松戸市における都市問題の本質

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1.ベッドタウンとしての都市間競争に負けている松戸市

平成11年の時点で30〜49歳の人々が平成13年までの2年間に見せる人口動態では、松戸市からの転出者の方が転入者より多く、結果、2600人減ってしまっています。年率にすると約1%の減少です。これについて松戸市と好対照となる横浜市青葉区では同じ世代が年率約1%で増加しています。この現象が意味するところは「結婚〜子育ての時期にある家族においては、松戸を住むに値しない街と見る傾向が強い」ということです。つまり、松戸市はベッドタウンとしての都市間の競争に負けてしまっているのです。

2.都市間競争に負けるとどうなるのか

30〜49歳とその家族が減少するということは、現在の主力納税者や将来成長して納税者となる子供たちが減少しているということです。出生率が現状のままとしても、このペースで人口が流出していくと20年後の松戸市における生産年齢人口は現在より6万人減ることが想定されます(現在は34万人)。これに対して青葉区では20年後5万人増えることが想定できます(現在は19万人)。その結果、20年後の高齢者1人を支える生産年齢人口は、松戸市が2.3人、青葉区は3.5人。どちらが財政的に豊かな都市たりえるかは明白です。

3.産業衰退がもたらすものは

さらに、30〜49歳の人口流出がある地域に商業の発展が望めないのは言うまでもありません。購買意欲が高い世代の人口が減っていくような地域となると事業者の目からも魅力のある商圏と見られるわけがないのです。魅力のある商業施設がなければ、ますます30〜49歳の人口流出は勢いを増します。加えて、現状の松戸市は、産業向け社会資本の魅力が薄いうえに、有効な産業振興策も打つことができていません。平成11年の工業出荷額、小売年商、卸売年商の合計を総人口で割った金額では、松戸市は柏市の3/4、船橋市の4/5にも満たないのです。そして、この金額は平成6年から5年間で13%も減少しています。産業がこのような状態では事業者からの地方税収入も望めるものではないのです。

4.人口流出と産業衰退が財政構造を悪循環させる

以上は、もはや「不景気」とは関係なく、松戸市が都市として見捨てられつつある兆候であると思います。少子化に起因する平成18年以降の人口減少局面により、納税者たりえる生産年齢人口が減少していくことは必定ですが、松戸市においてはこの少子化問題どころではなく、人口流出、産業衰退による「地方税収入減少→行政サービス低下」という悪循環に陥ろうとしているのです。今でこそ地方交付税交付金、国庫支出金などにより、歳入の不足を埋めてもらい安穏としていられますが、最終的に国から財源が譲渡されて地方自治への移行が完了した場合、これらの収入が当てにできるか解りません。ところが、国や県の財政に頼る歳入を総人口で割った数値では、松戸市は柏市の1.3倍、船橋市の1.5倍と、他市より圧倒的に多くなっています。

5.自治体として考えなければならないことは

これからの自治体、こういった「自治体をとりまく社会環境の変化」、「既存の財政計画に記されていない危機」を市民の目に明らかにしていき、「住むに値する都市、事業所を構えるに値する都市」に変革するべく都市戦略を策定する能力が必要となります。「10年後、松戸をどんな都市にするのか。20年後に向けてはどんな布石を打っておくのか」という都市経営ビジョンを生み出していかなければなりません。柏や横浜のように既に戦略に基づく市政を行い、成功している自治体もあります。この戦略策定ができない自治体は補修の行き届かなくなった公共財を発起点にして、「割れた窓ガラス理論」の実験をなぞる形で廃退していきます。そして市民は行政サービス不全から始まる「モラルダウン」が蔓延した街での生活を強いられてしまうことになるのです。
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