランスをもたせ、飲水行動を妨げない。
ファンの設置方法
暑熱対策にファンは有効ですが、その設置方法によっても効果が変わってきます。スプリンクラーやミストと組み合わせるとその効果は非常に大きくなります。
設置場所の優先順位
- ホールディングペン(搾乳前に待たせるところ)、
- クローズアップペン、分娩房、ホスピタルペン、
- フィードバンク
- フリーストール
送風量
夏場は最低でも乳牛一頭あたり500-1000キュービックフィート/分(cfm)の送風量が必要で、風のスピードとしては220-500フィート/分必
要である。風の届く範囲はファンの直径の10倍となるので、90cmのファンでは9m風がとどく事になり、90cmのファンは最低でも9mおきに設置しな
くてはならない。
ファンの設置方法
- ホールディングペン:ミルキングパーラーの入り口から反対方向に向かって風を作るように、90cmのファンを2.4m
間隔で横に並べ、それぞれのファンは30度下に向ける。縦は90cmのファンであれば約9mの間隔を空け同様にファンを設置する。
- フィードバンク、フリーストール:採食する牛の背中とストールで横になっている牛の背中に風があたるようにファンを設
置する。ファンは30度の角度で下に向け、床からの高さは最低でも2.4mのクリアランスを設ける事。
飼料給与方法
夜の餌やり
牛は食べたものを消化する際に熱を出すため、暑熱時にはこれを少なくするため採食量を低下させ、涼しい時間帯に食べる時間をシフトします。夜間涼しくなっ
てからの餌やりは牛の採食量を増やすだけでなく、飼料の変敗も防ぎます。変敗飼料と汚い飼槽は牛の採食量を低下させます。
飼料の水分含量の調節
暑くなると採食量が落ちるだけでなく、穀類を選び食いをしやすくなり、アシドーシスの危険性が高まります。これを防ぐためにTMRの水分含量を高める事が
有効かもしれません。
粗飼料を減少させる
暑熱時には必要とする維持エネルギー量が増加するため、粗飼料を減らして穀類を増やし、飼料のエネルギー濃度を高める必要があります。しかし、アシドーシ
スを防ぐためには機能性のせんい含量を40-45%以上にしなくてはいけません。エネルギー含量の高い高品質の粗飼料を給与することが重要です。粗飼料を
減らすのは泌乳中期の牛で行うべきで、泌乳初期の牛に行うべきではありません。
飼料添加物の利用
油脂の利用 : エネルギーを高めるのに有効ですが、多すぎると乾物摂取量を低下させ、乳量、乳脂率、乳蛋白率を低下させる
事になります。
菌類添加物:アマファーム、イーストカルチャーなどの添加物は暑熱時の乾物摂取量の低下、乳量の低下を防止し、乳成分を向上させ
ます。
ミネラル:暑熱時、汗をかくとカリ、ナトリウム、マグネシウムを失います。よって、不足しない様に余分に給与する事が必要です。
推奨値はカリで1.5-1.6%DM、ナトリウムで0.4-0.5%DM、マグネシウムで0.3%DM。
Feedbunk Management
Dr. Mike HutjensがFeedbunk Management についてDairy Today2000年 5月号
に書いていましたのでご紹介します。
現場で言う飼料には4種類あり、計算上の飼料、TMRを混合した際の飼料、実際に牛が摂取した飼料、そして実際に消化される飼料です。これらが同じ
である事が望ましいわけですが、それをモニターするための方法をご紹介します。
TMRの選び食い(Sorting)は大きな問題で、中西部の調査では6時間おきに、Penn State
のパーティクルセパレーターを使用して、TMRの状態をチェックした結果、初めの6時間にTMRの細かい部分が多く食べられている事がわかったそうです。
よって、TMRと言えども場合によっては常に均一な飼料とは言えないということになります。選び食いを防ぐ方法としては;
- 長い粗飼料を十分摂取させるために嗜好性の良い乾草を給与する。
- アシドーシスの危険性を低下させるため、バッファー(重曹など)を給与する。
- 粗飼料はTMRに加える前に理想的な長さに切断しておく。
- プロセス処理したコーンサイレージ
(収穫時にローラーを通して押しつぶしてからサイロに詰込む技術。コーンコブ、コーンの子実が押しつぶされているため、消化率が高く、長いせんいがそのま
ま残り、選び食いを少なくできる)を使用する。
- TMRでの混合時間を増やす。(補足説明:長い繊維が残っていても、選び食いをしては何にもならないということ)
- TMRは1日に何回かに分けて給与する。1回で調製しても、給与は何回かに分ける。
- 飼料をくっつけるため水を入れるか、糖蜜を混ぜる。
給与されたTMRが選び食いされているかどうかの診断方法は
- Penn State
