2002年6月15日付の読売新聞朝刊東葛欄において「松戸・紙敷地区、区画整理事業破たんの危機」という見出しで当組合に関する記事が掲載されました。凡その内容は事実どおりですが、事業失敗の原因、松戸市作成の再構築案の実効性、組合員のスタンス、などにかかる記述が大きく不足しているため、組合外部に対して大きな誤解を生じさせる懸念があることから、ここに補足を致します。
なお、読売新聞社に対しては別途、抗議を行っていきます。
1.「強気の意見」は組合員の総意ではなく、理事会内部だけであった
記事の中では「バブル経済はすでに崩壊し、組合内に事業の見直しを求める声もあったが『駅が出来れば土地は売れる』という強気の意見が勝った」とあります。ところが、一般組合員に対しては平成4年2月の総会において、「保留地(事業資金を捻出するための売却用地)は既に売却済みである」という説明がなされていたため、一般組合員レベルでは意見も何も出せるほどの意識はありませんでした。議論が行われたのは理事会内部だけであり、その過程も結果についても一般組合員には何も報告されていません。
「強気の意見が勝った」のは、あくまでも一般組合員を蚊帳の外に置いた理事会の内部だけでの話です。なお、土地区画整理法上、理事は選挙で選出することになっていますが、当組合では選挙は行われていませんでした。
2.松戸市作成の再構築案には実効性はなく、採択しても事業再建はできない
記事の中では「組合員が新たに8.76%ずつ土地を供出し、保留地を3.6ヘクタール増やすことを条件に・・・・・今ある保留地3.5ヘクタールとあわせて実勢価格で売れれば、残る工事の費用と当面の利息をまかなえるはずだった」とあります。ところが、状況を知っている者からしてみれば、この再構築案は実効性が甚だ疑わしいものであったのです。
というのは、松戸市が作成した再構築案は、住宅向けの残保留地を平均70万円/坪(全体平均75万円/坪)で売却することを前提とするものでしたが、ご存知のとおり平成12年には都市整備公社が45万円/坪で保留地を購入しており、保留地売却額すなわち組合の収入額について計画と実態の乖離が甚だしいものであったからです。
そしてなによりも、事業完成の目処がつくまえに建物を建てる許可を与えるという愚挙を組合執行部はしてきたため、建物が無秩序に建設され、現在では組合員が拠出した土地をまとまった面積にするために集合させることができない状態になっています。したがって、再構築に向けての負担は土地ではなく金銭によるものになります。
畑約900坪を法律上区画整理にむりやり組み込まれた農家(土地区画整理法上、計画地の面積70%以上を抑える地権者たちが賛成した場合、計画地内の反対地権者も強制的に区画整理に参加させられる)が最初に37%の減歩で畑を削られた上に、追加で1億円の現金を要求されることになります。農家の方は土地を持っていても現金は持っていません。また、今の環境下では現金を得るために土地を売ろうにも、まともな価格では買い手がつきません。このように、現金を生み出す手立てがほとんど無いにもかかわらず、計算すると坪当たり11万円×所有面積分の現金拠出を求めらることになるのです。
以上のように、松戸市が作成した再構築案は現実的には実施不可能なものであるうえに、今まで一般組合員に対して組合執行部が秘密裏に事業を行い続けたにもかかわらず、失敗した責任についてまったく考慮されていないものでもあったことから、一般組合員からは到底受け入れられない代物であったのです。
松戸市作成の再構築案に対抗すべく、組合員有志により別の再構築案も作成しました。しかし、これも松戸市と理事会によって勝手に廃案にされてしまい、日の目を見ることはありませんでした。総会議題は理事会で決定するため、総会にかけさせてももらえません。全組合員の五分の一の署名により総会開催を請求することはできますが、たとえそこで可決しようとも業務執行権は理事にあるため組合員の望むような進め方ができません。また、理事のリコールには想像を絶するほどのハードルを越えなければならず、また、たとえ理事を辞めさせたとしても、150億円の赤字を抱える組合運営を担うリスクを取れる人は誰もいないというのがこの組合の現実です。
3.反発する組合員は有効票数の過半数を超えている
記事中「もともと土地の持ち分の少ない人や、事業用地内に住宅を購入し転入してきた約70人の新組合員は『出す土地はない』と反発。結論が出ないまま・・・・・・」とあります。この文面では松戸市都市整備本部と理事会に反発しているのは70人だけという一部の人たちと受取られそうですが、正確には、有効票数187人のうち、上記理由で反発している組合員は約135人(理事3人含む)松戸市再構築案に賛成は52人(組合理事18人中15人)、であり、実質、過半数を大きく超えています。1月27日の総会ではこの票数で松戸市作成の再構築案を否決しております。なお、反発している組合員のほとんどは原則として追加負担自体には了承していることも申し添えます。
以上、組合員の意志を集約すると
となります。
これをベースにして再構築案を作ればよいのですが、組合員が作っても前述のとおり闇に葬られ、松戸市が作ると組合員の意志を無視し、本来は再構築に向けて集約した組合員の意志をもとに策案し調整に奔走しなければならない理事会は何もしないという状態となっています。なお、理事は本年2月19日をもって任期が切れているにもかかわらず、いまだ改選手続きを行わず居座っている状態です。
この状態を打開すべく組合員有志により土地区画整理法に則り、
・理事の改選
・改選の前提となる定款変更(集まりの悪い理事会の定数削減、理事の義務・権限制限条項)
・新理事に対する免責方針決議(新理事には過去の責任を負わせない)
を旨とする総会開催請求を行っております。
4.「計画の軌道修正の機会」は組合員には隠されていた
記事中「『計画を軌道修正する機会は何度かあった。しかし、経済の動向を見誤った強気の判断が、最悪の自体を招いてしまった』と湯浅岩雄組合副理事長は話す」とありますが、一般組合員には正確な状況を報知するどころか、「保留地売買契約を締結した」「再減歩はしない」旨の虚偽の報告を続けてきたわけですから、組合の軌道修正を図る機会など作れるわけがありません。なお、理事会の中でも、運営に疑問をもっていた3人の理事が発言しようとするととたんにその3人の口を封じてしまうような制止があったとのことを、3人の理事の一人から聞いています。
最悪の事態を招いた動機的原因は、下記5点につきると考えます。
以上が読売新聞記事の説明不足を補足するものです。
松戸市紙敷土地区画整理組合 事務改善委員会
(事務改善委員会は当組合の総会において159票中153票をもって設置を承認された正式な内部機関です)