のパーティクルセパレーターを使用して、残飼の粒度分布を調べる。もし、初めのものと比べて5%以上の違いがあれば、選び食いをしている。
- 残飼のDM、CP、ADF をウェットケミストリーで分析する。もし、CPで1%、ADF
で2%もしくはDMで3%以上の違いがあれば、選び食いをしている。
- 残飼の量は24時間で2-5%であるべきで、その外見は給与時のそれと同じである事。
TMRの混合がうまく行っているかどうかはTMR給与時、ミキサーからの出し始めと終わりの部分のTMRが同じであるか調べる。また、牛が選び食いをして
いないかかどうかを十分観察する。牛は飼料に嫌いな部分があると、口で押したり、舐めたり、餌を投げ上げたりする。
連動スタンチョンとネックレール
フリーストールやルーズバーンで管理をしやすくするため、飼槽に連動スタンチョンをつけるのが一般的ですが、単にネックレールだけにした場合、乾物摂取量
が増加します(Cow コンフォート
の改善?)。その両方の良い点を生かすため、ペンシルバニアのある600頭飼養の酪農家は75%部分をレールだけに、残りの25%を連動スタンチョンを取
り付け、分娩直後の牛が連動スタンチョンの部分に入れるようにしています。この部分にはホスピタルペンを設け、病気の牛の治療ができるようにし、また、ミ
ルキングパーラーからの帰り道に、レールだけのペンに入っている牛の人工授精や、治療などのために牛を保定するレールを設置しています。(Dairy
Herd Management 2000年 5月号)
牛の選び食いをなくす方法 (Hoad's Dairyman 4/10/2000)
TMRにしていても選び食いをされてはあまり意味がありません。選び食いは固体による差が大きく、同じTMRをやっていてもアシドーシスになる牛、ならな
い牛が出てきて、糞の状態が一様でなく、バルクの乳量、乳成分が安定しなくなります。
このような状態を防ぐためにはまず第一に十分な機能性せんいを給与する事が必要です。一般的な推奨値は最低21%のNDFが粗飼料から来ている事、TMR
の15%以上の飼料の大きさが1.5インチ(3.75cm)以上ある事です。ただし、ビートパルプ(綿実も?)などを多く含む場合は、NDFがもう少し低
くても良いかもしれません。また、長いせんい源であるコーンサイレージ、グラスサイレージ、乾草などは一番最後にミキサーに入れる事が必要かも知れませ
ん。最終的にはパーティクルセパレーターでTMRの粒度がどうなっているのか調べる必要があります。ただし、あまり長い乾草を使うと選び食いがより簡単に
なるため、長いせんいを増やしたと思っても、アシドーシスが増加する原因にもなります。
もうひとつの方法として、TMRの水分含量を高める事が有効です。選び食いで困っていた農家で、TMRの乾物が50-55%であったのを水を入れて乾物を
45%に低下させただけで乳量が9ポンド(4Kg)/日/頭増加した例があります。糞の状態もばらつきがなくなりました。確かに高水分のサイレージは牛の
嗜好性があまり良くありませんが、間違えてはいけないのは、問題は水分でなく、そのサイレージの発酵品質によるものであるということです。水を加える他の
方法として、ウェットのビール粕や液状糖蜜などを混合するのもよい方法です。
最後に、TMRは十分の量を何回かに分けて給与する事も大事です。少ない量を1回の給与で与えると、選び食いやどか食いが激しくなり、アシドーシス(潜在
性)が多くなります。
乾物摂取量に及ぼす環境要因(Tri-State Nutrition Conference
2000)
Environmental Factors Affecting Feed Intake of Cows
Micheal J. Brouk (Kansas State University)
乾物摂取量は乳生産において唯一の最も重要な要因で、乳量が増加すると乳牛の乾物摂取量が最も大きな障害となる。乾物摂取量はその45%は乳量に、
17%は体重に、10%は気候に、6%がBCSに影響を受け、残りの22%が飼養管理によって影響を受けるとされている(Roseler、et
al., 1997)。よって、乾物摂取量を増加させるためにはどのような飼養管理を行うかが重要である。
飼槽と水槽へのアクセス
バンクスペース:20cm(牛1頭あたり)以下のバンクスペースでは乾物摂取量が低下する。45cm以上は必要。よって、フリーストールの設計時、飼養頭
数に余裕を持ってバンクスペースを確保すること(6列フリーストール:160頭 は4列フリーストール:100頭
に比べバンクスペースが小さくなる)。コーナーに設けた水飲み場についても、6列のフリーストールでは、4列に比べて、40%もスペースが減少する。一頭
あたりの建設費だけでなく、このような要因も考えるべき。
飼槽とのしきり(Feed Barrier Design)
飼槽におけるセルフロッキングシステムについてはいろいろ議論されている。試験によって結果は異なるが、夏場、4時間ロックされた場合はそのストレスは大
きい。飼槽の前のしきり(上部)は120cm必要で、前方に約20度傾けた方が(または10-15cm前に出した方が)、口が約14cm遠くに届くためよ
り簡単に飼料が食べられる。下の仕切りの高さは牛のいる床から52cmが適切である。また、飼槽面の高さは、牛のいる床の高さから5cm−15cm高く
なっているべきで、飼槽の奥行きは90cm必要である。
フリーストールデザインと表面の材質
フリーストールのデザインは、カウコンフォートと密接につながっており、建築費との関係でスペースが小さくなると、牛の居心地は悪くなり、生産性に影響を
与える。また、牛がフリーストールに入らない様であれば、フリーストールの設計上何らかの欠陥がある。ストールは前方から後方にかけて緩やかな勾配をつけ
た方が良く、その表面も快適なものにするべきである。砂はいろいろな面で勝れたベッディング材であるが、糞尿との分離が必要であったり、場所によっては経
済的でない場合もある。市販されている牛床マットはいろいろあるが、物によって牛が好むものと好まないものがる。
補助点灯
泌乳牛においては秋から冬にかけて、明るい時間(462ルックス)を16時間にすることで乳量が6%増加したとの報告がある(Peters,1981)。
その他の報告でも5%乾物摂取量が増加したり(Chastainら、1997)、18時間明るくすることにより乳量がに3.5%増加したとの報告がある
(Millerら、1999)。ただ、16時間以上明るくしても乳量は増加しないことも報告されている(Dahlら、1998)。光の強さは牛舎の場所に
よって異なるため、更なる研究は必要である。3回搾乳を行った場合、連続して8時間以上の暗い時間を提供することはできない。最低でも6時間の連続したく
らい時間は必要であるとする報告もあり(Dahl,2000)、搾乳間隔もこのことを念頭において調製するべきである。通路などで光のあまり強くない赤い
ランプの使用は、他のグループの妨げにならないので良い方法かもしれない。乾乳牛は泌乳牛と違って明るい時間を8時間にした場合、16時間に比べて次の産
時での乳量が増加したと報告されている(Dahlら、2000)。
ヒートストレス
ヒートストレスは乾物摂取量を減少させ、乳量を減少させ、健康を損なわせ、繁殖成績を低下させる。ヒートストレスを緩和するためには適切な換気と冷却シス
テムが有効である。自然の換気システムはヒートストレスを防ぐのに有効で、4/12ピッチのオープンリッジを用いた自然換気システムや4.2mの高さのひ
さしは、そうでない設備に比べ乳牛の呼吸数を低下させたとの報告がある(Armstrongら、1999)。冬場でも適切な換気は必要であるのでこれらの
設備は役に立つ。牛舎のバーンの幅も換気に影響する。例えば6列のフリーストールの場合、4列の場合に比べて37%換気量が減少した。また、冷却設備はミ
ルキングパーラー、ホールディングペン、飼料を食べるところにも必要で、これらの場所はまず十分な日陰があることが必要で、次にスプリンクラーや扇風機を
取り付けることを考える。また、パーラーからの帰りの通路に置く事も夏場の暑い時期には有効である。ホールディングペンに拘束される時間は1時間超えるべ
きではない。
網戸を使ったManure Test (Dairy Herd Management 2000年5月号)
Pioneer Hi-Bred International のコンサルタント Mr.Kurt
Ruppel(Greenwich,NY)は、ManureTest に網戸を使用しています。網戸の網の隙間は約3mmで、この上でManure
を篩うと、長さが0.88mm以上のコーンや粗飼料片が上に残ります。正常なルーメンでは長さが0.625
mm以上のサイズの飼料片は通過しないので、残る部分がもしあれば、機能性せんいの不足でルーメンマットの形成が不完全か、ルーメン機能の異常が疑われま
す。
照明時間の延長が乾物摂取量を増加させる?(Dairy Herd Management
2000年5月号)
乳牛に最低18時間の照明(照明の強さは20
フットキャンドル<Footcandles>:申し訳ありません。これも勉強不足でどれぐらいの照度かわかりません。知っている人がいればメイルにてお知
らせください。)をすると乳生産が向上するとの研究データがあります。あるカリフォルニアの牧場で乳牛のいる場所の照度が20-30
Footcandlesになるように400ワットのハロゲンライトを設置したところ、1日1頭あたり約3ポンド(1.35Kg)、乾物摂取量が増加したと
のことです。ただし、乳量への反応は他の要因もあり明らかではなかったそうです。
Transition Cow の飼養管理 (2000年2月25日)
今回は第1回目なので何か面白いものをと考えましたが、米国でのもっともホットな飼養管理技術
は引き続き Transition Cows です。特に新しいことはないのですが Dairy Herd Management
の1999年4月号の特集に良くまとまった文章がありましたのでこれをもとに、私なりの情報も加えてご紹介します。
Transition Cow のガイドライン
アイオワにあるNational Animal Disease Center の獣医師であるDr.Jesse Goff
は次の3つのポイントを守ることにより分娩後に発生する疾病の90%は防げるとしています。
1.泌乳初期のエネルギーの要求量を満たせるようにするため、高エネルギー飼料(穀類)にルーメンを慣らすこと。
- 乾乳期には粗飼料中心の飼料のため、ルーメンの絨毛組織が退行しており、VFAが十分吸収できない。よって、分娩までに穀類の給与によりプロ
ピオン酸の産
生を促し、ルーメンの絨毛組織を発達させなくてはならない。また、穀類の給与によりルーメン内微生物を穀類多給飼料に慣らしていかなくてはならない(訳者
注)。
- 少なくとも分娩予定日の3週間前から穀類を与え始めること。初産牛は5週間前からやる必要があるかもしれない。蛋白(CP)はいろいろ議論の
あるところで
あるが経産牛ではCPが14から15%、初産牛では16%必要。
- TMRの牛群ではエネルギーレベルで1.57から1.61Mcal/Kgの飼料を経産牛では3週間前、初産牛では5週間前から給与する。
- 粗飼料と濃厚飼料を分離給与の場合、穀類は4週間前から給与開始し、分娩2週間前の間に体重の0.75から1%(3.6から5.4Kg)の穀
類を食べられ
るように徐々に増給していく。常に穀類を給与する前に粗飼料を給与すること。
2.分娩時の血中カルシウムレベルの低下を防ぐこと。
- 飼料のカチオンーアニオンバランスをとること。
- コーンサイレージのような低カリ(K)の飼料を使用すること。
- 十分なマグネシウム(Mg)を給与すること
- Transition Cow のミネラル推奨値(分娩前3-4週)
カルシウム |
1-1.2 % |
リン |
0.4 - 0.5 % |
ナトリウム |
できるだけ 0.1 %に |
マグネシウム |
0.4 % |
カリ |
できるだけ 0.7 % に |
イオウ |
0.3 - 0.4 % |
塩素 |
尿中 pH が 6-6.8 になるようにできるだけ高く(0.7%) |
- カリの推奨値は0.7%としているが、粗飼料中のカリが高いため実際には不可能である。よって、1.5-1.8 %のカリでも良い。
- 分娩日にカルシウム剤の経口投与を行う(訳者注:米国では塩化カルシウムのゲル剤がいろいろ市販されており、ここではこれらをさす。第二リン
カルの経口投
与が日本では一般的であるが、リンはこの時期不足していないのでカルシウムだけのものの方が良いと考える。)。これにより血中のカルシウムレベルを6-
10時間高く保つことができる。分娩直後に一回、そして、必要であれば分娩後12-24時間後にもう一回投与する。
3.強い免疫力を維持させる。
- 乳熱を防ぐ。乳熱は免疫細胞を不活化するコルチゾールというホルモンを大量に分泌させる。
- 十分なセレニウムを給与する。米国では0.3ppmが上限である。コロラド州のFort
Collinsというところの獣医であるDr.Arden
Nelsonはセレニウムの吸収が適当であるかどうかを見極める為に血液サンプルをモニターすることを推奨している。もし、十分でなければセレニウムを増
給するか、注射する。
- 放牧をしない場合はビタミンEを給与する。オハイオ州立大学のDr. Bill Weiss
による最近の研究では乾乳期間を通じて1,000 IU/日、泌乳期間中は500 IU/日のビタミンEを給与することを推奨している。
- エネルギーと蛋白を不足させない。
- 分娩に伴う乾物摂取量の低下を考えて、NRCの推奨する要求量の20から50%増しの微量ミネラルを給与する。
セレニウム |
0.3 ppm |
銅 |
12 - 15 ppm |
亜鉛 |
48 - 60 ppm |
コバルト |
0.1 ppm |
ヨウ素 |
0.6 ppm |
鉄 |
50 ppm |
マンガン |
48 - 60 ppm |
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